外資系ラグジュアリーブランドの販売職の仕事とは? 求められるスキル&マインドについても解説
外資系ラグジュアリーブランドの職種の中でも、特に求人数が多い販売職。顧客のニーズを的確に捉えた商品・コーディネートの提案をはじめ、商品整理、ディスプレイ、会計、在庫管理を行うなどその仕事の範囲は多岐にわたる。今回は、そんな外資系ラグジュアリーブランドの販売職の「詳しい仕事内容」「求められるスキル&マインドセット」などについて、現在某ラグジュアリー宝飾時計ブランドで副店長を勤めるKさんに解説いただいた。外資系ラグジュアリーブランドの販売職を志望する方は、ぜひ参考にしていただきたい。
Kさん/ラグジュアリー宝飾時計ブランド ストアスタッフ 副店長
大学卒業後、繊維専門商社に新卒入社。テキスタイルの生産・販売業務に携わった後、ラグジュアリーブランドのセールスアソシエイトへと転職し、百貨店の外商を含めた接客販売を経験。以降、ラグジュアリーブランド数社にて顧客管理や店舗運営を行うアシスタントマネージャー、クライアントアドバイザーなどを歴任し、現在は宝飾時計ブランドのストアにて副店長を務めている。
外資系ラグジュアリーブランドの販売職とは
― 外資系ラグジュアリーブランドの販売職(以下、ラグジュアリー販売職)の仕事内容を教えていただけますか。
接客販売や在庫管理をはじめ、商品の修理対応、VMD、新規顧客・既存顧客との関係構築など、店舗の運営に関わる業務全般で多岐に渡ります。ブランドにもよりますが、入社3〜5年目となると新人スタッフのトレーナーを兼務する場合も多いです。
― 百貨店に入っているテナント店と路面店で仕事内容に違いはありますか。
百貨店のテナント店では外商を任される場合があります。外商とは百貨店の外商員と共に上顧客のもとへ伺い、商品を販売する業務です。既存顧客の場合は好みやサイズを把握した上で、ふさわしい商品をセレクトするセンスが必要ですし、定期的に行われる百貨店主催の催事では出店ブースへの呼び込みも行います。
新規顧客の獲得では次のシーズンのご案内を行ったり、場合によっては外商のお伺いを立て、4〜6ヶ月後のアポイントメントを取ったりということも行います。どちらも外商員との密なコミュニケーションの上に成り立つことですね。
お客様から信頼感を得られるような接客が大切
― 数百万円以上するような時計やジュエリー、数万~数十万円のバッグやアパレルなど、扱う商品の価格帯によって接客スタイルは異なりますか。
どの価格帯のアイテムをご案内するにしても、接客スタイルが大きく変化することはありません。ラグジュアリーブランドの場合、扱う商品によって価格帯はさまざまですが、丁寧な接客とお客様と長く良好な関係を築くことが重要です。
― ラグジュアリー販売職の接客で大切なことは何ですか。
自社ブランドだけでなく、さまざまなブランドの商品知識をインプットしたり、商品を多く見たり触れたりして目を養っておくことが大切です。理由は、ご来店されるお客様の多くがラグジュアリーブランドを好み、高価格帯のブランドアイテムを身につけているからです。
ブランドのアイコン的なアイテムやロゴが入っているアイテムの場合はわかりやすいのですが、なかには一見してわかりにくいものもありますよね。そういったアイテムを好んで着用するお客様に対して、こちらが気づいて「素敵なエルメスのニットですね」などとお声がけできれば良い第一印象を与えられますし、自社商品をご案内する際には「そのエルメスのニットとも相性が良いですよ」と、より効果的なご提案することもできます。
ただ、こうした知識については少しずつ身につけていけば良いと思います。それよりも最初は、自社ブランドについて熟知しておくことが大事だと思います。
― Kさんは、どのような方法でそういった知識をインプットされてきましたか。
大学での学業と並行して服飾学校の夜間部にも通学するほど服飾業界への関心が強く、コレクションブランドやファッションショーを見るのが好きだったので、自然と身についていきました。新卒入社した企業での経験もおおいに活きていて、例えば色合いや風合いを見てどのブランドのアイテムであるか、大体判断できるようになりました。
意識的に行ってきたのは、ファッション業界の専門誌を読むことです。お客様との会話の中では「知らない」ということがないように心がけています。深い知識は信頼感にも繋がるからです。
― お客様と信頼関係を築くことが重要なのですね。
そうですね。そのためには、まずはお客様とのコミュニケーションを通して「どのようなアイテムが好みであるか」、「本当に欲しいものは何か」について時間をかけて知っていくこと。逆に、目先の売り上げや売ることばかりにとらわれてしまうと、お客様から信頼していただけないと思います。
ラグジュアリー販売職の魅力とやりがい
― ラグジュアリー販売職の仕事の魅力について教えていただけますか。
私の場合は、お客様からの信頼がそのまま担当顧客の数として表れること、どうアプローチをすればより多くの方が自社ブランドのファンになってくれるかを考え、試行錯誤することが魅力だと感じています。一人前の販売員ともなれば、ひとりで30名以上の顧客を抱える場合もあります。たとえ経験が浅くても、センスや力量次第で即戦力として活躍できる可能性があることも魅力のひとつでしょうね。
― ラグジュアリー販売職として長年ご活躍されてきて、特にやりがいを感じた瞬間はどんなときですか。
お客様から、他のブランドでの買い物について相談されたときです。「この店員は私の好みを把握している」と心を寄せてくれている証拠ですし、これまで自身がお客様に対して行ってきたことは間違っていなかったと感じ、うれしくなります。
必要なのは、聞く力&観察力、コミュニケーション能力
― 外資系販売職に必要なスキルについてお教えいただけますか。
主に「聞く力&観察力」「コミュニケーション能力」が挙げられます。
・聞く力&観察力
接客販売では、お客様の好みや欲しいものを把握するのはもちろん、より最適なアイテムをご提案するために会話を通してポテンシャルを探ることが求められます。ここで言うポテンシャルとは、「どの程度の価格帯のアイテムをご購入いただけそうか」という意味を含みます。
普段愛用しているブランドや乗られている車などをあくまで自然な会話の流れで聞き出し、お客様にふさわしいものをご提案します。その際に「聞く力」が必要なのです。聞くだけでなく、お客様が身につけている洋服やバッグなど視覚的に得られる情報も大切な要素となり得るので「観察力」が求められます。
・コミュニケーション能力
コミュニケーション能力は接客の中で自然と磨かれるものですが、意外と役に立つのが自分の趣味や得意なこと。例えば、レストランめぐりやスポーツ観戦など、普段から自分が好きなことを掘り下げていれば、共通の趣味を持つお客様がご来店された際に会話が弾むきっかけになります。あとは他ブランドの店舗へ客として訪れ、言葉遣いのチェックや接客を実際に体験してみるのもいいと思いますよ。
― 必要なマインドセットについても教えてください。
お客様が快適にお買い物できるように充分配慮すること。そして、職場スタッフとの関係を良好に保つ協調性があること。売り上げに貢献したり、お客様と信頼関係を築けている販売員は、共通してこの2つが実行できている気がします。
外資系販売職のキャリアパス、これから入職・転職を考えている方へ
― 外資系販売職は、どのようなキャリアパスを歩むのでしょうか。
20代前半で販売職として入社した場合は、5年目前後でリーダー職となり、30歳前後でマネージャーかセールスエキスパートのどちらかの道を進むか決めるケースが多いと思います。
また販売職を経験後、MDやアナリスト、VMDといった異職種への転向も可能です。ただ、本社で働く場合は英語スキルを求められることが多く、場合によっては必須条件となるので、事前に調べておくと今後のキャリアを描きやすくなると思います。
― 未経験からキャリアをスタートさせるのは難しいでしょうか。
未経験の場合、ハードルが高いと思われがちですが、ご自身の性格やマインドセット、ブランドを志望する熱意があれば未経験でも正社員として入社できるケースはあります。特に現状の採用市場は人手不足なので、異業種で培った能力を活かして、転職されている方も見受けられます。チャンスは広がっているため、興味があればぜひチャレンジして欲しいですね。
―ドメスティックブランドやセレクトショップでの販売職経験は役立ちますか。
もちろんです。名の通ったセレクトショップでの経験が3年あれば、多くのブランドが欲する人材だと思います。個人的な考えではありますが、もし販売職を生涯の職業として考えている方は、待遇面の観点からなるべく早めに外資系ブランドへの転職をおすすめします。
― これからラグジュアリーブランドの販売職を目指す方へのアドバイスをお願いします。
特に20代前半くらいの方であれば、どのような業界からのキャリアチェンジも可能な職種なので、興味がある方は是非チャレンジしてみてください。私が1回目の転職で入社したラグジュアリーブランドにも、異業種からキャリアチェンジをした同僚がたくさんいました。
最初は、様々なカテゴリのアイテムを扱っているブランドで働き、服飾、宝飾・時計、バッグ、シューズなど幅広い商品知識を身につけた後、自身が興味の湧いたカテゴリーを専門的に取り扱うブランドへ転職するといったキャリアプランもおすすめです。スカウトが盛んに行われる業界なので、入社後は社内外で広く人脈をつくっておくと、その後のキャリアチェンジやキャリアアップにも繋がっていくと思います。
質の高いコミュニケーションでお客様にニーズを的確に捉え、ふさわしい商品をご提案する外資系ラグジュアリーブランドの販売職の仕事。未経験からでも比較的転職しやすく、憧れのブランドで勤務するチャンスは多くありそうです。目指す方は、ぜひ本記事の内容を参考にチャレンジしてみましょう。NESTBOWLでは外資系ラグジュアリーブランドの販売職に関する求人情報やキャリアに関する最新トレンド、転職活動に役立つ知識や考え方、業界注目のフロントランナーへのインタビューなど、豊富なコンテンツをメールでお届けします。まずはお気軽に、こちらからご登録ください。
文:芳賀たかし