働く人の個性、カルチャーマッチを徹底的に重視!「On」のユニークな人事戦略とは
スイス発のスポーツブランド「On(オン)」。2010年の創業以来、革新的なランニングシューズで世界中のランナーを魅了し続けている。日本法人であるオン・ジャパン株式会社は、2015年の設立から急成長を遂げ、現在は約90名の従業員を抱えるまでに至った。そんな同社の採用・人事戦略について、Talent Acquisition Specialistの中川淳一郎さんと、Human Resource Business Partnerのビクターさんに取材。「On」が大切にする企業文化や、ユニークな取り組みの数々、そして今後の展望を伺った。
中川淳一郎さん /オン・ジャパン株式会社 Talent Acquisition Specialist(写真:右)
2020年3月、オン・ジャパン株式会社に入社。人材紹介会社での経験を活かし、同社の採用戦略の立案・実行を担当。入社当初は人事部門の唯一のメンバーとして、採用から労務まで幅広く携わる。現在は主に採用業務に注力し、「On」の成長を支える人材の獲得に尽力している。海外での就業経験も豊富で、シンガポールやタイで計9年間勤務。
ビクターさん/ オン・ジャパン株式会社 Human Resource Business Partner(写真:左)
2022年10月、オン・ジャパン株式会社に入社。日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの人事戦略を担当。採用、研修、ダイバーシティ&インクルージョンなど、幅広い人事領域でビジネスパートナーとして活躍。IT企業での人事経験が豊富で、リクルーターから人事マネージャーまで様々な役割を経験。多言語を操り、グローバルな視点で人事戦略を立案・実行している。
偶然が導いた「On」との出会い
― 中川さんのキャリアと「On」に入社したきっかけを教えてください。
中川淳一郎さん(以下、中川):もともと大手飲料メーカーの営業職として社会人をスタートしました。その後、国際会議や通訳のアレンジを行う会社を経て、人材紹介業界に転身しました。海外で約10年間働いた後、2020年に日本に戻ってきました。
「On」への入社は、偶然の重なりでした。求人を見てもピンとくるものがなかった中で、「On」の募集を見つけました。その前日にたまたま武蔵小杉のスポーツショップで「On」の商品を見かけて興味もあったので面接を受け、オファーを頂きました。さらに、オファーを受けるか迷っていて実家に帰った時にも偶然が重なりました。下駄箱を開けたら「On」の靴が入っていて、母がすでに愛用者だったんです。少し運命を感じました。
― そんな偶然の重なりもあった中、「On」に入る決め手は何だったのですか。
中川:ずっと人材紹介の仕事をしていたので、スポーツ用品の会社で働くことに新鮮さを感じました。これまでの経験とは異なる環境に挑戦できると思いましたね。また、スタートアップ感のある雰囲気も自分とマッチしていました。当時は雑居ビルにオフィスがあったのですが、みんなすごく楽しそうに働いていたのを覚えています。私が入った頃はメンバーは20人ほどでしたが、現在は約90人にまで増えて、組織も大きくなりましたね。
― ビクターさんのキャリアと入社のきっかけはいかがでしょうか。
ビクターさん(以下、ビクター):私は一貫して人事の仕事に携わってきました。リクルーターから始まり、人事マネージャーまで幅広い役割を経験しています。「On」には2022年に入社しました。きっかけはスカウトですが、実は以前から「On」の靴を愛用していたんです。ブランドへの愛着があったので話を聞いてみようと思いました。
入社の決め手のひとつには、自身の経験があります。実は交通事故に遭い、4カ月ほど歩けない期間がありました。その時に、歩くことや走ることの素晴らしさに気づいたんです。「On」の理念と自分の経験が重なり、この会社で働きたいと強く思いました。
カルチャーマッチを重視する採用哲学
― 「On」の採用担当者として、面談の際に大事にしているポリシーは何でしょうか。
中川:「その人の内面をできるだけ知ること」です。というのも、履歴書やスキルだけでは、本当にマッチするかわかりません。だから私との面接では、事前に用意できるような質問はあまりせず、考えやこだわりといった、その人自身を知るための質問を心がけています。その上で、「On」のカルチャーマッチやブランドが目指す目標への共感などを重視します。
― 個性を大切にした上でのカルチャーマッチを重視されているのですね。
中川:入社後にミスマッチとなれば、お互いに不幸になってしまうと思うんです。例えば、「On」は走ることや身体を動かすことが好きな人に愛されるブランドでありたいと考えています。そもそも、その考えに否定的だと本人も楽しくないですよね。一緒に働くチームの雰囲気や考え方なども同じように、様々な観点でお互いマッチしていることが大事だと思います。
そのため、私たちの面接では、基本はオンラインで実施しますが、可能な限り横浜のオフィスにも来てもらいます。採用チームだけでなく、他のチームメンバーも加わって交流するんです。「On」の雰囲気を直接感じてもらい、私たちも直接会って話をすることは、双方にとって良い判断に繋がると考えています。
― 事業が急成長する中で、集まる人のバックグラウンドも多種多様だと思います。「On」に入社する人の共通点はありますか。
中川:共通しているのは、みんな純粋に「On」が好きだということ。街中で「On」の製品を見かけると嬉しくなり、もっと良くしたいという想いを持っています。また、同業他社のブランドのこともリスペクトしている人が多いですね。様々な良いブランドがあり、その中で「『On』を選んでもらいたい」という思いを持っている人が集まっています。
ハイパフォーマンスにつながる、インクルーシブな環境
― 「On」ではインクルーシブな取り組みを行っていますね。代表する取り組みの「Right to Run(ライトトゥラン)」について教えてください。
ビクター:「Right to Run」は、2020年2月にアメリカで起きた、ランニング中の黒人男性が射殺されるという人種差別に関する事件がきっかけです。この出来事を受けて、「On」ができることを話し合いました。その結果、「誰でもいつでもどこでも走れる世界」を目指そうと始まったのが、「Right to Run」です。
日本では、その理念を具現化した取り組みで認定NPO法人改革プロジェクト様と一緒にパトランという活動を実施しています。ランニングに社会貢献の要素を加えた取り組みで、子どもや女性など「誰もが安全にランニングを楽しめる地域社会」を目指す活動です。
― 「走る権利は誰にでもある」にフォーカスした活動ですね。走る以外にも特徴的な取り組みはありますか。
ビクター:今年から「インクルージョングループ」という取り組みを始めました。似たようなバックグラウンドを持つ人々が集まり、悩みを相談したり情報交換したりする場を提供することで、所属する人たちの不安の解消や安心につながることを目的にしています。
例えば、女性や親だけのコミュニティがあります。海外では同じ宗教や黒人だけのグループなど、各国のニーズに合わせたグループが作られています。
― なぜ「On」では、インクルーシブな取り組みを重視しているのでしょうか。
ビクター:私たちがよく使う言葉に「ハイパフォーマンスチーム」があります。「On」はチームのパフォーマンスを非常に重視しています。しかし、高いパフォーマンスは単に能力だけでは達成できません。
社員が心地よく働くことができ、高いモチベーションを維持できる環境があってこそ、高いパフォーマンスを生み出せると考えています。そのためには、一人ひとりのスキルを活かし、カルチャーにフィットしながら、多様性を尊重することが大切です。
つまり、インクルーシブな取り組みは、ハイパフォーマンスチームを作るための重要な土台なのです。相互理解を深めることが、結果的にチーム全体のパフォーマンス向上につながると信じています。
― インクルーシブな取り組みは手段であり、その先のチームのパフォーマンスというゴールがあるのですね。チームという観点で、「On」ならではの取り組みはありますか。
ビクター:「On」では、誰に対してもフィードバックを行う文化があります。もちろん日本ではフィードバック自体が苦手な文化があることは理解しています。ただ、フィードバックはチームで働く上で重要な手段です。そのため、日本の文化に合わせてカスタマイズをしながらフィードバックの研修や機会を意図的に設けています。
「On」が描く、さらなる成長への青写真
― さらなる飛躍に向けて、今後はどんな目標を掲げていますか。
中川:私が入社した当時では考えられないほど、いまは多くの方に「On」を認知していただけるようになり、応募も増えています。今後の目標としては、より多くの人に「「On」で働いてみたい」と憧れを持っていただけるブランドにしていきたいです。あとは、「On」を離れたメンバーが次のステージで関わる人たちに「さすが『On』で働いていた人は違うね」と言われるような人間性も能力も高い集団を目指したいと思います。
― そのために、どんな人が「On」では活躍できるのでしょうか。
ビクター:「『On』でこれをやりたい」という明確なビジョンを持っている方と働きたいですね。何ができるかを自分で考え、新しいことにチャレンジする意欲のある人が活躍できる環境を整えています。また、ポジティブな姿勢も重要です。「On」は成長スピードが速く、新しいプロジェクトも多数あります。失敗を恐れず、そこから学んで成長できる人はマッチしているでしょう。そして「On」というブランドに共感し、一緒に成長していきたいと思う人を歓迎します。
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