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淡路島の外と内をかき混ぜる装置の役割を。ワクワクを大事にしたシマトワークスのチャレンジ

淡路島の外と内をかき混ぜる装置の役割を。ワクワクを大事にしたシマトワークスのチャレンジ

株式会社シマトワークスは、兵庫県淡路島の洲本市をベースに、淡路島のさまざまな資源を活かした新しい企画を次々と生み出している。ワ―ケーション拠点の運営や地域密着型の企画立案・コーディネート、人材育成、新たな人の流れを生み出す施設やイベントづくりなど多岐にわたる事業を展開中だ。淡路島に移住して13年になる代表取締役の富田祐介さんに、移住の背景、淡路島やコラボへの想い、今後の展望などについて話を伺った。

富田 祐介さん/株式会社シマトワークス 代表取締役
1981年神戸市生まれ。大学卒業後は、設計士として活動したのち東京に移り、設計事務所で仕事をしながらイベント企画などに携わる。2011年、企画の仕事を続けるために淡路島に移住。2013年には、淡路島の仲間とたちあげた「淡路はたらくカタチ研究島」がグッドデザイン賞を受賞。2014年、企画・運営を主に行う株式会社シマトワークスを立ち上げる。趣味は飲み屋ホッピング。

淡路島の外と内をミックスするコラボを展開

― シマトワークスさんが行っている企画について教えてください。

淡路島のさまざまな資源を使った企画の立案、実施、運営などを行っています。ターゲットも多岐にわたり、観光、新規事業、人材育成、企業研修などさまざまです。

― 数々の取り組みのなかから、まず「淡路島ゼロイチコンソーシアム」についてお聞かせください。

きっかけはワーケーションです。ワーケーションのために淡路島に来る法人や個人の方々に当社のオフィスを使っていただいていたのですが、ただワーケーションをするだけでなく、地元(淡路島)の人たちと仕事をしたり、新しい活動を生み出すような仕組みをつくることができたらいいな、と思うようになりました。また、企業側もそうした試みに価値を感じていることがわかってきたのです。

ワーケーション施設「Workation Hub 紺屋町」のお写真

― 島外と島内の企業や人が出会って、コラボができるのではないか、と。

はい。私自身も外から淡路島に来て、淡路島の方々と接するうちに、外と淡路島の違いに、刺激や改善の余地がありそうな部分を感じながら仕事をしてきたので、一緒に何かをやることはとても大事だと認識していました。淡路島が外からの企業や人材をお客様として受け入れるだけではなく、共に何か活動することは、双方にメリットがありますし、何より淡路島にとって大きなプラスになるのではと思いました。

私たちの役割は「双方をかき混ぜる装置」だと思ったのですが、実際にやろうとすると、外からの企業と私たちだけでは力が足りないことも痛感しました。そこで地元の行政や銀行にも協力してもらえたら、と考えたのです。幸いなことに洲本市と淡路信用金庫の協力を得られることになりました。

地元のサポートが大きな強みに

― 具体的にはどのようなコラボを行っているのですか。

洲本市・淡路信用金庫・当社の連携に、大学にプログラムを提供している大阪の企業がコラボして、協働で「淡路島クエストカレッジ」を開校しました。これは、地域や社会の課題解決を行ったり、それにより自分の可能性を広げたい若者や社会人に対し、実践の場を与えたりする取り組みです。

最近の例では、関西圏の大学生がフィールドワークのために「淡路島クエストカレッジ」を利用しました。大学で事前学習をした上で島に来て、数日間、島の人たちとコミュニケーションを取りながら課されたテーマに取り組みました。また大学だけでなく、地域課題をリサーチしに来た企業にも利用していただいています。

― シマトワークスさんの施設があるから、外からも利用しやすいですよね。宿泊もできるし、地元の行政や金融機関の協力もある。そして何よりシマトワークスさんがアイディアを提供してくれるし、促進のサポートもしてくれる。

そうですね。施設があり、地元の協力体制が整っているのは大きなメリットだと思います。また私自身が設計の仕事をしていたので、ご縁もあり、コンソーシアムに参画いただいている建築系の会社と地元団体とのコラボ企画も実現しました。「メンマサミット」というのですが、地域団体や行政が島の課題としている放置竹林問題について視点を変えて面白い形で提案しながら情報交換し、解決策を見出そうという企画です。

メンマは竹からできているため、この名称になりました。放置されている竹林を資源とし、淡路島産のメンマを作ろうという新しいビジネスもスタートしています。国内で流通しているメンマは99%が輸入品なのですが、国産(淡路島)メンマができれば、淡路島の特産品としても注目されるようになります。「メンマサミット」は想像していた以上に大盛況で、何百人もの来場者が全国から集まりました。

観光客も地元の方にも開かれた交流拠点として

― 洲本市にある「S BRICK」という建物も、交流地点として注目されていますね。

かつて洲本市は紡績業が盛んで、街の発展を支えていたそうです。昔の写真を見ると、紡績のレンガ倉庫がずらっと並んでいましたが、紡績業が撤退してからは数も少なくなり、残ったものをリノベーションしてはまた無くなり……という状況が続いていました。3年ほど前に残っていたレンガ倉庫を再度リノベーションし、「S BRICK」というスペースとしてオープンさせました。

「S BRICK」の機能としては、飲食、キッズスペース、クラフトスペース、コワーキングスペースがあり、当社は飲食エリア以外の運営を行っています。全体のイメージとしては、「おしゃれで大きな公民館」という感じでしょうか。キッズスペースは子どもが靴を脱いで走りまわれる広い空間があり、観光客にも地元の方にも人気です。

― 「S BRICK」とマスキングテープのコラボも大人気だったと伺いました。

「S BRICK」は、街の端にあり、周辺には昔ながらの商店街や建物があります。「S BRICK」からそうしたエリアにも足をのばしてほしいのですが、ただ勧誘してもなかなか人の足は向きません。

そこで、倉敷市のカモ井加工紙さんが展開しているマスキングテープブランド「mt」とコラボし、マスキングテープを使って商店街やお寺、古民家などをカラフルにリメイクしながら街を周遊するツアーを2023年秋に企画しました。とても評判がよかったので、今後も定期的にやりたいと思っています。

遍照院(洲本寺町)の完成写真

根底にあるのは、ワクワク感

― 富田さんが淡路島に移住されて13年。この間、島はどのように変化していますか。

変わりましたね。以前と違って空き家が出るとすぐに売れるようになりました。けれども、地元の方々の雰囲気は、昔のままです。私は飲み屋ホッピングが好きなのですが、行く店の人たちは変わらないです。観光客メインの店も新しくできて、そこは変化していますが、もともと地元の方々が多い店は変わらないですね。

― 富田さんがいろいろな企画を考案される際、根底にあるものは何でしょう。また、これから実現したい企画やコラボなどはありますか。

何をするにも「ワクワクしたい」という想いがあります。今後は、料理学校をつくりたいなと思っています。淡路島は関西エリアでは食の島として知られていて飲食店も多いのですが、農業・畜産・水産分野は生産者の高齢化など、いろいろな問題を抱えています。せっかくの資源を衰退させたくはないですし、食を通じて面白いことができれば、と思っています。

高齢の方が新しいことを始めるのはなかなか大変なので、外から来た人と島の人が混ざって、食の部分でも何かをつくり出していけたら、と。その足がかりとして、島に料理学校があれば、農家さんやプレイヤーにもプラスになるのではと考えています。こういった土壌づくりをしていきたいと思っていますが、その中に自分たちも種をまいたり、苗を植えることにワクワク感を感じています。食べることも飲むことも好きな飲み屋ホッピング好きの経験も活かせそうですし(笑)。

― 外からはどのような方に来てほしいですか。

ビジネスやお金だけが目的ではなく、淡路島に愛情や興味を持って来てくださる方ですね。「地元にコミットしたい」という想いを持った方に対しては、地元の役所、銀行も協力を惜しまない体制が整っていますから、ぜひいらしていただきたいと思います。

文:伊藤郁世

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