「Öffen(オッフェン)」と「Ameri VINTAGE(アメリヴィンテージ)」、アップサイクルの取り組み
エシカルシューズブランド「Öffen(オッフェン)」は、ブランド創設から2024年で4年目。2月9日に代官山に路面店のオープンを記念し、トークイベントが開催された。オッフェンのプロデューサー&デザイナーの日坂さとみさんによりブランドの道のりと今後の展開についての説明があったほか、後半では「Ameri VINTAGE(アメリヴィンテージ)」の黒石奈央子さんを交えて、エシカルなトークで盛り上がった。
〈イベント登壇者/プロフィール〉
日坂 さとみさん/Öffenプロデューサー&デザイナー
黒石 奈央子さん/Ameri VINTAGEブランドディレクター&CEO
司会:深本 南さん/社会起業家・環境活動家
ビジネスとサステナビリティはそもそも両立するのか
エシカルシューズブランド「Öffen」(以下、オッフェン)と「Ameri VINTAGE」(以下、アメリヴィンテージ)。この2つのブランドが、NESTBOWLのネットワーキングイベントをきっかけに繋がり、トークイベントが開催された。
”ビジネスとサステナビリティはそもそも両立するのか”ということをトークの中心に据え、前半は「オッフェン」プロデューサー&デザイナーの日坂さとみさんによるブランドの理念、後半は「アメリヴィンテージ」の黒石奈央子さんを交えたトークセッションの様子をレポートとしてお届けします。
― まずは日坂さん、「オッフェン」のブランドについて伺えますか。
靴に関わり続けて20年以上になります。当初はものづくりにおいてデザインが重要視されていましたが、自分自身で新しい靴のブランドを立ち上げる際は「どういう作り方をしていくか」という過程を重要視しました。
「ゼロ・ウェイスト」という、ゴミをなくすための取り組みについて学んだとき、日本だけではなく世界中で膨大な量のゴミが出ているなか暮らしているということを知り、衝撃を受けたんです。
ゼロ・ウェイストの考え方を意識し、今まで当たり前だった作り方に対して「それは本当に当たり前なのか」と常に問い、制作、販売、そしてお客様が購入された後どうなるのか、この3つのプロセスを考えて出来上がったのが「オッフェン」のアイテムです。
― より具体的な取り組みについて教えて頂けますか。
私たちのシューズは、アッパーの部分に再生ペットボトルから作られた糸を使い、ソールの部分も行程を工夫し、作る過程でゴミが出ないような作り方をしています。日本で大量に消費されているペットボトルが糸となり、また私たちの足元に戻ってくるというのも感慨深いですよね。
長く履いていただけるように、繰り返し洗って使えるだけの耐久性と洗いやすさを兼ね備えた素材を研究し、開発。インソールも別売りで購入することができるので更に衛生的にも長持ちします。
また、シーズンごとにコレクションを発表するという形式はとっていません。ガラッとデザインを新しくするよりも、長く定番として出せるようなものを手がけたいと思っています。トレンドに捉われすぎると、「これはもう古いスタイルだから捨てよう」という意識にもつながってしまいます。
― コラボレーションによるアップサイクルの取り組みもされているとか。
他のアパレルのブランドから、サンプルの制作などで余ってしまった生地やバッグの備品などをお預かりして、新しく靴として生まれ変わってもらうという試みを続けています。
ウエディングシューズも、ウエディングドレスを作ったときに余った生地をアップサイクルする形でコラボレーションさせて頂きました。ウエディングシューズというと、その日だけの特別なものというイメージがありますが、ハレの日に履いた思い入れのある靴を、普段お出かけする際にも履けたら素敵なんじゃないかという想いで作らせて頂きました。
インスタグラムやイベントを通して、商品だけではなくオッフェンの想いや理念などを知って頂くことで、コラボレーションのお声がけを頂くことも増えています。
縁が繋がり実現した、店舗づくりにおける什器のアップサイクル
― ここからは、「アメリヴィンテージ」の代表・ディレクターの黒石奈央子さんも交えてお話し頂きます。以前アメリヴィンテージがあった場所に、ご縁があって今回新しく「オッフェン」の店舗がオープンしたそうですが、什器などにまつわるアップサイクルの試みなどについてお聞かせください。
黒石奈央子さん(以下、黒石):今回初めて店内を拝見しましたが、アメリの什器をそのまま使うのではなく、「オッフェン」さんらしい解釈を加えてうまく作り変えたりしながら活かして頂いていると感じました。間違い探しをしているような感覚もあって楽しかったです。
日坂さとみさん(以下、日坂):鏡やドアなどを再利用したほか、服をかけていたラックもパーツに分解し、棚の部品などに作り変えました。木材も色を塗りなおしたりしながら使わせて頂いています。
黒石:元々この物件を離れるにあたって、使っていた什器を捨てずに活かしてくださる方に託したいと考えていたので、理想的な受け継がれ方がされていることを実感しています。
日坂:場合によっては床まではがしたりして、スケルトンの状態にしたりしますよね。そうなるとゴミもたくさん出てしまいます。私たちが入るにあたり、意識して、元々ある什器を活かして店舗を作ることを選びました。
黒石:私にとっても思い入れが深い店舗だったので、ご縁がありこのような形で受け継いで頂けたことを嬉しく思います。
― 在庫消化率についての考え方も伺えますでしょうか。「アメリヴィンテージ」は在庫消化率が99%だと聞いたことがあります。
黒石:そうですね。それをいかに100%に近付けるか、というのが理想のブランドの在り方だと考えています。海外では服の廃棄に対して法律が出来てきていますが、日本も少しづつ、廃棄という部分について注目されていくと思います。
私は、関西人ということもあるかもしれませんが「もったいない精神」というのが強くて(笑)。それもあって先行受注という販売方法を業界の中ではかなり早くから取り入れています。過剰在庫を作らず、ある程度予測を立てて発売までもっていけるのが利点です。「ロスを作らない」ということが、地に足をつける経営として大事だと思います。
日坂:やはり捨てるという行為が自分たちの選択肢にない、というのは大きいです。日々の生活の中でもったいないと思うことについては無理なく変えていけるといいですね。
黒石:それが最終的には地球の環境のためにもなる。そういう考え方でいいのではないかと思います。私たちもすべてのアイテムではないですが、そうした環境に配慮した服を手がけてコツコツと小さな一歩を積み重ねています。
“Small steps big changes”、一歩ずつ前へ
企業が大きくなればなるほど数字に意識の中心が向かうことが多いなか、「オッフェン」と「アメリヴィンテージ」に共通していえるのが、「アイテムをどのように届け、着てもらうのか」というプロセスの部分について確固たる信念を持っていること。そのことが結果として、「必要なものが必要な分だけ、必要な人に届く」ことに繋がっています。
「オッフェン」のモットーであり、このイベントのタイトルでもある”Small Steps Big Changes”。これは、みんなが一歩づつ前に進んでいくことで、いずれ大きな変化を生むことができるというメッセージだと日坂さんはいいます。すべてをいきなり変えることは難しくても、一歩ずつの積み重ねが結果的に地球にもやさしいものづくりに結びつく。そんな在り方が広まり始めています。
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文:ミカタ エリ