TikTokのビューティーマーケティング最前線。共感から購買までをつなぐフルファネル戦略 NEW

ビューティーブランドは今、ユーザーへの最適な「伝え方」の模索や、購買に直結する検討層へのリーチ難などの課題に直面している。そうした中、TikTokでは、ビューティー関連コンテンツの投稿数が前年同時期比151%と大きな成長を遂げている※。なぜTikTokが新たなマーケティング戦略の起点となっているのか。本記事では、TikTok for Business Japanの武井俊一さん、大西聖斗さん、高木千尋さん、清水香奈衣さんに取材。オンラインでのフルファネル戦略から、リアルイベント「TikTok Beauty Fest」を通じたオフラインへの広がりまで、ビューティーマーケティングの現在地を探る。
※TikTok for Business調べ。TikTok社内データ
※写真右から
武井 俊一さん/TikTok for Business Japan, FMCG & Retail Unit, Senior Client Manager
高木 千尋さん/TikTok for Business Japan, Senior Client Partnership Manager
清水 香奈衣さん/TikTok for Business Japan, FMCG & Retail Unit, Client Partnership Manager
大西 聖斗さん/TikTok for Business Japan, Global Branding Unit, Client Partnership Manager
TikTokでビューティーが人気な理由とは
― TikTokではビューティー関連コンテンツの投稿数が前年同時期比151%と急成長しています。この背景にはどのような変化があるのでしょうか。
武井 俊一さん(以下、武井):ビューティー関連は以前から人気のカテゴリーで、従来は若年層のユーザーを中心にメイクアップコンテンツが牽引していました。直近は、ミドル層が増加し、エイジングなどの悩みに寄り添うスキンケアコンテンツが大きく伸びています。幅広い世代が美容に関する情報を求めるようになったことが、カテゴリー全体の成長につながっています。
― TikTokは、なぜビューティーと相性がいいのでしょうか。
武井:カテゴリーによって理由は異なります。例えば、メイクアップは「夢を売る」要素の強いコンテンツです。すっぴんから美しく変身していく過程は、縦型短尺動画の全画面フォーマットが持つ没入感や臨場感と非常にマッチしています。
スキンケアのコンテンツはお悩みに対する解決策を提示するケースが多いため、成分や便益だけを語ると静的になりがちです。対して、TikTokのクリエイターは、使用前後のビフォーアフターをテンポ良く見せたり、視聴者を引き込むエンターテインメント性を交えたりすることに長けています。静的な情報を、動的なコンテンツへと昇華させている。それが、このカテゴリーの成長を後押ししています。
― ユーザーやコンテンツが変化する環境下で、ブランドのマーケティングにはどのような発信やコミュニケーションが求められますか。
武井:商品自体の成分や本質的な便益は変わりません。一方で、TikTok上のトレンドや、ユーザーの間で発話されるテーマは日々スピーディーに変化しています。そのため、商品の価値はそのままに、今どのようなコンテンツが受け入れられやすいのかをキャッチアップし、ユーザー文脈に即した伝え方に最適化させることが重要です。メッセージをTikTok向けに変換することが、成果を生むカギになるでしょう。商品は変わらない。変えるべきは、届け方です。

TikTokマーケティングが成果を生むワケ
― ビューティーカテゴリーについて、広告主の成果が飛躍的に伸びている背景を教えてください。
大西 聖斗さん(以下、大西):大きく2つあります。まず、TikTok上のビューティーカテゴリー自体が成長し、ユーザーが日常的にコスメやスキンケアの情報に触れる環境が形成されている点。もう1つは、購買に直結しやすい「検討(ミドルファネル)層」の醸成に重きを置く企業が増えている点にあります。
TikTok for Businessには、どのファネルにどれだけのオーディエンスがいるかを可視化できる分析ソリューションがあります。現状を把握した上で「Brand Consideration」などを適切に活用する。その設計の精度が、高いコンバージョンを生み出しています。
― TikTokマーケティングで成果を生む企業には、どのような共通点がありますか。
大西:商品の良さとTikTokライクな伝え方をうまく融合し、プラットフォーム内で流行っている表現やフォーマットに合わせて発信しています。さらに、認知・検討・購買のどの段階に向けた動画なのかを明確にして、ファネルに合わせてコンテンツを使い分けているのも特徴です。伝える内容は変えずに伝え方を最適化し、ユーザーに合わせたコミュニケーションを設計することが成功の共通点だと捉えています。
― では、ブランドの発信とクリエイターの発信では、役割はどう違うのでしょうか。
大西:ブランドによる発信は認知の獲得、クリエイターによる検討・理解促進、とそれぞれが得意とする役割があります。TikTokのユーザーは、作り込まれた広告よりも、実際の使用感やレビューなど共感性の高いコンテンツを重視する傾向があります。
飾らないクリエイターの発信がミドルファネルのギャップを埋め、購買の意思決定に強く影響する。ブランドで広く認知を獲得し、クリエイターを通じて理解と納得を深めるのです。この連携が、成果を最大化させます。

「TikTok Beauty Fest」が証明したオンラインとオフラインをつなぐ購買動線
― 昨年から「TikTok Beauty Fest」が開催されています。どのような意義があるのでしょうか。
高木 千尋さん(以下、高木):TikTokでの記憶に残りやすい視聴体験は、オフラインでの購買促進につながることがデータでも証明されています。本イベントは、オンラインでの体験とオフラインでの購買をより近づけるための場として開催しました。ターゲットユーザーとブランドが直接エンゲージできる機会を提供できたことに加え、動画では伝えきれない体験を提供できる点にも、大きな意義があります。
例えば、メイクアップアイテムなら実際の発色や色持ち、スキンケアやボディケアなら香りや肌質との相性など、動画では伝えきれない嗅覚や触覚へもアプローチできます。お客様とブランドが直接会話をし、製品への理解を深めてファンになっていただける点は、オフラインならではの強みです。
― 五感で届ける、ということですね。第2回開催を通じて見えてきた実績や、前回からのアップデートについて教えてください。
高木:第1回は「渋谷スクランブルスクエア」で開催し、美容関心層に絞らず広く関心を持っていただける場としました。一方、第2回は「@cosme TOKYO」を舞台とし、より美容に特化した層へアプローチする形へとアップデートしています。
結果として、来場者数も5,000人超を記録するなど、非常にポジティブな結果となりました。また、前回はサンプリング体験が中心でしたが、今回は同じ会場内に売り場があるブランドもいらしたため、体験からそのまま購入できるスムーズな購買動線を実現できた点も大きな進化です。
― 協賛したブランドからは、どのような反響がありましたか。
高木:美容関心層と直接オフラインで関われる機会として、非常に高い評価をいただきました。ドラッグストアやバラエティストアで展開されているブランド様は、普段は消費者からの直接の声が届きにくいという課題を抱えています。今回のイベントはその課題を解決する場にもなりました。
実際に美容部員を通じて商品の機能や良さをお伝えしながらリアルな反応を得られ、売り上げへの直接貢献も確認できています。オンラインで育てた熱量を、リアルの場で購買へとつなげる。その循環こそが、「TikTok Beauty Fest」が目指す姿です。

TikTokが描くビューティーマーケティングの未来
― TikTokを活用したマーケティングは、今後どのように進化していくとお考えでしょうか。
清水 香奈衣さん(以下、清水):先日、当社は新たなグローバルポジショニングとして「Watch it. Love it. Want it.(見つける。ハマる。欲しくなる。)」を発表しました。ユーザーがコンテンツを見つけて共感し、最終的に購買やアクションに至るまでの一連のプロセスを、プラットフォームの強みとして表現しています。
これまで分断されがちだった認知から購買までのステップが、TikTok内ではシームレスにつながる。フルファネルのコミュニケーションがプラットフォーム内で完結し、ビジネスインパクトを生み出せます。それが、今後のマーケティングにおける最も重要な強みです。
― なるほど、では、2025年6月に日本でローンチされた「TikTok Shop」はどのような役割を担うのでしょうか。
清水:発見から生まれたユーザーのポジティブな感情や熱量を、購入へとつなげる役割です。動画視聴やコミュニケーションの中に購買体験がストレスなく溶け込んでいるのが特徴で、エンターテインメントとコマースが分断されない一気通貫した体験を提供します。日本国内でも成長を続けており、まだまだ大きな伸びしろがあります。
― ビューティーブランドがTikTokを活用してビジネスインパクトを出すためのポイントを教えてください。
清水:2つあります。1つは、日々変化するトレンドをいち早くキャッチアップする適応スピード。もう1つは、ブランド独自のオリジナリティと納得感を持たせることです。ユーザーは完璧に作り込まれたものよりも、共感できるリアルな姿を求めています。クリエイターの飾らない発信とテクノロジーを掛け合わせることで、ブランドの持続的な成長につながっていくはずです。
― 改めて、ブランドにとってTikTokはどのような存在になっていくと思いますか。
清水:単なる広告媒体ではなく、ブランドとユーザーが出会い、共感が生まれ、購買まで完結する場所です。「Watch it. Love it. Want it.(見つける。ハマる。欲しくなる。)」というポジショニングが示す通り、TikTokはブランドの成長を一気通貫で支えるプラットフォームへと進化しています。その可能性は未知数ですね。

文:中谷藤士
撮影:船場 拓真