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カルチャーシーンに革新をもたらし、躍進を続ける「Spotify」。その広告メディアとしての魅力、可能性に迫る

カルチャーシーンに革新をもたらし、躍進を続ける「Spotify」。その広告メディアとしての魅力、可能性に迫る

「Spotify」は、2006年スウェーデンで創業し、2008年に誕生した世界最大手の音楽ストリーミングサービスだ。日本では2016年9月にサービスを開始。以降、革新的かつパーソナライズされた音楽・ポッドキャスト体験を提供し、デジタルオーディオ分野の需要拡大を牽引している。2022年夏には、国内でのデジタル音声広告事業を拡大すべく、人材増強と投資の強化を発表した。このタイミングで同部門のリーダーとして入社した立石ジョーさんに、「Spotify」の強みやミッション、デジタル音声広告事業や将来への展望について語っていただいた。

立石 ジョー(たていし・ジョー)さん/Spotify Japan上級執行役員 広告事業部統括
大学卒業後自ら起業してからフランスHECにてMBA留学の後、経営コンサルティング業界で5年勤務したのちNIKEにて日本のeコマースの立ち上げに携わる。前職のX(旧Twitter)では、パフォーマンス広告に関するアジア太平洋地域営業統括を担当。2022年Spotify Japanに入社し、広告事業部門のリーダーを務める。

アーティストやクリエイターが持続的に活動できる環境を生み出す

「Spotify」とはどのようなサービスなのでしょう。

世界180カ国以上で展開しているオーディオストリーミングサービスで、月間アクティブユーザーは約6億200万人以上(2024年2月6日時点)。無料・有料プランがあり、無料プランでも世界中の1億曲以上の曲がすべて聴けます。有料プランはオンデマンド再生ができ、また曲をダウンロードできるためオフライン環境でも楽しめます。

「Spotify」ではただ音楽をストリーミング配信するだけではなく、アーティストやクリエイターとリスナーの出会いを創出し、つながりを深められるような環境をつくり出すことで、アーティストやクリエイターが、それぞれの作品を通して対価を得て、創作活動を継続できるようサポートすることをミッションに掲げています。

アーティストやクリエイターをサポートするというのは、他のストリーミングサービスにはない独特の考え方ですね。

ストリーミングが主流になることで、音楽の聴き方、楽しみ方、ヒット曲につながる過程そのものが変わってきたと思います。以前なら、レーベルがアナログ盤をやCDを広く店頭などに流通させ、プロモーションを行うことでヒット曲に育てていくという流れが主流でした。しかし、ストリーミングの場合はパーソナリゼーションが強く、リスナーの好みや聴取履歴に応じてどんどん新たな曲がプレイリストなどで提案されていくので、知らなかった自分好みのアーティストにも自然に出会うことができます。

リスナーが発見した曲を気に入れば、友人に共有したりSNSなどで発信して、人気が広がっていくことも起こりえます。こうしたプラットフォームの特性を活かし、「Spotify」はまだ広くは知られていないものの才能ある新進アーティストのキャリアをサポートするプログラムを世界各地で展開しています。日本でも「RADAR: Early Noise」というプログラムを2017年から開始し、あいみょんやKing Gnu、Vaundy、藤井風などのアーティストをいち早く音楽ファンに能動的に紹介し、リスナー基盤を広げるお手伝いをしてきました。新たにリーチできるリスナーが日本のみならず、世界に広がっているのもグローバルなプラットフォームならではです。

日本人アーティストの活躍の場も日本だけではなくなる、と。

「Spotify」にはチャートがいくつかあります。再生回数を指標とする、いわゆる今ヒットしている曲のランキングがわかるチャートだけではなく、ソーシャルメディア上でいま話題になっている曲をキャッチすることができるバイラルチャートもあるんです。

たとえば、藤井風さんの世界的なヒット曲「死ぬのがいいわ」は、最初タイでバズが起き、SNSなどで拡散され、「Spotify」のタイのバイラルチャートを駆け上がっていきました。これによってバズが顕在化し、「Spotify」上で各国のエディターがプレイリストにピックアップしたり、より多様で広いリスナーに聴かれるようになるなどして、大きなストリーミングヒットに繋がっていきました。

そして、プレイリストやお気に入りに保存して繰り替えし長期的に聴かれるようになるので、一度ヒットすると爆発的に再生回数が積み上がっていく傾向があります。ソーシャルメディアは発火点としての瞬発力は強いのですが、楽曲ヒットとして大きくしていくためにはいかにストリーミングに波及させていくかが重要だと思います。

ヒューマンキュレーションによる多様なプレイリストも

ストリーミングのプレイリストは、AIが自動生成してくれるというイメージがありますが。

AIの学習能力は素晴らしいのでパーソナライズされた提案を行う上で重要な役割を果たしていますが、「Spotify」には世界各地の音楽に精通するエディトリアルチームがあり、ジャンルや流行の音楽だけでなく、様々な気分やシーン、ライフスタイルにマッチしたテーマ別のプレイリストを作成し、リスニングデータなども踏まえながら更新しています。こうしたヒューマンキュレーションによる多様なプレイリストが楽しめるのも「Spotify」の大きな特徴のひとつですね。

― 「Spotify」はもともとスウェーデン発ですが、日本市場と世界のギャップはありますか。

国にもよりますが海外はZ世代などの若年層が圧倒的に多いです。一方で、日本は平均年齢こそ20代後半ながらリスナー層が広く、男女比もほぼ半々です。45歳以上のリスナーも急速に増えています。どの世代においても情報感度が高く、自ら発信するのが好きな人が多いことも日本市場の特徴かもしれません。これはギャップというよりマーケットのユニークネスだと思っています。

ポッドキャストも配信されていますよね。

2019年頃から音楽だけではなく、耳で楽しめるコンテンツやエンターティンメントを広く利用できるオーディオプラットフォームに進化するという成長ビジョンを打ち出し、ポッドキャストにも本格的に力を入れるようになりました。

ポッドキャストの利用はものすごく伸びています。分析によると、若年層のみならず、ビジネスマンや経営層などもアクティブに聴いているようです。日々さまざまな情報が入ってくる今、自分の興味のあるテーマを深堀りしたい人にも向いているメディアではないかと思っています。

さらに広がる、デジタル音声広告の可能性

「Spotify」は、広告としても非常に大きな可能性を秘めているように感じますが、そのあたりはいかがでしょう。

「Spotify」のリスナーは、一日の様々なシーンで聴いていることが多いです。朝の仕度をしながら、メイク中、通勤時間など。たとえば通勤時間に広告素材を流すことで、聞いた人が「帰りはそこに寄ってみようかな」と考えるかもしれません。つまり、それぞれのモーメントを通してリズムに乗り、頭の中にメッセージをすり込むことができます。

「Spotify」の無料プランのユーザーの1日の平均利用時間は2.4時間なのですが、いろいろな媒体があるなかで、これはかなり長いと思います。音声の場合は、同時に同じ音源を聴くことはないので、直接一人ひとりに広告そのものを聴いてもらうことができます。

とても優位性の高い広告になりますね。

2023年末は、アサヒビールさんが「お疲れ生です」キャンペーンを大々的にされていましたよね。実は「Spotify」 もアサヒビールさんと共同で、アサヒ生ビール(マルエフ)の世界観を表現した、アーティスト参加によるSpotifyならではの音声広告キャンペーンを行いました。

「Spotify」が期待の新進アーティストのキャリアを後押しする「RADAR:Early Noise」や、TikTokと共同で注目のアーティストを紹介する「Buzz Tracker」で応援させていただいてきたアーティストの中から、「マルエフ」のブランドの世界観に合ったアーティストを選出して、各アーティストから今年の振り返りと「一年間、おつかれ生です」というメッセージを配信しました。ものすごく反響がありましたね。

可能性が広がりますね。今後はどのような展望を描いていらっしゃいますか。

音楽を聴くことってシンプルに楽しいですよね。だからこそ、より多くの人に音楽を楽しんでいただきたいですし、それを通してアーティストやクリエイターを今まで以上にサポートしていきたいです。

一方で音声広告に関しては、アメリカではすでに動画や静止画、SNSと並んで主要な広告フォーマットになっているので、日本でもそのような位置付けのフォーマットに育てていきたいと思っています。また、音声と動画とからめた広告フォーマットの併用も増えています。

動画とからめる、というのはどのようなイメージなのですか。

「Spotify」ではただ聴くだけでなく、画面を見ながら聴く方も多いんです。オーディオプラットフォームなので、もちろん音声広告がメインですが、動画広告も充実しているので、今後は音声と動画フォーマットを組み合わせて、より効果的にメッセージを届けられるようにしたいと考えています。

音声クリエイターがこれからたくさん出てくるかもしれませんね。

好きなミュージシャンがまさに近くでささやいているかのようなクリエイティブや、3Dのように立体的な音も出せるので、クリエイティブ面でもいろいろ遊べます。
さらに、音は人の記憶にとても残りやすい。サウンドロゴとビジュアルロゴを比較すると、サウンドの方が4倍も記憶に残ると言われているそうです。ビジュアル広告だと「あの広告に出ていた女優さん?」みたいなイメージでちょっと他人事になりがちですが、音の記憶は自分の感情や体験などと結びつけて自分ごと化しやすいんです。

ちょうど先日、日本の「Spotify」では初の開催となるクリエイティブアワード「Spotify Hits」の応募受付をスタートしました。このアワードは、「Spotify」で展開された革新的かつ効果的な広告キャンペーンを表彰する目的で創設したものです。音声だからこそ可能なクリエイティブな表現や「Spotify」だからこそ実現できるキャンペーンのデザインなど、まだまだ多くの可能性を秘めています。ぜひ多くの広告クリエイターの皆さんにチャレンジしていただきたいです。

私自身が「Spotify」のヘビーユーザーで、音楽がある生活の楽しさを満喫しています。この楽しさをこれからもたくさんの方々に提供していきたいです。

文:伊藤郁世
撮影:船場拓真

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