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ブランド選定&人材育成は“広島カープ式”⁉ 広島の人気セレクトショップ「VINCENT&MIA」が大切にする企業理念とは

ブランド選定&人材育成は“広島カープ式”⁉ 広島の人気セレクトショップ「VINCENT&MIA」が大切にする企業理念とは NEW

国内の気鋭ブランドを中心に展開するセレクトショップ「VINCENT&MIA」。高感度なショップが集まる広島市中区中町エリアで20年以上にわたって広島県民に愛されている。今回はそんな「VINCENT&MIA」を運営するONE PLUS ONE株式会社代表取締役・菅正道さんにインタビュー。事業内容や理念をはじめ、セレクトするブランドの選定方法、地方のセレクトショップならではの魅力を伺った。菅さんの仕事術と広島カープのチーム運営には意外な共通点も……⁉ 

菅正道さん/ONE PLUS ONE株式会社 代表取締役
学生時代より広島のセレクトショップで働き、接客やバイイングスキルを培う。29歳で独立を果たし、国内アパレルブランドをメインにセレクトする「VINCENT and mia」をオープン。2015年に同店を拡張&リニューアルして規模を拡大するとともに、現在は「VINCENT A PART」を展開するほか、カルチャーイベントの企画・制作・運営も手掛ける。趣味は世界の歴史(特に日本史))、居酒屋探訪、茶道(上田宗箇流)など。

ネット通販全盛期に店頭売上が95%

― 現在手けている事業内容を教えてください。

29歳で知人と広島市中区中町でセレクトショップ「VINCENT&MIA」を立ち上げました。立ち上げから21年が経ち、今はより濃度が高い時間を提供できる「VINCENT A PART」も含めて2店舗を運営しながら、イベントの企画・運営も手がけています。

―「VINCENT A PART」ではどのような事業を行っていますか。

「VINCENT&MIA」では取り扱うブランドのデザイナーを呼んでイベントやポップアップを行っていますが、「VINCENT A PART」では、より深く掘り下げたイベントを実施しています。今後は会社として空間プロデュースも手がけていきたいので、ヴィンテージ家具などのインテリアや音響システムなどをを紹介できる空間にもしていきたいですね。

― 「VINCENT&MIA」ではどのようなブランドを扱っていますか。

国内のブランドをメインで展開しています。オープン当初は「Scye」や「YAECA」、「marka」などユニセックスで提案していました。今も「THE RERACS」、「AURALEE」、「BLAMINK」、「HEUGN」など。8割をドメスティックブランド、2割を「MARNI」などのインポートで構成しています。

― ショップの顧客層も教えてください。

メンズは6割、レディースは4割ほどで、広島県のお客様が8割になります。ただ最近は県外から来てくださるお客様も増えてきているかもしれません。店頭販売にこだわっているので、店頭とオンライン販売の構成比は、95%が店頭、オンラインが5%程度ですね。

“おせっかいな接客”も成長理由のひとつ

― ネットショッピングの時代に店頭販売が9割以上はすごいです。

対面接客には強くこだわっています。毎月受注会等のイベントを開催しているのですが、ブランドのデザイナーにお店に来ていただき、我々スタッフと共に直接お客様に接客していただくカタチを20年以上続けています。

対面での接客を通して、作り手の気持ちを知ってもらい、購入いただくことが弊社の特徴です。デザイナー本人がわざわざ広島まで足を運んでくれるのは、弊社と信頼関係ができているからこそ。20年前はそうしたことがまだ珍しかったこともあり、弊社では長い間お付き合いをさせていただいているブランドも多いです。 

― チーム全員でバイイングに出向く理由も対面接客にこだわるからでしょうか。

お客様に売るのはスタッフ自身なので、熱量が高くないとお客様に勧められません。そのためには、デザイナーやブランドの担当者から直接話を聞いて実際に試着した上で良いと思わないといけない。だからこそ全員で現地に出向いて、話を聞きながらバイイングしています。そうすることでブランド側にも熱意が通じ、商品ができた過程や裏側なども聞けるようになって、濃い知識をベースにした接客ができるんです。そして、濃い接客を通して購入していただいたお客様は、満足度が高くリピーターになりやすい傾向にありますね。

― スタッフのやりがいにも通じるかもしれませんね。

上から「これセレクトしたから売って」と言われても、自分では「これはどうなんだろう」と思っていたら売れない。そのモヤモヤが接客レベルを落としたり、クレームに繋がったりする可能性もあるでしょう。自分が熱量高くセレクトしたものを自分で売って、お客様に喜んでいただくところまで一貫して関わることで、やりがいにも繋がります。

全員が多くの商品に袖を通すのはかなり時間かかりますが、デザイナーをはじめとしたブランド関係者とのコミュニケーションこそが大事。バイイングに出向いた際は関係者と食事会を開いたりもするのですが、そういった特別感ある時間は業界ならではで喜ばれますし、センスも磨かれていいこと尽くしだと考えています。

―“接客の質の高さ”が成長し続けてきた理由でしょうか。

“Over Kind Company”という理念を軸とした接客スタイルを社員全員で共有しています。お客様の人生に入り込んで、ある意味、“おせっかい”をしながら接客をする。人生のプラスになるようなご提案やアドバイスをもとにお客様と繋がり、1回限りではなく長い時間軸でお付き合いできるような関係性を目指しています。

だからこそ、社員も地元の人間が多いです。もともとはお客様として来ていた人達がが従業員になって、今でも一緒に働いています。私やスタッフが声をかけて、長い人だと4年くらい口説いて働くことになった社員もいますね(笑)。

人材とブランド選定は“広島カープ式”

― まるで補強よりも生え抜きを伸ばす広島カープのようなスタイルですね。

そうかもしれません。子供のころから広島カープを見ていて、スカウトの人がどのように選手を見つけてチームに引き入れているのか、中学生の段階で注目していました。それもあり無意識のうちにカープ式を取り入れていたのかもしれませんね(笑)。

― 商品のセレクトに対してもカープ方式だったりするのでしょうか。

まだ有名じゃなくても、良いと思ったら自分から電話してオファーをしています。雑誌の記事や展示会で見つけることが多いですね。雑誌の場合、どんなに扱いが小さくても、どのように掲載されているか、誰がオススメしているかを参考にして、これから火がつきそうだと予想しています。20代の頃からバイイングは経験していたので、その感覚は研ぎ澄まされました。今では8割方、予想が当たるようになっていますし、大手のショップに負けないように1歩も2歩も早く動くようにしています。その部分もカープのスカウトに似ているかもしれません(笑)。

― 実際にホームラン級に当たった or ヒットした買いつけエピソードはありますか。

15年前からご縁があって扱うことになった「THE RERACS」は、今でも大ヒットブランドです。素材やシルエットにこだわりを持つブランドなのですが、当時から弊社でも取り扱っていたブランドをベンチマークとしていたらしく、その繋がりで先方から営業の電話をいただいたんです。今でも電話をいただいた日のことは鮮明に憶えていますね。あの日は二日酔いで寝ていたところに電話が鳴り、たまたま自分が対応したんです。当時 RERACSさんはモッズコートに強いこだわりがあって、「モッズ1型だけでも見てほしい」という内容の熱意ある電話でした。話していくうちに共通の知り合いがいることもわかって、会ってもいないのに話が盛り上がって1時間以上長電話しちゃったんです(笑)。そんな感じで始まった不思議なご縁ですが、今では当初の10倍以上の量を取り扱いさせていただいています。

セレクトするブランドを選ぶ基準としてデザインの感性が合うかどうかはもちろん、デザイナーと心が通じ合えるかどうかという部分も大事にしていて、その点でもRERACSさんとはご縁を感じました。そこから15年、ときには「御社の接客スタイルと規模ならもっと売れると思います」と先方からの“おせっかい”で入荷数を増やしたり、逆にブランド側にはデザインの要望を出したりと、切磋琢磨してきました。互いに信頼し合っているからこそ、本音のやり取りができる距離感でお付き合いさせていただいています。

― 広島の魅力はどのようなところでしょうか。

アパレルだけでなく飲食店なども含めて、熱くて個性溢れるオーナーがいる店が多い。しかもそれが徒歩でまわれる範囲でたくさんの店が集まっているのは、広島ならではだと思います。駅前の開発は進んでいますが、東京のように大手企業や外資が入ってくるのが遅かった分、地元密着のお店が多い。店の人と距離が近いので仲良くなれますし、店同士も仲が良い。家族経営のお店も多いから、世代を超えて長く付き合っていける文化もある。ほどよく都会でありながら地方的な温かさも味わえる、魅力的な場所だと思いますね。

― 運営する店でも地域性は見られますか。

一度来ていただいたら長く付き合っていけるのは、地方ならではだと感じています。実際にオープン当初から20年以上通ってくださっている方も多いですし、お子さんの世代に引き継がれて来る方もいます。“人で買う”文化が残っているエリアなのかなとも思いますね。3世代にわたって通っていただける店にしたかったので、意識的にトレンドに左右されないセレクトにしています。

“オーバー・カインド”な接客を体感していただきたい

― セレクトショップ事業以外にイベントも手けていますね。

100~400人規模のイベント「ONE PLUS ONE」を定期的にやっています。きっかけは接客時によくある「たくさん服を買っても着て行くところがないから」という会話。購入を断るための口実なのかもしれませんが、「オシャレして行く場所を僕らで作ったら責任が取れる」と考えたんです。オシャレをして集まれるパーティーにしようと、音楽や料理、お酒を集めたイベントを始めました。20代が多かったときは楽しいだけでよかったのですが、30~40代の方が増えてきたタイミングで、楽しいだけじゃなく学びを通して経験になることも必要だと思い、感性が高い方々を招いて話を聞けるようにしたり、日本の伝統文化とファッションを繋げるイベントにしてきました。今までの集大成として、最終的には宮島や神社仏閣で開催できるようにしたいと考えています。

― 最後に読者の方々にメッセージをお願いします。

接客スタイルが特殊だとは思いますが、ぜひお店に来ていただいて“オーバーカインド”な接客を体感していただきたいです。イベントも定期的に開催するので、人生の中で背伸びをしてみる時間って大切なんだと感じていただけたらうれしいですね。そしてその理念を一緒に発展していっていただける人がいれば、仲間になっていただきたいです。手前みそですが、接客レベルは日本のトップレベルじゃないかなと自負しています。まだまだ発展させていきたいと思いつつ、ほぼ完成形に近づいているのでは、と思っています。

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