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早期離職や入社後ギャップを防ぐには?企業が実践すべき効果的なオンボーディング

早期離職や入社後ギャップを防ぐには?企業が実践すべき効果的なオンボーディング NEW

時間をかけて採用したにもかかわらず、新入社員が実力を発揮できないケースは少なくない。その要因のひとつとして、企業側が必要な取り組みを十分に実施できていないことが挙げられる。今回は、多様な企業や団体の組織づくりを支援する株式会社事業人の共同代表/Co-Fonuder・宇尾野彰大さんと、エーバルーンコンサルティングのコンサルタント・北川加奈さんが対談。企業が陥りがちな対応のミスやオンボーディングの重要性、人材育成に求められる視点について語り合った。

宇尾野 彰大さん/株式会社事業人共同代表 Co-founder(写真:左)
早稲田大学卒業後、株式会社リクルートに入社。営業、人事企画、事業開発、事業企画など複数事業で複数職種を経験。その後ソーシャルゲーム開発会社へ移り、Web/アプリ開発の開発統括・PMOを担当。株式会社ユーザベース、株式会社ニューズピックスにて事業CHRO、HRBPを担いつつ、並行して株式会社事業人を複業起業。22年10月より現在に至る。複数組織の人事顧問・社外取締役・コーチを担いながら「経営と組織の未来塾」の主幹をするなど、経営者・戦略人事向けに幅広く活動中。

北川加奈さん/エーバルーンコンサルティング株式会社 ヴァイスプレジデント・人材コンサルタント(写真:右)
静岡県出身。英国留学後、英語教師を経て人材業界に転身。2021年エーバルーンコンサルティングに上級職として就任。ラグジュアリー、ファッション、ライフスタイル、コスメ業界に強みを持ち、外資系エグゼクティブサーチに従事。3,000件以上の紹介実績があり、業界屈指のネットワークを誇る。平日は都会的なライフスタイル、週末はアウトドアを愛し、愛犬と共に都市と自然の調和の取れた生活を送る。

新入社員の能力発揮には、オンボーディングが不可欠

北川加奈さん(以下、北川):せっかく採用した新入社員が早期退職してしまうケースは珍しくありません。その原因として、企業側が陥りがちなミスには、どのようなものがあるのでしょうか。

宇尾野彰大さん(以下、宇尾野):特に中途入社者に対しては、入社直後から実力を試そうとするあまり、仕事の進め方を本人に任せ、放置してしまうケースが多く見られます。その結果、十分に実力を発揮できず、業務の停滞や早期退職につながることが少なくありません。

北川:即戦力として期待しているからこそ、“それほど仕事を教えなくても大丈夫だろう”と考えて放置しがちなのですね。

宇尾野:そうだと思います。ただ、中途入社者は本来「個別性」が高く、新卒よりもバックグラウンドが多様です。そのため、新しい環境への適応には個別対応が必要ですが、実際には十分なフォローがされていません。

多くの企業で「中途入社者は何に不慣れで、どんなサポートが必要か」を十分に理解できていないことが原因でしょう。例えば、同職種からの転職でも、会社規模が違うと働く環境が変わり、適応にサポートが必要な場合もあります。しかし、“前職の経験があるから大丈夫”と考えがちです。

北川:そうならないように、企業は何をすべきでしょうか。

宇尾野:本来は入社前に自社の情報をより多く開示し、入社後は初日から即戦力として過度に期待せず、新しい環境に適応させる「オンボーディング」を実施することが必要です。適切なオンボーディングを実施できれば、数か月後のパフォーマンス向上を期待できるでしょう。だからこそ、オンボーディング中は投資期間だと考え、丁寧なサポートが求められます。

一方、サポート不足は早期離職を招くなど、投資したコストや時間が無駄になるリスクがあります。さらに「入社後のサポートが不十分な会社」という評判が広がると、採用力の低下にもつながるでしょう。オンボーディングの質は、採用力にも直結するのです。

株式会社事業人共同代表として多くの企業や団体の組織づくりを支援する宇尾野さん。新しい環境におけるオンボーディングの重要性について深く語る。

「リアリティショック」を乗り越えるプログラムづくりを

北川:転職者にフォローアップのご連絡をすると、入社前は意欲的だった方でも「パフォーマンスを発揮できず、期待に応えられていない」という声を聞くこともあります。

宇尾野:新入社員は新しい職場に入った際、理想と現実とのギャップに直面する、いわゆる「リアリティショック」を必ず経験します。そのサポートが企業には求められますが、そもそもリアリティショックが起こることを認識していない企業が多く、そのまま放置されることも少なくありません。

北川:リアリティショックを和らげるために、企業側がオンボーディング・プログラムを設計する際、おさえるべきポイントを教えてください。

宇尾野:新入社員の気持ちの変遷を理解したうえで、必要なサポートを考えることが重要です。入社前は大きな期待を抱えている人でも、新しい環境に適応するまでは気持ちが下がります。そして、すぐに結果が出ないことでさらに落ち込み、その後、成果を上げると気持ちが上向くのです。一方、企業側の期待は時間とともに高まっていきます。このギャップが最大化するタイミングで新入社員はプレッシャーを感じやすくなるため、企業側はサポート体制を整えておくことが重要です。

北川:具体的には、どのようなことをすればいいのでしょうか。

宇尾野:まずオンボーディングプログラムの全体像を新入社員と事前に共有し、認識を合わせる必要があります。

馴染むのに必要な期間は約3か月間。1か月目には振り返り研修を、2か月目には上司との1on1を実施するなど段階的にサポートを進めていきます。さらに、3か月後に期待する成果をチェックリストにまとめ、新入社員と共有すれば、目標が明確になるはずです。

これらを踏まえて、新入社員がスムーズに馴染めるサポート体制を整えることが重要です。

北川:1on1の頻度は、どれくらいが効果的ですか。

宇尾野:新入社員の学習能力や経験によりますね。1on1は対話をしながら内省を促す手法なので、内省に慣れていない人には週1回以上、慣れている人は2週間に1回でもいいでしょう。ただ、入社直後の3か月間は話すことが多々あるため、最低でも週1回は必要で、朝の10分間話すだけでもいいと思います。

いずれにせよ、個別性が高い中途入社者には本人の負担にならないよう、最初にサポートの頻度を話し合い、調整することがマネージャーに求められる重要なスキルです。

エーバルーンコンサルティングの北川さん。候補者の可能性を最大限に引き出す採用のあり方について語る。

社内ネットワーク構築のために、“接点”を意図的につくる

北川:業務を遂行するうえでチームメンバーとの関わり合いも重要ですよね。メンバーとの関係性構築のために、企業側にはどのようなサポートが求められますか。

宇尾野:新入社員が上司と部下という「タテ」の関係から、同僚などとの「ヨコ」「ナナメ」の関係をつくり、社内ネットワークを広げていくには、できる限り多くの人との「弱い絆」をつくる必要があります。

そこで例えば、「各チームメンバーとの1on1」や「同期を集めたランチ会」など仕事に関わる人同士で集まる公式のやり取りだけでなく、「ワイン好きで集まる会」など共通の趣味などで集まる非公式のやり取りができる場を設けることでネットワークづくりをサポートできます。

北川:リモートワークが主流になってきた昨今、Face to Faceでのコミュニケーションが難しい企業もあります。オンラインで弱い絆をつくるポイントを教えてください。

宇尾野:出社しないと偶然居合わせた人との雑談が生まれにくいため、意図的に場をつくれるといいでしょう。集まる機会を設定したら、新入社員が参加しやすいように声をかけたり、チームメンバーには「新入社員に積極的に話しかけにいこう」と伝えたりするなど、ちょっとした工夫が大切だと思います。

北川:そのようにして大勢と接点を持てる機会をつくる必要があるのですね。

宇尾野:その機会がないまま、新入社員が数か月後に改めて知り合いを増やそうとしても、大きな負担になります。企業が準備しておけば、新入社員がチームに馴染むコストを下げることができ、その結果として大きなリターンが返ってくるはずです。

入社前からニーズを捉え、候補者の育成を支援する

北川:これまでのお話から、企業はプログラムづくりやサポート体制などを整えることが、オンボーディングを成功させるカギとなりそうですね。マネージャークラスの社員の適切な対応力が求められそうです。

宇尾野:そうですね。新入社員を支える上司や人事の采配で、プロセスは大きく変わります。特に上司は個別対応が求められるため、プレボーディング期間中にその対応を考えることが重要です。

北川:プレボーディング期間に人事の方から手厚いサポートを受け、「不安が軽減され、安心して入社できた」という候補者の方を担当したことがあります。サポートは入社前から始まっているのですね。

宇尾野:実は、新入社員を戦力とするのに最も重要なのは、一次面接だと考えています。一次面接で候補者のニーズや会社への印象を見極めて適切な条件を提示できれば、内定辞退を回避しやすくなり、オンボーディングに必要な施策も準備しやすいでしょう。だからこそ、一次面接では個々のニーズを引き出せる質問が欠かせません。

北川:一次面接だとテンプレート化された質問が多い印象ですが、それでは不十分だということですね。

宇尾野:その通りです。画一的な対応だと成功しないのは、組織づくりも同じ。リーダーの考え方や事業の変数によって、事業や組織を伸ばす組織づくりは異なります。その重要性を伝えるため、事業人では組織づくりを担うリーダー向けに、自社に合った組織づくりの理解を深める取り組みを行っています。

北川:具体的には、どのような取り組みをされているのですか。

宇尾野:ひとつは、実務家集団で組成した社外CHROチームによる、組織づくりの総合支援です。個別性の高い組織づくりというテーマに対して、柔軟にカスタマイズしながら、経営の意図、現場の意思に沿って組織設計を支援します。また、2025年4月からは経営者やトップマネジメント層向けに『経営と組織の未来塾』という組織づくりの実践知を学ぶスクールプログラムを始動予定です。今後は、Podcastで新しい番組を開設したり、外部カンファレンスなどにも積極的に露出するなどして、情報発信も行う予定なので、ぜひ自社の組織づくりに活用していただければと思います。

宇尾野さん × 北川さん登壇!オンボーディング成功の秘訣を学ぶトークイベント開催

本記事でお話しいただいた宇尾野 彰大さんと北川 加奈さんをお招きし、企業の人事担当者が知るべきオンボーディング成功の秘訣について、より実践的かつ深掘りしたトークイベントを開催します。本イベントでは、オンボーディングの重要性をはじめ、新入社員が直面する「リアリティショック」への具体的な対応策、さらには採用から入社までの「プレボーディング」期間の効果的な活用法など、実務に直結するテーマを幅広く議論します。参加者の皆様には、日々の採用活動や組織づくりに役立つヒントを得ていただける貴重な機会となります。

採用後の定着率向上や人材の早期戦力化に課題を感じている方は、ぜひご参加ください!

<イベント詳細>
◆日時: 3月19日(水) 18:00 ‐ 20:00(17:30 受付開始)
◆場所: 表参道
※参加者のみに会場名をお知らせします。
◆定員:30名(予定)
◆参加費:無料(事前申込制)
◆参加方法:以下 Google フォームより必要事項にご記入の上、お申し込みください。
応募フォーム
※上記Googleフォームを利用できない場合は、最下部のメールアドレスよりお問い合わせください。
※応募多数の場合は抽選となります。
※運営よりお送りする正式なご招待メールが確認できない場合、ご入場をお断りする場合がございます。予めご了承ください。
締め切り:3月14日(金)18:00まで

文:流石香織
撮影:船場拓真

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「エーバルーンコンサルティング(A Balloon Consulting)」は、東京と大阪を拠点にしたファッション業界に特化した人材紹介サービス会社。販売スタッフからエグゼクティブクラスまで、ファッション業界の優良な人材と企業をつなぐエージェントとして、多くの紹介実績を持つ。