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”つねに新しく、つねにクラシック” 変わらないといわれるために変わりつづけることを使命とする会社です|株式会社マディソンブルー 取締役/COO 地主 晋さん

”つねに新しく、つねにクラシック” 変わらないといわれるために変わりつづけることを使命とする会社です|株式会社マディソンブルー 取締役/COO 地主 晋さん

2014年のデビュー以来、高い人気を誇るブランドがマディソンブルーだ。感度の高い女性たちの圧倒的な支持を得ており、現在はメンズも展開する。今回は、マディソンブルー 取締役/COOの地主 晋さんにビジネス、クリエイションの両面から話を聞いた。

地主 晋さん/株式会社マディソンブルー 取締役/COO
映像制作会社を経て、カメラの道に進む。アシスタントやスタジオ勤務ののち、APAアワード(日本広告写真家協会)特別賞を受賞し、フォトグラファーとして独立。1989年からパリに住み、日本と行き来しながら約2年間を過ごす。帰国後は広告、雑誌メディアなどの撮影で活躍。マディソンブルー設立から現職。

創業当時からサステナブルだったマディソンブルーの姿勢

―役職は取締役 COOとのことですが、具体的なお仕事の内容を教えてください。

基本的には社内の調整役です。各スタッフが動きやすいように、いろいろな面でサポートをしています。クリエイティブな面では、職能のある各担当者、そしてトップには中山まりこ(マディソンブルー社長・クリエイティブディレクター)もいますから、それぞれの正しい判断で仕事が回っていけばいいと思っています。それ以外の面で重要なのがファイナンス。設立当初からお金の動きを見ていたので、いまも経理に関わることはみんなが相談にきてくれます。

―会社としてのマディソンブルーの役割はどんなことでしょうか?

中山まりこの思いや理念を、彼女の考えに共感できる人に正しく伝えることが最大のミッションです。この会社は、創業当時から一貫してブレがないんですね。出来るだけ長くお洋服を楽しんでいただく為、セールや廃棄をしないのもそう。

いま世間では、SDGsが叫ばれていますよね。もともと、我々はシーズンに関係なく商品を展開してきました。3年前のアイテムであっても、お客様が買って楽しんでいただけるというアナウンスをずっと続けてきました。これまではサステナブルという文脈では積極的に発信してこなかったけれど、気が付けばそんな風にやってきたことがサステナブルであると、いまこそ伝えたいですね。

―時代にマッチしていますね。クリエイションの面での理想をどのようにお考えですか?

あらゆる人のクローゼットは人生とともに変わっていきます。マディソンブルーが一人一人のクローゼットを作っていけたらな、と思います。彼女はブランドを通じ、さまざまな洋服をエディット(編集)してスタイルを作っているから、いまもスタイリストなんです。そして、関心のある領域や製品が多岐にわたっている。将来はライフスタイルそのものにまで広がるかもしれません。

―店舗を表参道の一軒しか展開しないのも象徴的ですよね。

マディソンブルーというブランドを深くご理解いただく為の最大のメディアが本店であり、また多店舗という形をとらないのは、いつもそこ(ショップ)にいけば新しいものがあるから。また、過去のものを見たければ、ECでも出会えます。

2017年、パリに対するイメージを一新したできごと

―若いころ、パリにお住まいだったそうですね。また、この数年パリでマディソンブルーの活動を行ったと聞きました。パリへの憧れが強くあったのでしょうか?

実は強い思いはなかったんです。帰国してから約30年、パリに行っていませんでした。中山も、昔は何度かロケで行く機会があったけれど、長らく訪れていなかった。そもそも二人ともパリが特別に好きではなかったんですよ(笑)。
でも2017年の年末に、ディオールの回顧展(クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ展)がパリで開催され、巡回もしないというから、それならばと出かけました。 そうしたらパリがすっかり様変わりしていて! 街はきれいだし、人は優しいし。日本人に対しても非常に敬意を持って接してくれました。そこからパリに夢中になったんです。

―それでプロジェクトを立ち上げることになったんですね?

『なにかを始めよう』と思ったものの、そこから少し時間はかかりました。パリの変化に比例して、観光客が爆発的に増えていて、どこも騒々しい状態だったものですから。でも、ここでなにかができれば、との希望は持っていました。

―現地で、サロンのように使える物件を用意なさったと聞いています。

新型コロナの流行以前は、アパートをその都度借りて転々としながら、いろいろな物件を見ていました。おそらく、2017年からコロナ禍になるまでに、通算10回近くはパリに出かけたはずです。

―実行された活動について教えてください。

2019年、借りたアパートに商品を並べて、ポップアップを行いました。現地でコーディネーターの仕事をされている、かかわりの深い方に相談しワイルドキャスティングで撮影しました。その体験が素晴らしいものだったんです。

―パリの方々が着たマディソンブルーは、どんな印象でしたか?

彼らはすごくうまく着るんですよ。パッと羽織った瞬間から『さすが!』と言わせるものがある。そういう人たちに声を掛けて、いい写真を残すことができました。なかには、偶然カフェで見かけてお願いしたご夫婦もいました。そんな経験があり、『ここにいたい!』との強烈な思いが中山の心に芽生えたんですね。そして2019年に正式に物件を借りることになって。

パリに出店するなら、絶対にサンジェルマンがいい

―物件探しでは、どんなことを意識されましたか?

コアなファッションを追求するならマレ地区の選択肢もあるのですが、中山の理想は、なにをおいてもサンジェルマン。装いのレベルの高さがとびぬけているのだと。歴史的に見てもカウンターカルチャーを愛好する人々の集まるエリアであり、そのなかでも成功した人の場所なんです。保守的な装いを嫌いつつも、上質でコンサバなものもちゃんと持っている。そんなサンジェルマンの人々のバランス感が、彼女にはとてもしっくりときたんです。

―そして、サンジェルマンに物件を確保なさったと。

そうです。ところが、すぐに新型コロナウイルスが流行して、手が付けられないまま時間だけが過ぎました。なにもできないフラストレーションはあったけれど、次の一手をじっくり考える時間にはなったので、無駄ではなかったんです。状況の好転を待ちましたが、開業の目途が立てられないと判断し、2021年に契約を解除することにしました。

―オープンには至らなかったのは残念ですね。

2018年、2019年と一緒に撮影やポップアップを共にした、協力者でもあり同志である彼女が『パリのチームとして、最後に爪跡を残したい』と言ってくれましてね。そこで、解約前に日本から持参したエッセンシャルなワークシャツなどを、ディスプレイして、現地在住の方や現地で協力してくれている友人たちが知人を招いたレセプションを開催したんです。
そうしたら、ご来場いただいたほとんどの方に購入していただけました。ロックダウンが解除されて、すぐのタイミングだったので、みんな喜びにあふれていて。すごく大勢の方が来てくださった。来客の5割くらいがフランス人だった印象です。

―現地の方の反応はいかがでしたか?

ベーシックだけれど、ツイスト(ひねり)の利いたアイテムって、意外とパリにはないようです。パリの人は、おつきあいで買い物をしないと聞いていたので、手応えを感じられましたし、パリに行ったことが必然に思えて…。パリに行って、パリでお茶をして、パリの人を観察して。そんなことが中山の、ものすごいエネルギーになるんだという発見にもつながりました。そして、パリに拠点を持つことを決めたんです。でも、具体的にどう進めるかはまだこれからです。

パリでのビジネスはどんな展開になる?

―どんな展開をなさるのかが気になります。

2014年、ブランドを設立したときにピュアに表現したかったことを、パリでやろうと。ブランドのコアになっている、小さくて強い理想を、もう一度パリで追求することになるでしょう。小規模でサロン的なビジネスをしながらも、ご縁があればポップアップショップも積極的に対応したい。大規模にホールセール(卸し)を展開すると、それなりの人員も必要になります。また通常のショップ展開には、リアリティを感じないといいますか。見たい人が訪れて、そこで発注もできる。そんなサロンのようなビジネスが理想です。

―パリ進出は、マディソンブルーのセカンドステージですね。

パリで着る人が増えたら、それは日本のお客様からも『パリでも通用するブランドなんだ!』と、喜ばれるのではないでしょうか。パリでブランドを展開するなら、現地のビジネスに長けた方にお任せするのが正攻法とされます。でも、自分たちはそうしたいとは思いません。ショーを開催するわけでもないし、違う伝え方があるのではと考えています。現在のトップメゾンの創業当時のような既製服を扱う洋品店。そんなスタートが切れればいいですね。

現在の店舗兼オフィス。デザインを手掛けたのは104ギャラリーを運営するセットデザイナー/アーティストのENZOさん。2世帯住宅+3軒のオフィス+貸し駐車場だった建物の仕切りを取り除き、一つの空間にして現在の店舗兼オフィスが出来上がった。

マディソンブルーに最適の人材はどんな人?

―会社には、どんな人材を求めますか?

シンプルですよ。前向きで仕事が好きな人、仕事が自分を形作っていると強く信じている人。それに尽きます。いまはそういう人が集まっています。熱意の方向性は人それぞれだけれど、それを長(おさ)が束ねている。中山は自分をそういう立場だと理解していて、方向性をみんなに示しているんです。

社員はみんな幹部候補でありながら、一兵卒でもある。そのなかで席次は自ずと決まるものであって、経営陣が決めることではありません。責任が生じて、そのなかで自然に席次が決まるのが美しい姿だと思います。また、その中で自分の居心地のいい場所を選べる組織がベスト。ただ、理想のポジションに留まるためには、つねに自分が変わらないといけません。なぜなら、トップがスピーディに変化していく人だからです。

プロ並みの料理の腕前を持つ地主さん。展示会時は社員に日替りで用意するのが恒例。バリエーション多彩な料理は「地主食堂」のハッシュタグで紹介されている。

―最後にマディソンブルーを一言でいうなら?

マディソンブルーは、つねに新しく、つねにクラシック。変わらないといわれるために変わりつづけることを使命とする会社です。携わる人間もアップデートしていかないといけません。その社風は中山自身の姿でもあります。会社の仕事が、あまりにも多岐に渡っているので、一言で表現するってなかなか難しいですね。

中山まりこさんとともに、お客様、社員、社外の関係者との良好な関係を築き、ブランドを育ててきた地主さん。現在の成功は、彼の本物のクリエイションを見抜く目とビジネス手腕、中山さんへの敬意によってもたらされたものであろう。これからも、家族でありながらビジネスパートナーでもある、地主さんご夫婦の活躍から目が離せない。

取材=T.Kawata

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MADISONBLUE

MADISONBLUE

スタイリスト・中山まりこが手がけるブランド
「MADISON BLUE (マディソンブルー)」