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「糸島から必要とされる地域商社でありたい」。こだわりの明太子や特産品を提案する、やますえが目指す未来

「糸島から必要とされる地域商社でありたい」。こだわりの明太子や特産品を提案する、やますえが目指す未来

福岡県西部の糸島半島に位置し、佐賀県の唐津に隣接する糸島。この自然豊かな地に拠点を構えるのが「株式会社やますえ」だ。やますえは地元の食材を使い、こだわった明太子をつくるという主力事業に加え、糸島の漁師や農家から直接買い取った鮮魚や野菜を全国の飲食店に届けている。やますえの代表取締役・馬場孝志さんに、これまでのキャリアと糸島に対する想い、地域商社として目指すことについてお話を伺った。

馬場 孝志さん/株式会社やますえ 代表取締役
福岡県糸島市出身。高校在学中から瓦職人として働く。その後、冷凍食品会社での勤務やトレーラー運転手を経て、株式会社やますえの創業者・山口末太郎さんと出会う。1997年に営業としてやますえに入社。2015年4月に現職に就く。

卸問屋から地域商社に事業転換する提案を行う

― 馬場社長はこれまでどのようなキャリアを歩まれてきたのですか。

働き者だった祖父や父の影響もあり、中学生のときから新聞配達を始めました。高校時代は、長期の休みは瓦職人としてハウステンボスの現場に入った思い出があります。その時に棟梁から人との付き合い方やお金の稼ぎ方などを教わって、今の自分の基礎をつくってもらったと思います。昔から稼ぐことにとても関心があって、「どうやったら価値が高まるんだろう?」と常に考えていました。

その後、大きな車に乗りたいという夢もあり、トレーラーの運転手の仕事に就きました。給料も非常に良かったので、やりがいを感じていました。そんな中、やますえの社長と知り合い、「営業センスがありそうだから、来ないか?」と誘われたんです。トレーラーの仕事をやり切ったし、次は経験したことのない営業職をやってみたいと思い、やますえに入社しました。

― まったく違う仕事を始めて、どんな心境でしたか。

それがとても楽しくて。もともと魚は好きでしたし、調理することで付加価値をつけられることに面白さを感じていました。それから営業として人と関わっていくのも自分に向いていると思い、非常に充実した時間を過ごせました。

やますえに入社してからは、海外に行って魚を買い、中国やベトナムに運び、それを加工して日本で売る、という仕事を担当していました。大きな仕事を任せていただいていましたし、大手のお弁当のチェーン店を担当したことでかなり鍛えられたと感じます。さまざまな商品づくりを経験できたことは私にとってはとても大きく、勉強になりました。その知恵が後に生きて、現在は地域のものに付加価値をつけるといったことを一生懸命やっています。

― 2015年にやますえの前社長から社長職を受け継がれたそうですが、その経緯を教えていただけますか。

もともと、やますえは水産の卸問屋を営んでいました。しかし、今後は水産資源が枯渇していきますから、それだけでは苦しくなります。そこで前社長に「今後は糸島の魚を扱って商品を展開する地域商社を目指していきたい」と提案したのです。了承を得ることができ、その後本社を糸島に移転。それから2年後くらいに前社長から会社を引き継ぎました。

やますえの工場内。明太子製造の様子

糸島に必要とされる会社を目指して

― 馬場社長にとって糸島はとても大事な場所だと思いますが、これまでどのようなことに取り組んでこられましたか。

少しでも糸島のことを知って事業を展開させていくために、以前は漁船にも乗り、「福ふくの里」という直売所にも5年通い続けました。そこで漁師のお母さんと休日の朝から晩まで一緒に調理をし、漁師さんと交流して糸島の魚の種類もすべて覚えました。その後は、地域商社づくりのために大丸にお店をつくったり、地域の物を全国に発送したりといったサービスを始めました。

私は誰がどこで捕ったのか、旬の時期はいつか、どんなおいしさがあるのかなどをきちんと知り、体験して自分の口でしっかりと伝えたいんです。YouTube (敏腕バイヤー馬場の馬場ちゃんねる)も少しずつやっていますが、そういった手段を通しておいしさを全国の人に伝えることが、私の使命だと考えています。

― 生産者と消費者をつなげる試みとして「YAMASUE・365・PROJECT」という新たなプロジェクトに取り組んでいらっしゃいますね。

私は、この地域の人たちに愛されて応援される会社を目指したいと考えています。だから自分が先頭を切って地域の人たちと触れ合いながら地域のものを宣伝・PRしています。

魅力をしっかり伝えることができたら、売れるんです。当社の明太子も10年経って、やっと去年ふるさと納税の返礼品ランキングで2位を獲得しました。次はぜひ1位を目指したいと思っています。地道な努力が積み重なり着実に魅力は浸透してきています。山梨や北海道から「やますえさんの商品を売りたい」と小売事業者さまがいらっしゃることをとても嬉しく思います。

やますえの屋外特設会場ではキッチンカーや屋台が出店するイベントが定期的に行われている

明太子づくりで、糸島のさらなる活性化と地域循環を目指す

― これからやますえをどのような会社にしていこうとお考えでしょうか。

明るく楽しい会社にしたいですね。問屋業を全部やめて、地道にBtoB、BtoCを強化しながら成長してきて、社員も育ってきています。みんな明るく楽しい人ばかり。私も営業ですから「負けないぞ」と思っています。

― 社員とのコミュニケーションで特に注力していることはなんでしょう。

年に2回、社員全員の個人面談を行っています。「これを達成したら、給料を上げましょう」とお互いに明確に合意します。こういった環境をつくったことは、よかったと思いますね。

あとは現場の人の話をよく聞くこと。日常の仕事の中で「何か気になることはない?」と声をかけています。すると、「社長、ここにカビの汚れがありますよ」と教えてくれて「なかなか取れないから、交換しようか」とか「掃除をするのにもっと便利な道具がある」などみんなが話して、知恵を出し合うんです。こういったことを、もっと直属の上司が聞き出せるような会社にしていきたいですね。

― 今後の事業の展望についてお伺いできますか。

糸島のお酒や醤油をしっかり使いながら、現在手掛けている明太子をさらに広めていきたいです。そして地域のものを取り扱うことで地域の活性化、循環を目指したいです。売上は20億くらいに持っていきたいです。明太子も現在は年間250〜300tほどの製造量ですが、400tにいってもいいのかなと思っています。やはり利益を上げないと地域のことはできないんですよ。

最終的な私の目標は、きちんと糸島の魅力を伝える市場をつくること。これを自己資金や自己資本力で叶えられるのかというのは、まだ分かりません。最終的なプランなので、まずは糸島にとって、なくてはならない会社になる仕組みをこれからつくっていきたいと思っています。

文:キャベトンコ
撮影:中村 孝則

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