海外ではファッションとして当たり前のように親しまれているタトゥーだが、日本ではまだまだ「怖い」「イカつい」「近寄りがたい」とネガティブな印象を受ける人々が多いのが現状だ。ことファッション業界でもそれは同じで、タトゥーが入っている人材の登用を認めないブランドや百貨店も存在する。ダイバーシティやインクルージョン、多様性、個性尊重が叫ばれる時代にタトゥーはどのように見られているのか。今回はインパクトのある見た目を武器として、ラグジュアリーブランドでトップの売り上げ成績をたたき出しているHさんをインタビュー！「職務質問されることは正直多いです」と語るHさんだが、タトゥーが入っていることで接客時にどういう影響があるのか、個性は武器になり得るのかを伺った。

H氏 プロフィール
大学卒業後、国内で人気トップクラスのデザイナーブランドに入社。販売職と店長職を経験しながら販売成績は常にトップ。3年前にラグジュアリーブランドへ転職し、見た目の個性を武器に活躍中。

タトゥー歴＝販売歴でも成績は常にトップ！インパクトの強い見た目で覚えてもらえることが販売員として武器に

― 販売職の経歴から教えてください

アパレル業界に入ってからずっと販売職で、トータル13年ほどになります。最初に入社した国内のデザイナーズブランドでは販売や店長職含めて約10年務めて、現在はラグジュアリーブランドで約3年セールス担当として勤務しています。

― 前職と現職での販売成績などお聞きしてもいいでしょうか？

ドメスティックブランドでは販売歴が長く馴染みの顧客様も多かったので、ありがたいことに成績はずっとトップでした。ラグジュアリーブランドに移っても直近1年は1位と2位を競っています。自身のキャラを生かしたテンションと今まで培ってきたコネクションで何とか頑張れています。

― タトゥーはいつからどの部位に入っていたのでしょうか？

大学卒業前後から入っているので販売歴と同じくらいの長さになるでしょうか。最初は海外旅行をしたときに腕の一部に入れて、今では心臓周辺以外はかなり入っています。体型がかなり細身なので歳を取っていい具合に太ってから大きく入れようかなと思っています。

― タトゥーが入っていることで接客時など困ったことはありますか？

実は困ったことがほとんどなくて、むしろタトゥーがきっかけで接客時のトークのネタになることもあります。現在の店舗は海外からの観光客が多いこともあって、お互いが知っているタトゥーの店の話や現地のことで盛り上がったりもしますし、誉めてくれるお客様もいます。昔から髪型などの見た目を含めて覚えてもらえることが多く、武器になりました。そのため、マイナスになることは今のところは少ないですが、硬派な百貨店などの館にはヘルプでも行けないということはありました。

― 採用面接時にタトゥーの有無などの話はしましたか？

特に話題には出ませんでした。現職を紹介していただいた知り合い自身にも全身タトゥーが入っていて。採用面接の際も聞かれることはなく、自分から「髭や長髪は大丈夫でしょうか？」程度を聞いたくらいです。ブランドのデザイナー自身もタトゥーは肯定派という点も大きいようです。昔、別のラグジュアリーブランドに移ろうとした際はタトゥーがNGで不採用だったので、今は恵まれた環境だと思います。

現職でなければ個性を武器にできなかった。今も個性的な見た目のスタッフと売上トップを競っています

海外では文化的にタトゥーが当たり前。出張で海外のコレクション会場に行くと、どんなブランドやショップ関係者でもみんな自由におしゃれを楽しんでいる。もちろんタトゥーも入っているし、自由に自己表現をしている。日本ではファッション業界ですらタトゥー禁止というのは、本当に変わっていますよね。自分も未だに職務質問されることが多いです…。

― Hさんは個性を武器に販売職で活躍されていますが、日本人はもっと個性を武器にすべきでしょうか？

もっと武器にするべきだと思います。現在働いているブランドは個性的な見た目のスタッフが多いのですが、他のブランドの店舗を見ると普通の会社員の方と同じような雰囲気の人が多いと感じています。入社前にいろいろなラグジュアリーブランドの店を周ってみたのですが、個性的な見た目の販売員は少ない印象。そういう部分も含めて、今は個性を発揮するには最適な場所だなと感じています。他では個性を武器にできなかったと思いますね。没個性にはなりたくありません。同僚でも個性を生かして活躍している人がいます。ちなみに、その人が今自分と売上を競っています。