ファッション×IPビジネスの未来への挑戦。コネクト・インターナショナル 小柳雅裕さんが挑む新領域 NEW
モデルや俳優らによるファッションブランドを多数手がける株式会社コネクト・インターナショナル(以下、コネクト)で、事業拡大に取り組む小柳雅裕さん。ファッションビジネスへの興味からアパレル業界でキャリアをスタートさせ、現在は「IP(知的財産)×ファッション」という新しい領域に挑戦している。東京・表参道V.A.での「GOD ONLY KNOWS」のポップアップストアの開催、「fragment」とのコラボレーションなど、従来の枠にとらわれない取り組みを展開する小柳さんに、IP×ファッションビジネスの醍醐味や、これまでの経験がどのように活きているのかを聞いた。
小柳 雅裕さん/株式会社コネクト・インターナショナル ブランド事業部 事業統括部長
北海道函館市出身。帽子ブランドメーカーに入社後、ストリートファッション業界を牽引するトップスタイリストとの出会いを機に、ストリートブランドへ入社。事業立ち上げ、MD、商品企画、店舗運営などに携わる中で、ファッションビジネスのあり方、需要と供給の相関性、ファッションマーケティング、ストリートカルチャーなどを学ぶ。2025年6月より現職。
カルチャーへの強い興味がキャリアの原点
― 小柳さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
昔からカルチャー全般に強い興味がありました。特に音楽が好きで、そこから自然とファッションの世界に触れていきました。当時は裏原ストリートブームの全盛期で、ファッションカルチャーに熱中していましたね。そこで最初に飛び込んだのは帽子メーカー。最初は店舗運営を担当し、そこからキャリアが始まりました。
業界に入ってからは、どんどんアパレル業界にのめり込んでいきました。人との出会いや他社とのつながりも増えていく中で、青春時代に憧れていたトップスタイリストの方が運営を行っている会社とご縁を頂きました。直接お会いした時にはさらにセンスと人柄に惚れ込み、その方が運営するストリートブランドへ入社させて頂きました。
その後、10年以上にわたって事業形成、MDや生産企画、店舗統括などさまざまな業務に携わり、ブランドを運営する上でのあらゆる業務を経験させてもらいました。この時の経験は、自分のキャリアに大きな影響を与えています。
― ストリートブランドを退職してコネクトへ入社した理由は何ですか。
今後の自身のキャリアを考えていた頃に、コネクトの由羽代表と出会いました。これまで市場拡大や事業グロースに携わってきて、今後もそこを深めていきたいと考えていた中で、会社と自分のビジョンがより一致したのがコネクトでした。
事業ビジョンや事業背景、由羽代表の人柄に惹かれ、入社を決意致しました。ビジネスの考え方や、柔軟性と柱立てのバランスを強く持っていた所も大きな魅力でした。
入社後は、前職に引き続き、市場拡大と事業グロースに取り組んでいます。アパレルもコネクトのブランド事業も、最終的には基本的にはtoC(消費者向け)です。CRM視点でお客様との交流を通じて、価値ある製品をベストな形でお届けする。それを前提に、私が持っているファッションマーケティングの知見と、コネクトが持っているファンマーケティングの知見をクロスオーバーさせ、新たなビジネス領域を広げています。

「人」が起点となる「IP×ファッション」ビジネス
― 小柳さんにとって、「IP×ファッション」を軸とした事業の醍醐味は何ですか。
ファッションの世界では、デザイナーやディレクターというIP視点も当然ありますが、ブランディングやクリエイティビティや美的感覚、マーケティング戦略をベースにして事業を展開します。一方、コネクトが取り組む「タレントIP×ファッション」の事業では、「人」が起点となり、そこにファッションが加わるようなマーケティングになります。
タレントはいまの時代をまさに生きている存在です。過去の実績だけでなく、現在進行形の行動や実績によって価値が「リアルタイム」で変化します。その動きに、私たちがいかにスピード感をもってついていけるか、より良い商品やサービスを作れるかどうかが重要になります。
従来のブランド事業だけではできないことが、「人」と組み合わせることで独自の付加価値を生み出せることが醍醐味です。グッズ領域についても、製品自体のバリューアップとマーケティング要素を取り入れる事で、ファッション市場へ参入できるようになり、ひいてはマーケットを作り出すこともできると思います。そのプランを今まさに構想している段階です。
― 前職との考え方の違いや難しさはどんなところにありますか。
ファッション業界では、「市場の領域や感度」などの尺度で顧客層を分類するのが一般的です。しかし、人を起点とするIPビジネスでは、その基準がどこまで通用するのかが曖昧です。重要なのは、タレント自身の価値を高めると同時に、顧客にとっての体験や満足度、つまり「顧客側の付加価値」も引き上げることです。従来のやり方ではどちらかに偏りがちで、両方を同時に伸ばす取り組みは多くはないと思います。そこに新しい可能性を感じています。
とはいえ、タレントが人である以上、当然ブランドとしてコントロールできない領域も出てきますし、良好なときもあれば停滞するときもあります。私たちはタレントの所属事務所など他の関係者と連携しながら、状況に応じてプロモーションや展開の強弱を調整することが求められます。この柔軟性こそが、IPとファッションを組み合わせるビジネスの肝です。

ポップアップストアで得られた手ごたえ
― アーティストの岩田剛典さんがディレクションするブランド「GOD ONLY KNOWS」のポップアップストアも小柳さんが担当されたそうですね。
「GOD ONLY KNOWS」は、2024年12月にローンチしました。「FLUID(流動的)」をコンセプトに、ディレクターである岩田さん本人が良いと思うものをリリースしています。いわゆるタレントブランドというよりも、しっかりとしたブランドコンセプトがあり、かつクールさを求めている、非常に深みのあるブランドだと思います。
現在はディレクターを中心に、弊社メンバーを含む様々な方々と試行錯誤を行いながらプロジェクトを進めています。
これはファッションブランドにも共通することですが、ディレクターの意思をベースに物事を構築することを重視しています。良質なプロダクトや一貫性のあるブランディングにつながりますし、お客様にも熱意をもって作ったプロダクトであることが伝わります。
― 単発で終わりではなく、長期的にディレクターの思いがファンへ届くことにつながるんですね。
まさに、その点はポップアップで表現できたと実感しています。これまでは不定期のオンライン受注だけでしたが、ポップアップを行ったことで、メディアの反応も大きく変わりました。今回の企画でファッションの市場へ参入できたという手応えがあります。
開催場所についても、キックオフの段階から議論し、候補に挙がったのが「V.A.」でした。ショップのコンセプトが”Various Artists”である事、運営がJUNグループであることも大きなポイントでした。私自身、藤原さん、JUNグループのブランディングに強く共感していたので、その観点からも非常にふさわしい場所だったと思います。


― ポップアップがユーザーとの接点を新たに作り出す場となったのですね。
私自身、計画から運営まで一貫して携わり、IPとファッション領域のマーケティングの間を実際に目の当たりにすることができました。お客様の多くは岩田さんのファンである一方、会場はファッションに根差した立地や背景を持っています。両者が自然とクロスして、新しい価値が生まれる場になりました。
コネクトのメンバーも協力してくれて、本当に感謝しています。現在進行形で、私たちコネクトが本当にやろうとしていることが実現できていると実感しました。
― 藤原ヒロシさん率いる「fragment」とのコラボもインパクトがありました。
「V.A.」というバックグラウンドの元、藤原ヒロシさんとのお取り組みはプロジェクトとして相性の良さも高じて、オファーをさせて頂きました。もともと岩田さんと藤原さんの間に親交があったのも大きかったのですが、こちらが一方的にお願いするのではなく、自分たちの姿勢を示しながらフラットに接することができました。
それによって藤原さんにも「GOD ONLY KNOWS」というブランドに付加価値を見出してもらえて、うまくマッチングできたと思います。私のファッション領域での経験も活かすことができ、非常に円滑にプロジェクトを進められました。
今回、初のポップアップが非常に大きな話題になったことで、ブランドとして新しいアプローチが出来たのではないかと思っております。これまで参入しづらかったメンズ市場にも進出し、ファッションブランドとして業界の関係者の認知を得ることもできました。

― 「IP×ファッション」の領域は今後どのように進化していくと思いますか。
AI時代だからこそ、IPの付加価値はより増していくと思います。IPはいまを生きる財産であり、流動的なものです。AI発のIPは現在進行形で進化の一方、IP発のものは自動化出来るものではないと思っています。システムや業務面ではAI化が今後不可欠ではありますが、中身であるIPはもちろんアナログであり、唯一無二である事。言い換えるなら「デジタイズしたアナログ」というイメージでしょうか。その姿勢をあくまで崩さない事が今後の市場への勝ち筋になると思います。
今後、AIが世の中の大多数を占めるからこそ、逆にアナログに価値が出る。その象徴がIPであると私は考えています。
文:渋谷唯子
撮影:船場拓真
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KONNEKT INTERNATIONAL
アーティストやタレントのD2Cアパレルブランドのプロデュースをはじめ、ファンの求める熱量に応えるべく事業を展開しています。時代の変化スピードが速い中で、常に新しい体験作りやモノ作りを取り入れることが出来る環境で日々チャレンジしています。