圧巻の品揃えで人気を確立!仙台のみで展開する「パフューマリースキヤ」、46年で培ったテナント店舗運営の秘訣とは
1978年に仙台駅の駅ビル「S-PAL 仙台」へ出店して以来、成長を続けているコスメセレクトショップ「パフューマリースキヤ」。現在は仙台市内に実店舗4店、オンラインストアを運営している。中でも顧客の心を掴んでいるのは、ラグジュアリーブランドからニッチブランドまで圧倒的な種類を誇るフレグランスのラインナップだ。
舞台俳優として活躍していた取締役の由佐憲靖さんは、株式会社粧苑すきや入社を機にフレグランスの芸術性の高さに感銘を受け、今では公私の境目なく没頭しているという。由佐さんは、いかにして多くのブランドから信頼を得て取引企業数、そして売上を伸ばし続けているのか。地方での店舗展開に絞った独自のビジネス戦略について伺った。
由佐憲靖さん/株式会社粧苑すきや取締役
1985年生まれ。仙台第一高等学校を卒業後、昭和音楽大学声楽科へ入学。大学卒業後に東宝ミュージカルアカデミーにて舞台演劇を学ぶ。その後は舞台俳優として「黒蜥蜴」(美輪明宏主演)など、多数作品に出演。また、ミュージカルプロデュース団体「Score」を立ち上げ、日本初演を含む複数の海外作品を上演。2015年株式会社粧苑すきやへ入社。取締役としての業務と並行しながら、9年間バイヤーとして第一線で活躍している。2021年にはWWD JAPAN NEXT LEADERS 2021 受賞。
地域密着型で築いた信頼関係と土地勘を生かした店舗運営
ー 「パフューマリースキヤ」の1店舗目をオープンしてから現在に至るまでの歴史を教えてください。
コスメやスキンケア、フレグランスの3カテゴリを軸に展開しているセレクトショップ「パフューマリースキヤ」は、初代:由佐精造が76年前に仙台に商店を作り、その後の46年前に仙台ターミナルビルS-PALへのテナント出店をしました。当時S-PALの売場面積は8.9坪でしたが、2024年現在はS-PAL店(エスパル本館1F)とINTERNATIONAL店(エスパル本館2F)を合わせて、約230坪へと増床しています。
そのほかSELVA店の合計4店舗を運営しており、いずれも仙台市内にあります。宮城県はもちろん、隣接する山形県や福島県にお住まいの方々にも多くご来店いただいております。
ー 店舗の売場面積が大きいこと、そしていずれの店舗も好立地であることが特徴のひとつだと思うのですが、こういった店舗展開を行えている理由は何でしょうか。
オープン当時から社長の由佐幸継、そして私がS-PALとの信頼関係を丁寧に築き上げてきたことが挙げられます。お互いを尊重したコミュニケーションが基盤としてあるからこそ、「あのブランドを導入出来たら売場面積を増床してほしい」、逆に「増床するにはあのブランドを誘致してもらいたい」と意見を交わしやすいのです。そういった本音のやりとりを積み重ねた結果が、今の「パフューマリースキヤ」をつくったと思っています。
あとは仙台で生まれ育ったからこそ身についている土地勘を駆使して、取引したいブランドの方達を納得させる交渉術を持ち合わせていることでしょうか。当社は創業以降、仙台を拠点に商売しているので、そういった歴史も信頼していただける要素だと感じています。
ー 店舗を仙台のみに絞って展開している理由もその点が大きく影響していそうですね。
攻めのビジネスよりも守りのビジネスに徹する方が、長期的な成長をするうえで大切だと思っているんです。競合ひしめく、そして土地勘の無い大きな都市に出店をしたところで、ブランドも集められないので店舗運営が軌道に乗るイメージが湧かないんですよ。仙台に「パフューマリースキヤ」を根付かせる地域密着型で店舗運営していく方が、競合が仙台出店をしたとしても功を奏するかな、と。
それに全国展開をすると、その分売上に対する意識が散ってしまって。一方、仙台に一極集中させて店舗展開することで、売上意識というものが研ぎ澄まされるんです。
新規取引ではトラフィックと接客の質の良さをアピール
ー 「パフューマリースキヤ」とビジネスパートナーになることで、ブランドはどういったメリットを得られると考えていますか。
S-PALという、多様な人々が行き交う駅ビルの優良なトラフィックを得られながらも、リスクや規模を最大限鑑みて商品を並べられる柔軟性が強みです。仙台は駅周辺に百貨店やラグジュアリーな商業施設がないため、新規参入するブランドは新たなお客様に出会うことができます。商品展開の仕方ひとつとっても、棚から始めて弊社の従業員が売る、コーナーをつくり従業員もしくはブランドの美容部員が売るなど、様々な取引形態をご用意しています。
また、各商品を熟知した従業員がタッチアップまで行うカスタマーサービスにも自信があります。ブランドの世界観をより深く知ってもらう環境が、売上に大きく繋がっていると思いますね。
ー 洗練された内装に加えて、ブランディングや売り方にもこだわりが感じられますね。地域に根づいた店舗で長期的に商品を置けるのは魅力的だと感じました。
ありがとうございます。私たちが取り扱いたいと思った商品を中心に、歴史あるラグジュアリーブランドはもちろん、まだ仙台では知名度が低いブランドの良質な商品まで幅広くラインナップしています。逆に言えばマスを狙ったものやブランディングの解像度が低いものは扱っておりません。
ただ、ビジネスではあるので減価償却を終えたタイミングで売上に応じて売場を大きくする、あるいは小さくする相談はさせていただいております。シビアだと思われてしまいますが、一ブランドとして地方の商業施設にテナント店をオープンさせるリスクを避けて、純利益の最大化を模索できるという点にも魅力を感じていただけたら嬉しいです。
ー ということは、「パフューマリースキヤ」で取り扱いたいブランドや商品が、たくさんあるということですね。
その通りです。現状維持は衰退だと考えているので、仙台、そして東北ではなかなか取り扱いがないブランドとの取引を積極的に行いたいと考えています。これだけの種類をラインナップしていても、まだまだお客様が「パフューマリースキヤ」にあって然るべきと感じて、店頭でお声をいただいている商品ってたくさんあるんですよ。せっかく店舗へ足を運んでいただいたのに、取り扱いが無かったというのが申し訳なくて。
そういったお客様の思いをブランドに伝えるのも私たちの責務だと思っていますし、それが取引のきっかけになることもあります。現状に満足することなくお客様とブランドを繋ぐ架け橋となるよう、ブランドポートフォリオを充実させていきたいですね。
顧客とブランドの期待に応え続けるために挑戦を止めない
ー 先ほどお客様との関係性について少しお話いただきましたが、顧客をつくり出していくために意識したことはありましたか。
アプローチという面からお話しするとECやSNSの運営といったデジタル化を加速させ、実店舗との連携を強化するオムニチャネル戦略を意識しました。先日もLINE公式アカウントの友達数が10万人を突破したのですが、そのうち95.1%が東北にお住まいの方達で、ブランディングに沿った顧客を創出できていることを改めて実感出来ました。
ー 最後に「パフューマリースキヤ」として、どのようなチャレンジをしていきたいですか。
“地方のコスメセレクトショップ”というだけで、ブランドからの期待値が低かったり、取り引きしていいか心配されたりすることが、まだまだ多いんです。ただお話を重ねて店舗に足を運んでもらうと、内装の美しさやブランディング、接客の質の高さに感心していただけるんですよ。
「地方での展開はブランディングを損ねかねない」「不採算になるのではないか?」というイメージが先行して、地方で商品展開することを躊躇しているブランドにこそ、一度お越しいただきたいと思っています。そして納得いただけるようであれば、期待を持ってブランドを預けていただきたい。どのようなご相談でも、まずはお声がけいただけたら光栄です。
文:芳賀たかし
撮影:小林啓樹