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「購入していただいた瞬間、お客様との関係値が始まる」。25年にわたり約1万人の足を見てきた靴販売員の接客極意とは?

「購入していただいた瞬間、お客様との関係値が始まる」。25年にわたり約1万人の足を見てきた靴販売員の接客極意とは?

販売職に携わる人々のリアルに迫る本企画。今回は四半世紀、靴販売ひと筋に向き合ってきた、ある意味“靴職人”のAさんにインタビュー!これまで1万人分の足を“接客”した経験から、今では足を見て少し触るだけでサイズ感はもちろん、その人が足に抱える不満もわかるようになったのだとか。そんな靴販売員のAさんに接客時に大切にしていること、高級靴販売の醍醐味について聞きました。

A氏プロフィール
大学卒業後、国内の婦人靴ブランドに就職。販売職を5年経験したのち、現職の高級紳士靴ブランドに転職。25年、靴販売に従事している。靴販売ひと筋25年、所持する革靴は50足以上!多くの靴を長く愛する革靴フリーク

— Aさんの靴販売歴はどのくらいになりますか?

25年間、シューズの販売ひと筋です。大学卒業後から5年間は国内の婦人靴ブランドで販売職を経験した後、現職に就いてからは20年目を迎えました。靴ひと筋の販売経歴は、ラグジュアリーブランド からの転職も多いこの業界の中では珍しいと思います。

— 25年間!自社ブランド品を含めてたくさん買う派ですか、それとも1足を長く履いていく派ですか?

両方だと思います。今までたくさんの靴を買いましたし、買ったものは長く履いています。今は革靴だけで50~60足は持っているかと。家族にも今のところは理解してもらっています(笑)。

所持している靴の大半は自社の革靴ですが、スニーカーやブーツなど素材もさまざまなものがあって、出張や雨の日などのシーンでも履き分けられるようにしています。ただ、その中でも日々のルーティンの中で稼働しているのは半分弱。5年以上自分の中でトレンドから外れていても、久々に見た時に新たな魅力を感じて、ローテーション入りする靴もありますね。どれも愛用しています。

高級靴の定義は素材の良さ、技術力、手間。職人が1足にかける時間や手間でクオリティは違ってくる

— 高級靴の定義とは何でしょうか?

はっきりとした定義づけは難しいかと思います。というのも、「グッドイヤー」という製法ひとつとっても1万円~数十万円台まで幅がありますから。ただ、せっかくなので長く業界に携わってきた者として、高級靴の定義を3つ考えてみました。

1つ目は「素材の良さ」。革靴の場合は素材が前面に出てきますので、履き心地、質・ツヤ感などが良ければ見た目も履き心地も良くなります。特に、素材の使い方はコストに大きく関わってきます。

通常1枚の革から4~5足分を製造できる場合でも、より良い革の部分だけを使って1~2足を製造すると、その分価格に反映されます。コストを下げるためには切り返しのステッチを使ってパーツを組み合わせていく方が、革にあるキズや血筋などを避けることができ、歩留まりが高くなります。

2つ目は、素材を扱う「技術」。靴はオートメーションでつくれるものではないので、靴に対してどれだけ技術をつぎ込めるか、熟練の職人さんならではの技術とノウハウがどれだけ詰まっているかで変わってきます。安価な靴は曲線が少なく、直線的なものが多い。曲線は革を馴染ませるのに時間や技術がかかりますから。

そして3つ目に「手間(時間)」です。1足をつくり上げるのに手間をかけるということは、その分コストがかかるということ。良い靴は、じっくり時間をかけてつくられるものです。2つ目の定義の「技術」に密接していて、例えば革を馴染ませるためにヒーターを使うこともあるのですが、高級靴は職人さんがゆっくりじっくりと待つ。また、時間をかける=生産数が少ない、という付加価値も付きます。

— 主な客層はどのような層になりますか?

シンプルに良い靴が欲しい方をはじめ、同僚や先輩から勧められた方、お客様のライフステージが変わったタイミングで“良い靴って何だろう”と考えた結果、たどり着く方もいます。マニアックな方ももちろんいますが、この20年で価格が徐々に上がっているのでそういう方は減ってきている感覚です。

するどい洞察力を基にお客様に寄り添った提案を行う

— 新規で来店された方が購入するまでの平均時間はどのくらいですか?

サイズの計測から始めるので、最短でも1時間はかかることが多いです。計測器で足の長さと幅を計測し、その後は自分の目と手でボリューム感を確認して複合的にフィッティングしていきます。ざっと計算するとこれまで1万人ほどの足を見てきたと思います(笑)。お客様の足と靴を履いている状態を見れば、目視で足のサイズやフィット感、どこがどのくらいキツそうなのか、履き心地でどのような不満を抱えているのかがわかります。

― 高級靴の接客では、どのようにお客様の不満や問題点を解決できますか?

靴というのは洋服と違ってサイズを大きく変えることはできません。木型のベースと足の相性があるので、相性が悪そうであれば木型の特徴とお客様の足の相性についてしっかりお伝えします。その上で履き心地を求めるのか、ファッション性を求めるのかはお客様次第。

パンツのシルエットを細くお直しするように、足が細い人に対して靴を細く作り直すことはできないので、ヒアリングをしつつ代替案を提案しながらお客様と模索していきます。

— 購入後、定期的に靴の状態を見てもらえるのも高級靴販売の特徴でしょうか。

そういった意味で高級靴は特殊で、購入していただいた瞬間からお客様との関係が始まると思っています。革の経年変化や履き心地の変化のヒアリング、靴のお磨き・お手入れ、ソールの補修など、購入された後にお客様との関係がより深くなっていきます。そこはほかのカテゴリーの商品とは違うところなので、長いお付き合いを想定して接客をしています。

— 靴の知識についてどのように勉強されていますか?

今はインターネットでいろいろ調べられるので、他ブランドの動向やユーザーレビューなどをヒントにしています。仕事を始めた当時はまだインターネットが発達していなかったので、雑誌や先輩との会話、他ブランドのショップに出向いて情報を収集していました。特に靴を特集した雑誌は読みあさっていましたね。ショップに出向いたときは実際にいろいろ履き比べて店員さんと会話しながら勉強していました。

必要なのは、知識や接客トークよりもカウンセリング能力

— コロナ禍で変わったことはありますか?

一番大きいのはワーキングスタイルの変化で、リモート勤務が増えたことにより革靴を履くシーンが減っていることです。また、この20年はカジュアル化が進み、ドレスシューズを求めている方の絶対数が減っています。

その一方で、ドレスやドレスシューズに改めて目を向けてこだわる方もいます。着用シーンが減って所有数が減る分、所持する1足はより良い靴にこだわるという方も増えていますね。また、最近のトレンドとしては、カジュアルなスニーカーが飽和状態ということもあって、スニーカーとドレスの間のような商品にも需要が生まれています。

— どのような方が靴販売に向いていますか?

ファッションが好きで、さらに靴に興味のある人の方が、楽しんで仕事ができると思います。商品を幅広く扱うわけではないので、より専門的な知識が必要になり、ハードルは高いかもしれません。ただその分、基礎知識を覚えてからは長く働けるジャンルだと思います。紳士靴のジャンルはデザインが固まっていますから、細かな変化や現代的な解釈で提案できるかがポイント。そこを深堀りできれば本当に働きがいのある業界です。ホスピタリティ精神や接客が好きな気持ちがあれば十分だと思いますね。

— 逆に向いていない方は?

アパレルと違ってサイズフィッティングが難しいので、洞察力が乏しいと難しいと思います。靴はかなり繊細です。多く売ろうと販売力に注力するよりも、お客様からニーズをしっかりと聞き出すようなカウンセリングに近い会話をできることが重要だと思います。

— 靴販売職の経験から得られるキャリアパスを教えてください。

靴販売を経験された方が、専門知識を活かして商品企画やバイヤー、日本の市場に合わせた木型の変更を行う企画職になる方もいるようです。販売から得た専門知識を基に、より良い靴の提案をする職へのキャリアプランが考えられます。一方、この分野での独立は洋服ブランドを扱うよりもハードルが高いかもしれません。在庫を抱えなければいけないですし、サイズ展開が多く必要です。また、販売では知識はついても靴をつくる技術は身につかないので、職人への転向はかなりハードルが高そうです。

— 靴販売職の魅力は、ズバリ何でしょうか?

カウンセリングスキルが必要なので、お客様に寄り添うことが大事。たくさんコミュニケーションを取って、お客様が求めていることを察知し、そのお手伝いをできることが魅力です。

販売した瞬間から関係がスタートし、そこから数十年のお付き合いをしている方もいます。長くお仕えできる分、何か困りごとがあったときに声をかけていただける存在になれることも魅力です。高級靴はメンテナンスや修理をしながら長年愛用するものなので、お客様の一足に長く関われることが高級靴販売の醍醐味だと思います。

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