1. HOME
  2. 最新ニュース&インタビュー
  3. 「挑戦の習慣化」が自信の根拠に。ユーグレナCo-CEO植村弘子さんの、人生を動かすポジティビティとバイタリティ

JOURNAL

「挑戦の習慣化」が自信の根拠に。ユーグレナCo-CEO植村弘子さんの、人生を動かすポジティビティとバイタリティ

「挑戦の習慣化」が自信の根拠に。ユーグレナCo-CEO植村弘子さんの、人生を動かすポジティビティとバイタリティ

「自分には何が向いているのか」「この環境が最適なのか」キャリアの形成において、立ち止まり迷うことは何度もあるだろう。また、業績の悪化やコロナ禍をはじめとした想定外の事態により、自分の立ち位置が不確実なことを実感している方もいるかもしれない。株式会社ユーグレナでCo-CEO兼COO(最高業務責任者) を務める植村弘子さんは、学生時代から自分の「得意」を探して見極め、ポジティブさとバイタリティによって挑戦を重ねてきた。不安に立ち向かい、第一歩を踏み出すために必要な行動やマインドセットについて伺った。

植村 弘子さん/株式会社ユーグレナ 取締役代表執行役員Co-CEO兼COO(最高業務責任者) 
エスビー食品株式会社にて、コンビニエンスストアチェーン本部セールス兼PBブランド商品企画に従事。その後、株式会社一休に26番目の社員として入社。レストランや宿泊事業の営業・営業企画等に従事した後、カスタマーサービス部部長およびCHRO(最高人事責任者)管理本部長を歴任。2023年4月、株式会社ユーグレナ入社。執行役員CSXO(最高ステークホルダー責任者)兼人事部長を経たのちに現職。

ポジティブに行動してきたキャリアの変遷

ー まずは植村さんのキャリアについて教えてください。

私は大学時代に自分の人生をどうつくっていくかをずいぶん考えました。家庭教師の営業のテレアポのアルバイトや複数の会社でインターンシップをしたり、また、自分で名刺を作って面識のない起業家の方に会いに行き、学生と起業家の交流の場を主催するなどもしました。これらの経験により、自分が営業に向いていると思ったのです。

新卒でエスビー食品に入社したときは「お客様は何を求めていて、どのような商品を展開したら喜んでくださるのか」ということを徹底的に考えて行動しました。今思えば、ずいぶん生意気で常識外れなこともしていたと思いますが、育ててくださったことにとても感謝しています。

ー その後一休に移られ、最終的にはCHRO(最高人事責任者)を務められます。植村さんにとってどのような経験だったのでしょうか。

入社当時の一休はまだ小さなベンチャーで、全員が常に何かしらのチャレンジをしている環境でした。サービスを心から愛する同志とともに「絶対に多くの人に自分たちのサービスを使ってもらうんだ」との想いで働いた経験は、確実に今の私をつくってくれたと思います。

当初、私はひとりでレストランのウェブ予約サービスの事業を担当していました。その頃はまだレストランの電話予約が中心で、ウェブ予約が当たり前になる世界が来るなど想像できなかった時代です。しかし、たくさんの得意先が私を信じてくださり、人に助けていただくことのありがたさを感じた何にも代えがたい経験でした。

一休がヤフーとのM&Aの際に、尊敬する現社長の榊さんに「一緒にやっていこう!」と声を掛けていただき、そこからCHROの挑戦がスタートしました。小さな頃から大好きだったラグジュアリーホテルや旅館、リゾートなどの世界で、合計16年半のキャリアを経験しました。

ー 現在のユーグレナでの役割やミッションを教えてください。

Co-CEO兼COO(最高業務責任者)を務めています。ユーグレナは、微細藻類ユーグレナ、つまりミドリムシの培養に挑戦することから始まり、ミドリムシの可能性を信じて愚直に研究開発を行ってきた会社です。食品や化粧品、肥料や飼料、バイオ燃料などのさまざまな形で「人と地球を健康にする」ことを目指して事業展開をしており、来年二十周年を迎えます。スピード感を持ちつつ挑戦を続け、ステークホルダーの方々に喜んでいただくことがミッションです。

私はさまざまな業務の現場にもよく行きます。CEOの仕事が「会社を強く伸ばしていくこと」なのであれば、私がやれることはすべてやります。リーダーとして仲間とともに会社を強くしたいと思っています。

元々自分自身がユーザーでユーグレナ商品を愛飲していた植村さん。2023年4月に入社し、執行役員 CSXO(最高ステークホルダー責任者)兼人事部長を経て2024年1月に現職へ

小さなことから始める挑戦が自信となる

ー お話をお伺いしていると、常にチャレンジをされてきたキャリア半生ですね。

そうですね。特に16年半勤めた一休を退職したことは、大きなチャレンジでした。今でも本当に最高の経営者と仲間、サービスだと思っていますが、ある日ふと「居心地が良過ぎる。だからこそ自ら辞めなければいけない」と思ったことがきっかけです。後から考えると、CHROとして仲間たちに変化や挑戦を求めるなか、自分は同じ役割を続けるのかといった無意識の葛藤があったのだと思います。

ー 確かに、コンフォートゾーンから抜け出すのはとても勇気がいります。植村さんは、キャリアに悩む方が大きな第一歩を踏み出すためには、が必要だと思いますか。

実際に、私も大きな決断をしてコンフォートゾーンから抜け出しましたし、世の中でもそれを良しとする雰囲気があります。しかし、私は選択肢は多様であってほしいと思っています。もしも「抜け出したい、変わりたい」と思うのであれば、いきなり大きな決断をするのではなく、小さなことから始めてみるのが良いのではないでしょうか。

例えば、今いる場所の中でやり方や思考を変えてみるのもひとつです。働く部署を変える、あるいは部署はそのままで違う仕事を加えてみるのも良いでしょう。弊社の社長の出雲は「帰る道を変えてみるなど、生活の中の小さな変化でも良い」とよく言っています。

ー 気張らない小さなチャレンジや習慣の変化が、その先につながっていくということでしょうか。

私はいつも自分の「残量」を見るようにしています。「この仕事、最初は100%の力でしていたけど、今は70%の力でできる。30%の余力を何に使おうかな」などと習慣的に考えるのです。大きな挑戦をしようとすると気合が要りますが、身近なことから始めてステップアップしていくことで、挑戦そのものが習慣となり、長く続けることができます。

その経験の積み重ねが、自信や自己効力感となるのだと思います。私は挑戦を繰り返す中で「今回は大変だな」という挑戦の方が、後から得る贈り物が大きかったと気づくようになりました。具体的には成長率や経験値の多さ、思い出などです。経験の積み重ねの結果、新しい挑戦の際には自然と大変そうな方を選ぶようになりました。

ー 過去の経験が、次の挑戦の根拠となるのですね。

私は、食品という有形の商材、旅行サービスという無形の商材、そして再びミドリムシをベースにした製品という有形商材と、それぞれ大きく異なる挑戦をしてきました。また社内でも、営業から人事までさまざまな挑戦をしてきました。

挑戦は、近くの領域での挑戦であればすぐに達成できるかもしれませんが、成長の幅は狭い。遠くの領域での挑戦であれば、大変ですが、成長の幅は広く、引き出しは増えるでしょう。良いか悪いかではなく、その方の個性に合う選択が大切だと思います。

コンフォートゾーンから抜け出すためには小さな一歩の積み重ねが大事だと語る

先の見えない時代で人生を動かす思考と感謝

ー 先が見えない時代不安を感じる方も多いです。どのようなマインドセットが必要でしょうか。

先に不安やネガティブな気持ちが出てしまうと、そこからプラスに持って行くことはなかなか難しいように思います。確かに世の中は不確実なことが多いですが、まず最初に「その中で自分はどう面白く生きるか」「自分が不安でなくなるにはどうしたら良いか」という発想を持ってほしいです。

つまり「どのように思考するか」です。不確実性に飲み込まれて不安に思うのではなく、自分の強みを認識し、足りないことがあれば努力して加えていく。大切なのは信念と自信を持つことだと考えます。

人事でも、例えば「あなたに部長をやってほしい」と打診した場合、ひと言目に不安を述べる人はとても多いです。こちらはたくさんの人と話し合った上で「あなたが良い」と言っているのに、「もったいないな」といつも思います。最初に「転ぶかもしれない」と考えるのではなく、まずは受ける。その上で課題や心配ごとを考えるといった思考の方が、人生を前に進めることができるのではないでしょうか。

ー お話をお伺いしていると、植村さんのポジティブさとバイタリティをとても感じます。原動力は何でしょうか。

実は私は33歳の時に、手術のために1回仕事を離脱しています。結果的に3ヶ月で復帰できましたが、入院中やリハビリ中に感じた、大好きな仕事ができなくなる悲しさはとても大きなものでした。だから私の根底には、働けることに対する感謝があるのです。「働くことができるのだから一生懸命やろう、一生懸命やるんだったらちゃんとお客さんに届けよう、結果も求めよう」といつも思っています。

ー 働けることに対する感謝。日々の中では見落としがちかもしれません。

働けなかった期間、仲間や得意先などたくさんの人が私を待ってくれたことで「自分は人に生かされている、私がしてもらったように恩返しをしなければ」と感じました。私のキャリアについて時折お褒めいただきますが、良く言ってもらい過ぎていると感じています。自分の力ではなく、人との出会いに助けてもらっているからです。いつも誰かが力を与えて助けてくださるから、私の今があるのです。

文:梅原ひかる
撮影:船場 拓真

SNSでこの記事をシェアする