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山に登って終わりではない、循環し続ける関係づくり。アークテリクスが行う「No Wasted Days」とは

山に登って終わりではない、循環し続ける関係づくり。アークテリクスが行う「No Wasted Days」とは NEW

“山での体験が、仕事にも人生にもつながる”。そんな哲学を体現するのが、アークテリクスがグローバルで展開する「No Wasted Days」だ。社員が実際に山へ行き、自然と向き合うことでブランドの価値を体現する取り組みで、2025年7月に日本でも初めて開催された。舞台は新潟県湯沢町。地元の方々の協力のもと、山での体験を通して、ブランドのパーパス「Leave It Better」を体で感じる1日となった。この取り組みは一度きりでは終わらない。得られたものは何か、今後どのように発展していくのかを探った。


アークテリクスがグローバルで行う「No Wasted Days」

ひと晩で雪が20cm以上積もったら、仕事を止めて山へ行くーーこれはアークテリクス本社で実際に行われている、「No Wasted Days」(以下、NWD)の取り組みです。

アークテリクス本社が位置するのは、カナダのノースバンクーバー。都市と自然が交差する街です。湾岸に面した都市には高層ビルが林立し、そのすぐ近くにはグロース・マウンテンをはじめとする山々、渓谷、自然公園などがあります。同社のすぐ近くにも山があり、先の「20cmルール」をクリアすれば、従業員は山へ繰り出します。

「NWD」は、2024年にアークテリクス本社で始まったグローバルブランドキャンペーンです。この名称に込められた意味は「無駄な日はない」。山へ行って自分らしい人生を最大限楽しむという考えのもと、ブランドの根幹であるマウンテンアクティビティを通じて、社員が山の良さを知る。その経験を仕事だけでなく、人生の豊かさにつなげることを目指しています。

「山で使用する最高峰のプロダクトを扱っているブランドだからこそ、パソコンの前で仕事をするだけではなく、自然に触れることがインスピレーションの源になります」

そう話すのは、アークテリクス ブランドヘッドの高木さん。山に行くという行為そのものがリフレッシュや自分を見つめ直す時間になり、さらには山の登り方が人によって異なることを体感することで、他者理解やチームビルディングにもつながると言います。

アークテリクスが掲げるパーパスは、“Leave it Better – より良い世界をつくる”。今ある良いものを後世に残し、より良い世界をつくっていくためにも、山での経験は不可欠といえそうです。

現在、同社の価値観“Live It”(自分たちで「体験」すること)を体現する取り組みとして、世界の各拠点で実施。日本では、2025年7月4日に初めて実施されました。日本のシンボルである富士山の山開きが、7月1日だったことにちなみ、同じ週の金曜日を2025年のNWDに定めたそうです。

今回日本で初めて実施した「No Wasted Days」。この取り組みはJapanチームにとって、非常に有意義な体験だと語るアークテリクス ブランドヘッドの高木さん

地域のコミュニティを尊重し、リアルな営みに触れる

日本での「NWD」は、新潟県湯沢町で行われました。湯沢町には「苗場スキー場」「岩原スキー場」など多数のスキー場が密集しており、「サロモンステーション※」も展開しています。

玄関口の越後湯沢駅までは、東京駅から新幹線で約90分程度とアクセスも良好。2024-2025シーズンには180万人以上が湯沢町のスキー場を訪れました。夏は登山や高原の自然、渓流釣りなどを楽しむ観光客が多く、年間を通じて自然を楽しめます。

今回の「NWD」実現に大きく貢献したのが、湯沢町在住の社員です。リモートワークをしながら湯沢町で暮らし、地元のコミュニティとネットワークを築いてきました。その社員を介して現地の協力を得ることができ、実現に至りました。

ただ現地に行くのではなく、“その土地のコミュニティを尊重する”。これはアークテリクスが大切にしている価値観です。

「カナダ本社でも、毎年、街全体を巻き込んだクライミングイベント『アークテリクスアカデミー』を実施しています。そのイベントも、地域の理解と協力があってこそ成り立っているものです」と、アークテリクス HRマネージャーの大久保さんは話します。

湯沢町での「NWD」も同じ考えのもとに進められ、まずは地域について知ることを重視しました。この土地で暮らす人たちは、どのように山と向き合い、日常生活を送っているのか、湯沢にはどのような自然があるのか。それを“体験”するため、山菜採りとハイキングを選択肢として用意しました。

「NWDを実施する前段階で、地元のボランティアの方々と一緒に登山道の整備を行いました。普段は地元の方々が整備している道です。その整備を行う労力は、ただ登山客として行くだけではわからないことが多く、たくさんのことを学ぶ機会となりました。NWDの山菜採りでは、地元のガイドの方と共に山に入り、どんな山菜が採れるのか、どれが食べられるのかを実際に歩きながら教わりました。いずれも私たちアークテリクスのメンバーにとって有意義な体験となりました」と大久保さんは振り返ります。こうした地域のリアルな営みに触れられるのも「NWD」の醍醐味です。

その後は、築約300年の古民家宿「THE ITAYA」へ。地の物を使った食を楽しみながら、地域の方々と交流を深めました。湯沢の山の良さや食、土地のコミュニティ、これらを五感で学ぶ濃密な1日となりました。

※アメアスポーツジャパン株式会社が展開するアウトドアブランド「サロモン」のスキー・スノーボード用品をレンタルできる施設。

“Leave It Better”していくため、考え続けるきっかけに

「NWD」に参加した社員からは、様々な反響がありました。なかでも多かったのは、「山に行くきっかけになった」という声です。「NWD」の前日や翌日に平標山などの山へ登りに行った社員もいたようです。ほかにも「湯沢町のことを知ることができた」「普段コミュニケーションを取る機会が少ない地元の方々と話せた」「ご飯がすごくおいしかった」と喜ぶ声もあったそうです。

「アークテリクスは今、ビジネスとして成長し、オフィスのスタッフもかなり増えました。一堂に会して話す機会はなかなか無いので、実現できて良かったです」と、大久保さん。

今後は、年内のウィンターシーズンにもう一度企画する予定だそう。アークテリクスの商品を実際に検証する企画や、今回築いた湯沢とのつながりを活かした企画を考えています。

また登山道の整備を体験したことから、お金を寄付するだけではなく、一緒に作業をすることの重要性を学んだと言います。豪雪地帯である新潟は、雪の影響で倒木が多く、登山の目印が消えてしまうこともあります。こうした登山道の整備は、体力を使うハードな作業です。

「当社にはお店やオフィス含めて山の大切さを知る社員がたくさんいますから、今後もぜひサポートさせていただきたいです。山を“Leave It Better”していくために何ができるのか、私たちは常に考えるべきだと思っています」

地元のボランティアの方々と一緒に登山道の整備をする様子

研修で終わらない循環がブランドをつくり、より良い世界を作る

アークテリクスでは「NWD」に限らず、登山、クライミング、トレイルランニングなど様々な研修が行われています。2025年度上半期には、全店舗で“Live It”を体現できるよう、会社が費用を全額負担し、店舗スタッフが山へ出かける機会を設けました。どの山へ行くかは各店舗が企画します。個人ではなかなか足を運べない山、初心者でも挑戦しやすい山など、それぞれの店舗で自分たちらしい“体験”をつくっています。

さらに、今年からは湯沢町で、米づくりの手伝いを始めました。コシヒカリの名産地として知られるこの地域のコミュニティと関わりながら、湯沢町についてもっと知るための取り組みです。

こうした体験を通じて、スタッフは現場で実際に商品を試し、その機能性や最適な利用シーンを確かめることができます。

「それは単なる研修にとどまらず、ブランドカルチャーを自分の言葉と感覚で語れる力につながっていきます。そしてその力が、再び仕事で活かされます」と、大久保さんは話します。この循環こそが、アークテリクスの強みのひとつと言えます。

「“体験”を通じて、アークテリクスのカルチャーに共感してもらえることは、一緒に働く仲間として重要なこと。そしてスタッフやブランドを通じてコミュニティが広がっていくことで、ビジネスとしての成長はもちろん、“Leave It Better”の世界観が日本へ広がっていく。それによって、私たちの世界はより良いものになる。私たちはそう思っています」

アークテリクスが描く未来は、少しずつ着実に根を下ろし始めています。

「あなたの“体験”が、アークテリクスの未来をつくる。」アークテリクスでは、プロダクトやサービスだけでなく、“体験”や“コミュニティ”が日々の仕事と深く結びついています。ただの「働く場所」では終わらない、人生そのものが豊かになる環境で、アークテリクスと一緒に“Leave It Better”な未来をつくりませんか?アークテリクスのカルチャーに共感し、新しいチャレンジをしたい方はこちらの採用情報をご覧ください。

文:渋谷唯子
撮影:船場拓真

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革新的な高機能アウトドア製品を取り扱うカナダ、バンクーバー発祥のアウトドアブランド。