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【連載①「大名古屋展2025」の裏側】名古屋を“選ばれる都市”へ。広沢一郎市長×ビームス・佐野明政さんが語る、まちづくりへの想い

【連載①「大名古屋展2025」の裏側】名古屋を“選ばれる都市”へ。広沢一郎市長×ビームス・佐野明政さんが語る、まちづくりへの想い NEW

今年で6回目の開催を盛況に終えた「大名古屋展」。主催者のビームス ジャパンが、企業や団体、スポーツチームとコラボして、名古屋・愛知の魅力を発信、シビックプライドの醸成、名古屋・愛知に足を運んでもらう機会創出を目指すプロジェクト。それだけでなく、地域をつなぐコミュニティの役割も担っている。本連載では「大名古屋展」プロジェクトリーダーの佐野明政さんがコラボ企業や団体の方々をゲストに迎え、名古屋・愛知のコミュニティが目指す未来について語り合う。

初回は、今年初めて参画した名古屋市の広沢一郎市長と佐野さんが対談。「大名古屋展2025」の成果から名古屋・愛知の将来像まで、公民連携で描く“選ばれる都市”への展望を語ります。

広沢 一郎さん/名古屋市長(写真:右)
愛知県名古屋市瑞穂区出身。慶應義塾大学経済学部を卒業後、ブラザー工業株式会社、伊藤忠商事株式会社を経て、1998年にITベンチャーの株式会社マグノリアを、2005年にキングソフト株式会社を起業。愛知県議会議員、名古屋市副市長を歴任したのち、2024年11月の市長選挙で初当選を果たした。

佐野明政さん/株式会社ビームスクリエイティブ ビジネスプロデュース部 プロデューサー(写真:左)
愛知県名古屋市出身。2000年ビームスに入社。2010年に修士号取得。ショップスタッフを経験したのち、アウトレット事業、ライフスタイル業態であるビーミングライフストアの立ち上げを手掛ける。2015年よりビームス ジャパンのプロジェクトリーダーを務め、立ち上げから現在まで、「日本の魅力的なモノ・コト・ヒト」を国内外に発信する数々の企画を主導。2019年、名古屋・愛知を盛り上げるイベント「鯱の大祭典」の象徴となる名古屋グランパスの選手ユニフォームのデザインオファーをきっかけに、「大名古屋展」を立ち上げた。2021年より現職。

公民連携で、コミュニティ拡大と情報発信力を強化

― はじめに「大名古屋展2025」を振り返ってみての感想を教えてください。

広沢一郎さん(以下:広沢)名古屋のみならず東京でも開催され、主催者のビームスさんをはじめ、参画企業のブランド力や影響力により、多くの方に名古屋の魅力をアピールできる絶好の機会となりました。

単なる一過性の催しで終わらず、この取り組みをきっかけに、名古屋に関わる一人ひとりがまちへの誇りを持ち、ほかの地域の方にも「名古屋っていいじゃん」と感じてもらえたら何より嬉しいですね。

― 名古屋市として参画企業とコラボレーションしたことに、どのような意義を感じられましたか。

広沢:行政の発信だけでは届きにくい層に、名古屋・愛知の魅力を伝えられたことです。我々が重点的にプロモーションしたい若者や子育て世代には、行政からの一方的なアピールがなかなか伝わりづらい部分もあります。だからこそ、若い世代にも親しまれているビームスさまはじめとする参画企業と一体となって発信し、ダイレクトにリーチできたことは大きな意味がありました。

佐野明政さん(以下:佐野):「大名古屋展」は地域のみなさんを巻き込みながら、“多くの方々に名古屋・愛知の魅力を届けていこう”という想いからスタートした企画です。ビームスが主に若年層に情報を届けられる理由は、「セレクトショップ」という言葉すらなかった時代から、バイヤーが選んだアイテムを若者にどう魅力的に見せるかを追求してきたことにあります。その延長線上に今があり、“どうすれば魅力がもっと伝わるんだろう”と常に考え、発信のあり方を磨きながら取り組んでいるんです。

さらに「大名古屋展」は、単に名古屋・愛知の魅力を広めるプロジェクトではなく、“企業や団体をつなげるコミュニティの場”でもある。私たちビームスの掲げているビジョンは「Happy Life Solution Communities」でして、明るく楽しい社会現象を起こし、すべての人が幸せになれるコミュニティを全社で目指しているんです。

だから、ビームスの事業であるビームス ジャパンが主催する「大名古屋展」も、毎年開催を重ねるなかで、僕たちがハブになり、名古屋・愛知の良さを広めるためのコミュニティ(共創の場)が少しずつ広がり、参画企業同士の新しい挑戦が生まれていることを嬉しく思っています。特に今年は名古屋市の後援を受けたことで、コミュニティの拡大が加速し、広報面でもご協力いただいたことで情報発信力もさらに高まりました。

広沢:名古屋の多様なプレイヤーをつなぎ、ともに未来を創るための強力なプラットフォームであることを実感しています。

「大名古屋展」を中心としたコミュニティが、名古屋市のシティプロモーションのブランドパートナー(名古屋の魅力や価値を創造・発信する企業や団体)と融合することで、より大きな相乗効果を生み出し、シティプロモーションの取り組みも加速するのではないかと感じているところです。

巨大交流圏の中心拠点となる名古屋の新たな可能性

― 数年後、リニア中央新幹線(以下、リニア)の開通が予定されていますが、名古屋市としてどのような将来像を描いているのでしょうか。

広沢:リニアの開業は名古屋市にとって大きなターニングポイントです。全線開業により、名古屋市は東京圏と大阪圏を合わせた約7,000万人規模、世界最大級の交流圏の中心都市として、日本全体の国際競争力を高めることにつなげていきたいと考えています。

具体的な取り組みとしては、名古屋駅を巨大交流圏の中心拠点にふさわしいスーパーターミナルとするほか、他地域の拠点機能の強化や民間再開発の促進など、民間のみなさんと連携しながら魅力ある都市づくりを進めています。

リニアが開業すれば、ますます多くの方が名古屋を訪れるようになるでしょう。そうした交流の中からグローバルに活躍するクリエイティブな人材や企業が集まり、新しい価値を生み出せる都市にしていきたいですね。

佐野:東京、大阪はすでに開発が進んでいますが、名古屋の玄関口である名古屋駅の開発はこれから始まりますよね。まだまだのびしろがある中で、僕たちは「大名古屋展」で培ってきたコミュニティや関係性を生かして、街づくりにもっと関わっていけないかと考えているんです。例えば、名古屋駅がニューヨークのタイムズ・スクエアのように世界中の人達が訪れるようなところにできないかな、とも想像しています。

この先の10年で、そんな楽しいことを「大名古屋展」でつながった行政や企業・団体のみなさんと一緒にできたら、それこそビームスが掲げるビジョンにつながっていくかもしれないと、夢のようにいつも考えていますね。

― リニア開通により可能性が広がる一方で、名古屋市が懸念している課題は何でしょうか。

広沢:東京をはじめとした関東圏への人口流出です。名古屋・愛知はインフラや子育て・教育環境も整い、交通の便が良く、働きやすく暮らしやすい都市なのですが、若者が東京に流出している傾向があります。

リニア開通で交通利便性が高まれば、人や経済が都市に吸い寄せられ地方が衰退する「ストロー現象」が進み、名古屋から人や企業がさらに流出し、名古屋がだんだん寂れてしまうのではないかという懸念もあります。

もちろん、明確な目的を持って上京する方も多いでしょう。ただその一方で、憧れやイメージだけで上京した方には、数年後に改めて名古屋に目を向けてもらい、暮らしやすさや魅力に気づいて「名古屋って、なかなかいいじゃん」と感じてもらえたら有り難いですね。

― 名古屋・愛知には魅力があるにも関わらず、それに気づかないまま地元から離れて暮らすのはもったいないことですね。

広沢:だからこそ、名古屋の魅力や価値をさらに高め、シティプロモーションを通して市内外に発信していく必要がありますね。そうした意味でも「大名古屋展」が果たす役割は非常に大きいと感じているのです。

今後も名古屋の都市ブランドをさらに強化しながら、人や企業に選ばれ、憧れられる都市づくりを行っていきたいです。

共創が描く、選ばれる都市への挑戦

― 市長は、今後の「大名古屋展」やビームスにどのような期待感をお持ちですか。

広沢:「大名古屋展」を通じて、名古屋の魅力を全国、ひいては世界に向けて発信することが、名古屋のさらなる発展につながると確信しています。また、これまでの実績から「大名古屋展」を軸に地元企業や市民を巻き込み、新しい価値を創出する力を持つビームスさんに大きな期待を寄せています。

ビームスさんのブランド力や影響力の大きさも実感していますが、プロジェクトの原動力となっている佐野さんの“名古屋に対する熱意”に何より感服しているんですね。やはり、佐野さんのように情熱を持って引っ張ってくださるリーダーがいなければ、良いアイディアがあっても実現には至らないでしょう。ビジョンを持ちながら実行力も備えたリーダーが率いるこのプロジェクトが、今後も継続的に発展していくことを期待しますし、佐野さんには引き続きご尽力をお願いしたいです。

佐野:ありがとうございます。ビームス ジャパンも僕個人も名古屋・愛知を愛する一員として、その魅力を掘り起こし、多くの方に伝えていきたいと考えています。「大名古屋展2025」では地域の多様な声を反映し、名古屋の魅力を広く発信する大きなきっかけとなりました。これから次のステージへ進むにあたり、名古屋市さんが抱える課題や目指していることを、僕たちがもっともっと実現できるんじゃないかなと感じています。

そのためにも、「大名古屋展」を中心としたビームスならではのコミュニティが、「地域経済の活性化」や「若者が活躍できる場の提供」といった名古屋の課題解決に貢献できるよう、これからも行政や企業と一緒に取り組んでいきたいです。

文:流石香織
撮影:Wataru Sato

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