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「ファッションが好き、を原点に」テクノロジーの力で業界の課題に挑む、3人の若手起業家インタビュー

「ファッションが好き、を原点に」テクノロジーの力で業界の課題に挑む、3人の若手起業家インタビュー

コロナで加速するファッション×テクノロジー。アナログと言われ続けてきたファッション業界をテクノロジーの力で支援する3社のサービスは、このコロナ禍に大きく変化を遂げた。今後のファッション業界を明るく照らす3人の若手起業家を迎えて、ファッション業界でのキャリアの原点、コロナによる影響、今後の展望を聞いた。

株式会社SPRING OF FASHION 代表取締役CEO 保坂忠伸さん
大学卒業後、京セラグループの経営コンサルティング会社に入社。経営コンサルタント・人事コンサルタントを経て退職後、NYに語学留学。帰国後㈱TOKYO BASEに転職し販売とEC部門を経験。その後、ファッションデザイナーを目指し文化服装学院に入学。卒業後、ホットペッパーの販売代理店、㈱クリーク・アンド・リバー社にて人材エージェントの経験を経て2016年10月に㈱SPRING OF FASHIONを設立。東京都と㈱ソニーミュージックより対象支援ベンチャーに採択されている。

株式会社ニューロープ Founder/CEO 酒井聡さん
ファッションに特化したAIをファッションEC、メーカー、メディア、商社等にSaaS提供するスタートアップ、ニューロープ代表。リコメンデーションやパーソナライズ、トレンド分析、需要予測、オペレーション支援など、ドメインにフォーカスしてバーティカルに取り組む。2018年東洋経済誌の「すごいベンチャー100」選出。九州大学芸術工学部でアートとサイエンスを学んだ後、2009年より㈱マイナビでマーケティング、広告、エディトリアル、オペレーション、営業支援等を担当。2012年より㈱ランチェスターでウェブアプリ・スマホアプリの企画、情報設計、デザイン、開発のディレクション、運用に携わり、2014年に同社設立。中小企業診断士/グラフィックデザイナー/エディター。

株式会社DeepValley 代表取締役社長 深谷 玲人さん
販売からMD、ブランド長まで10年間ファッション業界でキャリアを積み、ITベンチャー企業に転職し2年半、カスタマーサクセスとしてインサイドセールスのコンサルティングを実施。双方の経験を合わせ、アパレル業界に特化したIT企業として2018年5月に独立。アパレル生産特化システムの開発と、Tokyo Fashion Technology Labで講師を務める。

―3人とも同年代とのことですが、それぞれ学生時代に感化されたファッションのルーツとは?

深谷:僕は学生時代からファッションが好きで、中学3年生くらいからお年玉をもらっては裏原に行って、APEやSTUSSYに並んで福袋買って、みたいな日々を送っていました。その後も古着ブームが来たら全身古着を着たり、ずっと服が好きでしたね。20歳くらいからはラグジュアリーブランドにハマって、当時エディ・スリマンが手掛けていたDIORの服を買うために、借金したこともありました(笑)。

酒井:うちは両親がブランド好きで、今日も着ているKarl Helmutとか、agnès b.を小・中・高校時代からよく着ていました。バッグや財布はPRADA、お年玉を貯めて買ったOMEGAのスピードマスターは今でも愛用しています。大学ではバンドをやっていたこともあってNIRVANAやパンクロックに影響を受けてネルシャツの袖を切ったり、買った服をボロボロにして安全ピンで留めて着たり、あちこちにスタッズを埋め込んだりしていました。当時はちょうどモバイルオークションが流行りだした頃で、服のまとめ売りも多かったので、ダンボール買いして色々なジャンルに挑戦していました。金髪、ピアスで(笑)。

保坂:僕は小さい頃から兄のファッションに影響されていて、中3の時に初めて自分で買ったのがbeauty:beastの服でした。他にもシンイチロウ・アラカワ、マサキ・マツシマとか、モードファッションが特に好きで、大学生になってからは、エディ・スリマンのDIORはもちろん、クリス・ヴァン・アッシュも好きでしたね。

―それぞれ異なるルーツをお持ちですね。その時代のファッションに対する想いが、現在の仕事にどのようなインパクトを与えましたか?

深谷:常に根底には「ブランドが好き」という気持ちがあります。なので、現在もブランドを支援するための延長線上にある仕事をしていますし、やはり当時の想いが今の仕事にも繋がっています。

酒井:僕はビジネスコンテストに参加して、10個くらいプランを考えて、現在サイバーエージェントで取締役をなさっているメンターの長瀬さんに持っていったところ、「これが良いんじゃないですか」と選んでくれたのがファッション事業でした。そのプランをブラッシュアップして最終プレゼンしたところ、出資が決まってしまった。そんな経緯なのでスタート地点では「起業するなら絶対ファッション!」というわけではありませんでした。ただ、起業後に立ちふさがる数々の困難にめげずにかれこれ7年近く同じ領域を掘り続けてこれたのは、好きな気持ちがあったからなのは間違いないです。

保坂:僕はもともと経営コンサル出身だったのですが、そこからファッション業界にシフトチェンジすることを当時は反対する人たちもいました。しかも、デザイナー志望だったのでなおさらでした。でも、そういった批判を気にせずに熱量を持ち続けられたのは、ファッションが大好きだから、ものづくりが好きだからです。ファッションに対する情熱がなかったらきっと起業にも至ってなかったですね。

―経営コンサル会社からファッション業界への転身。なぜキャリアチェンジに至ったのですか?

保坂:当時はとにかく食いっぱぐれないようと経営コンサルとしてのキャリアをスタートしました。そこからファッション業界に行き着いたきっかけは、経営コンサルの会社を辞めてニューヨークに留学していたときに強盗にあったことがきっかけなんです。地下鉄のホームで3人組に襲われて、パニックになって追いかけてったら、ボコボコに殴られて前歯も折れて(笑)。警察の人に「殺されなかったことが奇跡だよ!」って言われた時、今までのあらゆる後悔した出来事を思い返したんです。「もう後悔することはしたくない。今やりたいことやらないと後悔する」って思って、結果的にそれがファッション業界に行きたいと思っていた気持ちを後押しする形になって、帰国後、文化服装学院に入ることを決めたんです。

―すごいエピソードですね(笑)。いろんなキャリアの形がありますが。酒井さんは九州大学出身ですよね。卒業後のキャリアは?

酒井:大学卒業後はマイナビに入社して、教育広報という大学・専門学校の情報を高校生に届ける媒体でプロモーションや情報誌の編集などに携わっていました。その後、ランチェスターという開発会社(※現在はアプリプラットフォームのスタートアップにピボットしています)で2年間様々な企業のアプリ開発に関わらせていただいてから、27歳で起業しました。新卒の頃、経営者の本を読み漁っていた時期があって、「起業って格好良い!」と思ったことをきっかけにずっと機会はうかがっていました。

―その一方、深谷さんは高卒からファッション業界で働くという、どっぷりファッション業界のキャリアを歩まれたようですね。

深谷:はい。高校卒業して、最初は百貨店のレディースブランドで商品管理の仕事をしました。少しずつ本部の仕事に興味を持って転職して、EC、卸、在庫管理、DBなど本部の仕事をするようになり、今度は営業職に興味を持ってまた転職し、そこからMDをやりたくなって転職して……。とにかくあらゆる職種を経験しました。MDの後は商品だけじゃなく段々経営に携わりたいと思って、経営にも携わる形になり、そこで色んな失敗を経験して、徐々に独立を考えるようになりました。その後IT業界に転職し、31歳の時に起業しました。

―皆さんのように起業をされていると、“人”の部分が非常に重要かと思うのですが、それぞれ“人”に対しての考えを聞かせて下さい。

酒井:ニューロープの開発チームは、人数的には外国人エンジニアが中心です。もともと事業もチームも日本に閉じる気はなく、エンジニアは英語必須、ビジネスサイドも英語でのコミュニケーションを心がけています。採用活動をしていると英語でのコミュニケーションに心が折れて辞退してしまう人もいますが、そこに魅力を感じて挑戦したいと思ってくれる人にとっては良い環境だと思います。アーキテクチャや保守運用性にこだわって開発のイテレーションを回しています。

保坂:僕は人材面でこれまでたくさんの失敗をしてきました。マッチングサービスなども利用しましたが、エンジニアがいなくなってプロダクトがつくれずプロジェクトがストップしてしまったこともありました。やはりこの業界では人を採用する時に、「ファッション好きかどうか」というところがものすごく大切になってくると思います。現在、社内には僕と同じようにファッション好きな人材がいますが、例えばユーザー分析する時でも、自分だったらどういう気持ちになるとか、ファッションに対する自分の意見をしっかりもっているので勉強になるんですよね。

―失敗から学ぶことも多いですよね。だから今があるんですね。

深谷:僕も保坂さんと同じで、外部の人に委託していたプロダクトが頓挫してしまったことがありました。リリースが当初より大幅に遅れたり、人の面ではすごく苦戦しました。けど、色々な失敗をして思ったのは、起業して“給料をもらう側”から“給料を払う側”になってみて、もらう側と払う側では全然違うということ。能力がある、ないとか、給料がいい、悪いとかではなくて、ガッツがあるかどうかというのが人の採用面ではすごく重要だと感じました。

保坂:人で学んだことでいうと、必ずしも会社のメンバーじゃなくても大きい存在の人がいるということ。うちの会社では今年、貢献してもらった人に正社員・外部関わらずストックオプションを配布するのですが、お世話になった方に対して、そういう報酬の渡し方もあるのかなって思っています。

―ファッション業界はまだまだアナログですから、皆さんのようなファッション×テクノロジーの会社はもっと出てくるべきですよね。コロナの影響で売上低迷している今、スタートアップの会社が業界に与えるインパクトとは?

保坂:うちの会社ではコロナ前より、成果報酬型の販売員=「ソーシャル販売員」の確立を目指したサービスをリリースする予定でした(※「KITEKU」サービスから新たに展開する「STYLISTA」)。すべてコロナで止まっていたのですが、10月下旬にローンチ予定です。コロナの影響でECでの売上が加速する中、多くの会社がウェブ人材がいないという問題を抱えています。自社のECを運営するだけで手一杯になってしまっている状況で、我々のようなサービスにはチャンスがあると考えています。どれだけ企業側が社内リソースを割かずに僕らに頼ってもらえるかは大きなポイントです。販売スタッフの投稿が今増えてきていて、それを自動でクローリングして提供する、アパレル企業さんはそれらを活用でき、二次使用だからコストもかからない。初期ブランドも徐々に揃ってきたので、今後セレクトショップなどにも広くアプローチしていきたいと思っています。

深谷:うちの会社は生産支援のツールをつくっているのですが、コロナの影響でいわゆる仕掛りが止まってしまった会社さんが増えて、秋冬の商品がつくれないなど、利用頻度が減少した瞬間もありました。その反面、5.6月頃からはテレワークが普及したことで、今まで会社でしかできなかった生産の仕事をリモートで行えるツールとして使ってもらえるという“新しい利用価値”が出てきて、今また伸びてきています。さらに今は海外にいけずバイイングや工場開拓が現地でできないので、海外の工場であがったものをweb上で見て購入できるツールとして活用いただいてます(※ディープヴァレー)。このコロナ禍で加速した部分は確かにあると思います。我々はこれをチャンスと捉えて変革していきたいです。

酒井ニューロープファッションAI事業には2つの大きな軸があります。1つはEC向けにリコメンデーションエンジンを提供する事業。もう1つはトレンド分析や需要予測をしてMDを支援する事業です。リコメンデーションエンジンは、コロナ禍でECに注力しているアパレル企業が増えている中、既存のお客さまにも継続利用いただきつつ、新規のお客様からのお問い合わせもいただいていています。トレンド分析は、コロナ流行当初、お客さま側のファイナンスの先行きが不透明になったこともあって軒並みプロジェクトがストップしましたが、ここ最近になって再開の流れに変わり、新規のお問い合わせも増えてきました。

―実際、コロナの影響で新規取引先は増えましたか?

酒井:しばらくは打ち合わせも何もなくなって「これはまずい」と思いC向けのサービスに力を入れたりしていたのですが、ここ最近ようやく持ち直してきました。既存のお客さまには継続利用いただいているので、取引先は増えています。これから「コロナ前よりファッションアイテムが売れる」という状況が当面は考えにくい中で、我々が提供するファッションAIで予測を立て、在庫を最適化し、売上拡大ではなく収益性のテコ入れに取り組む流れは今後さらに加速するのではと感じています。

―皆さんの今後の野望をお聞かせください。

酒井:ニューロープはトレンド分析に注力しています。インフルエンサーは今何を着ているのか。イノベーター、アーリーアダプター、マジョリティへとどのようにトレンドが移っていくのか。AIとデータサイエンスをかけ合わせて分析しているところです。この精度を高めていき、実際にいつ何がどのくらい必要とされるのか、という予測モデルを作り込んで、ブランドごとに最適化される「次世代のトレンドブック」を生み出します。もう1つは海外展開です。タイやベトナムなど東南アジアでのシェアを狙っていきます。国内マーケットだけだとスケールしづらい現実があるので、拡大には欠かせないプロセスだと思っています。実際にニューヨークやシンガポールの会社と打ち合わせを重ねながらマーケティングを進めているところです。そもそも海外展開は絶対に楽しいと思います!(笑)

深谷:僕はもともとファッションブランドが好きという原点があるので、その想いを持ち続け、業界支援をしていきたいです。今までさまざまなブランドの責任者として携わってきましたが、残念ながら潰れてしまったブランドも中にはありました。一つの問題を解決すれば生き残ったであろうブランドもあって、そういうブランドをテクノロジーの力で救いたいんです。好きなものを作り、好きなものを着て、ファッションを楽しむことをデジタルで繋げて、毎日がハロウィンみたいな楽しい世界をつくっていきたい。そういう世界をつくるためにはまずアナログな部分をデジタル化していかないといけないので、今の仕事に繋がっています。まだまだ描いている物語としては序章なので、この10年かけてやっていきたいですね。

保坂:僕は2つあって、まずは前職のTOKYO BASEでの影響ですが、ファッションの販売員の地位向上させたいです。そのためのサービスとして、成果報酬型のソーシャル販売員を確立させたい。保険や不動産など他の業界では1000万プレイヤーが当たり前にいますが、ファッション業界を同じような夢のある業界にして、いい人材をファッション業界に集めたいです。もう1つは、この業界自体を“稼げる業界”にしたいということ。固定費を変動費化させて、数%営業利益をあげるということが最終的には大きなインパクトになるので、小さくてもいいのでまずは実績をつくり、業界の変革に繋げていきたいです。売れる業界にするためには、販売力の磨き込みも重要です。いかに売れる人の顧客づくりや接客をシステムでサポートしていけるかなども今後考えていきたいです。

―ありがとうございました。

それぞれファッション×テクノロジーの力で業界を盛り上げようと起業した皆さんのファッションに対する熱意が印象的なインタビューでした。昔はもっと販売員になりたい、ファッション業界で働きたい、という人は多かったはず。今、憧れの職業といえばYoutuberだが、同じように憧れの職業としてファッション業界の仕事が返り咲くことを願いつつ、今後の皆さんの活躍を引き続き注目したい。

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