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【特別レポート】欧州最大級のインテリアデザイン見本市「Maison&Objet」。会場で光っていた展示ブースは……!?

【特別レポート】欧州最大級のインテリアデザイン見本市「Maison&Objet」。会場で光っていた展示ブースは……!?

世界中のデザイン・ライフスタイル・インテリアコミュニティ間でビジネスチャンスとクリエイティブな交流が生み出されている欧州最大級のトレードショー「Maison&Objet(メゾン・エ・オブジェ)」。年に2回、フランス・パリで開催されるこの展示会は、欧州を中心とした関連バイヤーにとってインスピレーションの源であり、新しい発見があるものとなっています。創立30周年を迎えた今年は「テック・エデン」をテーマに掲げ、小売り・住宅・インテリア・ホスピタリティ業界向けに、自然とデジタルの融合を提案。今や世界中に浸透した持続可能性という概念の再活性化を目指すものでした。本展示会にNESTBOWL チーフブランドオフィサー・堀 弘人が赴き、来場者を惹きつけていた展示ブース を厳選してご紹介します。

1.圧倒的な輝きと存在感で多くの来場者を魅了するバカラ

言わずと知れた、フランスが世界に誇るラグジュアリークリスタルブランド。会場内ホール7の一等地に美しく建てられたブースは、その知名度のみならず展示の美しさに多くの来場者が列をなしていたのが印象的でした。今年、創立260周年を迎えることもあり、「Maison&Objet」とは互いにバースイヤーを祝福するパートナーシップを組んでいました。     

また、“没入型のブランド体験”をテーマとした展示ブースでは、200年以上紡がれてきたマニュファクチュール(自社一貫生産)と、各時代の物語を反映させたバカラの職人たちに対しての敬意が表現され、同ブランドを象徴するクリスタルガラスが気品高く座していました。ブースデザインは、炉の中で燃える炎のような赤を背景に、展示会場であることを忘れさせる感覚的な体験が味わえるように設計されており、生活の中に優美を求めるフランスらしさを改めて感じました。

また、バカラの展示ブース付近には「リヤドロ」や「MARNI」といったNESTBOWLでもおなじみの欧州ブランドが並び、各社がホームデコ領域や企業間取引(B2B)にも積極的であることを示唆していました。

2.稲のもみ殻から生み出される、環境配慮型の次世代クリスタル

同じクリスタルでも、まったく異なるアプローチで製造するプロジェクトとしてひときわ存在感を放っていたのが、東京発の「BEQUADRO」。日本人が大量に消費する稲のもみ殻を原材料としてクリスタルを製造するという、目新しいアップサイクルプロジェクトが発表されていました。

農業の副産物として廃棄されることの多いもみ殻ですが、CO²を吸収することや生産プロセス自体が省エネであることから、注目されています。もみ殻の灰には昨今話題となっているシリカも含まれるとか。日本人の主食である米(稲)の副産物から美しい資材が生まれることに感動を覚えました。現地で展示されていたワイングラス以外の転用の可能性にも期待したいです。

3.高知県が新しく提唱するフィッシュレザー

次世代の素材という意味では、魚の皮を利活用したフィッシュレザーも目を引きました。高知県の企業が共同出展する産業振興ブースで拝見したのですが、もともと水産加工業に従事されていた方が始めたビジネスで、先ほどの稲のもみ殻同様に、魚の加工過程で廃棄される皮や鱗の再活用という観点で素材を提案されています。

動物性の革にも一般的に行われるなめし(防腐処理)作業を経て、海産物特有の生臭さを取り除く技術も確立されているとのこと。また、繊維が複雑に絡み合う構造によって心配されがちな強度の問題もクリアしているとのことです。

これからの時代は動物性や植物性レザーだけではなく、魚類性レザーという新しいジャンルが確立されていくのかもしれません。産業廃棄物となっていた素材の利活用という意味において、もみ殻の事例と、魚の事例は日本の“もったいない精神”を体現した試みであると感じるとともに、私自身も日本人として、海外でイノベーションだけでなく、日本の精神性までもが流通していることに深い感銘を受けました。

今回の「Maison & Objet」では、対面での世界的な人流や交流がいよいよ本格的に復活したことを肌で感じました。約6万人以上の方が欧州からの参加者を中心に集まり、盛んに商談を繰り広げられている姿にポストパンデミックの現在地を改めて確認するとともに、今回はバカラの出展を含め、自国フランス勢が圧倒的な優美を演出するというのは、昨年には感じられなかった新しい発見でした。

パリ現地の方と話をしている中で、「フランス人にとってビジネスの世界においてもアート表現は非財務価値の一部として捉え、同じ芸術や文化を愛する日本人でもそれらをビジネスの世界においてコストセンター(費用)として捉える感覚とは異なる」という意見をいただき、大変参考になりました。よりアート的な表現を兼ね備えた企業が経済的にも成功し、そういった企業が社会に増えることでこの混沌とした世の中に、明るい花を咲かせてほしいと切に願いながら帰国の途につきました。

取材・文:堀 弘人/H-7HOUSE 代表
ブランドコンサルタント。ファッションやスポーツ業界など数々の外資系リーディングカンパニーにてマーケティングディレクターを含む要職を歴任したのち、国内IT企業にて国際戦略事業の立ち上げと収益化を経験。20年以上に及ぶ自身のブランドビジネス経験を国内外の企業の活性に役立てたいとブランドコンサルティング会社H-7HOUSE(エイチセブンハウス)を起業し、大手企業からベンチャー企業まで幅広い業種のブランド戦略構築を支援しており、NESTBOWLの社外取締役も務めている。

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