セレブリティーをも魅了する!外資系ラグジュアリーブランドのイベントマネージャーの仕事とは
インフルエンサーのインスタグラムを眺めていて、ラグジュアリーブランドのイベント会場での華やかな写真に目を惹かれた、そんな経験はありませんか?今回は外資系ジュエリーブランドやラグジュアリーブランドにてイベントマネージャーとして活躍してきた経験を持つ猪俣尚子さんを監修に迎え、そんなイベントの企画から実行まで、具体的に話を伺いました。
記事監修/猪俣 尚子氏
アメリカの大学を卒業後、ジュエリーやファッションのラグジュアリーブランドにてイベントマネジメント業務において20年ほどのキャリアを持つイベントスペシャリスト。現在、神奈川県逗子市に在住し、休日には家族でアウトドアをアクティブに楽しんでいる。
そもそもラグジュアリーブランドが開催する「イベント」ってどんなこと?
イベントは通常を超えた非日常の空間。人と人とが集い、情報を受け取りたい、与えたい人たちが対面し、メッセージを持って帰るための大切な機会です。最終的に、参加者はもちろんのこと、プロジェクトリーダーをはじめ、社内外の関係者全てが達成感を感じ「創り上げて良かった」と思えるようなものにすることで次に繋げていきます。
イベントを作るにあたっては、まずそれがどんな目的なのかあらかじめ明確にする必要があります。大まかに4種類のイベントに分けて、それぞれの内容を見ていきましょう。
■コーポレートイベント:展覧会、プレスカンファレンス、新店オープン、社内会議、社員旅行など
売上を作ることが目的ではないイベント全般を指す。企業が打ち出したいメッセージを投げかける活動などもここに含まれる。
■セールスイベント:展示会、販売会、ポップアップストア
セールスイベントは会場の導線のコントロールから、数字的な検証も入念に重ねて購買につなげることができるよう計画を立てる。
■プロダクトにまつわるイベント:新作発表、プレゼン、デモンストレーション
実際に会場に来て商品を体感してもらうことに主軸を置いたイベント。購買欲を持ってもらうほか、ブランドの今後の方向性を指し示す意味もある。
■VIP顧客に向けた特別イベント:ガラディナー、VIPツアーなど
食とエンターテイメントなど、複合的に組み合わせた特別顧客のためのイベント。様々なラグジュアリー体験を持っている顧客にどうやって体験したことのない新しい体験を届けることができるのかを考え、企画する。
宝飾とファッションではトレンドが変わる速度、スピード感が異なるためイベントの質も大きく変わってきます。宝飾ブランドは伝統や、長く続く歴史にフォーカスし、そこを強調するようなイベント作りを志向する一方、ファッションブランドはコレクションに最も注力する傾向があり、その時々のトレンドに合わせてスピーディーに変化をつけることが求められます。
イベント企画はオブジェクトシートの作成から
いずれのイベントにおいても、まず最初に「オブジェクトシート」という、イベント企画のフローを作成し、チーム内で共有します。フローの中身についてご紹介しましょう。
Ⅰ. プロジェクトチームを結成し、プロジェクトリーダーを立てる。プロジェクトが終わった時、リーダーがその任務に対して達成感、充実感を得るようなイベントを目指す。
Ⅱ. 何のためのイベントか?ということを明確にする。イベントのメッセージや売り上げ目標をチームで共有する。
Ⅲ. 対象者、人数を決める。インフルエンサーをどれくらい呼ぶか、同伴者の取り扱いをどうするかなど、細かい部分まで設定する。
Ⅳ. 場所の選定。メッセージ、ストーリー、心地よさを体感してもらうにはどんな場所がベストなのか、多角的目線で検討する。
Ⅴ. スケジュール管理(進捗ミーティング、制作物、ゲストリスト) どの段階までであれば計画をゼロに戻せるかも把握しておく。
Ⅵ. 予算管理
Ⅶ. ガイドライン、承認プロセス確認(外資系ブランドの場合)
発足からイベント後までのスケジューリング
オブジェクトシートを作成する際、スケジュールの可視化は欠かせないプロセスです。大がかりなイベントの場合、2年以上かけて準備することもあります。その場合のスケジューリングの参考例を挙げます。
➢ 2年 ~ 半年
プロジェクトチームを発足。ブレストミーティングを行う。ブレストではバカげた意見でも批判せず、とにかく色々な角度から意見を出し、あらゆる可能性をポジティブに模索する。スケジュール確認も初期段階で明確にしておく。
➢ 半年前
企業活動のねらいや外部への具体的な依頼内容をまとめ、チームで共有する。 制作物のスケジューリングはこの時期に立てる。
➢ 5 ~ 4カ月前
イベント会社に発注
エンタメ、会場決定、予算組み立て
➢ 3 ~ 1カ月前
細かいディテールを詰める。現時点での難航点を洗い出す。アテンドするスタッフにどういった情報を共有するのか決めておく。
➢ 1カ月前 ~ 当日、終了後
具体的な効果測定を設定する。顧客リスト、受付リストを作成。イベント当日に最終ミーティング。イベント後に振り返りを行う。
イベントを成功へ導くためのキーポイントとは
当日の余裕を生むためにも、綿密なプランニングを組み余念のない準備をすることがイベントの成功のキーポイントとなります。他部門のスタッフ同士で常日頃から情報を共有し、チーム一体となって企画を進めます。
制作物の準備も、参加者にイベントのメッセージをクリアに伝える上で欠かせません。最後はイベントに関係した全てのかたにサンキューレターを送付し、次につながるようしっかりと関係構築を図ります。
また、準備がどれだけ綿密でもイベント当日には想定していなかったことが起こり得ます。その際に必要なのが「臨機応変な対応力」です。トラブルが発生しても決して顔に出さない、悟らせない。常にエレガントであることを心がけることがブランドイメージの体現につながります。
イベントが終わったら、そのプロジェクトがブランドに対しどのように貢献できたのかを予算に対する売上や動員人数、メディア露出などの効果測定を測ってチームで共有し、そして次回にどう発展させるのかというところまで考えます。
どんなに大きなイベントも「人」対「人」であるという意識を常に持つことが大切です。どうしたらそのコミュニケーションが面白くクリエイティブなものになるのかを考えて行動し、信頼関係を築くことで、実りのあるイベントにつなげることができるでしょう。
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文:ミカタ エリ