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「気軽に楽しく参加できる仕組みを作って推進していきたい」エストネーションが取り組むサスティナブル活動

「気軽に楽しく参加できる仕組みを作って推進していきたい」エストネーションが取り組むサスティナブル活動

“The Essence of Luxury”をコンセプトとした、大人のためのスペシャリティストアを運営するエストネーション(ESTNATION)。同社ではファッション産業が抱える環境への課題に向き合い、2022年7月に発足したサスティナビリティ開発推進室が中心となって、さまざまなサスティナブル活動に取り組んでいる。この部署でサスティナブルプロジェクトを指揮しているのは、ショップマネージャーとして長年、店舗運営に携わってきた室長の竹山賢氏。「どうしたら社員や関係各社に楽しく活動に協力してもらえるか」を考え、工夫を凝らしている竹山氏に、同社のこれまでの取り組みと、サスティナブル要素を盛り込んだ西のフラッグシップストア「エストネーション大阪店」の見どころを語っていただいた。

竹山 賢さん/株式会社サザビーリーグエストネーションカンパニー サスティナビリティ開発推進室 室長 兼 ディレクター
大学卒業後IT業界に従事するが、ファッションの仕事があきらめられず、2007年、35歳の時に株式会社サザビーリーグエストネーションカンパニーに転職。販売スタッフ、マネージャーを経験した後、エストネーションのサスティナブル プロジェクト”One Small for Smile”のキャプテンを担い、現職に。

ESTNATION:https://www.estnation.co.jp
One small for smile:https://www.estnation.co.jp/onesmall/about/

サスティナブル活動には周囲からの共感と協力が必要

―竹山さんはサスティナビリティ開発推進室の室長を務められていらっしゃいますが、どのような活動を行っているのでしょうか?

もともと私はエストネーションのセントラル店(旧エストネーション銀座店)にサステナビリティプロジェクト・キャプテンとして配属された時、自社としての課題をまずお店単位で推進し実現していく、という活動をしていました。そこでハンガー、衣類、ビニール等の回収ソリューションズというスキームを会社に提案し、セントラル店で実装しました。

サザビーリーグ全体としてもサスティナビリティに取り組んでおり、エストネーションでも昨年7月にサスティナビリティ開発推進室を設置。そしてエストネーションの2030年までのサスティナブル活動ロードマップの策定に入ったのです。

―エストネーションとして掲げるサスティナブル活動のロードマップについて、詳しく教えていただけますか?

環境面として、「廃棄物の資源化」「CO2削減」「サーキュラーエコノミー」を3本の柱として、具体的な数値達成目標を掲げています。

「廃棄物の資源化」について、まず私たちが行うべきことは、店舗であればデベロッパー様の、本社であればその地区の管理会社様が規定する分別ルールを正しく理解して、廃棄物を処分することだと思います。会社としては「一般廃棄物を2030年までに20%に抑える」ことを目標としています。

「CO2削減」は、まず省エネから始まり、自社でどのくらい排出しているかを可視化させて、削減していきます。

消費エネルギーとして大きい光熱。これを少しでも削減するために、「サマータイムディライト」と名付けられた企画を行っています。これは「夏の間は日差しを楽しみましょう」というコンセプトを掲げ、本社は昼休憩の1時間電気を消灯しています。もちろん仕事をしたい方がいるエリアについては、電気をつけるようにしています。 時代に沿ったものをネガティブな領域から話すのではなくて、社員に共感してもらって気持ちよく協力していただくには、どのようにしたら良いのだろうか、ということを考えて実行しています。

「好きなものを対象に仕事をしてみたい」という思いがつのり、竹山さんはIT業界からファッション業界に転職した。

ビニールなどの副資材から作られたペレットがポリ袋や緩衝材になって資源化

―3つ目の項目、サーキュラーエコノミーについてはどのような取り組みを行っていますか?

環境配慮型商品の推進と、回収ソリューションズの実装です。「2027年までにエストネーションのオリジナル商品の30%を環境に配慮した素材に切り替えていきましょう」という目標を掲げています。この環境配慮については、各部門と業務に関わるメンバーと話し合い、昨年定義を決めていきました。

「サーキュラーエコノミー」の活動の1つとして、「1.ハンガー回収ソリューションズ」「2.衣類回収ソリューションズ」「3.ビニール回収ソリューションズ」という、3つの回収ソリューションズを行っています。

中でも1、3のソリューションズは、洋服を守るための副資材についての対策です。私も転職して初めてファッション業界ではこれだけたくさんの副資材を排出していることを知りました。もちろん、弊社ではこれまできちんとリユースする文化はあったのです。それでも量があまりにも多くて、どうしても対処しきれないものが出てくる。そのため、なんとかあふれさせずに資源化することができないか、ということを考えました。

職場でゴミ出ししている時にも、「これだけゴミがあふれてしまうのは、なんとかならないんですかね」という声が若いメンバーから出ました。私がアパレル業界に転職した十何年前に感じたことを、年月が経っても、若い世代は同じように感じている。だったらこの問題に取り組むべきだ、と考えました。

―具体的にどのようなことを行われたのでしょうか?

エストネーション セントラル店にいた時に、自分が構想として描いていたサスティナブル活動を、仲間と一緒にこの店舗で実装できないかと考えました。そこでニュースを見ていて気になった企業様に、「こういう課題があるのですが」とお声掛けしたのです。

セントラル店へ異動する前の店舗時代から取り組んではいたのですが、初めての経験だったのでなかなかスキームが確立されず、こちら側の未熟さもあって問題の解決にまでいたらなかったのですが、コロナを経て、社会が大きく変わりました。企業の取り組みも変化していき、回収したハンガーとビニールはマテリアルリサイクルされ、様々な種類のペレットというプラスティックに変えることができ、資源化の実現にいたったのです。

回収したビニールから作られたペレット。

―このペレットは何の材料になるのでしょうか?

回収したビニールからは、ポリ袋が作られています。 ただ、これまでも店舗では洋服にかけていたビニールをごみ袋にしたりしてリユースしていたので、もっとアップサイクルされたものはできないか、と考え、雨用カバー等を試作していただいたりしました。そしてリサイクルメーカーが満を持して作られたのが緩衝材です。それを弊社が採用し、使用後にまた回収することにより、ほんの0.何パーセントかもしれませんが、循環の輪を閉じようと工夫しています。

―会社がサスティナビリティ開発推進室を設置する前から竹山さんはサスティナブル活動に積極的に取り組まれていらっしゃいましたが、この活動が非常に大事なのだと気づかれたきっかけは何だったのでしょうか?

以前、IT業界にいた際、個人情報の漏洩がクローズアップされていました。それに関連して私がお世話になっていた会社では、企業にシステムを導入、運用、保守を行っていたのですが、導入したパソコンは回収し、情報漏洩しないようにハードディスクの廃棄まで責任を持って行う、といった一気通貫のサービスを提供していたのです。その様子を見ていて、いずれアパレル業界にも同じようなことが起こるだろう、という意識があり、その経験がきっかけになっていると感じています。

―なるほど。もう一つ、御社では”One Small for Smile”という活動を行っているそうですが、こちらについてもお伺いできますか?

“One Small for Smile”は環境や社会にとってよりよい価値をご提供できるように、一人ひとりの小さなアクションが明日への笑顔をもたらすサスティナブル プロジェクトです。

この活動の一つとして、店頭ではお買い物の際にショッピングバッグ包装をご辞退していただいたお客様に、ポイントを付与させていただく “One Small” ポイントサービスを実施しています。ポイントを貯めていただきますと、そのポイント数によってミニボトルやエコバッグ、ナチュラル洗濯洗剤、ウオータークリーニングとメンテナンス専門店として有名なナチュラルクリーン社様のチケットなど、特別なギフトをプレゼントしています。

企業の価値観としては、ショッパーをご辞退いただけるお客様に対して、何らかの還元をしたいと思っていました。エストネーションのお客様はリピートされる方も多いので、ギフトを楽しみにして「あと何ポイントで、これがもらえるね」といった会話が生まれるなど、コミュニケーションツールにもなっています。楽しみながら洋服を長く着ていけるように、洗剤だったり、水洗いできるクリーニングのチケットを体験していただく。私たちとしてもこういう機会を提供できるのがうれしいですし、お客様もそれを喜んでくださっているという、良い循環が生まれていると思います。

One Small Point Serviceのノベルティギフトはお客様からも高評を得ている。

西のフラッグシップストア「エストネーション大阪店」が発信するサスティナビリティ活動

―エストネーションは6月14日にサスティナブル要素を内装にも盛り込んだ西のフラッグシップストア「エストネーション大阪店」をグランフロントに出店されました。どんな特徴のあるショップなのですか?

2023年は、西の旗艦店の大阪店のオープンと、東の旗艦店の六本木ヒルズ店が20周年を迎えるという、弊社としては大きなプロジェクトイヤーです。

思い返すと、弊社にとってコロナは非常に大きな転換期でした。小売店は商品を販売するお店なので、物質的な価値を提供して対価をいただいています。しかしこれだけものがあふれて、オンラインで気軽に手に入れることができる世の中だと、物質的にクオリティの高いものを提供しているだけでは生き残れません。今、エストネーションは「感動体験を提供する」ことを非常に重要視し、情緒的価値を提供できる実店舗を作り上げていくことを大きな目標にかかげています。

そのため西の旗艦店を新たに作るにあたっては、「ファッションミュージアム」をストアコンセプトに内装デザインにはいりました。

―大阪店では、どんなところに注目すればいいでしょうか?

まずは空間のスケール感を見ていただきたいですね。内装関連では、やはりミュージアムがポイントです。入ってすぐのウィンドウも博物館に見立てたものがあります。カウンターも美術館のインフォメーションカウンターのように、通常よりも高く作られています。

何よりも大阪店にある什器の9割は他店で使用していたもので、今一度きれいにして、あたらしいお店にフィットするように化粧直しを施したものを導入していきました。

“ミュージアム”をコンセプトにしたエストネーション大阪店の店内。

―そして「感動体験を提供する」ことの一部として、常設のリサイクルコーナーを設けられたそうですね。

弊社はこれまで有楽町店、福岡店に繊維製品の回収サービス「ウェア・トゥ・ファッション」を実装してきました。しかし西日本の旗艦店は後付けではなく、最初のデザインから回収ボックスをデザインの一部として組み込む、という初めての試みを行いました。「衣類回収ソリューションズ」を実現にするにあたり、気軽に衣類を持ってきていただきたい、という思いから、回収ボックスのデザインは、ランドリーをイメージしています。

通常、この回収ボックスにはリサイクルの画像が投影されていますが、例えばクリスマスシーズンになったら、クリスマスデザインの映像を投影していくといった試みも考えています。回収の活動も、お店の中のインスタレーションとして確立させています。

お客様に共感いただくには何が必要かというと、デザインの持つ力が大きいなと感じていまして。設計の際はデザインにかなりこだわって頂けました。VMDチーム、協力会社のデザイナーの方など、社内外問わず関係者の皆さんのおかげで、非常に素敵なものができあがったと思います。

ランドリーをイメージした回収ボックス。扉を開けて衣類ボックスに入れると、回収した衣類がたまっていく様子が外から見ることができる。

―今後、新たに取り組んでいかれたいことはありますか?

エストネーションの価値観のなかに「With you」 という考え方があり、お取引様とともに課題を乗り越えていった時、やはりそれをいろんなかたと共有したくなるんです。だからこそサスティナビリティ関連でお世話になっている企業様との取り組みの体験を活かし、大阪店のみならず、サスティナビリティ関連を体験できるような企画など、旗艦店を中心に行っていきたいと思います。

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