大手アパレルメーカーのショップディレクターが産後復帰のリアルを明かす「産後も勤務を希望する若い世代のロールモデルに!」
今回話を聞くのは、新卒から働く大手アパレルメーカーでショップディレクターを務めるOさん。産休、育児休暇を経て復帰し、現在は平日の週5日で時短勤務をしている。Oさんの働く職場では産前~育児休暇までしっかりと取得できるほか、復帰後も協力体制が整っていると話すが…復帰後の働き方や、時短勤務での給与体系まで産後復帰のリアルを直撃していく!
産後復帰後は実働6時間の時短勤務。子供の急な体調不良でも勤務時間を調整できる環境がある。
― これまでのキャリアについて教えていただけますでしょうか
服飾の短大を卒業してから大手アパレルメーカーに新卒で入社しました。最初に配属された店舗で約7年間勤務して店長も経験した後、全国のアウトレットを統括するトレーナー職に。その職を約2年間務めて、新しいブランドの立ち上げ運営に約2年間携わったあと2020年に現在のエリアで店舗サポートとして内勤職になりました。
― 現在の仕事内容について具体的に教えてください
現職は担当エリアの店舗運営をサポートしています。スタッフのモチベーションアップや会社全体で促進していく事柄を店に落とし込んでいく業務に携わっていて、私自身は基本的にオフィス出社でエリアマネージャーを補佐する立場です。平日5日出勤で完全土日休み。弊社では育児休暇から復帰するときに出勤体制を選択できるのですが、現在は9時30分~16時30分出勤の実働6時間で働いています。
― 育児休暇から復帰されてお子さんの突発的な体調不良の際、当日でも休みは取れますか?
1歳2カ月の子供を育てながら本社勤務で働いているのですが、直属の上司に融通を利かせてもらいながら休みを取れるように調整してもらっています。シフト勤務の店舗で働くスタッフの場合でも、代わりの人員がヘルプするシステムがあって休めないということはほぼありません。基本的に小さいお子さんがいるスタッフが一人でオープン作業をするシフトは極力作らないよう調整するなど、店舗で働くスタッフたちも協力しながら運営しています。
― 勤務中に突然保育園から呼び出された場合は迎えに行けるのでしょうか?
私自身のケースで言うと、スケジュールを調整して即早退できる環境が整っています。店舗の場合は、シフトのキリがいいところもしくは状況によって臨機応変に対応しています。会議などの予定があったとしてもお迎えを無視してでも出席しなさいとはなりません。ただ、すべての業務を一人でやっているわけではなく、他の方のサポートがあることによって成り立っています。弊社の風土として「産後復帰してくれることがありがたい」というとても温かい社風があるので、フォロー体制はかなり整っていると思います。店舗によって多少違いはあるかもしれませんが、みなさん気持ちよく働けるように助け合っています。
産前~産後、育児休暇はどのくらいの期間?気になる復帰後の給与体系も!
― 土日が忙しい店舗スタッフの場合だとシフト調整が難しくなりそうですね
日曜は保育園が休みということもあって、土曜日出勤で日祝は休みのスタッフが多いです。そうなると年始の初売りのような繁忙期は、フルタイム社員にしわ寄せがいくことは正直多いです。ただ、育児という理由があってのことなので、他スタッフに感謝をしっかり伝えて細かくケアしながら時短スタッフにもそれが当たり前ではないということはしっかりと伝えています。
― 時短で働くスタッフが同じ店舗にかたまってしまうことはあるのでしょうか?
極力同じ条件のスタッフは2人以上配属しないように調整しています。育休から復帰する際は同じ場所では復帰できないことが大前提なんです。1年でお店や会社の状況は大きく変わるので、復帰のタイミングで相談して決める。所属はしているものの休職扱いなので、復帰時の人員体制によって調整しています。
― 産休と育休はどのくらい取得できましたか?
出産予定日の6週間前から産前休暇で出産8週までを産後休暇、それ以降から丸1歳になる1日前までが育児休暇でした。産前休暇に入るまでにつわりがひどいなど体調が悪かった場合は有給休暇の消化や減給で調整もできます。店舗だと立ち仕事が体に負担がかかるということで、予定よりも早く休暇に入ることもあります。
― 産前から産後、育児休暇中の手当はどのくらいありましたか?
産前~産後は年収の約67パーセント。育児休暇の最初の6カ月は同じく67パーセント、それ以降は50パーセントに下がります。それが2カ月に一度、2カ月分支給されていました。出産育児一時金は退院時その場で精算されますが、出産手当金に関しては申請から受理、そして支給までに大分タイムラグがありました。
― 復帰されてからの時短勤務での給与体系はどうなっていますか?
私は6時間勤務を選択しているので基本給の約80パーセント。ボーナスや販売のインセンティブも全て時短分カットされています。ただ、以前まで弊社では子供が小学校1年生になるまでしか時短勤務が認められていなかったのですが、最近4年生になるまで時短勤務を選択することができるようになりました。それに、働く時間は半年に一度、上司との話合いで調整できるので、生活の状況によって決めることができます。
出産を経て復帰後も同僚との関係は良好。将来は若い世代のロールモデルに!
― 出産後会社の同僚や上司との関係性は変わりましたか?
自分が思っていた以上に変わりませんでした。関係性はそのまま温かく迎えていただいていて、逆に戻ってきたことを感謝されるくらい。本当にこの会社でよかったなと思います。それだけでなく、同じような環境の人たちと親近感が湧いてきて、コミュニティが広がったことを感じました。
― 今後もキャリアを続けていくために会社に希望することはありますか?
会社全体でECサイトの売上を強化している中で、特にオンライン接客に注力しています。オンラインの接客であれば家庭の事情で遠くへ引っ越さなければいけないスタッフや、子育て中のお母さん社員でも活躍できるポジションが増えるのではないでしょうか。自宅でも地方にいたとしても仕事ができるように、オンラインの職種や企画系など店頭販売以外でも幅広い職にチャレンジできるように整っていけばいいなと思っています。店舗での業務は体力や体型維持などビジュアル部分も保つ必要があるので、バックヤード業務やオンライン業務も幅広く整えてほしいです。
― 今後のキャリアパスやファッション業界での目標はありますか?
私の役職で子育てしながら働く時短スタッフは、担当エリアでは私だけ。だからこそ、新卒から入って出産育児を経験しながら働いているスタッフのロールモデルになっていきたいです。時短の中でも本社職ができるということを示して、若い世代の目標になりたいと願っています。
育児休暇中はオンとオフの境目がなく少し刺激が足りない部分があって、オンの時間が必要だと感じていました。実際に復帰してみて、家族のサポートもある中でオンの自分があると娘との関係性も上手く保つことができて、復帰する場所があってよかったと改めて思います。