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リブランディング&再上陸した「スウェイン ロンドン」。CEOが語るブランドの矜持と日本市場における今後の展望

リブランディング&再上陸した「スウェイン ロンドン」。CEOが語るブランドの矜持と日本市場における今後の展望

リブランディングにより、日本に再上陸したイギリス革製品ブランドの最高峰「スウェイン ロンドン」(旧ブランド名「スウェイン・アドニー」)。1750年に馬具メーカーとして創業以来、何世紀にもわたって受け継がれてきたクラフトマンシップと英国王室や貴族、紳士階級から愛されてきた歴史を誇るブランドだ。映画「007」シリーズでジェームズ・ボンドが愛用したアタッシュケースのブランドとしても有名で、なかでも「007/ロシアより愛をこめて」に登場したアタッシュケースは現代的にアップデートされて登場し、注目を集めている。今後、日本市場でますます存在感を増していくであろう「スウェイン ロンドン」。会長兼CEOのカリーヌ・ド・ケーニヒスヴァルター氏に、日本を含めたアジア地域での事業拡大の展望やエンターテインメントとの深いつながりなどについてお聞きした。

“高級品”ではなく、“匠の技術”を提供するブランドとして

- まずはカリーヌさんのご経歴についてお教えいただけますか。

私はこの業界では非常に型破りな経歴といえるでしょう。というのも、私はもともと政治の世界で元首相と近い距離で仕事をしていました。その経験は、私にとって貴重なものでした。なぜなら、政治という利害調整が仕事ともいえる職種に就いたことで効果的なコミュニケーション手法を学べたからです。ある意味、政治はファッションや高級ブランドのように世の中に提言し、社会的な影響を生み出し、意義あるかたちで人々とつながることです。これは私のキャリアにとって不可欠な要素であり、現在の役割に至るまである種の共通項とも言えますし、全ての道が繋がっていると思います。

その後、私は企業や業界団体で戦略コンサルティングと広報活動に携わり、広範かつ多様なキャリアを積みました。また、充電器を製造する上場企業にも勤務していました。その後、私は高級品と技術を取り扱う上場企業であるChargeursに入社しスウェインブランドを買収しました。それが今までの私の経歴です。

- 素晴らしいご経歴ですね。政界からビジネスに転身された動機は何ですか?

「スウェイン ロンドン」は高級品をつくっているのではなく、職人技をつくっています。贅沢品をつくっているのでもありません。素材や品質を吟味し、一生使っていけるものをご提供する――そうやって270年以上にもわたってイギリスで受け継がれてきました。

これは瞠目に値することであり、人間的な価値をそのブランドコアとして位置づけていることに私は深く魅了されました。

-「スウェイン ロンドン」の歴史や事業内容について教えてください 。

270年という長い歴史のあるブランドですが、単なるブランドではなく、英国の手しごとの最高峰とされており、英国の象徴とも呼べるブランドです。スウェイン氏は、鞭、馬具、鞍、サドルバッグなどの王宮用の馬具を製造する馬術師でした。その後「スウェイン ロンドン」は、高い技術力・高品質によるものづくりを維持しながら多様化を続けてきました。これはイギリスでも特別なことです。

18 世紀半ば以降、私たちは英国王室、貴族の方々を中心に製品を提供し、現代では世界中の多くの方々にイギリスのエレガンスの世界を広め続けています。

Attache Cases
Bond Girl handbag

ハリウッド映画の名作に多く登場した背景にあるものとは

ー 映画業界と密接な関係を持っていると伺いました。エンターテイメントとの深い繋がりについて教えてください。

当社のアクセサリーは、映画「キングスマン」の傘や「インディ・ジョーンズ」の帽子、「ジェームズ・ボンド」のアタッシュケースなどが有名です。例えば、ジェームズ・ボンドのアタッシュケースは当社の最も象徴的な商品のひとつであり、今でも多くの方々に愛用いただいています。

そして最近ではNetflixで配信されている「ザ・クラウン」、そして昨年6月に劇場公開された「インディ・ジョーンズ」シリーズの5作目となる最新のストーリーにも登場しています。

ー 自社の製品を映画に登場させることは、国際的なマーケティング戦略として意図的に行われているのでしょうか?

私たちの方から映画業界にアイテムの使用を求めたわけではありません。ご依頼を頂いて今日に至ります。私たちにとっては光栄なことであり、誇りです。今年は、インディ・ジョーンズの3部作のために、すべての帽子を製作しました。

その後パートナーシップを築きましたが、それは製品を作った後のこと。だから、マーケティング戦略として意図的に自社製品を登場させたのではなく、最高のアイテムを提供するブランドであることをただ実践しているだけ。だからこそ、人々と強い関係を築けているのです。

Destiny Poet Hat
Bond Attache

ブランドの世界観に浸れるような場所を提供していきたい

ー ロンドンに新しい旗艦店をオープンした理由を教えて下さい。

新しくニュー ボンド ストリートにオープンしたのは、敷地面積700平方メートルの旗艦店です。当社の中で最も大きな店舗となります。この店舗で重要なのは、ブランドのDNAをアピールするのに十分なスペースを確保すること、つまり、競合他社とは一線を画していることをお客様にご説明することです。そのためにはすべての商品を展示するスペースが必要だと考え、結果的にそのような大きさとなりました。

また、ただ棚に商品を並べるような場所にはしたくないという想いがあり、抽象的な印象を生み出す降雨の体験ができる「レインルーム」や、プライベートな約束やオーダーメイドのサービスのための専用エリア、そしてブランドの伝統をご紹介する博物館が併設されています。

「レインルーム」では、お客様が雨の音を聞いたり、匂いを嗅いだりすることができます。それは単に物理的なものではなく感覚的なものであり、「スウェイン」の魔法ともいえる魅力の一部です。このようなディープ・ラーニング的な体験をショップでできることは非常に重要で、ブランドの魅力をカスタマージャーニーに反映することができます。

また、旗艦店には、工房があり、職人たちが特別な顧客のためにオーダーメイドのバッグや帽子を直接デザインし、製作しています。これはとてもユニークで、顧客にとって忘れられないブランド体験を提供します。

Rain Room
workshop photo

ー 日本を含めたアジア地域での事業拡大の展望についてお聞かせください。

「スウェイン」は、世界最古のイギリスの工芸家です。1750年の創業以来、当社は 270 年以上にわたって歴史、知識、高い職人技術をお客様と共有してきました。お客様と交流し、店舗で当ブランドを体験する機会をご提供することが、アジア圏においても重要な戦略であると考えています。

その際に重視しているのは、各国の文化的習慣に根ざすこと。例えば中国、特に香港では、日常の消費財から高級品に至るまで、オンライン上で購入されることが多いです。

一方、日本の消費者はブランドに対してストーリーテリングを求めており、実際に製品を見たり触れたりすることを大切にしています。そういった各国の文化や習慣に根ざした実店舗展開が重要で、私たちは商品を購入するという単純な行為をはるかに超えたショッピング体験を提供することを目指しています。

ー日本市場における戦略について教えて下さい。

おそらく10~15年ほど前、日本でも展開していたので、日本へは再上陸という形です。そういった意味で、日本市場は新規出店とは異なると捉えています。去年の夏には伊勢丹でポップアップショップも開催し、高い評価を頂いています。

日本の傾向については把握しており、それは私たちにとって本当に重要なことだと考えています。私たちには日本の顧客のデータベースがあります。そして、ロイヤルカスタマーが当社の製品を気に入ってくれて、再び日本で展開することを歓迎してくれていると感じています。

先ほども申し上げた通り、日本の消費者はストーリーテリングを求めています。そのため、私たちのブランドの歴史と伝統、こだわりのすべてをお伝えできるような洗練された空間、ゆっくりと時間をかけて、「スウェイン」の世界に浸れるような場所が必要だと考えています。

また、日本の方々はイギリスを愛してくれていると感じています。日本には、イギリスのクラシックなスタイルを好む方々が多く、日本とイギリスには特別なつながりがあると思います。そのため「スウェイン」にとっては、非常に重要な市場と捉えています。

ー 最後にお仕事で大事にされている哲学や流儀があれば教えてください。

私は、具体的な仕事の流儀や哲学を読者の皆さんに共有したいとは思っていません。常に進化し、変化し続ける世界に身を置いているのだから「これが私のやり方だ、変えない」という態度を固辞しつづけるのではなく、世の中の流れに合わせ、できるだけ柔軟に対応しなければならない。それは、ファッション業界やラグジュアリー業界であればなおさらです。

ブランドにおいて、普遍の基盤や確固たるDNAは必要です。しかし、戦略は常に進化させなければならない。さらにビジネスで成功を収める際、非常に重要なことがあります。それはチームを持つこと。それは高いスキルを持った人材でチームを作るだけではありません。プロジェクトの一員であることを幸運だと感じる人を抱えること。社会に対して影響を与え、顧客に情熱を伝えるためにはこれが最も重要なことです。

つまり、「私には一見してアピールできるような経歴がない 」という人でも、すぐに学び環境に順応していくことはできるでしょう。キャリアや履歴書上の経歴、それ自体が重要なのではありません。なぜなら、私たちは人とは違うやり方で、現状を常に前向きに動かすための挑戦をし続けているわけですから。

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