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自分のハピネスは、他人を見ないで自分に問うこと ― 33歳の女性社長の現在地|Nordic Oil代表 渡辺 麻美氏インタビュー

自分のハピネスは、他人を見ないで自分に問うこと ― 33歳の女性社長の現在地|Nordic Oil代表 渡辺 麻美氏インタビュー

ビジネス界のトップランナーのキャリアを「丸ハダカ」にする、新感覚対談「CAREER NAKED」。国際女性デー特集に登場いただいたのは、北欧生まれのプレミアムCBD(カンナビジオール)ブランド「Nordic Oil(ノルディックオイル)」ジャパン代表の渡辺麻美さん。アメリカ・ハワイで幼少期を過ごし、帰国してアメリカンスクールで語学を磨き、日本の就活に疑問を感じながら、会社勤めも経験。様々なリーダーのもとで仕事をし、自分を見つめ、CBDと人との出会いがきっかけになり、この4月上旬からDtoCブランドとして本格的に販売をスタートするジャパン社のトップが歩んできた“過去・現在・未来”。「私はいろんな波に流されてきた人生ですが、いろんな波があったからこそ楽しくやってきた」という渡辺さんのリーダー論とは。

渡辺麻美さん/Nordic Oil ジャパン 代表取締役
1988年生まれ。8歳まで米・ハワイ州で過ごし、帰国後は都内のインターナショナルスクールへ入学。国際基督教大学卒業後、ニコライ バーグマン、ボタニスト、ケイトスペードなどのリテールブランドのマーケティング戦略を担当。2020年、コロナ渦をきっかけにフリーランスとして日本へ進出する海外のスタートアップ企業のコンサルティング業務を開始。2021年6月より北欧発のCBDブランドNordic Oil ジャパンの代表取締役として就任。

堀 弘人さん/H-7HOUSE合同会社 CEO・ブランドコンサルタント
1979年生まれ。米系広告代理店でキャリアをスタートさせ、アディダス、リーバイス、ナイキ、LVMHなど世界的に業界をリードする数々の外資系ブランドでマーケターとして、マーケティングディレクターを含む要職で活躍したのちに、大手日系企業 楽天にグローバルビジネスディレクターとして入社。また、国際部門にて戦略プロジェクトをプロジェクトリーダーとして率いてきた。2021年、自身の経験を国内外企業の活性に役立てたいとブランドコンサルティング会社H-7HOUSEを設立。メディアNESTBOWLのブランドディレクターも務めている。

幼少の頃にアメリカで身につけた考え方は今でも根本にあります

―渡辺さんは英語が堪能で、何度か英語のミーティングでご一緒しましたが、驚きました。

生まれは日本ですが、生後3ヵ月ほどで父親の仕事でハワイに引っ越して8年ほど暮らしました。8歳で帰国して、親の希望でアメリカンスクールに入りましたが、第2ヵ国語で日本語、第3ヵ国語でスペイン語かフランス語を学ぶというユニークな教育カリキュラムの学校でした。

インターナショナルスクールは、私にとって「子どもたちが唯一安全に集まれる場所」でしたね。いわゆるサードカルチャーキッズは、ホームタウンを聞かれたときにみんな悩みます。私も血は日本人で、育ったのはアメリカで、今は日本となったときに迷いました。学校は唯一のホームでしたね。

そういう悩みがよぎる中で、私自身のアイデンティティーは、アメリカで身につけたリベラルな考え方や、型にはまらない、ルールにとらわれないこと。それは今でも役に立っているので、独立心も旺盛なんだと思います。

全力投球した6年間、不思議な出会いから始まった2年間の経験

―では次に渡辺さんのキャリアについて伺います。

大学3年生から、リクルートスーツを着ていわゆる就活をしましたが、大手広告代理店の試験会場で「自分はなにをやっているんだろう?」と疑問が湧いて、結局、就職先は見つかりませんでした。

スタートアップのIT企業から声がかかって、ウェブ制作・広告制作会社に入りましたが、1年半ほど満員電車に乗る生活を続けて、自分の手を使って仕事をするのが好きなことに気づいて、「クリエイティブな仕事をしたい」と、ニコライ バーグマンに入りました。

入社した時期は、ちょうど会社の成長期で、ブランディング・ブランドマーケティングをしっかり学べました。会社ではプロダクトデザインや企業コラボレーションのイベント企画などに携わって、3年目に、韓国のフォーシーズンズホテルソウル内のショップの立ち上げをゼロから担当しました。価値観や文化の違いは理解しつつ、ラグジュアリーなフラワーデザインをマーケティングするのは楽しかったですね。

韓国でのプロモーションで重視したのは、「お花を買ってきたよ、お花を贈るよ」ではなく、「ニコライ バーグマンを買ってきたよ、ニコライ バーグマンを贈るよ」という付加価値戦略ですね。デンマーク生まれのクリエイターのニコライ・バーグマンのライフストーリーを多くのチャンネルに発信して、取り上げてもらいました。

フォーシーズンズホテルのウエディングにて豪華なフラワーアレンジメント

―ニコライ バーグマンを退社して、次のステージは?

ニコライ バーグマンには6年在籍し、「いつかまた一緒に仕事をしようね」と言いながら退職して、私の唯一の趣味というかリセットは海外旅行なんですが、友人の結婚式のためにNYに向かいました。飛行機の隣に座っていた人がライフスタイルブランド「BOTANIST(ボタニスト)」を展開するアイエヌイーの幹部で、私が機内で一生懸命フェイスマスクで保湿をしているのを見て、NYに着いたときに「美容関係にご興味はありますか?」と声をかけられて、NYで一緒に食事をして意気投合して入社を決めました。

ちょうど会社がグローバルな展開を予定していて、人材が欲しかったそうです。不思議な出会いでしたが、ボタニストが原宿にフラッグシップショップをオープンしたタイミングで、ブランドの新商品開発をしたり、海外商品の買い付けで、海外のコンベンションを巡ったりしました。違う環境で仕事は面白かったです。

アイエヌイー時代は、ちょうどインフルエンサーマーケティングが盛んだった頃で、幹部も海外商品を意識していて、新しいマーケティング手法を積極的に取り入れていて勉強になりました。アジア進出では、シャンプーに付加価値を付けるなど、リサーチは徹底していましたね。

キャリア最大の失敗は、「人生、仕事だけ」という生活を続けたこと

―それから、タペストリー・ジャパンの「kate spade new york」に入られますね。

はい、アイエヌイーから、レディースアパレルのブランドマーケティングに関わりたくてケイト・スペード ニューヨークに入りました。ケイト・スペード ニューヨークは、女性を大切にしながら、女性らしい強さを服を通じて上手に発信しているブランドだと思っていて、幼い頃から共感していました。「フェミニンな中に強さがある」というメッセージ性から何かを学べると思いました。

タペストリーグループは「COACH」が中心のアメリカ系の企業グループで、ファッションやラグジュアリーが核となるヨーロッパのグループとはひと味違っていましたが、私が子どもの頃から見ていた映画やドラマでは、NYに憧れている主人公がいて、NYは特別で素敵な場所というのを刷り込まれていたので、親近感はありましたね。

―ビジネスには失敗がつきまといますが、キャリア最大の失敗談を教えてください。またその困難をどのように乗り越えましたか。

20代の頃は仕事をしている時間が楽しすぎて、仕事に没頭しすぎて、「人生、仕事だけ」という生活を続けていたら、自分の生活リズムが乱れて、友だちや家族との時間も極端に少なくなってしまって、自分を見失ってしまうことがありました。それは体調に反映して、「何のために仕事をするのか?」を真剣に考えて、すごく反省しました。振り返れば、働き過ぎだったんでしょうね。仕事に夢中になりすぎて、身体への負荷を見過ごしていました。

仕事の量を調整したりしましたが、出張から帰ってくると発熱したり、休日はほとんど寝て過ごしたり……。それで、仕事は楽しくても、健康的に続けられるライフスタイルを身につけないといけないなと思いました。

私はお金のために働いていないし、ライフワークとして仕事をする必要があるし、私が生きるためのモチベーションが仕事で、メッセージを発信できることが人生の意味なんですが、身体は壊しちゃいけない(笑)。バランス良く続けられる仕事を見つけることがどれだけ大切なのかを痛感しました。特にコロナ禍が始まってからは、「セルフラブ=自分にも他人にも優しく」も難しい世の中で、ストレスが無い生活を送ることも難しいですが、大切なのは「無理をしないこと」ですね。私の口癖は「頑張る」で、自分にリマインドしていて、「頑張る」と言いがちですが、本当は、「頑張らない」「無理をしない」というセルフハピネスが大事です。

CBDは、長引くパンデミックの中で、現代人の「福音」的存在になれるか

―では、渡辺さんが代表を務めているNordic Oil社について教えてください。

ノルディックオイルは、2018年にデンマーク人の兄弟Dannie(ダニー)とChristian(クリスチャン)がスタートさせ、 設立から2年でヨーロッパでの売り上げNo.1を達成したCBDブランドです。兄のダニーが30歳を過ぎて、激しい偏頭痛に悩まされるようになり、一日中痛くて、仕事のパフォーマンスの低下やイライラが増していきましたが、アレルギー体質で化学合成された薬が使えないことから、自然な方法で偏頭痛を解消できないかと調べたそうです。

同じ悩みを抱えているSNSのコミュニティでCBDを紹介され、数週間後には症状が和らいで驚いたのが事業のきっかけです。CBDを使うことで、もっと多くの人の生活の質を向上できるのではないかという思いに弟のクリスチャンも賛同し、世界中に広げていく必要があるのを確信してブランドを立ち上げました。

私はアイエヌイー時代にドイツのBIOFACHというビオの展示会に出席し、CBDのブースが盛り上がっているのを4年前ぐらいに目撃していて、オイルやコスメ、チョコレートやスイーツなどたくさんのアイテムがあって驚きましたが、サンプルでクリームをもらって使ったら、乾燥した肌にとても良かった。堀さんもCBDを使われていますよね?

―渡辺さんと知り合ってから使っていますが、自分には合っていると思います。就寝前に舌下タイプを使っていますが、眠りが深くなったような気がして、ストレスが緩和しました。渡辺さんはどう利用していますか?

私は、朝カプセルを1粒飲んで、夜寝る前にオイル、いわゆる舌下タイプを使っています。仕事で切羽詰まったときにCBDを使うと、自然な“チル感覚”で落ち着きますね。私は、CBDを知ったとき、主成分がヘンプなので、レクリエーションなど「楽しむもの」という印象が強く、健康面でのメリットは考えたことがありませんでしたが、調べていくうちに、現代人が抱えがちな不調、偏頭痛、やる気のなさ、不安症、食欲低下、緊張などの状態のときに、気持ちを落ち着けるものという理解が深まりました。CBDはほんわかとした効果で柔らかい効き目なので続けやすいと思います。

日常に取り入れやすいカプセルタイプのCBD

―欧州ではNo.1ブランドとしての地位をすでに確立しているノルディックオイルですが、日本での認知度や、今後の戦略についてお聞かせください。

ヨーロッパの実績を見ると、スピードをかけて認知度を広げるよりも、使っている人が、自分の声で、知り合いに薦めるリアルな「口コミ」をするのが一番効果的だと思っています。

ダニーとクリスチャン兄弟は、ブランドを立ち上げてから「必要な人に必要な情報を提供するのがベスト」という考えで、サーチ・エンジン・オプティマイゼーション(SEO)に非常に力を入れていました。その結果、ユーザーがアンバサダー的役割になり、CBDの効果を感じている方が、オーガニックに発信してくれて急速に広がりました。

ノルディックオイルがGENUINE(ジェヌイン)なブランドとして確立するためには信憑性が大事。身をもって体感した方が発信して広げてくれることで、商品には自信があるので、プレミアムブランドとして確立していけると思います。
日本市場でのマーケティングに関しては、正しい使い方や活用方法などのベースとなる「プロダクトの正しい理解が進んでいない」ことが問題です。CBDは健康を保証するものではないので、ネットの記事を見て、何が正しいのかを自分で判断しきれていません。

大麻草由来というだけで「怖い・不安」という人から、「危険で面白そう」という反応まで様々で、まだCBDという言葉だけが一人歩きしている印象があり、CBDの正しい知識をどう広げられるかがポイントですね。長引くコロナ禍で不安を抱えていたり、慢性的なストレスなど現代人が抱える不調や、感情のコントロールが難しくなっているときに試していただきたいですね。

Nordic Oil社の製品

女性リーダーは、男性の理解を得ながら、女性として生きる誇りが必要

―ノルディックオイルのファウンダーは男性の兄弟ですが、女性としてジャパン社を率いていきます。「女性のリーダーシップ」をどうお考えですか。

マネージャーポジションの友人がいて、上司から「ディレクターにならないか」と言われて断ったそうです。結婚して、子どもがいて、家族の時間がちゃんと欲しいからというのが断った理由でした。役職が付くと、「私生活で犠牲になるものがある」とみんな思っているんですね。実際そうだと思いますが、それはあまりにもったいない。

それと、女性のリーダーは、「女性だから」と言われるのが怖くて、わざと強くいないといけないと思っていて、ナチュラルにこなしている方をあまり見ません。無理している人が多いのかな。「男性と戦わないといけない」という概念自体がそもそも間違っていて、男性と同じパフォーマンスを目指すより、女性だからできる貢献や考え方を進めていくことが大事だと思います。女性だからこそできることを考えながら、それを誇りに思えるかどうかですね。

―雇用機会均等やダイバーシティー&インクルージョン観点で気をつけていることはありますか。

私自身は、仕事で関わる人の年齢や出身などを聞いたことがないし、気にしません。チームワークは同じ感覚を持っている人が大切で、国も年齢もキャリアも関係ない。その人自身にしか興味がないので、「人」だけを見ますね。

ノルディックオイルの設立者も、私の年齢、バックグラウンド、家、ジェンダー関係なく、「私と一緒に働きたい気持ち」を尊重してくれて、ヨーロッパ人だなと思いましたね。会話ベースで、話が合う、波長が合う、わかり合うことで判断してくれたのがうれしかった。

―渡辺さんはどういうリーダーになりたいですか?

ニコライ バーグマンのときに、10人ほどの韓国チームを率いていてマネージャーのようなポジションにいました。そのときに思ったのは、「彼らが一緒に働きたいと思える人になりたい」ということ。雇う側は「馬力になってくれる人」がほしいですが、働いている側には様々な働く意味やモチベーションがあって、どのくらい長く一緒に働けるかわからないからこそ「気持ちよく働ける環境と時間を作ること」がリーダーとして必要だと思いましたね、そしてもう一つ大事なのが「笑顔」。海外のチームとリモートでミーティングしているときも笑うようにしています。自分が笑っていたら、周りも打ち解けるのは世界共通なので、笑顔は人生の中で大切にしています。

アラサーの働く読者に、渡辺さんからメッセージ

―渡辺さんは33歳ですが、これまでを振り返って、20代やアラサーの読者にひと言どうぞ。

30歳になったら、子どもを産んでいるのかなと思っていました(笑)。仕事をしない生活やカジュアルな働き方を想像していましたが、今は、自分が好きな仕事で、好きな時間に仕事をするようにコントロールできるので、忙しくてもストレスがあまり溜まりません。周りからは「まだ若い」と言われますが、自分では若く感じない、難しい年齢だなと思います。

私はこれまでいろんなことを乗り越えて、会社員からフリーランス、現在のノルディックオイルまで、「自分の時間を大切にしたい」とずっと思ってきました。これから仕事ができる30~40年、「自分は何をして生きていきたいのか」を、やっと落ち着いて考えられるタイミングが来たと思っています。自問することはとても大事です。

撮影=Takuma Funaba

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