55年ぶり2回目の大阪・関西万博への出展。タカラベルモントが表現する、変わりゆく「未来」と変わらない「美」 NEW
2025年4月13日に開幕する大阪・関西万博。理美容事業や化粧品・デンタル・メディカル事業など幅広く展開するタカラベルモント株式会社は「REBORN」をテーマとした大阪ヘルスケアパビリオンに出展する。1970年の大阪万博以来、55年ぶり2回目となる出展には、コロナ禍を経て気づいた“健康に基づいた美の尊さ”への思いが込められている。出展の経緯や背景を含め、広報室マネージャーの石川由紀子さんにお話を伺った。
石川 由紀子さん/タカラベルモント株式会社 広報室 マネージャー
大手広告代理店でトイレタリーメーカーや化粧品メーカーの担当営業、PR会社を経て2020 年入社。化粧品の広報を経て、コーポレート広報に従事。100年を超える会社の歴史や魅力、可能性を伝える活動を行っている。モットーは、「知恵と行動」。
コロナ禍を経て“健康に基づいた美”をコンセプトに
ー いよいよ開幕が迫った大阪・関西万博ですが、御社は1970年の大阪万博にも出展されたそうですね。
前回の大阪万博でのタカラ・ビューティリオンでは、理美容・医療機器の側面から「未来の生活空間」を展示しました。当時も今も、弊社は一貫して“美と健康の創造企業”として社会にメッセージを発信しています。
今回の出展の構想を練るにあたって、私は1970年の大阪万博で岡本太郎が制作した太陽の塔を思い返しました。あの太陽の塔のモチーフは何かご存じですか。実は縄文土器、ヴィーナスの土偶です。「“美”という概念は、どの時代でも変わらない」ことにもう一度立ち返り、万博だからこそ普遍的な概念を展示しようと考えました。

ー 太陽の塔が土偶をモチーフにしていたとは知りませんでした。人類にとって“美”は普遍的なテーマなのですね。
どんなにメイクやヘアカラーをしても、健康でいなければそれは無意味なものになります。数年前に新型コロナウィルスが流行し、それが落ち着いた時、「散髪や染髪がしたい」と思った方も多かったのではないでしょうか。“美”は誰かに見せるためではなく、人が人らしく生きるために必要なもの。人類は、コロナ禍において健康に基づいた美の尊さを学んだと考えています。
ー 美容と医療、まさに御社の事業そのものです。
実はコロナ禍、国は美容・理容と医療を別のカテゴリーとしていました。「理美容の仕事はエッセンシャルワークである」とし、保証の対象外としたのです。ただ、多くの人が自主的に外出を控えた時期でもありました。そのため、残念ながらコロナ禍を乗り越えられず廃業した店も多くありました。
2024年10月29日発表の令和5年度衛生行政報告例によると美容所(美容室)の店舗数は約27万店、理容所(理容室)は約11万店です。しかし今後は人口が減っていきますから、美容・理容いずれの市場も、淘汰されていくステージに入ります。国の医療費抑制の方針も明らかです。これからの時代、“健康に基づいた美”の視点から、医療に通じる価値を提供すること。これが、結果的に多くのお客様に価値を提供することになると考えています。

まだ見ぬ、光り輝く未来への挑戦を表現
ー 今回「大阪ヘルスケアパビリオン Nest for Reborn」ミライのヘルスケアゾーンにおいて、御社は「量子飛躍する美の世界(Quantum Leap for Beauty World)」をテーマにした展示をされます。内容について教えてください。
Quantum Leap(クオンタムリープ)とは、量子力学における「連続線上にないジャンプ」を意味する言葉です。「2050年は宇宙時代」と言われる通り、海外の研究からも、人間が宇宙空間に居住する時代は近づいてきているといえます。今後弊社も、例えば美容室を宇宙に作るようなことにも挑戦したいと考えています。
よって今回の展示のモチーフは“インフレータブル”です。インフレータブルとは、宇宙建築の構造物を、宇宙に運ぶために小さく折りたたんでロケットに載せる展開構造のことを指します。今回パビリオンではこれをモチーフとし、設計を行いました。また、「ビューティカード」を制作しました。これは、中に印刷されたQRコードを読み込むと、2050年宇宙時代の美のヒントとなるデジタルコンテンツに遷移するものです。

ー 前回の万博出展に続き、今回もユニフォームのデザインをコシノジュンコさんが手がけられるそうですね。どのような背景があるのでしょうか。
大阪万博でコシノジュンコさんがデザインされたユニフォームのスタイルは、パンタロンでした。1970年頃、若い女性はほとんどスカートを履く時代。当時、コンパニオンを務めてくださった女性のお父様から「うちの娘にズボンを履かせるなんて!」とクレームがあったとも聞いています。
しかしそこから55年経ち、女性のパンツスタイルはごく一般的となりましたよね。コシノさんは当時「これからは一般の女性が働く時代が来る」と考え、動きやすく、美しく見えるスタイルをデザインされたのです。
ー まさに未来を予測されていたデザインだったのですね。今回のデザインに込められた思いを教えてください。
今回のデザインテーマは「ジェンダーレスでワンスタイル」。コシノさんは「万博はやはり未来への挑戦。まだ見ぬ、光り輝く未来を想像してシルバーと白を採用した。動きによりさまざまな色に輝く美しさを見て欲しい」とおっしゃっています。
展示内容は未来の美を自己解釈できる空間で、ビューティカードはデジタルに繋がるブリッジツール。そして、ユニフォームで未来の美やデザインを表現することで、展示が完成します。社内公募で募った、20代から60代までの弊社の男女スタッフ全員が、こちらのシルバーと白を基調とした衣装を着用し、メイクを施してパビリオンでお客様をご案内します。宇宙と美を表現する弊社の展示が、お客様の宝物になるものであってほしいと思います。

“自分らしい表現”が許される時代だからこそ
ー 改めて、出展への想いをお聞かせください。
弊社は大阪の西成で創業し、大阪の人々に育てていただいてる企業です。大阪・関西万博への出展の決断も、実は代表の「大阪に恩返しをしたい」という思いが多分にあります。理屈ではない部分も大きいのです。
前回の大阪万博の際、弊社の資本金は1億円程度でした。それにも関わらず、出展には最終的に5億円を投じました。創業者は当時、懇意にしていた松下幸之助さんや大阪府知事から「本当に大丈夫ですか?」と心配されたと聞いています。そして結果的には、収支は赤字で終わりました(笑)。でも、ありがたいことに弊社はそこから成長することができました。創業者の孫である現在の代表は「大阪商人は、借金があるぐらいの方が頑張れるんや」とよく言っています。
ー 地域へ貢献するDNAが受け継がれているのですね。
はい。それと良い意味での「常識外れさ」を持った先輩方が弊社を大きくしたと思います。また、実は私は1970年生まれなのですが、同年代には「博恵」や「博之」など、万博の「博」という字を名前に持つ人がとても多いです。それを考えても当時の万博は、まさに日本経済の飛躍的な成長の象徴だったのだと思います。
ー 最後に、来場する方にメッセージをお願いします。
冒頭にお伝えした通り、私たちはコロナ禍を経験したことで「命があるからこそ“美”を考えることができる」と気がつきました。ぜひ弊社のブースにお越しいただき、人間が太古の時代から持ち合わせてきた“美”について、改めて考える機会を持っていただきたいです。
最近、「ルッキズム」という言葉がよく使われるようになりました。誰かに押しつけられる画一的な「美」に振りまわされず「私の“自分らしさ”はこれ。だからこういうファッション・メイクをする」と声高に言うことが、やっと許される時代になったと私は感じています。そしてそういう時代だからこそ、自分らしさについてのコア(核)を持つことはかけがえのない資産です。弊社のパビリオンが、あなたにとって自分らしさを考えるきっかけになれば幸いです。
文:梅原ひかる
撮影:船場拓真