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鍛錬を続け、自分の枠を超える。日本発スキンケアブランドのCEOへ転身した、元マーケターのチャンスのつかみ方

鍛錬を続け、自分の枠を超える。日本発スキンケアブランドのCEOへ転身した、元マーケターのチャンスのつかみ方

日本発のスキンケアブランド「COCOCHI」のグローバルフラッグシップストアを2024年4月に東京・表参道にオープンしたCocochi Cosme株式会社。CEOの森本俊樹さんは、新卒で入社したP&Gジャパン合同会社のほか、外資系企業を中心にマーケティング分野で経験を積んできた。ご自身のキャリア、チャンスをつかむ際に大切にしてきたことについて、親交がある人材コンサルタントの北川加奈さんが話を伺った。

森本 俊樹さん/Cocochi Cosme株式会社 CEO(写真:左)
大学卒業後、P&Gジャパン合同会社に入社。マーケティング部門では、顧客とマーケットのインサイト理解をもとに、ブランドの中長期戦略立案や製品ポートフォリオ戦略の構築をリード。その後、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトングループ (ワイン&スピリッツ事業)、リシュモンジャパン株式会社(モンブラン)など、主に外資系企業におけるマーケティングの要職に従事。2023年より、現職に就任。趣味はランニングと山登り。

北川 加奈さん/エーバルーンコンサルティング株式会社 ヴァイスプレジデント・人材コンサルタント(写真:右)
静岡出身。英国留学後、英語教師を経て人材業界に転身。2021年エーバルーンコンサルティングに上級職として就任。ラグジュアリー、ファッション、ライフスタイル、コスメ業界に強みを持ち、外資系エグゼクティブサーチに従事。3,000件以上の紹介実績があり、業界屈指のネットワークを誇る。平日は都会的なライフスタイル、週末はアウトドアを愛し、愛犬と共に都市と自然の調和の取れた生活を送る。

トップではなく「トップの右腕」に憧れたスタート

ー 森本さんは新卒でP&Gジャパンにご入社されました。当初、キャリアをどのようにスタートさせようとお考えでしたか。

大学時代、自分のキャリアを決めるにあたって3つの大切にしたい軸を持っていました。1つ目は「プロフェッショナルに近づけるかどうか」です。日本の職人の方々、ファイナンスやサプライチェーンなど特定の領域におけるプロフェッショナルの方々が格好良く見え、職能で物事をとらえ、自らが何かのプロフェッショナルに近づける環境がいいと思ったのです。2つ目は「多国籍なチームで働けるかどうか」です。母がハーフだということもあり、いろいろなバックグラウンドや考え方を持つ方々と接する機会が多かったので、働く環境も多層性に満ちているといいな、と思いました。3つ目はズバリ「ワクワクできるかどうか」。この3つを軸として就職活動をした結果、P&Gジャパンに出会いました。

ー マーケティング職を希望されたのは、なぜですか。

インターンシップでマーケティング部門の方々と接した際、パワフルに物事を引っ張っていく様子やコミュニケーションの上手さに惹かれたのです。私は大学時代に経営学やマーケティングを学んでいたわけではなかったのですが、なんとかなるだろうと思っていました。

ー 当初から、いずれはトップに立つことを考えていたのですか。

どちらかというと、GM(ジェネラルマネージャー)よりもGMの懐刀になりたいと思っていました。GMに引けを取らないくらいの経験と能力を持つ、常に頼られる右腕のような存在になりたいと思っていました。

P&GジャパンのGMの多くは、マーケティング出身者でした。しかし当時の私は、マーケティングの知識や経験だけでは経営側に立つことは難しいのではないかと感じており、財務や営業などの領域も経験してみたいと感じていました。でも、自分が将来GMや最高経営責任者(CEO)になるとは1ミリも考えていませんでしたね。

P&Gジャパンでの経験が今のキャリアに繋がっていると語る森本さん

自分の付加価値を高めるべく、着実に経験を重ねる

ー その後、外資系企業を中心に様々なジャンルの業界で経験を積まれていますね。

はい。ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパンではブランドマーケティングを経て本社の営業戦略、カテゴリーマネージャーを務めました。その後、楽天でのデジタルマーケティングやCRM構築の経験を経て、LVMHにて、ワイン&スピリッツ事業部のマーケティングにシニアブランドマネジャーとして携わりました。データや分析だけではなく、時にはパッションも重要になるといった、自分のマーケティングの幅を広げる経験ができました。

MONTBLANCではマーケティングディレクターとしてブランドの認知の変換とリテールビジネスを、そしてペルノ・リカール・ジャパンではそれまで行っていたグローバルブランドを日本国内で展開させるというビジネスとは逆に、日本のブランドを世界に展開させていくというビジネスを経験しました。

このようにキャリアを積む中で、実感したことがあります。それは、日本の多くの人にとっては当たり前の日本のサービスやモノ作りのクオリティの高さが世界では素晴らしいとされていること。そして私の中で、その素晴らしさを世界の多くの人に知ってもらいたいという思いが少しずつ湧き出てきました。

ー Cocochi Cosmeも、まさに日本の素晴らしいブランドを世界に広めておられる企業です。今年4月にはフラッグシップストアもオープンしましたね。

「COCOCHI」は、国内大手化粧品メーカーで30年以上にわたって研究開発をしていた創業者が、定年退職後に趣味で始めたという、珍しい出自のスキンケアブランドです。“化粧品はどこまでいっても、使っていて心地いいものでなければならない”というのが創業者の想いで、それが「COCOCHI」というブランド名の由来にもなっています。

2018〜2019年のインバウンド最盛期に、中国でとても影響力のあるインフルエンサーに気に入っていただき、コロナウィルスの大流行の中、中華圏を中心に、200億円を超える売上を積み上げました。そのときの中国での売り上げは日本国内の売上の100倍以上でした。世界中のお客様が日本にいらした時にお店がないと残念な気持ちにさせてしまうと考え、ブランドの理念を体験いただける場所としてフラッグシップストアをオープンしました。

ー 200億円を超える売上とは、驚異的ですね。

ただ、経営権を譲り受けた現在のオーナーは中華圏向けのビジネス展開のみに主軸を置くことではなく「日本人が『日本人の考える美しさ』をつくり上げる」ことに価値があると考えています。コロナ禍でダメージを受けた日本組織を立て直そうとしていた際に、私は現オーナーと出会いました。

2024年4月にオープンしたグローバルフラッグシップストア「COCOCHI OMOTESANDO」。心地のよい時間と「抗糖化」をテーマに、<触れる・食べる・感じる>、異なる3つの空間を複層的に体感できる新しい形のフラッグシップストアだ。

鍛錬を続けてつかんだ「自分の枠を超えていく」経験

ー ご自身のキャリアを振り返って、どのようにお感じですか。

Cocochi CosmeのCEOという仕事は、約18年間の私のキャリアの集大成だと感じています。今までさまざまな会社とご縁があり、経験を積み重ねてきましたが、それは自ら選んだだけでなく、人との出会いや物事の巡り合わせといった外的な要因も大きいです。しかし、その時々で「次に何をすべきか」「自分が本当にやりたいことは何か」を問い、自分のマーケティングスキルの付加価値を高めることを考え、判断してきました。

冒頭で申し上げた通り、私は当初、自分には誰かの右腕のポジションが向いていると考えていました。しかしキャリアを積んでいく過程で、少しずつ「自分が理想とする日本のブランドのつくり方を実践してみたらどうなるんだろう」という気持ちが湧いてきたのです。まわりに後押ししてもらったこともあり、現在はCEOという「自分の枠を超えていく」経験をさせてもらっていると思っています。

ー 人や物事との巡りあわせの中で、森本さんが意識されていることは何ですか。

チャンスに出会った時にしっかりとつかむこと、そのために普段から鍛錬を怠らないことを大切にしています。新しい出会いを重ね、本を読み、目の前の仕事に全力で取り組みやり遂げること。そうすれば、積み重ねが準備となり、何かが起こった時にすぐ動けるしなやかさが生まれると思います。また、趣味のランニングや登山を通して、自分とじっくりと向き合う時間を取るようにしていますね。

私は、ストイックに決めたところに情熱を傾けて向かっていくことが得意なのかもしれません。昔から、何かを決めたらとことんやってみる性格で、学生時代にはバックパックひとつで南極以外の大陸77の国と地域をまわりましたし、「日本でも屈指の登山ルートを制覇する」と決めたら、山の師匠の助けをいただきながらとことん登りましたね。長く続くキャリアの中で巡りあわせを活かせるかどうかは、その時までの自分の努力次第ではないかと思います。

ー 仕事面で意識されていること、大事にされていることは何でしょうか。

学生時代、バイト先の店長に「仕事とは端(はた)を助けることだ」と言われました。周囲で困っている人たちや、サポートが必要な人たちを助け続けるということです。そういう方々に価値のあるものを提供し続けるために、全体の流れを整理し、周りを巻き込み調整をしていくのが、マーケティングやビジネスでは大事だと思います。

CEOになり一年半が経ちますが、私が指示を出すというよりもチームがブランドらしさを考えて自ら動いてくれているため、心地いい環境が生まれている気がします。

ー 商品だけではなく、組織も心地いい。素晴らしいですね。

日本語の「心地いい」はすごく良い言葉ですよね。それを冠にするブランドですから、会社も心地よさを体現できる場にしたい。それは私の役割だと思っています。今後もその場を分かち合えることに対する感謝の気持ちを大切にしていきたいです。

文:梅原ひかる
撮影:船場拓真

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