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【イベントレポート】ビジネスシーンで高まるeスポーツ需要。「SCARZ」オーナー・友利洋一さんが語る、eスポーツの拡張可能性

【イベントレポート】ビジネスシーンで高まるeスポーツ需要。「SCARZ」オーナー・友利洋一さんが語る、eスポーツの拡張可能性

2024年8月22日(木)、NESTBOWLは「若者世代のココロを掴む、企業のeスポーツ活用術」を開催した。eスポーツとは、いま目覚ましい成長を遂げているエレクトロニックスポーツのことで、各業界からビジネス活用の点でも注目を集めている。本セミナーでは、eスポーツチーム「SCARZ(スカーズ)」を発足後、株式会社XENOZを設立した友利 洋一さんを登壇者に迎えてトークセッションを行った。eスポーツ業界の動向やトレンド、国内外のコラボレーション事例、ビジネスとしてどのように捉えて活用していくべきかなどについて、NESTBOWLアドバイザーの堀 弘人さんも交えて語られた。

ゲストスピーカー:友利 洋一さん/「SCARZ」オーナー 株式会社XENOZ 代表取締役(写真:中央)
自身もプレイヤーだった経歴を持ち、2012年にeスポーツチーム「SCARZ(スカーズ)」を発足。元々はゲーム会社でプランナー/ディレクション職などを務めて、ゲーム運営や開発に携わる。その後、ゲームをプレイする側でのプロを育てたい想いからプロチームを作り、今では日本や海外含めて色々なタイトルの活躍選手を抱える。近年では、SCARZはJFRグループの子会社となり百貨店などを通じて若者にもeスポーツを広げる新しい展開にも挑戦する。日本のeスポーツ業界を文化として根付かせて将来に繋ぎたいと考え、現在でも活動を続ける。

ゲストスピーカー:堀 弘人さん/H-7HOUSE LLC CEO(写真:右)
20年以上に及ぶ自身のブランドビジネス経験を国内外の企業の活性に役立てたいとブランドコンサルティング会社H-7HOUSE(エイチセブンハウス)を設立し、大手企業からベンチャー企業まで幅広い業種のブランド戦略や事業戦略を支援。NESTBOWLの社外取締役も務めている。起業前は数々の外資系企業にてマーケティングディレクターを含む要職を歴任したのち、日系上場企業の国際戦略プロジェクトリーダーとしてスポーツビジネスでの新規事業立ち上げと収益化を経験したビジネスリーダー。米国・コーネル大学 ブランドマネジメントプログラム修了。

モデレーター:田崎 直人/NESTBOWL株式会社 CEO(写真:左)
1989年、埼玉県生まれ。大学卒業後、クリエイティブに特化したエージェンシー事業を展開するクリーク・アンド・リバー社にて、ゲーム、ファッション、XRなど、主に新規事業立ち上げに従事。「NESTBOWL」ではCOOとしてサービス運営に携わり、2024年1月、現職に就任。家業である創業30年のもつ焼き専門店「せんとり」の経営サポートも担う。趣味はサッカーやランニング、テニスなどのスポーツを中心に、社会人漫才コンビとしての活動もしている。

eスポーツのファンベースはすでに860万人

まず、eスポーツについて、業界の現状合わせて教えてください。

友利洋一さん(以下、友利):「競技シーンがゲームであること」「対人であること」「課金で強くならないこと」の3つを満たしているゲームを、eスポーツと呼ぶことができます。特に欧米諸国ではリアル会場を設けたeスポーツ大会が盛んです。日本でもそうしたeスポーツ大会が開催されていて、1.5〜2万人が来場するなど盛り上がりを見せています。またスマホなどの普及により、気軽にゲームをプレイできるようになったこと、性別や年齢の垣根が低くなったことで競技人口は増加傾向にあります。デジタルネイティブ世代においては、その現象が顕著に表れている印象があります。

ー 現在の国内eスポーツのファンベースは約860万人とも言われていますリアルスポーツ市場と比較するとどの程度の規模でしょうか。

堀弘人さん(以下、堀):例えばプロバスケットボールBリーグのファンベースは約829万人*。という試算がありますので、それと同規模と考えていいでしょう。また日本eスポーツ連合の調査データによると、2025年には1,000万人を突破するという試算も出ているので、今後も継続的な成長が見込まれる業界だと思います。

*三菱UFJ リサーチ& コンサルティング2023年スポーツマーケティング基礎調査 調べ

もうひとつ注目すべき点としては、eスポーツにおける収益の4割がスポンサー収入であることです。これは日本におけるプロメジャースポーツとも共通の割合なのですが、残りの6割はどのような収益構造になっているのかお聞きしたいです。

友利:eスポーツはリアルスポーツと違い、入場料収入がないため、大会賞金やイベント、グッズ収入で成り立っているチームがほとんどだと思います。eスポーツチームは「大規模なeスポーツ大会での優勝」を大きな目標のひとつとして掲げて活動していますが、新たな収益構造として可能性を感じているのは「コミュニティの活性化」を目標とした大会運営です。

私たちは、2021年から「SCARZ CUP」というオンラインイベントを継続的に開催していますが、同時接続数や総再生回数を鑑みると、さらなるスポンサーマーケティングや広告配信による増収を見込めるのではないかと感じています。

収益構造を読み解いた上で、伸びしろとして期待できる点を教えてください。

友利:やはり、放映権収入ではないでしょうか。リアルスポーツの多くはBリーグやJリーグのようにプロチームを統括する団体が存在しますが、eスポーツには包括的にプロチームを管理するような団体は存在しません。メーカーが各タイトルごとに大会を主催する権利・放映権を持っていますし、YouTubeなどの無料動画プラットフォームで配信されることが多く、放映権という形で収益が生まれにくいのです。

一方、サウジアラビアで行われた賞金総額96億円のeスポーツワールドカップは、放映権を「DAZN」に売却することで収益を生み出しました。こういった流れが日本でも出来てくると、さらなる盛り上がりを見せるのではないでしょうか。

友利 洋一さん/「SCARZ」オーナー 株式会社XENOZ 代表取締役

若者向けの広告、PR先としても高い注目を集める

eスポーツ業界が今後成長していくには、10〜20代は必要不可欠な存在でしょうか。

友利:そうだと思います。現在の10〜20代にとって、オンラインゲームを介した人との繋がりは、あって当たり前。それに親和性の高い推し活ブームも追い風になり、多様性の観点からも文化のひとつとして認められつつあります。大会会場を見渡してもオシャレなストリート系の子達が多く、コロナ禍前後で大きな変化を感じました。

企業がeスポーツに注目する理由はどういった点にあると思いますか。

友利:過去データを見ると40代は野球、30代はバスケットボールやサッカーといったリアルスポーツへ関心が強く向く傾向がありましたが、10〜20代にとってはeスポーツがその代替となりつつあります。そのため企業が若者にPRしたいコンテンツやプロダクトがあるとした場合、露出先としてeスポーツ業界を優先的に設定し始めてるという流れが来ていると思いますね。

堀:企業がZ世代に対するアプローチに課題を感じている中、eスポーツは新たなアプローチの場として非常に有効だと考えています。というのも、アメリカでは総消費の40%をZ世代が占めているというデータがあり、中でもニューリッチ(新富裕層)の購買力に注目が集まっているからです。

そのため露出先の選定をする上で彼らと親和性のあるSNS、そしてeスポーツが注目されるのは決して不自然なことではないんですよね。

先ほど競技×推し活といった掛け合わせがブームを後押ししているというお話がありましたが、その点も経済成長の大きな起爆剤となりそうです

堀:現状、国内eスポーツ業界は推計200億円という市場規模*ですが、推し活市場は一説によると7,000億円と推計されています。その市場をうまく組み込むことができれば、eスポーツ業界の市場規模は1〜2桁変わってくると思います。そのためには、個々のeスポーツプレイヤーのファンを増やしていくことが重要でしょう。

*一般社団法人日本 e スポーツ連合「日本eスポーツ白書2023」調べ

堀 弘人さん/H-7HOUSE LLC CEO

友利:ファンの動向を性別から推察すると、すごく興味深くて。先日600〜700人規模のオフラインイベントを「阪急メンズ東京」にて行ったのですが、目視で確認する限り、8割が女性の来場者だったんですよ。

オンラインでは男性が6割程度を占めるため、これほど違いが出るのは驚きました。この現象は韓国でも同様に見られるようで、こういった点も「eスポーツ×推し活」を加速させるヒントが詰まっていると考えています。

福祉業界、介護業界の活性化を促す可能性も

eスポーツの拡張可能性という観点で、今後どのように発展していくと思われますか。

堀:まず、JリーグとKONAMIが共同開催している「eJ.LEAGUE」のような事例は、今後リアルスポーツにおいて標準搭載になっていくでしょう。少子高齢化の日本社会では、新たな収益源やファンを創出していくために、非常に重要な取り組みだと思います。

また、徐々に身体機能が衰えていく難病の筋ジストロフィー患者の男性が顎でコントローラーを操作することで、eスポーツ大会を勝ち進んでいるという事例もあります。身体障がい者の身体機能改善や健康増進の一環、何より新たな夢を追うことができるという点で機能していることを鑑みると、福祉業界からもさらなる注目を集めています。

ファッション業界では、2019年に「ルイ・ヴィトン」が、グローバルタイトルのひとつ「リーグ・オブ・レジェンド」のカプセルコレクションを発表し、ゲーム内と現実世界で着用できるアイテムを販売したことが話題となり、その後、多くのブランドがデジタル世界でのブランド表現を革新的な形で追求しています。

友利:秋田県のデイサービス施設では旧来のようなサービスではなく、eスポーツをリハビリとして活用することで「孫とのコミュニケーションが活発になった」などと施設利用者から大きな支持を得ています。

その後、余波的に60歳以上のプレイヤーで構成されたeスポーツチーム「マタギスナイパーズ」が設立され、今や配信すれば200〜300人が同時接続するまでに成長しています。eスポーツの拡がりは今後、ますます介護業界に及んでいくでしょう。

田崎 直人/NESTBOWL株式会社 CEO

企業コラボも活発に行う「SCARZ」が見据える未来

SCARZとしては、eスポーツチームと企業がコラボレーションするメリットはどのような点にあると考えていますか。

友利:「GINZA SIX」で行ったイベント「SCARZ」×「IdentityV 第五人格」では、スマートフォン向けアプリ「IdentityV 第五人格」のキャラクターがVRゴーグルを着用することで目の前に現れるという体験ブースを用意しました。

ただ、このコンテンツは弊社の「IdentityV  第五人格」部門と運営元の信頼関係があったからこそ実現できたもので、一般企業が直接交渉してもなかなか難しいと思います。eスポーツチームは企業とゲームメーカーを繋ぐ役割も担えると実感できた瞬間でしたね。

スポンサーシップで言うと、LIXILとはSNS上においてSCARZ公式アカウントでは見られないオフショットをLIXIL公式アカウントで見られるという、インプレッション向上をお手伝いさせていただく取り組みを行っています。

今後、eスポーツにさらなる注目が集まりそうですが、どういったことを期待しますか。

友利:まだまだ成長段階にあるeスポーツ業界ですが、2025年にはサウジアラビアにてオリンピックeスポーツ、そして2026年には名古屋にてアジア競技大会が開催されます。日本としても力を入れていく産業のひとつとして視野に入る中、eスポーツにドラマと産業としての拡散可能性を感じてくれたら嬉しいです。

【この記事のポイント】

  • 日本におけるeスポーツのファンベースはデジタルネイティブ世代を中心とした829万人。2025年には1000万人突破が見込まれ、継続的な成長が見込まれる業界である
  • eスポーツの市場規模は200億円(推計)。eスポーツ同様、デジタルネイティブ世代との親和性が高い推し活市場7000億円(推計)を組み込むことができれば、更なる成長が見込める
  • 介護や福祉といった他業界における活用例も多く見られるようになり、今後ビジネスシーンでも需要が高まると予測。広告だけでなく、幅広い業界での拡散可能性が大きい

NESTBOWLでは、さまざまな企業やブランドがコラボレーションを実現できるプラットフォームを提供しています。既存の枠組みを超え、新しい価値を創造するためのコラボレーションを促進する出会いのプラットフォームです。「SCARZ」とコラボを通じ新しい価値を作り出したい方は、ぜひこちらからご相談ください。

文:芳賀たかし
撮影:船場拓真

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