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「心が震える音楽との出逢い」をカタチに Spincoaster 林潤氏

「心が震える音楽との出逢い」をカタチに Spincoaster 林潤氏

林 潤 Spincoaster
1986年 東京生まれ。2006年 株式会社ウィルゲートの創業メンバーとして学生時代を過ごす。SEOを中心にWEB制作、マーケティングを経験。2009年 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントに入社。音楽マーケティングやプロモーションを経験した後、新規ビジネスの企画セクションで数々のプロジェクトの立ち上げに携わる。2014年 株式会社Spincoasterを設立。
twitter : @_rinjun_

デバイスや視聴サービスの進化により、音楽ビジネスが急速に変化していく音楽業界。その中でインディペンデント精神旺盛な音楽ウェブメディア「Spincoaster」を始め、映像制作やミュージックバーや音楽アプリなどを手がけるのが株式会社Spincoaster。代表の林潤さんに、好きなことを仕事にすること、音楽業界の変遷とビジネス化などについて話を伺いました。

Spincoasterのオリジナリティとは?

―音楽ウェブメディア「Spincoaster(スピンコースター)」の特徴を教えてください。

世の中に音楽メディアは数多ありますが、それらとの違いは楽曲紹介がメインということ。“心が震える音楽との出逢い”をコンセプトに掲げて、自分たちの耳でちゃんと聴いて、いいと思った音楽を紹介しています。逆にいうと、いくら有名なアーティストでも担当がいいと思わなかったら扱わないということを徹底しています。レコードショップのバイヤーなどはまさにそうなのですが、そのような音楽に精通している人にオススメの音楽を聞くと、いい曲をピンポイントで紹介をしてくれるじゃないですか。自分は気に入ったバイヤーのおすすめ曲とそのポップを読むのが楽しみでお店に通っていたので、そのような体験をイメージしてサービスを作りました。他には、国内だけでなく海外のアーティストの楽曲紹介やインタビューも充実させているのが特徴です。

―単なる情報サイトではなく、血のかよった音楽サイトということですよね。音楽メディア以外にはどのような展開をしていますか?

他には「TOKYO SOUNDS」というYouTubeで発信している映像プロジェクトや、高品質なハイレゾとアナログレコードが味わえるミュージックバー「Spincoaster Music Bar」(この記事の取材場所)を手がけています。あとは、全国各地の音楽フェスの公式アプリを作ったりとか。最近では生配信での音楽ライブ情報をまとめたアプリ「TUNE」というのをリリースしました。

―なるほど。そのように様々な音楽サービスを展開している中で、最近の音楽ビジネスの変化についてはどのように思いますか?

音楽業界に限った話ではありませんが、テクノロジーが発達したことで、これまでのように多くの人手をかけなくても世界中の人に音楽を届けられるようになってきました。

インディーズアーティストの場合、メジャーアーティストのように多くの人が関わっていないので、レコーディング費用を自分で負担していれば、音楽配信の収益のほとんどが自分に入ってきます。ストリーミングは儲からないというイメージが世の中的にはあるように思いますが、楽曲数を増やしていきストリーミングでコンスタントに再生されれば、むしろ瞬間的に売れるCDよりも安定した収益になります。従来通りのグッズやライブ収益ももちろん関わる人数が最小限になればその分のリターンも大きくなります。世の中に知られていないアーティストでも、全体の売り上げは少なくてもメジャーアーティストより稼いでいる人は自分が知る限りでもたくさんいます。 そのような背景がありますので、音楽事務所やレーベルの在り方も徐々に変わってきていまして、アーティストに対して専属契約を結ぶのではなく、海外での事務所のようなエージェント的な関わり方をするケースが増えていくと思います。大手事務所に所属していたYouTuberやタレントが辞めていく一方で、その人たちをサポートする企業や個人が増えているのと同じような話だと思います。実はSpincoasterでもそういったエージェント的な関わり方をしているアーティストが徐々に増えてきています。

勝手にオススメ曲を紹介していた原点

―林さんご自身の経歴について教えて下さい。バンド活動もされてきたと聞いています。どうしてプレイヤーではなく、こういった届ける側になったんですか?

ギターは中学生の時に購入し、バンドは高校から始めていましたが、大学に入ってからは趣味の合うバンドメンバーを見つけられず、そうした中で始めたDJの方が楽しくなっていました。実はSpincoasterの初期からいるメンバーはその時のDJイベントで出会った人が多いです。もし大学時代に違う出会いがあったらプレイヤーとして今でもやっていたかもしれません。

―小さいころは、どんな音楽が好きでした?

UKロックとか聴いてました。小・中学生では、どの学年にも1人はいる、音楽についてはこいつに聞けばいい曲を教えてくれるというポジションだったと思います。そういう意味では、範囲は違えど音楽を届けるという今の形と同じことを無意識に好きでやっていました。

―新卒で、大手のレコード会社に入ったんですよね。大手をやめて、独立した経緯は?

レコード会社には5年ほどいて、業界のこともある程度理解し、入社当初からの希望だった新規事業の企画セクションにも入れました。様々な企画の立ち上げにも携わったのですが、新企画のアイデアとして海外では「Pitchfork」のような楽曲レビューがベースの音楽メディアがあったので、そういう楽曲紹介メインのサービスを立ち上げたいと考えました。でも音楽メディアには中立性が大事ということも意識していたので、そのレコード会社とは別でプライベートで一から立ち上げ、そこから1年ほど経った後、仕事の話も来るようになっていたので、当時副業が今ほど一般的でなかったこともあり会社をやめることを選択しました。独立をしてからはもう6年くらい経ちます。

―ビジネス上、大事にしていることはありますか?

当時から変わらない理念として「音楽を通じて人生を豊かに」というものがあって、そこにつながることしかビジネスにしません。サイト、映像、アプリ制作、ミュージックバーも全部そう。一つひとつに対して、都度、そのサービスの利用者や関係者が「音楽を通じて人生を豊かに」できるかどうかということを考えてサービス展開しています。

「Spincoaster」という会社が求める人材

―規模としては、正社員5名、業務委託2名。ほかにアルバイトが約10名くらいとお伺いしていますが、能力やキャラクターなど求める要素はなんですか?

主体的な人ですね。言われたことをやるだけで終わらない、さらにこうしたほうがいいと提案してくれる人です。もしくは、何もない中でも新しいことを積極的にやりたい人。これはどんな会社でもそうですが、ベンチャーだと一層重要かもしれません。それに将来的にも言われたことだけをやっている人は、いずれAIに取って代わられていくはずです。

―大企業とはちがう、ベンチャーの良さはなんだと思いますか?

小回りがきくことですね。大企業のように、上長の承認をいちいち待っていたらいつまで経ってもサービスローンチできません。一方で、ベンチャーの場合だと、企画からサービスローンチまで最短でできます。昔より時代の変化も早い今の時代だからこそ、この小回りがきくことは最大の強みだと思います。

例えば、最近では、2月頃からコロナが騒がれ始め、音楽ライブが次々とキャンセルになりました。もともと音楽ライブの映像制作はやっていたので、音楽ライブの生配信事業をやるという決断をし、その2日後には、実際に無観客での生配信ライブを実現させました。

それから現在、数ヶ月が経ち、今では50アーティストほどの配信に携わっていると思いますが、まだコロナきっかけで新規事業を始めようとしてサービスローンチできていない大企業はたくさんあると思います。

―ワークライフバランスとやりがいみたいなものは、どう考えていますか?

Spincoasterでは、先ほども話した理念の「音楽を通じて人生を豊かに」という目的に向かって事業を展開しているので、それぞれの人生を豊かにすることが事業の目的です。事業と自分の人生がリンクしているからこそのやりがいはあると思います。

音楽業界では、残業がどうとか、よく過労問題が取り上げられたりもします。でも、うちは基本リモートワークだしフレックス制です。基本、働く時間や場所は自分で決めてやってもらっていたり、自主性を重んじているので、やらされているという気持ちで仕事をしている人はうちにはいないと思います。

一方で、定時で決められた時間だけしか仕事のことを考えられないというのでは、好きでやっていない時点でそのことについて考える時間が圧倒的に少ないので差が付いてしまうと思いますし、あまり成長しないと思います。

―やりたいことだからこそ積極的にやれるのかもしれませんね。

もちろん仕事とは別に余暇で楽しむという形もありますし、そういう生き方もいいと思います。自分が小さい頃にも塾の先生から「自分の好きなことは仕事にしない方が良い。その仕事が嫌いになった時の息抜きがなくなるから」というようなことを言われたことがありますが、やはり自分はそれには反対で、好きなことを仕事にすることこそがそのことを深く楽しめる一番の方法だと思っています。全部知っていると、それが好きな人には一番楽しい。業界を知ると音楽やミュージシャン、プロデューサーからサポートミュージシャン、レコーディングエンジニアまで、そのまわりの環境まで全部見えて来るし、音へのこだわりなども精度高く見えてきます。それで、さらに楽しめるようになるんです。

変わりゆくメディアと今の時代の音楽ビジネス


―今の音楽を取り巻く環境や聴き方について教えてください。

今はストリーミングサービスのプレイリストが重要だと思います。例えばSpotifyでSpincoasterの「Monday Spin」という毎週月曜日更新のプレイリストをフォローしてくれれば、今ホットなアーティストを聴くことができます。国内外の音楽メディアが制作しているプレイリストをフォローしてチェックするのが一番ダイレクトに音楽を早く知れます。昔は雑誌とかでレビューなどを参考にしていましたが、今はいきなり聴ける。文字は聴いた後の補足情報でしかない。かつてはブログで音楽レビューする人がたくさんいましたが、今はあまり聞きません。同じように、テキストから映像に力点が変わりつつあったときに、これからは映像だということでうちの会社も映像制作を始めました。YouTubeで「スピンコースター」と入れて頂くと様々なアーティストのライブ映像やミュージックビデオ、インタビュー映像を見ることができます。

―見渡すと、映像プラットフォームとしての音楽メディアというのはあまり多くないですよね。

そうですね。今だとMcGuffinとかニートtokyoとかTHE FIRST TAKEとか。それ以降はなかなか目立ったのがないですね。映像はテキストよりもお金がかかりますし、参入障壁が高い。

―SNSについてはどうでしょうか?

InstagramやTwitterなどありますが、音楽を発信するという意味では、今はYouTubeが一番だと思います。あとはヒット曲は、TikTokからも生まれていますが、あの縦型メディアで人主体で映るというところで、どう音楽メディアとして成立させるかというのは課題ですね。

―普段から使っているというのは大切かもしれませんね。

そうですね。SNSに限らず、それこそ新しい世代の新しいアイディアで新たなメディアやサービスが生まれるんだと思っています。今の時代は、遊びを仕事にしやすい時代だと思います。どっぷりのめり込んだ遊びを仕事に変えていく。これから先の未来でも、ますますその傾向が強くなると思います。音楽に限りませんが、自分の好きな場所に身を置いたほうが絶対に人生を楽しめると思いますね。

text shinri kobayashi

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