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「時計販売は私の天職」――。 1本最高数億円の高級時計を売るための極意と老舗ブランドの歴史のバトンを担う苦労とは?

「時計販売は私の天職」――。 1本最高数億円の高級時計を売るための極意と老舗ブランドの歴史のバトンを担う苦労とは?

ブランド、商品、販売員、お客様…ヒトとモノの数だけある販売にまつわるストーリー。今回は高級時計ブランドで販売職を務めるAさんに話を聞く。ラグジュアリーブランドやセレクトショップで販売を経験したのち、未経験で高級時計ブランド業界へ飛び込んだAさん。入社間もないころは高額な商品の取り扱いをはじめ時計に関する膨大な知識、自身より時計を熟知する顧客への接客など、「RPGで例えると初期ステージから強敵ばかり現れる感覚」とユニークな表現で当時を振り返る。しかし、負けず嫌いな性格と培ってきた販売職のスキルを武器にして着実にレベルアップしてきた今では「時計販売は私の天職です」と言い切る。そこで今回は、業界に飛び込んだ当時苦労したことや、高額商品を売る極意を聞きながらAさんの販売ストーリ―に迫っていく。

未経験からの高級時計販売は苦労の連続… “レベル1”で強敵揃いの難関ステージに挑戦!?

― 販売職としてのキャリアについて教えてください

現職を含めて販売歴はトータルで約17年になります。時計の販売経験は2年半ほどで、前職まではラグジュアリーブランドやセレクトショップでレディース服やレザー商品など様々な商品を扱っていました。

現在は平均数百万円から高いものでは数億円にもなる時計を扱う老舗ブランドで販売職をしているのですが、かなりマニアックなブランドラインということもあって自分よりも時計の知識が豊富な時計好きのお客様が多く入社当初は特に苦労しました。

― 入社当初は経験不足をどうカバーされていましたか?

入社直後は長く続けていた販売・接客の経験を活かして柔軟な対応力でカバーしていました。とにかく笑顔で対応しながらも、高級ブランドらしい丁寧な接客を心がけていましたね。でも接客スキルに関して基礎はもちろん応用も、そして商品知識に関しては自社と競合ブランドのものも勉強し続けないとついていけない環境で…RPGで例えると初っ端から高レベルの敵ばかりが現れるようなステージで、強い武器を装備していないと戦えない環境でした。

― 一番苦労されたことはありますか?

前職までは商品知識が少し欠けていたり商品不良でクレームが来たりしてもスキルやニュアンスでかわせていたものが、現職ではかわせない。分からないことは分からない、調べるお時間をくださいと言わなければならない。なぜなら、時計は“機械”なので絶対に原因とその正解がある。それを自分の憶測や拙い経験値で曖昧に言ってしまうと大きなクレームに繋がる上、誤った道にお客様を進めてしまう。自己判断で済ませるのではなく、返答を持ち帰ることの重要性も学びました。

― ラグジュアリーウォッチという今までのものとは桁が違うものを扱うことで意識に違いはありますか?

入社して1,2カ月は商品1本1本を触れることに対して恐怖感や接客時のプレッシャーがあって、ウィンドウから時計を出すだけで緊張していました(笑)。それはこの2年で何とか克服することができましたが、いまだに日々の在庫管理には緊張感を持っています。商品の金額が金額だけに、たった1点の差異が大きい。金額が大きい分、在庫管理の責任感もより大きいと感じています。「そのへんに商品を出しっぱなしだった」ということは絶対にありえません。

ハワイ旅行が堪能できるほどのインセンティブが発生するボーナスステージも!?

― 今まで販売したもので最高金額の時計は?

実際に販売したものですと数千万円ほど、現在商談中のものも含めれば数億円になります。

― 販売のインセンティブはあるのでしょうか?

必ずしもすべてにインセンティブが発生するわけではないのですが、出るモノで数パーセント。販売額によってはハワイ旅行には行けるくらいには夢があります(笑)

― 高額の時計を販売するためのプロセスはどのようなものになりますか?

成約まで早いこともあれば、1年以上の長期に渡る場合もあります。お客様の要望やスピード感に合わせて、いかにフレキシブルに対応できるかどうかが重要です。実際に、1年ほど1本も購入しない中で、ずっと連絡を取り続けていたお客様が急に3本4本と立て続けに購入されたケースもあります。「鉄は熱いうちに打て」ではないですが、お客様の購入タイミングを逃さないなど個々の対応力も重要だと思っています。

限られた商談の時間で無駄な提案はしない!徹底的に顧客のパーソナル情報を聞き出すことを意識

― Aさんならではの売り方の極意はありますか?

時計に関する基礎的な知識は持っておくことは大前提として、加えてお客様のパーソナルな部分の情報収集を欠かしません。例えばイスラム教を信仰する方にゴールドのブレスレットは宗教上の関係で売れません。お客様の個々の情報さえ持っていれば無駄な提案は発生しない。顧客様には経営者が多く、忙しい方ばかりなので商談の時間も限られてきます。無駄な提案をしないために、何でも聞くようにして情報収集を心がけています。数千万~数億円の時計を購入される方は自家用飛行機を持つような方々で、数百万のものをコンスタントに購入される方は中企業以上のトップが多い印象です。

― 時には顧客を海外へアテンドすることもあると聞きました

トップの時計ブランドになると一般の市場に出回っていない“ユニークピース”と呼ばれる時計が作られていて、世界中の上級顧客層に向けて商談するイベントが各地であります。メゾンをもっと知っていただくための体験型イベントやガラディナーもあったりと、開催地域や時期でテーマに沿ったイベントがあります。

時計販売は自分の天職!数世代に渡って関わることができる時計という商材だからこそ実感できるやりがい

― 17年間の経験を通して販売職のやりがいはありますか?

学生時代に携帯電話の新規受付のアルバイトをしていたのですが、その仕事では1回接客して契約したらそれで終了。その場限りの接点しかない接客にあまりおもしろみを感じませんでした。でもアパレルなどの販売職はコンスタントに来て下さるお客様に、長期に渡って接客できるやりがいを感じて続けてきました。

現職ではお客様からの信用を得ることができれば、数千万円単位のものを1年間で何度も購入していただけるような関係性を築けます。そして時計なら正しいメンテナンスを続けていけば、数世代は使い続けることができるものなので、現在担当しているお客様のお子様の代まで自分が担当できたらいいなと思えることが一番のやりがいですね。本当に天職だと思っています。

― 天職だと思えるのは素敵ですね

時計というのは電気や飛行機が発明されるよりも前から存在していて、細かい機能一つとっても意味や歴史があります。その理由や歴史を知ることがすごく好きですし、一生勉強し続けないといけないくらい奥が深いんです。負けず嫌いな性格なので今ある知識だけで戦える環境にあまり魅力を感じなくて、一生かけて武器をアップデートし続けて強い敵と戦うことにやりがいを感じるタイプ。一生課題を出され続けることはキツいかもしれないですが、アップデートを続けることで自分が体感したことのないステージまで連れて行ってくれる。それを実感できる今の職はすごく天職だと感じています。

現職のブランドは誕生から長い歴史を持っていて、自分が働く数十年というのはブランドからしたら瞬きのように一瞬です。でも「先人から受け継がれてきたバトンを自分が後世に渡すときに、違う方向を向いて渡すと一瞬でブランドの歴史が変わってしまう。だからバトンを正しく渡してほしい」と入社時の採用面接で言われたんです。実際に2年半働いて、この言葉がずっと胸に残るほど重いモノになっています。私がラクをしようとしてバトンを間違った方向で渡してしまうとブランドの歴史も狂ってしまうので、正しく伝えなければいけないと常に責任感を持っています。そういう感覚で仕事ができていることも天職と感じられる理由だと思っています。

― この業界を目指す方にメッセージはありますか?

販売職が天職だと感じている方には是非チャレンジして欲しいです!時計販売というのは、給与面はもちろん知識や経験として自分に全て自分に返ってくる。販売職の可能性をさらに広げられると思います。時計だからと苦手意識を持つことが、もったいないくらいの業界です。自分自身もあまり前向きに入ったわけではないのですが、今では天職だと感じているくらいですから(笑)。

NESTBOWLのグループ会社でファッション業界専門の人材コンサルティング会社、エーバルーンコンサルティング株式会社が、ファッション業界の交流イベント“B Balloon”の第8弾として、時計にフォーカスした交流会イベント「マイ・スペシャル・ウォッチ」を2023年10月11日(水)に都内で開催いたします。イベントでは”時計”をコンセプトに、ラグジュアリーブランド、ファッションブランドの販売員が集い、交流します。Chrono24社 の”ウォッチスキャナー”というアプリを使ったウォッチコンテストも開催予定。詳細はこちらから。

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