ファイナンスのキャリアを極める!大切な3つのスキルをトップファイナンスパーソンが伝授。
ファイナンスと聞くと数字に強く、難しいイメージを持つ人も少なくない。さらにCFO(=最高財務責任者)ともなれば、かなりのスキルと経験が求められると感じるのではないだろうか。では、実際にはどんな人がファイナンス、はたまたCFOに向いているのか?
──「実は数学が大の苦手でした」。そう語るのは、数々の有名ラグジュアリーブランドや外資系プロフェッショナルファームでファイナンスやコンサルティングを経験し、30代前半でCFOに就任した経歴を持つGG Japan inc.代表の金沢政浩氏だ。数学が苦手だったにも関わらず、ファイナンスで輝かしいキャリアを築いてきた金沢氏に、ファイナンスのキャリアを選ぶメリットや求められるスキルについてお話を伺った。
金沢 政浩さん/株式会社GG Japan代表取締役
学生時代にカナダ留学を経て米国公認会計士試験合格、TOEIC970点を取得。大学卒業後は大手日系メーカー経理本部に新卒入社後、PwC Japan、ルイ・ヴィトンジャパンを経て33歳でKeringグループ内スタートアップ企業のJapan CFOに就任し、その後北アジア統括CFO、営業統括本部長を歴任。日系大手企業、外資系プロフェッショナルファーム、世界No,1ブランド、スタートアップ企業といった多種多様なフェーズで非常に幅広い実務経験とマネジメント経験を積む。現在は自身が所有するコンサルティング会社にて世界的有名ブランドのクロスボーダーM&Aアドバイザリー及び日本法人立ち上げ等のコンサルティングサービスに従事する一方、運用資産200憶円規模の不動産投資企業の取締役(CFO/COO)も務める。プライベートではスポーツ、料理、サウナをこよなく愛する4児の父親。
キャリア形成においてファイナンスを選択するメリットとは?
― ファーストキャリアでファイナンスを選ぶ意味とは?どんなメリットがありますか?
個人的にはファーストキャリアでファイナンスを選ぶ意味は非常に大きいと思っています。最大のメリットは、「キャリアデベロップメントがしやすい」ということ。私自身がそういった視点でファイナンスキャリアをスタートした訳ではないのですが、今振り返って考えると、他の職種に比べてもキャリアデベロップメントの可能性が大きな職種だと感じています。
― ファイナンスというと、どうしても数学が得意じゃないとなれない気がします。
実は私、本当に数学が苦手だったんです。義務教育段階で早々に「こんな数式、人生でいつ使うの?!」と思ってしまって(苦笑)、中学のかなり早い段階で人生から数学を切り離してしまう程に苦手でした。でも、実際にファイナンスの仕事でどんな数式を使っているかというと、〈足し算、引き算、掛け算、割り算、分数、%〉だけ、それ以外は基本使いません。基本的には小学校教育で学ぶ数式しか使わないので、特段数学が出来なければいけないわけではないとお伝えしたいですね。
― それは驚きです。ファイナンスは“キャリアデベロップメントがしやすい”とのこと。これは具体的にどんな理由からでしょうか?
ファイナンスの仕事は、業界や会社が変わったとしても実質的にやることは大きく変わりません。もちろん上場企業と非上場企業、国内企業と外資系企業、製造業と非製造業など、細かい論点で異なる点はありますが、肌感覚で言うと6~7割は同じ様なプロセスで仕事を進める事になります。結果として、業界を跨いだ転職が非常にしやすく、キャリアを積み上げやすい。いわゆる「潰しが利く」というやつですね。実際に私も、13年間に及ぶ会社員生活の中で、日系大手メーカー、外資系プロフェッショナルファーム、外資系大手ラグジュアリーブランド (リテール)、外資系スタートアップ企業(ホールセール)と、多種多様な企業でキャリアを積む事が出来ました。
また、私が思うにファイナンスのスキルはセンスや才能等の先天的な能力ではなく、後天的な努力でスキルを着実に積み上げられる事が出来るので、フェアなスタートラインから競争がスタートし、自分の努力次第で如何様にもキャリアを積み上げていく事が出来ると思っています。
― 具体的な“努力”とは?
ファイナンスの仕事って、ある程度大きな枠組みがあって、流れや手順が決まっている事も多いんです。ではその中で、具体的にどこで差がついていくのかというと、“いかに数字と向き合ったか”。もっと言うと、“どれだけ脳みそに汗をかいて数字を理解したか”、に比例すると思っていて。例えば前任者がやっていた事を同じ様になぞるだけなら、作業としてある程度出来てしまう人は多いでしょう。そうではなくて、なぜ、どの様な背景でこの数字が必要で、それが結果として何に、どう繋がっていくのか、まで深く理解することが重要だと思っています。時間も労力もかなりかかりますが、これを常にやり切れているかどうかで、ファイナンスパーソンとしての実力に大きな差が出てくる所だと思います。
― ファイナンスって最も経営に近いポジションですよね。
社長をはじめ経営陣が一番気にしているのは会社の業績数値です。もちろんそれ以外にも大切な事は沢山ありますが、会社の数字を気にしない経営者はいません。その業績数値に最も近い立場で仕事をするのがファイナンス部門ですから、結果として経営層と近しい距離感で仕事をする事になります。そういった面からも、様々な局面でキャリアデベロップメントに有利なポジショニングを確保しやすい構造にもなっているのではないかと思います。
若くしてファイナンスのキャリアで活躍するために必要な3つのスキル。
― 金沢さんは30代前半でCFOになられました。若くしてファイナンスのキャリアを積んでいくために必要なスキルとは?
一言で言うと「社長の右腕スキル」を持っているかどうか、という事だと思います。
社長の右腕スキルとは具体的に、①「ビジネスモデルを把握する力」、②「ストーリーテリング力」、③「対外的な折衝力」です。この3つが全て備わっていれば将来的にCFOとして活躍出来る様な人材になれるのではないでしょうか。
①ビジネスモデル把握力
その事業がどれくらいの顧客からどの程度の収益を上げていて、その為に必要な原価レベルがどの程度で、さらに会社を維持していく上で必要なコストはいくらで、それらの結果として生み出したキャッシュを何にどの程度投資していて、その投資からどの程度のリターンを得るサイクルを回しているかを、大局的に把握出来ていることが重要です。言い換えれば、経営者目線で財務数値を俯瞰して把握し、会社のビジネスの流れを大局的に整理するスキルです。
ファイナンスの仕事はとにかく日々の細かい作業が多いので、「木を見て森を見ず」状態に陥りがちです。よくあるのが、経営陣に対して定期的に財務報告資料を提出する際、その資料を完成させる事自体が目的になってしまい、「で、今の財務状況はざっくりどんな感じ?」と経営陣に聞かれた時に簡潔に答えられないといったケース。目の前にある壮大なエクセルファイルに細かい数字を埋める事自体が目的になってしまい、全体感を理解し切れていない人は案外多いと思います。正直、自分も若い頃は全然出来ていませんでした。細かい作業をしながらも、全体として会社の数字はどう動いているのか、常に大局的に把握し、経営陣が必要な財務情報を俯瞰で捉えられるかどうか。これが重要なポイントです。
➁ストーリーテリング力
財務情報を説明するときに、数値や事実をただ羅列するのではなく、その情報が示す目的や背景、得られるベネフィットや起こりうるリスクを織り込み、聞く側が単なるファクトとしてだけではなく、“立体的なストーリー”として頭に描けるかが重要です。大袈裟に言うと、紙やスクリーン上の一次元の財務データに、自分の説明で高さと奥行きを与えて、聞き手の頭の中に三次元のストーリーを描かせられているかどうか。説明した後、聞き手が自然とネクストステップや具体的なTO DOを自分事の様にイメージできると理想的です。
➂対外折衝力
ファイナンスとして別部署やグローバル本社等と連携してプロジェクトを進める際、マクロレベルでは同じ方向を向けていたとしても、ミクロレベルで互いの利益が相反しがちになる局面が少なくありません。そういった場合にファイナンスとして最低限達成必要なラインを確実に確保しつつ、その上で両者のベネフィットが最大化する着地点を描き、そこに着地する為のアプローチを遂行出来るスキルが求められます。こちらも比較的ファイナンス畑の人材が苦労するところ。やはりファクトベースの仕事が多く、常にロジカルである事が求められる職種であるが故に、何でもロジックで片付けてしまいがちな人も少なくありません。でも残念ながら、絵に描いた餅の様な”あるべき論”は、音として人の耳には届いても、人の心にまでは届かないんですよね。結果、人も物事も思った通りに動いてもらえない。これは実際、自分もマネージャー時代に相当苦労しました(苦笑)。同じ組織に属する一人のプロフェッショナルとして、フラットな姿勢で会社の利益の為に貢献したい、その為に協力して欲しいといった熱意を伝える事も重要ではないかと思います。
― これら3つのスキルが重要なのですね。
はい、改めて内容を聞くと「そりゃそうだよね」という感じかも知れませんが、これら3つ全てを高いレベルで兼ね備えている人というのは本当に稀だと思います。また、これらのスキルは実際にCFOになってから必要になるものでは?と思われるかも知れませんが、実際は早い段階からこれらのスキルを意識的に積み上げている人が将来的にCFOになっていくのだと思います。
― 金沢さんはどのようにしてこれらのスキルを身につけたのですか?
私の場合はどの職場でも上司に恵まれ、仕事を通して彼ら彼女達から直接学びました。特に、自分のキャリアの礎となったPwC時代に一番鍛えられたプロジェクトでは、上司に2年間で100回以上「で、一言で言うとどういう事?」と聞かれ続け、そこでサバイブしていく過程でビジネスモデルの把握力とストーリーテリング力は否が応でも身に付きました(苦笑)。またKering時代の上司であった香港のAPAC CFOからは、CFOとしてどうアプローチすれば人や組織は動いてくれるのか?という実例を本当に身近で見させてもらい、対外折衝能力を飛躍的に向上させてもらいました。
― 最後に未来のCFO候補にメッセージをお願いします。
“30代でCFOになる!”と聞くと、とてもハードルが高いイメージがあり、非現実的に聞こえるかも知れません。でも、“こんな私が出来たので、誰にでも実現可能です!”ということは声を大にして申し上げたい。中1までの数学しか理解出来なかった私が30代前半でグローバル企業のCFOになれたのですから、自分でもきっと出来るんだ!と感じて欲しいですね。誰でも未来のCFOになれる、そんな夢を皆さんに持ってもらえたら、いちファイナンスパーソンしてこんなに嬉しい事はありません。
― ありがとうございました!
撮影:WACOH
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ー国際社会のビジネスシーンで、プロとして必要なスキルを学び、鍛える場を提供しますー