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リアルとバーチャルの融合、コロナ禍で変わる接客スタイルとは -株式会社インター・ベル取締役会長 田中克典氏インタビュー

リアルとバーチャルの融合、コロナ禍で変わる接客スタイルとは -株式会社インター・ベル取締役会長 田中克典氏インタビュー

「おもてなしの心で人々を幸せに!」を企業理念に、人材ビジネスを展開する株式会社インター・ベル。未経験から高い接客スキルを持つ販売職を育てる教育システムを構築し、長年に渡ってファッション業界に大きく貢献してきた。コロナ禍によって大きく変化しつつある販売の現状、販売職への想い、新しい接客スタイルによるファッション業界への展望について話を聞いた。

田中 克典さん
株式会社インター・ベル取締役会長
1996年早稲田大学卒業後、大手アパレル企業に入社。アパレルに特化したコンサルティング会社などを経て、2005年10月、株式会社インター・ベルを設立。2013年からはクリーク・アンド・リバー社のグループ企業となる。趣味はランニング。現在4人のランニング仲間とともに、サンフランシスコからニューヨークまでの2572マイルを走破するバーチャルレースにチャレンジ中。

―田中さんがファッション業界で人材ビジネスを立ち上げようと思ったきっかけは何だったのでしょう?

大学卒業後、大手アパレル企業に就職したのですが、実はさほど思い入れのある業界ではなかった。他の業界に行きたかったけれどダメで、結果的にアパレルに入ったという感じで。アパレル会社勤務時代、販売職の仲間と話していると、「自分のファッションブランドを立ち上げたい」「いずれは店を持ちたい」などと、みんな口々に夢や目標を語るんです。だったら自分はそうした人たちを応援する仕事ができたらいいな、と。

―販売職への想いが、インター・ベルの原点なのですね。

販売職が現場で活躍できるように、そしてゆくゆくは販売職がファッション業界を引っ張っていけるような、そんな人材を育成したいと思いました。人材育成においてもっとも重要なのは教育です。そこでインター・ベルでは独自の教育・研修システムを構築して、販売職のスキルアップを応援しています。スタートは7級からで、ゴールは1級。4級を取得すれば、店長や店舗マネジメントができるスキルが身に付きます。店長クラスになれると大きな自信につながりますし、さらに上を目指したいという意欲も湧くでしょう。ゴールの1級はスーパーバイザーレベルです。

―インター・ベルの設立時は、自宅がオフィスだったそうですね。

2005年10月に1DKの自宅アパートで起業しました。それから2LDKのマンションに移りましたが、そこも自宅兼オフィス。その後ようやく事務所を構えました。といっても米屋の2階でしたけどね(笑)

―米屋の2階時代には、伝説のエピソードがあると伺いました。

米屋の2階とはいえ独立した事務所を構えると、けっこういろいろな方が営業に来るんです。アポなしでいきなり飛び込み営業に来る人も多くて。当時の私は、営業に来られた方にはすべて会って話を聞くことをモットーとしていたのですが、「アポなしも含めて社長自ら全員に会うなんて珍しい」と伝説になっているようで(笑)。なぜ全員に会ったかというと、人って実際に会って話を聞かないと、その人の考え方がわからないと思ったからです。営業ってモノやサービスを売る仕事でしょう。人がどうやってモノやサービスを売るのかを直に会うことによって知りたかった。ですからむしろ勉強のために人に会っていたという感覚ですね。当時出会った営業の方のなかには今、誰もが知るような大成功を収めている人もいるんですよ。

―2013年12月からは、クリーク・アンド・リバー社のグループ企業に。

事業拡大とともに社員も増え、米屋の2階の事務所が手狭になったので、次は落合南長崎駅近くのビルのワンフロアを借りました。クリーク・アンド・リバー社の傘下に入るころには、社員が160人ぐらいになっていて。人材ビジネスって先にお金を出さなければならないので、人員が増えると資金繰りがけっこう大変なんです。そのためインター・ベルと同じような想いで仕事をしている会社と協力できればいいな、と思いあれこれ模索していました。そんなときにクリークの代表取締役である井川氏と会う機会があったんです。

―クリークは映像系業界を中心に人材ビジネスを行っていますよね。ファッションとはちょっと違うというイメージですが。

確かにクリークは映像業界に強い会社ですが、もともとは映像業界の現場で働くスタッフの持っている夢を叶えていきたいという想いから井川氏が設立した会社なんです。例えばテレビ制作現場におけるADさんは、休みもないし給料も安いけれど、ディレクターやプロデューサーを目指して頑張っている。そうした人たちをサポートしたいという井川氏の想いが根底にあるんですね。ファッション業界の販売職もそれと似たような環境にあって、販売職の給料は安いしなかなか上にもいけない。業界は違っても、頑張る人、目標を持つ人をサポートしたいという熱い想いは同じ。クリークと一緒にやっていきたいと思ったのは、そうした共通した想いがあったからです。

―クリークの傘下に入ったメリットは大きかったですか。

想像していた以上に大きかったですね。何より資金的な心配がなくなったので、会社の経営に専念できるようになりました。会社が進むべき方向性に無理なく進める土台が整うと、会社そのものがとても安定します。また傘下に入るとともに、クリークが入るビルに当社も移転しました。セキュリティ付きのオフィスはやはりいいですよ。これから新しく取引を行う可能性のある会社へのプレゼン時にも、最新のオフィス環境はひとつのアピールポイントになりますからね。

―信用度が増す、と。

クリークは2016年に東証一部上場を果たしたので、それによる社会的信用も大きくアップしました。クリークのグループ企業になってから、マイホームを持つ社員が増えたのですが、これも社会的信用が高まったことによってローンの審査に通りやすくなったからなんです。一方で、上場すると制約ができるので、自由度は減るのではという懸念も少々抱いていましたが、制約、言い換えればルールが定まることで、かえって安心感が増しました。ルールにのっとって仕事をすればよいので、安心して業務に専念できる。私も以前のようにピリピリしなくなりましたよ(笑)。またクリークは、医療、ゲーム、法曹、ファッション業界などにもどんどんビジネスの領域を広げています。私たちはクリークのなかのファッション部門を担っていますが、グループ内にさまざまな業界へのネットワークがあるため情報がたくさん入りますし、互いに協力もできる。傘下に入ることで得たメリットの大きさは計り知れません。

―しかし今は新型コロナの影響で、ファッション業界は大きな打撃を受けていますよね。

当社の社員は主に百貨店やファッションビルの店舗に勤務していますが、緊急事態宣言により全員が自宅待機となりました。自宅待機となってもリモートなどで在宅勤務が可能な業界もありますが、対面で商品を売る販売職はそれができません。けれども社員の生活は保障しなければならない。そこで当社社長の黒崎は、自宅待機中の社員の給与を100%保証することを決定しました。とはいえ休んでいるだけではもったいない。社員には研修コンテンツを配信し、自宅待機という時間を学びの時間に充ててもらいました。

―緊急事態宣言解除から数カ月がたちましたが、ファッション業界の現状はいかがですか。

店舗も再開して客足も少しずつ戻ってきました。しかし大手アパレルなどではリストラも進んでいます。イベントも以前のようにはできませんし、まだまだファッション業界は厳しい現状にあると思います。けれども新型コロナがあったことで、新たな課題やビジネスモデルも見えてきました。

―課題と見えてきたビジネスモデルとは?

販売職が行ってきた対面販売は、完全にアナログの領域で、店舗販売というのはずっとアナログでやってきたわけです。しかし新型コロナによって対面販売ができなくなりました。今は少し客足が戻ってきたとはいえ、これからは以前のようにはいかなくなるでしょう。そこで考えたのが、アナログからの脱却、つまりデジタルとの融合です。

―それがアパテックとの協業につながった、と。

アパテックジャパンは、ITを活用したファッション・ソリューションを提供する企業です。当社はアパテックと代理店契約を結び、アパテックジャパンが提供しているバーチャルフィッティングとデジタル無人店舗システムの取り扱いを開始しました。バーチャルフィッティングとは、精密自動採寸技術で取得した個人の全身データと、衣料品データをAIによって合成することで、PCやタブレット、スマホなどのデバイスを使用していつでもどこでもオンライン上で試着ができる画期的なシステムです。自分に似た体型のモデルを選べばサイズ感や自分に似合うかどうかもオンラインで判断できます。2020年内にはスマホから自分の写真をアップロードしてバーチャル試着できる機能もリリースする予定となっています。さらに、ファッション通販の老舗であるノース・モール株式会社(旧オットージャパン)とも業務提携を結び、ECサイトへの誘導を可能とすることで、試着から購入までの流れをオンラインのみで完結できる流れを構築。対面販売がなかなか難しいニューノーマルな日常における新たなショッピングスタイルが誕生しました。こうした業務提携によってささげ業務などのコンパクト化も実現しますので、コスト面の削減も期待できます。

―販売職に求められるスキルはどのように変化していきそうですか。

バーチャル化が進んでも、対面による接客はゼロにはならないと思います。ただし今後は、リアルな接客とバーチャルな接客のどちらもできる販売職へのニーズが増してくると考えています。対面での高い接客テクニックは、バーチャル接客においても活かされると思うんですよ。というのもリアルでもバーチャルでも、接客において最も大切なのは、つねにお客様に満足してもらいたいと思う気持ちだからです。お客様を満足させることができれば、お客様はまたこの人から買いたいと思いますよね。インスタのフォロワーが増えるようにファンが増えれば口コミでそれがさらに広がり、ますますその販売スタッフの人気が高まる。だからこそ、これまで以上に「個」を活かして良質な接客ができる販売職を育てていきたいですね。

―ファッション業界の今後はどうなっていくとお考えですか。

回復には時間がかかると思います。けれどもテクノロジーの力を借りながら、新しいサービスもどんどん生まれていくでしょう。それを活用しながらファッション業界をサポートしていけば、4~5年後にはまた活気あふれる業界に生まれ変わっていくのではないかと期待しています。

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国内外のファッション・スポーツビジネスに特化した人材カンパニーのインター・ベル。
店舗運営代行をはじめ、スタッフ育成や店舗再生コンサルティング、VMD業務など、幅広いサービスを提供しています。
東証一部上場企業の関連会社C&R社が持つネットワークとノウハウを活用し、雑貨やインテリア、コスメ、フードの分野にも事業領域を拡げ、人々の生活に関わるファッション分野の販売コンサルティング企業を目指します。