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宇宙と200年以上の歴史を誇る伝統工芸がコラボ。新しい可能性を見出す「スペースデリバリープロジェクト-RETURN to EARTH-」とは?

宇宙と200年以上の歴史を誇る伝統工芸がコラボ。新しい可能性を見出す「スペースデリバリープロジェクト-RETURN to EARTH-」とは?

宇宙産業における総合的なサービスを提供するSpace BD株式会社が展開中の「スペースデリバリープロジェクト-RETURN to EARTH-」。2022年2月に実施された第1弾では、民間企業や研究機関など計10組と協同し、研究用素材、写真、イラストなどをロケットに搭載して宇宙に運び、帰還した。第2弾には国内外の企業・機関計13組が参加し、2023年3月に打ち上げが行われた。今回搭載された物品のなかには、新潟県燕市で200年以上もの歴史を誇る伝統工芸「燕鎚起銅器(つばめついきどうき)」の技術を活用した銅材および鋼材も含まれる。宇宙と伝統工芸という異色のコラボレーションの背景と想い、期待感について、Space BD株式会社の飯塚はるな氏と、株式会社玉川堂のマシュー・ヘッドランド氏に話を伺った。

飯塚 はるなさん/Space BD株式会社 事業開発広報・採用 マネージャー
2012年にリクルートに入社。人材メディア営業、国家プロジェクトへの出向、政策渉外を担当した後、社会人10年目を迎えた節目で、「好きなことに関わりたい」という想いを実現するために、かねてから興味があった宇宙事業を展開するSpace BD株式会社に入社。

マシュー・ヘッドランドさん/株式会社玉川堂 海外企画担当
1985年カナダ・トロント生まれ。大学時代に日本へ留学をして語学と日本文化を学ぶ。卒業後に英語講師として来日。日本酒に魅せられ、日本酒の魅力を海外にPRする仕事にも携わる。新潟県立大学のモノづくりトークイベントで株式会社玉川堂代表の玉川氏と出会い、玉川堂で週に1度英会話講師を務めるうちに、伝統工芸や、会社の方針に共感。正社員として玉川堂の一員となる。

宅配便感覚で宇宙にモノを運ぶ

― まず「スペースデリバリープロジェクト-RETURN to EARTH-」の概要について教えていただけますか。

飯塚 はるなさん(以下、敬称略):弊社Space BDが主導している「スペースデリバリープロジェクト-RETURN to EARTH-」は、宇宙利用の裾野を拡げる可能性を秘めたプロジェクトです。ロケットに搭載されるのは主に人工衛星を思い浮かべると思いますが、私たちは、その空いているスペースを活用し、記念品やアートなどを搭載して宇宙に運び、国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」の船外実験プラットフォームにて、約半年間、運んだものを宇宙空間に曝露させたのち、地球に再輸送します。

宇宙にモノを運ぶというと、巨額な金額がかかるイメージがあると思いますが、弊社はJAXAと共同開発した装置によって、手軽に活用いただけるサービスを開発し、これまでと比較して安く簡単に宇宙にモノを運ぶことができるんです。

― 今回の第2弾プロジェクトには、13組が参加し、玉川堂さんの製品も宇宙に飛び立っていますね。玉川堂さんは、なぜこのプロジェクトに参加することになったのでしょう。

マシュー・ヘッドランドさん(以下、敬称略):弊社代表から、こんなプロジェクトがあるからやってみようという話がありました。私はもともと宇宙が大好きで、スペースX(アメリカの航空宇宙メーカー)などにも興味を持っています。玉川堂で宇宙がらみの何かができるなんて夢のような話だと思い、ぜひ担当したいと真っ先に手を上げました。宇宙って無限の可能性があるじゃないですか。そこに玉川堂の伝統工芸がからむ。こんなワクワク感は久しぶりでしたね。

飯塚:私は200年以上の伝統を持つ玉川堂さんとコラボすることで、無限の可能性を感じています。というのも、玉川堂さんの7代目を務めていらっしゃる玉川社長の想いは、弊社Space BDの創業時の想いと共通点があるのではないか、と思っていて。たとえば玉川社長が会社の改革をする際、「200年続く伝統工芸の技術はすばらしいけれど、それをいい形で売り出していないこと」を問題視されています。一方で弊社も、「日本は人工衛星やロケットの開発においては高い技術を持っているのに、宇宙をビジネスにできていない現状」を打破しようと、商社出身の永崎(Space BD代表)がSpace BDを立ち上げています。扱うものや分野はまったく異なりますが、売り方やビジネスへのコンセプトには、相通じるものがあるので、玉川堂さんには、すごくシンパシーを感じるんです。 

「スペースデリバリープロジェクト- RETURN to EARTH -」第二弾で、国内外の研究機関・教育機関・民間企業13組の対象品(玉川堂の商品は一列目・二列目右から2・3番目、三列目右から2番目)

注目のコラボだからこそ、宇宙に行った製品にも注目が集まる

マシュー:私は玉川堂に入ることで、いろいろな気づきがありました。なかでも心に残っているのが、「ぼーっとする時間の大切さ」なんです。現代の生活は、すべてが時間や情報に追われています。常に最新情報を得る必要があるのではないか、答えやアイディアを早く出さなくてはいけないのではないか、という気持ちが無意識にあるからか、ずっと携帯をいじったり、SNSチェックをしたり。でも何か新しいアイディアが生まれるときって、時間を選ばないじゃないですか。苦労して長く考え尽くした問題の答えが、一休憩すれば、思い付いたりですとか、アイディアをわざわざひねり出さなくても、寝る前や起きた直後のぼーっとした時間にふとアイディアが浮かぶことってありますよね。

玉川堂に入社する前は、時間に追われ、自分がどこに進んでいるのかがわからなくなり、ストレスだらけになってしまった時期がありました。入社してから、玉川堂のコーヒーポットを使う機会があって。手作りなので決して安くないし、こんな丁寧に作られているものを使うこともなかったから、最初は使うのにも緊張したのですが、大事に丁寧に時間をかけて毎日使っているうちに、コーヒーを淹れる朝のひとときが自分にとってかけがえのない時間になりました。これまでとは異なり、ゆっくり、静かにその時間を過ごすことができたんです。朝日を見る、風で揺れる木の葉っぱを眺めるなど、見逃していた日々の小さなことも気づくようになりました。ぼーっとできる時間の大切さを教えてくれたのが、まさに自分が働く会社の製品でした。

かつての私のように、ぼーっとできる、無になれる時間を忘れてしまっている人はたくさんいらっしゃると思います。そんな方々が、今回のプロジェクトを通じて玉川堂が提案できるライフスタイルを知ることで、何かの気づきにつなげていただければ嬉しいな、と思っています。

飯塚:マシューさんの話、すごく共感します。時間を止めたり、時間を置く瞬間って確かにとても大切だし、貴重ですよね。考えてみれば私自身も、会社にいるときではなく家に帰った瞬間などに、ビジネスのアイディアがふと浮かんできたりしますから。今回の、宇宙×伝統工芸の可能性って、本当に無限大だと思います。

マシュー:3月15日に打ち上げが行われましたが、今うちの製品が宇宙でどうなっているのかなあ、と考えるだけですごく夢があるし、もう本当にワクワク感が止まらないです。

「ぼーっとできる時間の大切さ」を玉川堂の製品を使うことで取り戻したと語るマシュー氏。

前例がないからこそ、未知数の期待感が

― 地球への帰還は、2023年内とのことですが、製品が戻ってきたらどんなことがしたいですか。

マシュー:宇宙空間で曝露された素材が、どう変化するのか、あるいは変化しないのかも今はまったくわかりませんが、「宇宙空間から戻ってきたもの」ってすごく魅力的ですよね。曝露された素材から何かが生まれる可能性もあるかもしれないですし。だからこそ、たくさんの方々の「反応」に期待しています。今回のプロジェクトに共感してくださる方々と一緒に何かを作り上げることができればとても嬉しいですね。もっともそれが何になるのか、販売できるものなのか、お見せするものになるのかは、想像もつきませんが、こうして妄想しながらワクワクできることが楽しいなあ、と。

飯塚:宇宙から帰ってきたものがどう変化するのかは、本当にわかりません。宇宙空間って、未知の世界だからこそ、マシューさんがおっしゃるようにワクワクするんですよね。もしかすると、宇宙から帰ってきたものが地球上にはこれまでない新しいものに生まれ変わっているかもしれないですし。伝統工芸と宇宙のコラボが、日本の素晴らしい技術を伝えるきっかけになる可能性も十分にあると思います。宇宙を活用していただき、新しい価値をプラスして次世代に伝えていけるものができるかもしれないですね。

宇宙とのコラボレーションは未知なことばかり。宇宙空間で製品がどのように変化して、地球へ帰還するかがとても待ち遠しい。

― 今回の宇宙コラボをきっかけに、ますます新たなコラボが生まれるかもしれませんね。コラボへの期待感について、おふたりはどのように考えていらっしゃいますか。

マシュー:玉川堂が作る製品は職人が昔から受け継がれた技術を使って私たち現代人が求める日常用品を作っています。その製品の裏にある付加価値というのは工場見学に参加すればすぐに理解できると思います。現代では、大量生産で物がいくらでも簡単に手に入る時代。自分の周りにあるものが当たり前に思いがちですよね。玉川堂の製品に限らず、ものは長く使う、大切にする、といったメッセージを今回のコラボでより多くの人に届けたいと思っています。宇宙という舞台では、伝統的な工芸品がなくてはならない、あったら人間らしい発想や生活感を生み出すことができると信じています。

飯塚:弊社は宇宙商社として、宇宙を舞台にあらゆるビジネスをしています。私たちのミッションは、継続的かつ持続可能的に宇宙を使えるようにすること。そのためには宇宙に経済圏を持たせることが必要です。宇宙を一大産業化していくには、ロケット開発事業者や衛星開発事業者などの宇宙関連事業者に加えて、まったくジャンルの異なる分野や人々とコラボして、宇宙をもっと身近に感じてもらえるきっかけづくりをしていくことも必要だと思っています。その際たるものが今回のスペースデリバリープロジェクト-RETURN to EARTH-なんですね。宇宙から帰ってきたものがこうなっているという事例が増えていけば、おもしろいものが生まれる可能性がたくさんあります。こちらこそ玉川堂さんとの出会いに感謝していますし、ぜひ一緒に何かをつくりあげていけたらと思っています。

Space BDでは、「スペースデリバリープロジェクト-RETURN to EARTH-」の想いに共感していただける企業様と積極的なコラボレーションを考えています。宇宙を舞台に未だ見ぬ新しい価値をご一緒に生み出したいと考えている企業様からの応募をお待ちしています。ご興味がある方はこちらから詳細をご覧ください。

文:伊藤郁世

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