「都営バス」×「牛乳石鹸」×「ビームス ジャパン」のコラボ企画!バスと銭湯の魅力を伝える「銭湯のススメ2024〜都営バスでめぐる編〜」とは
株式会社ビームスの事業「ビームス ジャパン」と牛乳石鹸共進社株式会社がコラボレーションし、町の銭湯の楽しみ方を発信するプロジェクト「銭湯のススメ」。今までスタンプラリーやトークショーなどのイベントを行い、銭湯の魅力を伝えてきた。今年は2024年1月に100周年を迎えた都営バスを運営する東京都交通局が加わり、さまざまなイベントを通してバスの魅力も届けていく。異業種がコラボに至った経緯やプロジェクト構築中のエピソード、企画に込めた想いなどを2者の担当者に伺った。
佐野 明政さん/株式会社 ビームス クリエイティブ プロデューサー
愛知県名古屋市出身。日本をキーワードにさまざまな魅力を国内外に発信する「ビームス ジャパン」のプロジェクトリーダー。立ち上げから現在まで、日本の魅力的なモノ・コト・ヒトを国内外に発信する数々の企画を主導する。
志澤 学英さん/東京都交通局総務部企画調整課 課長代理(事業推進担当)
神奈川県横浜市出身。都営交通の利用促進策を企画する局内プロジェクトチームの実務リーダー。増収増客のほか、沿線地域の活性化や局のイメージ向上に資する施策を主導する。
「都営バス」と「銭湯のススメ」がコラボした経緯とは
ー 「銭湯のススメ2024〜都営バスでめぐる編〜」の内容を教えていただけますか。
佐野さん(以下、「ビームス ジャパン」佐野):2019年から「ビームス ジャパン」は「牛乳石鹸」と一緒に、町の銭湯の魅力を伝えていく「銭湯のススメ」というプロジェクトを始めました。今回はその第4弾となる企画で、100周年を迎える「都営バス」と共に「銭湯のススメ2024〜都営バスでめぐる編〜」を立ち上げました。
大人気の「銭湯のススメ」グッズなどの販売、都営バスで銭湯をめぐるコンテンツ(コラボフリーペーパー・特別ムービーの公開)や、都内の対象銭湯を12箇所めぐってスタンプを収集すると、オリジナルソックスがもらえる「銭湯スタンプラリー」を開催しています。さらに、「都営バス」を利用し、一日乗車券(都営まるごときっぷ)を対象銭湯にて提示すると先着でステッカーをお渡しします。
他にも、東京・東上野の銭湯「寿湯」の銭湯ペンキ絵をイラストレーター・田渕周平さんが手がけたイラストデザインに変更しています。「都営バス」のマスコットキャラクター・みんくると牛乳石鹸の牛をモチーフにしたキャラクターがちりばめられた可愛らしいデザインです。
ー 盛りだくさんの企画ですね。何がきっかけでコラボレーションに至ったのでしょうか。
志澤さん(以下、「都営バス」志澤):東京都交通局では数年前から沿線地域の企業や団体とコラボをして、地域を盛り上げながら、都営交通の利用促進を図っていく方針を強化していました。その中で2024年1月に「都営バス」が100周年を迎えるにあたり、新たなコラボ先を模索していたところ、たまたま縁があって「ビームス」とお話する機会を頂きました。
個人的にも「ビームス」が好きで、以前店舗に行った際に異業種の企業とコラボしているのを見て、「どれもセンスがいいな~」と関心していた矢先に、この話を頂いたので、内心とても興奮しました。
「ビームス ジャパン」佐野:コラボのお話をいただき、第一印象で「楽しいことができそうだな」と思いました。私は休日に「都営バス」を利用しています。バスの一番後ろ、一段高くなっている座席に座って原宿や渋谷の様子を眺めて、小旅行気分を味わうのが好きです。
ー どのような想いでコラボレーション企画を立ち上げたのでしょうか。
「都営バス」志澤:今回の企画の軸は2つあります。1つ目は、銭湯と都バスの相性の良さです。「都営バス」は東京都の東部、いわゆる下町エリアには多くの路線が走行しています。下町エリアには昔ながらの銭湯が多く集まる場所でもあり、銭湯を巡れるような路線もあります。
さらに、歴史的に見ると銭湯と「都営バス」は関東大震災をきっかけに今の形があるという共通点もあります。都営バスは1923年の関東大震災の際に路面電車が壊滅的なダメージを受けてしまい、代替の交通手段として乗合自動車が導入されたのが始まりです。一方東京の銭湯も関東大震災でその多くが倒壊しましたが、復興の際、豪華堅牢な宮造り様式の銭湯を建築したところ、これが人気を博し東京の銭湯の定番となりました。
企画のもう1つの軸は、発信力です。都営バス100周年記念事業の機運醸成を図るためには、強い発信力が必要です。過去の「銭湯のススメ」のプロジェクトを拝見すると、メディア露出を多く獲得されていたので、このプロジェクトに我々が入れば、非常に大きな話題喚起が期待できるのではないかと思っています。
ー 東京の銭湯と「都営バス」は親和性が高そうですね。
「都営バス」志澤:そうですね。個人的にも今回のプロジェクトには強い思い入れがあります。私は元々東京都主税局にいましたが、民間企業ともサービスを競い合う環境にチャレンジしたいと異動希望を出したところ、幸運なことに希望が叶い2012年から交通局で働いています。PR活動や営業推進を担当するも長い間コロナ禍で、色々な企画をしたくてもできない状況が続き悶々としていましたが、ようやくコロナも落ち着き都営バス100周年を迎えるなか、プライベートでも好きな「ビームス」とご一緒できることもあり、やりがいを強く感じながら仕事をすることができています。
「ビームス ジャパン」佐野さんの提案はまるで千本ノック
ー 行政機関と民間企業がタッグを組みましたが、コラボ企画構築中のお互いの印象はいかがでしたか。
「ビームス ジャパン」佐野:私は、今まで企業とタッグを組むことが多く、ここまで行政と深く関わったのは初めてです。コミュニケーションのなかで東京都交通局にやりずらさを一切感じること無く、楽しく取り組ませていただきました。私たちが無理難題を言っても、ゼロ回答をされることは無く、代替案を出してくれました。
「都営バス」志澤:「ビームス」のリクエストに、ゼロ回答をしないよう意識していましたね。「都営バス」を盛り上げようと色々と提案してくださったので、できるだけ実現しようと。
佐野さんの提案は、まるで野球の千本ノックのようでした。しかも取れるか取れないかギリギリの所に打ってくるのです(笑)。我々にはない発想が、とても勉強になりました。
ー 印象に残っていることはありますか。
「ビームス ジャパン」佐野:多くの方に喜んでいただくために、たくさんの提案をしました。例えばバスの中で記者会見を行う案や、特別ラッピングバスに乗車してもらう案など。志澤さんを中心にリクエストに応えていただいて、最終的に銭湯での「発表会」が実現しました。
「都営バス」志澤:メインビジュアルの選定が印象に残っています。メインビジュアルは企画の成否に関わる重要なものなので、「ビームス」とも交通局のメンバーともたくさんディスカッションしました。立場や部署により視点が変わってくるので意見をまとめるのは大変でしたが、独創性なども考慮しながら最終的には企画の趣旨に即しイメージアップに資するという視点を軸にメインビジュアルの方向性を定めていきました。
ー 双方から「面白いコラボ企画にしたい」という想いの強さが伝わってきます。
「ビームス ジャパン」佐野:行政に志澤さんのような熱い想いをお持ちの方がいらっしゃるのは素敵だと思いました。今回の取り組みを他の行政の方々も見ていると思うので、これをきっかけに面白い取り組みが全国に波及していってほしいです。
「都営バス」志澤:ありがとうございます。他の行政への影響に加え、今回のコラボを通して交通局の職員が都営交通で働いていることに誇りを持ってくれたら嬉しいです。うちは公益性に加えて、こんなに面白いこともやっているのだと。さらに、都営交通で働きたいと思ってくれる方が増えることも期待しています。
バスも銭湯もコミュニケーションが生まれやすい場所
ー 銭湯とバスの魅力を教えていただけますか。
「ビームス ジャパン」佐野:まず銭湯の魅力は、コミュニケーションが生まれやすいところだと思います。海外にも公衆浴場がありますが、水着着用のところが多く、見ず知らずの人と裸で入浴するのは日本だけだと聞いています。何も身につけずにリラックスできる場では、自然と会話が生まれます。「ここの銭湯のお兄さん優しいから、通ってるんだ」といったような他愛のない楽しい会話が繰り広げられているのを聞いたりしています。
「都営バス」志澤:「都営バス」志澤:バスも、コミュニケーションが生まれやすい場です。席の譲り合いをはじめ、乗客同士や運転手と乗客間で会話が生まれるきっかけがたくさんあります。
さらに、バスは電車に負けないぐらい利便性が高い乗り物です。電車や徒歩より、バスで行った方が早い場合もたくさんあります。東京の場合、電車での移動が主流になっていますが、100周年を契機に都バスの利便性をもっと伝えていきたいです。
ー 最後に、ぜひお二方の今後の展望を教えてください。
「ビームス ジャパン」佐野:これからも日本の魅力を伝える取り組みを行っていきます。異業種の企業や団体と組むことで様々な気付きがあります。お互いの強みを掛け合わせられるようなコラボを仕掛けていきたいです。
「都営バス」志澤:バス業界を取り巻く課題は多く、中長期的には人員不足が深刻化し、燃料費の高騰も継続するリスクがあるなど様々な課題に直面していくと見通していますが、そんな状況下で生き抜くために、私たちは柔軟に変化していかなければならないと思います。それはダイヤや路線に限った話だけでなく、利用促進やPRも同じ。まさに今回の企画のように頭を柔らかくして、新しいことにもチャレンジをすることが大切。今回の企画が、厳しい環境も待ちうける次の100年に立ち向かう重要なキックオフのひとつとなればいいなと思っています。
文:吉田櫻子
撮影:船場拓真