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「ルイ・ヴィトン」が引き続き絶好調!独走状態のLVMHは2024年度も好調を維持できるか

「ルイ・ヴィトン」が引き続き絶好調!独走状態のLVMHは2024年度も好調を維持できるか

世界中で猛威を振るったコロナもようやく落ち着きを見せ、ヒトやモノの国境を越えた往来も再開。人々の購買意欲が復活基調にあり、ファッション業界も活況を呈している。そんな中、大手ファッションコングロマリットであるLVMH、Richemont、KERING3社の2003年12月末時点の業績が発表された。昨年11月に続き、大手3社の売上数値を比較する。先日、KERINGが2024年第1四半期において中国市場を中心に苦戦しているニュースがファッション界に衝撃を与えたが、昨年末時点で3社はどのような業績となっていたのか。各社の発表データを基に状況を見ていく。

情報提供:田村宏明さん/公認会計士・MBA 田村宏明公認会計士事務所代表
大学卒業年次に公認会計士試験合格し、4大監査法人に入所。監査やJ-SOX(内部統制報告制度)導入支援などを担当。その後、監査チームのインチャージ(現場責任者)を任され、現場のとりまとめ、監査報酬の見積もり作成、スタッフの一次評価、経営者ディスカッションへの参加などの経験を積む。この時にブランド業界に関与。その後はほぼ一貫して、外資系高級消費財企業にて経験を積み、ヘッドオブアカウンティングとして活躍。コングロマリットのブランド企業から単体のブランド企業まで幅広く携わり、単体ブランド企業に勤務の際は、経理・財務・ロジスティックス・法務を業務領域とする。2023年4月、田村宏明公認会計士事務所を設立。
HP:https://tamura-cpafirm.jp/

数値サマリー

各社前年同期比の売上増加率に関しては、LVMHが+9%、Richemontが+5%、KERINGが-4%という結果になりました。第3四半期と同じく、LVMHとRichemontが前年同期比を伸ばす中で、KERINGのみマイナス成長となっておりマイナス幅も拡大しています。LVMHは増加率が二桁台から一桁台に減少しているものの、アナリスト予測は上回っているため勢いが衰えてきたと見るのは時期尚早かもしれません。

3社の売上増加率の推移を2023年3月→6月→9月→12月と通年で見ていきます。

LVMH:17%→15%→10%→9%
Richemont:19%→14%→6%→5%
KERING:2%→2%→-2%→-4%

各社売上増加率に関して右肩下がりに推移してはいますが、コロナもひと段落して海外旅行需要もある程度戻ってきてから約1年が経過しているため、適正水準に戻ってきているとも捉えることができます。

出典:LVMH, Richemont, KERINGのHPのIR reportより
出典:LVMH, Richemont, KERINGのHPのIR reportより

※記載数値に関しては各社がホームページ上で発表しているIR情報より抜粋
※LVMH、KERINGは年度末決算で発表されている営業利益を参照
※Richemontは、3月決算で12月末(第3四半期)は営業利益が開示されていないため、第2四半期の数値を参考

各社詳細

各社の数値に関して、詳細を見ていきましょう。各社数値の特徴を挙げていきます。

①LVMH

▼売上増加率+13%
売上増加率が為替の影響を除いたOrganic Growthベースで+13%と、9月末に引き続き二桁の成長を続けています。3社の中で唯一の二桁成長になっており、頭ひとつ抜けた結果になりました。

※前述した売上増加率は為替も込みの数値で比較しているため、増加率は一致しておりません。以降の記述も同じくです。 

▼お酒-4%、ファッション&レザー+14%
お酒-4%(Organic Growthベース)と通年ではマイナスとなっていますが、第4四半期単体では+4%となっているため、回復基調になるのは明らかです。次回の第1四半期の結果が注視されます。その一方で、主力のファッション&レザーは+14%で引き続き絶好調です。売上を牽引する製品としては、第3四半期同様にタンブールの新作時計と新しいメンズのクリエイティブ・ディレクターのファレル・ウィリアムスについて言及がありました。また「ルイ・ヴィトン」のフレグランス商品も急成長しているとの発表もありました。

▼アメリカ以外は二桁成長
前回同様に全リージョンプラス成長となっており、アメリカ以外は二桁成長を記録。アメリカのリージョンシェアは、前年同期比で27%から25%へとシェアを落としています。

▼日本は全リージョントップとなる+28%の伸び率を記録
日本市場における売上伸び率+28%と、全リージョンでダントツのトップとなりました。2022年10月11日より日本の入国時の水際対策が緩和されており、水際対策撤廃後ベースの比較になる第4四半期の三か月間が注視されていました。しかし第4四半期の3ヵ月も+20%と大幅プラスを記録。とはいえ、第1四半期~第3四半期の各四半期が30%近くのプラスであったことから、インバウンドピークは落ち着きを見せたと言えるかもしれません。

②Richemont

▼売上+8%
10~12月のRichemontグローバルの売上が8%増加しています。サマリーの数値との増加率の違いは、「9ヵ月か3ヵ月か」という点と「為替の影響を含むか否か」の違いになり、こちらの数値は3ヵ月の為替の影響を除いた純粋な増加率となります。

▼宝石のメゾン+12%、時計ブランド+3%
8%の売上増加は主に宝石のメゾンと時計ブランドの好調が要因となっているようです。宝石のメゾンが+12%、時計ブランドが+3%それぞれ増加となっており、主に宝石類が好調な傾向にあります。販売チャネルや地域関係なく宝石メゾンは好調。二桁増加というのが宝石メゾンの強さを表しているようです。

▼APACと日本だけで売上シェア58%
APAC(アジア太平洋)と日本で58%と過半数を超えています。前期同様、売上高の底上げにはアメリカ・ヨーロッパエリアのシェアを伸ばしていく必要があります。

▼日本市場は+18%で、世界シェア9%
好調なアジア圏の中でも日本は最大の伸び率18%を記録しています。地域別のプレゼンテーションでも日本の事が独立掲記されている点からも、日本市場への注目の高さが伺えます。そして何よりも日本のシェアが8%から9%へと上昇したという点は特筆すべきです。数値上は1%程度の増加とも見えますが、他社も日本のシェアは6~8%の間で推移していたので、そこが9%に到達したのは今回の決算内容の中でも大きく注目するべきです。

※3月決算のため、12月末が第3四半期となり9カ月間で計算

③KERING

▼売上:-2%
通期でプラスに戻せるかが注目されていましたが、結果はマイナスに転じており3社で唯一のマイナスになりました。営業利益も二桁のマイナスになっており、売上高営業利益率も27.5%から24.3%と一年で3%以上下落しています。LVMHの26.5%と比較しても落ち込みが目立ちます。10~12月の直近3カ月間の情報も同IR資料に掲載されていましたが、こちらは-4%となっており第3四半期の-9%からは大きく復調しており、足元は回復基調にあるといえます。この要因としては、北アメリカとAPACが復調しつつある点を挙げています。

▼「グッチ」-2%
ブランド別で見ていくと、主要ブランドの「グッチ」が-2%と二期連続でマイナスでした。一方、Kering Eyewearが絶好調でありボッテガを抜きそうなところまで猛追しており、このペースで行くと2024年第1四半期では逆転している可能性があります。

▼アメリカ市場-18%
地域別に見ると今期もアメリカの落ち込みが著しい状況となっており、-18%となっています。しかし直近の3ヵ月では-11%まで持ち直しているのでマイナス幅は減少しています。一方、APACが第4四半期で+8%と大きく伸ばしていました。

▼日本市場は+13%
第3四半期と比べると減速し売上+13%となっていますが、シェアは前年比で1%上昇しています。KERINGは2024年の戦略について、「グッチブランドを次のステージへ」「ビューティー分野の拡大」を挙げています。「グッチ」の次にビューティー分野を挙げていることからも、KERINGはこの分野に力を入れてきているのが分かります。 

まとめ

Richemont以外は年度決算が締まったため、FY24の展望について考えてみます。まず先進国市場ではコロナ明け2年目という事もあり、鈍化するのではないかと予想しています。特に日本市場の好調要因については、どのプレゼンも海外旅行者によるものとコメントがあり、成長の危うさを孕んだ状況です。為替レートがさらに円安に振れていくと可能性はありますが、すでにある程度の円安水準になっているため、この辺りがピークのようにも思えます。過去、インバウンドが一気に引き上げた例としては、コロナ禍が思い出されてしまい、予断を許さない状況です。 

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