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一人ひとりの個性を尊重することでイノベーションを生む—3rd inc. 川村匡慶氏×リステア清水博之氏が語るこれからの雇用

一人ひとりの個性を尊重することでイノベーションを生む—3rd inc. 川村匡慶氏×リステア清水博之氏が語るこれからの雇用

ファッションからライフスタイルプロダクトまで、複数のD2Cブランドを展開する3rd inc.(サード)と日本のファッション業界に刺激を与え続けてきたセレクトショップ「RESTIR(リステア)」を展開する株式会社リステア。業態も異なり一見共通点のなさそうな両社だが、ファッション業界の未来を見据えた新しいチャレンジをしている点においては大きな共通点がある。ファッション業界でのキャリアを持続可能なものにするために新たな制度をつくるなど積極的に変革に取り組んでいる両社代表、3rd inc.川村匡慶さんとリステア代表取締役社長の清水博之さんにインタビューを行った。

川村 匡慶さん/3rd inc. 代表取締役(写真左)
2011年、24歳の時からファッション系スタートアップの創業に関わり、製品製造、EC運営、物流、マーケティングなどの業務立上げからグロースを経験後、2016年に3rd inc.を創業。日本を代表するブランドホルダーを目指し、ファッション、ドリンク、器など幅広いジャンルのD2Cブランドを自社展開。準備中を含めて現在15ブランドを運営中。2020年からは欧米、中国向けに自社ブランドの海外展開も行っている。

清水 博之さん/株式会社リステア 代表取締役社長(写真右)
2004年、リステア入社。銀座店の販売スタッフ、メンズセクションのマネージャーを経て東京ミッドタウン店のオープニングからメンズのバイヤーとして従事。2008年からは東京ミッドタウン店の店長とメンズバイヤーを兼務。2012年に執行役員としてEコマースなどリステア事業全般の責任者としてジェネラルマネージャーを経て、2019年に代表取締役に就任。

3rd inc.とリステア。両社ともにアート性の高いブランドや商品を展開していますが、それぞれのビジネスに対する考え方とは?

川村さん(以下、敬称略):3rd inc.のベースにあるのは「好奇心を仕組みにする」という発想です。会社全体としていわゆる右脳的な思考とロジカルな思考を両立させて、芸術家であり商人でもある事を目指しています。儲かるからやるのでは無く、まず自分達が高揚するもの、欲しいと思えるものを作り、それをいかに事業として成立させるか。自分たちが一番楽しんでいるからこそ、それがお客様にも波及し愛されるブランドになっていくと考えています。その為には、自分がやりたいことと会社の事業内容がリンクしているかも重要で、実際に社内メンバーからの発案がきっかけでスタートするブランドも半数ほどあります。一旦コンパクトにはじめてみるなど、スタートする規模はさまざまですが、一人ひとりの「やりたい」という熱意を形にすることも大切にしています。

僕らはブランドをつくっていますが、あまり“モノ”にはとらわれず、それよりも“ブランドという概念”を大切にしています。いずれ世の中のベースが仮想現実=メタバースに変わると言われていますが、もしそうなったときには“モノ”ではなく“意味”しか残らないと思っていて。そうなると選ばれる理由が「好き」や「憧れ」など感情的な動機が最重要となるので、ブランドという概念がより価値を持つと思うんです。なので、”人の感情を動かす”という軸のもと、扱うプロダクトのジャンルもかなり多岐に渡っています。実際に今準備中のもので、バーチャルで完結しフィジカルなプロダクトを持たないブランドもあります。

清水さん(以下、敬称略):リステアはいま企業理念をアップデートするところなのですが、ベースには「ファッションの価値を見出し発信して、人生をより豊かなものにする」という考えがあり、そのために掲げているミッションが「WOW!」です。お客様だけでなく、自分たちも含めて「WOW!」という驚きを与えることを大切にしています。そしてもう一つが「ファッションマイノリティをターゲットにする」ということ。生きるためだけの洋服なのであれば、暑さや寒さを防いでくれさえすれば何でもいいはずですが、そこでブランドものやデザインのあるものを着るというのは人間ならではの欲求です。それによって何が得られるかというと、人生を楽しく豊かにしてくれるからで、実際に洋服なんてなんでもいいという方も大勢いらっしゃいますが、そのなかで我々がどこに向けてビジネスをしていくのかを考えたときに、やはり同じような価値観を持つ方や我々の価値観を理解してくれる方に向けてビジネスを展開していく必要があると考えています。もちろんビジネスだけを考えればマスに広げることもできますが、それをしないのは自分たちのアイデンティティを守るためでもあります。だからこそ、「ファッションマイノリティをターゲットにする」ことを重要と捉えています。

また「ファッションの価値を発信する」という理念から、供給が過剰なこの世の中でどういった商品を提案していく必要があるか、それはファッション性且つデザイン性が高く、ストーリーが明確でクリエイティブであることはもちろんですが、一番重要としているのは、自分たちが本当に心から良いと思うかどうかということです。それに準じて、洋服だけに限らず、アートやデジタルガジェット、またイベントなどの体験など、様々なファッションの価値を発信しています。

―ECで成功している点も共通点の両社ですが、働いている人材も個性の強い方が多いです。組織のカルチャーづくりについて教えてください。

川村:カルチャーづくりにおいて大事にしているのは「自分でやりたいことをやれているか」ということです。僕は基本的に個人のポテンシャルや能力というものをすごく信じていて、内発的動機に基づいて働く環境がその人の一番のパフォーマンスを発揮できると考えています。いわゆる細かいマネジメントをしてトップダウンで事業を行うのでは無く「3rd inc.が目指しているものと自分のやりたいことがリンクしているのか?」「やらされてるのでは無く自発的にやっているのか?」を大切にしています。だからこそ社内メンバーからの「こんなブランドがつくりたい」という発案からブランドができたり、ブランドの企画が持ち込まれた時に「私がやりたい」と声があがるのだと思います。自分だったらどうしていきたいかを積極的に発言できるような環境づくりをしています。

清水:川村さんのおっしゃることにはすごく共感できますね。我々が「WOW!」のミッションをなぜ出したかというと、お客様への驚きに加えて、社員それぞれが個性を発揮してアイデアを提案することを求めているという背景があります。トップダウンのやり方でビジネスを拡大することは難しいと思っていますし、今の世の中を見ても、特に古いアパレルの慣習はとっくに通用しない時代に突入していますから、どんどん新しい発想やチャレンジが必要で、それには僕一人の力では限界があります。ビジネスを広げるためにも、会社に関わるメンバー全員がいろんな意見やアイデアを出すということは必要不可欠です。だからこそ、同じような個性のスタッフばかりが集まってもイノベーションは生まれないので、バラバラの個性が自然と集まっているのかもしれません。

もし個性がすごくあるけれど会社に募集しているポジションがない場合は、採用するためのポジションをつくって採用することもあります。我々の組織図は常に新しい取り組みがあるので非常に流動的に動いていくこともあって。例えばこの間も神保町にある小宮山書店とパートナーシップを組み、“KOMIYAMA TOKYO at RESTIR”というショップをオンラインストア内にオープンしたのですが、こういった取り組みをするためには洋服の知識だけではなくアートや写真に精通した知識ある人材が必要になってきます。この先もこのような新しい取り組みをはじめる可能性がたくさんあるので、現時点でリステアに必要ではなかったとしても、突出した個性や知識を持った方であれば積極的に採用していきたいです。

―両社ともに人を大切にしていますが、強い個性を持った人たちの能力を生かすために取り組んでいることはありますか?

川村:働き方の面で、いま原則3rd inc.には出勤義務はなく、時間の拘束も一切ありません。それよりも結果にコミットメントしてもらえればいいと思っているので、例えば携わっているブランドのKPIが達成できているのであれば、それ以外のことはなにも言いません。これは、僕自身が過去に働いていたときの経験からでもあるのですが、あれもこれもと縛ってしまうよりも、まず根本的にその人の人間性を信用して、きちんと結果が出せているかを注視するようにしています。給与面に関しても、本人が結果を出せば出すほどリターンが入っていく仕組みをつくり、逆にプロセスを評価するということはしていません。KPIを達成して数字が出ていれば、事前に設定したフィーが入ってくるので、結果が出たぶんだけリターンがあるし、なければリターンはない。年齢や在籍年数での忖度、他のメンバーとの横並びを考慮した評価もしません。これは、これまでに自分がやってきたことに対して納得のいく評価が得られず、勤めていた企業を辞めて独立や転職する人を多く見てきたので、このような制度をつくりました。社員を囲うのではなく、いずれ一人ひとりが分社化していってもいいと思っていて、それが結果として個人にも会社にとっても持続的な発展に繋がると思っています。

清水:リステアでも、販売スタッフすべてが正社員であることにこだわっておらず、販売契約というものをつくっています。これまで販売スタッフは朝出社して夜に退社する、長時間勤務が当然でしたが、そのなかでも多くの顧客を担当するトップセールスのスタッフは、たった1時間、時には数十分だけの接客で数百万円もの売上をつくってきていた。もちろん正社員としてお店をマネージする立場の人は必要ですが、販売が強みのスタッフを時間で縛るのは間違っていると思っていて、実際に8時間もお店にいる必要はないんですよね。いまリステアでは顧客の来店に合わせて1〜2時間接客のために出勤する販売契約のスタッフが4人ほどいます。これは、もともと一人のトップセールスのスタッフが新しく事業をはじめたいと退職の相談をしにきたときにつくった契約で、そのスタッフにとっても事業をはじめる際に安定した収入があったほうが安心もできるし好きな販売職も続けられるという、一つの成功例になりました。

―両社がいま求めている人材とは?

川村:例えば起業家のように、自分で形にしたい“モノ”や“ヴィジョン”がある人や、やりたいことが明確でそれをやりきることができる人です。会社はそれを実現するための場を提供します。 現在の3rd inc.もコンサルティング会社出身者やweb系広告代理店などいろいろなメンバーが集っているので、出身業界は問いません。ファッション業界経験者じゃなくても、アート性の高いものなど心が豊かになるものに興味があって、それをプロジェクトとしてやりきれるメンバーを求めます。他社で働きながら副業として3rd inc.でやりたいことをやっているメンバーも多く、正社員の働き方以外でも関わりはさまざまです。今度、10月に新しくノンアルコールドリンクのブランドがローンチするのですが、それもプロジェクト単位で集まったメンバーがレベニューシェアを決めてプロジェクト管理しています。1社だけにいるとできることがどうしても減ってしまいます。個人で動きながら、また新たなつながりが生まれたり、良いシナジーが生まれていけばいいと思っています。

清水:販売契約スタッフは、同じような競合ジャンルは厳しいですが、例えば宝飾ブランドなど違うジャンルの方々にどんどんチャレンジしてもらいたいと思っています。その方がお客様のご要望に応えられる幅が広がりますし、そのスタッフ自身のコミュニティも広がって、知識も増えてメリットばかりです。また、正社員もあくまでパフォーマンスがしっかり出せていることが前提ですが、副業も許可しています。僕自身、販売職経験が長いので面白さも大変さも理解していますが、今後デジタルがさらに増えてお店で買う必要がなくなる時代になっていくと、お店に来る大きな目的の一つが“人とのコミュニケーション”になってきます。いまは昔に比べて販売職の価値が低くなっているように感じますが、これからの時代における販売職の重要性を考えると、もっと価値を向上していく必要があります。そのためにも朝から晩までお店の中で働くという環境を見直す必要がありますし、違う場所で働くことのメリットも考えていく必要があります。いまも販売契約のスタッフは随時募集していますが、宝飾以外にもインテリアやアート関連、車の販売など、リステアとの相性が合えばどんなジャンルでも歓迎しています。

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”こんな世界やモノがあったらいいな”という想いをブランドとして形にする企業です。
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