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女性営業職の声が、制度を変えた。ダイドードリンコ「BLOOM」から広がった、現場発のダイバーシティ

女性営業職の声が、制度を変えた。ダイドードリンコ「BLOOM」から広がった、現場発のダイバーシティ NEW

飲料自動販売機(以下、自販機)の需要が伸び悩むなか、飲料メーカーの営業現場はいま、大きな転換点を迎えている。価格競争ではなく、顧客の経営課題に寄り添う提案へ。その担い手として多様な人材を生かそうと、ダイドードリンコ株式会社はダイバーシティ推進に力を入れてきた。なかでも、男性が多数を占める営業現場の女性活躍は大きなテーマだ。少数派だった女性社員が現場で感じた課題は、社内の制度づくりや社外へとつながっている。こうした動きの起点にあるのが、2024年に発足した女性営業職のネットワーク「BLOOM(ブルーム)」だ。会社を動かしてきた歩みと目指す姿を、ダイバーシティ推進グループの3名に聞いた。

井阪 愛歩さん/ダイドードリンコ株式会社 自販機事業統括部 事業戦略グループ 兼 ダイバーシティ推進グループ アシスタントマネージャー(写真:中央)
新卒でダイドードリンコ株式会社に入社し、自販機営業に従事。現在は顧客企業の課題に寄り添い、自販機の新たな価値を提案する顧客ソリューション担当として働く一方、「ダイバーシティ推進グループ」に所属。女性営業社員のネットワーク「BLOOM」を主催している。

大植 あかねさん/ダイドードリンコ株式会社 自販機事業統括部 ダイバーシティ推進グループ 兼 インサイドセールスグループ リーダー(写真:右)
住宅メーカーでの営業職を経て、2022年にキャリア採用でダイドードリンコ株式会社に入社。インサイドセールスに携わりながら、「ダイバーシティ推進グループ」に所属し、「BLOOM」の企画・提案活動に取り組む。

奥川 美優さん/ダイドードリンコ株式会社 自販機事業統括部 ダイバーシティ推進グループ 兼 インサイドセールスグループ(写真:左)
2021年、ダイドードリンコ株式会社に入社。法人営業の現場を経てインサイドセールスに従事。「ダイバーシティ推進グループ」を兼務し、「D休暇」の提案・制度化や、飲料と女性用衛生用品を買える「女性活躍応援自販機」の企画に携わってきた。

変革が求められる現場で、女性営業職が集う「BLOOM」

― まず、みなさんが働く自販機営業の現場について教えてください。

大植 あかねさん(以下、大植):年々、自販機を取り巻く環境は厳しくなっています。飲料業界でも自販機は飽和状態にあり、設置台数や人口が減る一方で、原材料や物流などのコストは上昇しています。加えて、スーパーなどでは飲料が安く販売され、価格だけで競ってもなかなか勝ち目がありません。そこで求められるのが、ダイバーシティの視点を取り入れ、多様な視点を生かしながら、自販機を使ってお客様の経営課題に寄り添う提案です。

とはいえ、当社の自販機営業では女性社員が少数派です。2026年8月時点で、約400人いる営業職のうち、女性は28人ほどで全体の7%です。

― 当初、「BLOOM」はどのような目的で立ち上げられたのですか。

井阪 愛歩さん(以下、井阪):いちばんの目的は、女性営業同士がつながれる場をつくることです。もともと少なかった女性営業社員はキャリア採用で一気に増えたものの、それでも各エリアにまだ1人か2人しかいませんでした。“女性同士のつながりがほしい”という思いから、自販機の新規営業を担う女性営業職が集える「BLOOM」を発足したんです。

発足から約2年が経ち、現在は「BLOOM」の役割も少しずつ変わってきました。全国にネットワークを構築しただけではなく、営業スキルやノウハウを学び合う研修なども実施し、自身の営業スタイルやキャリアを見つめ直すきっかけを提供する場へと役割を広げています。

不安を抱えた女性営業職が、より前を向ける場所を提供

― つながりを目的として発足した「BLOOM」ですが、立ち上げ前、女性営業職はどのような不安を抱えていたのでしょうか。

奥川 美優さん(以下、奥川):「この先も自販機営業を続けていけるのだろうか」「将来、自分がどんなふうに働いているのかイメージできない」といった漠然とした不安がありました。

井阪:その背景には、様々な働き方を身近で見る機会が少ないということがありました。以前は、結婚や出産などのライフイベントを機に内務職へ異動する女性社員も多く、現役で営業を続ける先輩は男性が中心でした。だからこそ、女性営業職としての将来像や働き方を思い描きにくい部分もあったのかと思います。 

― 「BLOOM」が立ち上がったことで、その不安はどのように変わりましたか。

奥川:自販機の女性営業職として活躍し続ける姿が、以前よりイメージしやすくなっているようです。同じ立場の仲間と集まり、ほかのメンバーの働き方を知ることで、自分のキャリアを考えるきっかけになっています。

井阪:また、さまざまな悩みを共有できる場ができたことで、仕事を続けることに対して、より前向きな気持ちになれていると感じます。「BLOOM」では、女性営業職が抱える悩みや不安も共有でき、「自分だけじゃない」と安心できることで、もう少し頑張ってみようと思ってくれる方も増えていると感じます。

加えて、仕事上の工夫やキャリアだけではなく、女性営業職を続けるために利用できる会社の制度も共有できるので、「これからも自販機営業を続けていける」と前向きな気持ちになってもらえていることが、最も大きく感じる変化ですね。

大植:「BLOOM」は社内での存在感も高まってきました。昨年はメンバーが従来の自販機販売にとらわれず、自由な発想と女性ならではの視点で事業企画を考え、経営層にプレゼンを実施しました。こうした活動を重ねる中で、上層部からも少しずつ注目していただけるようになったと感じています。

BLOOMグループワークの様子

現場発の提案が、会社の制度と組織を動かす

― 「BLOOM」をはじめ、ダイドードリンコではダイバーシティ、とりわけ女性活躍の取り組みを進めています。女性営業職として働く中で「ここは変えてほしい」と会社に改善を提案した事例があれば教えてください。

奥川:一例として、ダイバーシティ推進グループを兼務する私が人事総務部とともに制度化に携わり、2024年7月に導入された「D休暇」があります。生理や更年期、不妊治療などのデリケートな事情で休みたいとき、理由を上司に詳しく伝えず、月1回、有給扱いで取得できる休暇制度です。その取り組みを「DyDoチャレンジアワード(※)」に応募したところ、過去1年間に実行された従業員によるチャレンジのうち、企業価値向上に特に貢献した取り組みを表彰する「チャレンジ部門」で表彰されました。

以前から婦人科関連の休暇制度はありましたが、名称がストレートで申請しづらく、無給扱いのものもありました。社員へのアンケートから取得のハードルが高いことが分かり、気兼ねなく休めるよう、D休暇を設けたんです。その結果、一定数の社員が活用し、「本当に助かった」という声も挙がっています。

※年1回、全社員から部門を超えてアイデアを募り、社員投票で選ばれた企画の実現を目指す取り組み。

大植:また、2025年7月からは「サンキューD制度」も導入されました。育児や介護などで休業する社員の業務は他のメンバーがカバーするため、休業する側は職場に気を遣ってしまうことがあります。そこで、安心して休めるよう、復帰時に業務を負担したメンバーへ、インセンティブを支給する仕組みです。

井阪:私自身、今年5月に産休・育休から復帰しましたが、サンキューD制度があることで同僚に感謝を伝えながら、自分に合った働き方を選びやすくなったと感じています。

女性活躍の取り組みが、人事制度とつながるまで

― ダイドードリンコでは、多くの企業にとって難しい「ダイバーシティの活動を人事制度や働き方の仕組みまでつなげること」を実現できていますね。

井阪:営業現場の課題を起点に活動してきたことが大きかったのだと思います。ダイバーシティ推進グループは自販機事業統括部と人事総務部のそれぞれにありますが、業務上の課題感は異なり、私たちはより営業現場での悩みやキャリア、人事総務部は会社全体の制度や組織についてでした。私たちの感じている悩みや課題の話が、どう制度に連動するかイメージしにくいと感じていました。 

しかし活動を続ける中で、制度をどのように活用するか、また営業現場の悩みを解決するにはどのように制度が変われば良いのかなど、より具体的な話ができるようになったと思います。そして、人事総務部との接点も増え、今では「働きやすい環境をつくる」という方向性が重なっています。

大植:それを象徴するのが「BLOOM」での活動です。以前は営業現場の悩みや営業スキルを扱う活動が中心でしたが、いまは社外の企業と交流し、女性活躍について学び、自社の制度を知る機会も設けています。すると、メンバーが自分のこれからの働き方やキャリアを考え、そのために会社の制度をどう活用できるかまで考えるようになり、人事・人材戦略との接点も生まれている状態です。

左から:井阪さん、奥川さん、大植さん

一人ひとりがロールモデルを見つけ、成長できる組織へ

― ダイドードリンコのダイバーシティへの取り組みは、社外にどのように広がっているのでしょうか。

奥川:新たな企業とのつながりも生まれています。ダイバーシティ推進グループでは、飲料とともに女性用衛生用品を購入できる「女性活躍応援自販機」を企画し、2023年10月に展開しました。「BLOOM」の女性メンバーを中心に営業を進め、現在は全国で300台近くまで広がっています。

当時、ほかの飲料メーカーにはなかった取り組みで、女性活躍を進めたい企業から好意的な反応をたくさんいただきました。自販機を置くことで、企業が女性活躍に踏み出すきっかけを提供できていると感じています。

井阪:この取り組みを見た企業様から「一緒にやりたい」とお声がけをいただくこともありますね。実際に、フェムケア関連の企業様から「自社の商品も自販機で販売できないか」と打診をいただくこともありました。 想定以上に社外から関心を寄せていただき、新たなつながりが生まれています。

― これから、「BLOOM」をはじめとした社内のダイバーシティへの取り組みで、どのような未来を描いていきたいですか。

大植:「女性活躍」から「一人ひとりの活躍」へ広げていきたいです。自販機営業部門の女性同士のネットワークの強化を目的に立ち上げました。ただ最近は、若手社員から「なぜ女性だけで集まるのか」という声も出てきて、「男性だから、女性だから」と分けて考える意識は薄れてきたと感じます。

今後は女性営業社員に限らず、性別や年齢、部署なども越えて交流でき、誰もがキャリアや働き方を考えられる場にしたいですね。「こんな人になりたい」と思えるロールモデルに出会い、グループ各社や海外拠点も含めてつながりを広げることで社員が学び合い、成長できる組織を目指しています。

文:流石香織
撮影:船場拓真

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