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【大阪・関西万博 現地取材】競技スポーツブランドのイメージを打破!MIZUNOの新たなアプローチに迫る

【大阪・関西万博 現地取材】競技スポーツブランドのイメージを打破!MIZUNOの新たなアプローチに迫る NEW

日ごとに盛り上がりを見せる大阪・関西万博。大阪・住之江区に本社を置くミズノ株式会社は、シグネチャーパビリオン「いのちの遊び場 クラゲ館」への協賛と万博公式スタッフ用シューズを提供した。そこには、ジャズピアニスト・数学研究者・教育家として活躍する中島さち子さんが提唱するSTEAM教育への共感と、スポーツを通じた教育で社会に貢献したいという思い、そして「競技スポーツに特化したブランド」という従来のイメージを打ち破り、新たなブランドイメージを人々に伝えたい思いがあった。ミズノ株式会社 総合企画室 村田一雄さんに詳しくお話を伺った。

村田一雄さん/ミズノ株式会社総合企画室 万博担当参事
大阪府出身。芸術大学を卒業し、1986年に商品デザイナーとしてミズノ株式会社へ入社。2006年ミズノ創業100周年のタイミングでブランディング担当となる。その後、デジタルマーケティング、イクイップメントプロダクト部門の責任者を経て、2020年から「イノベーションセンター MIZUNO ENGINE」設立プロジェクトに入り、研究・開発力強化に関わってきた。平行して大阪・関西万博を担当する。

すべての「子どもたち」にスポーツのワクワクを提供

ー まずは、御社が大阪・関西万博へ協賛された経緯を教えてください。

弊社は大阪の企業で、本社は万博会場である夢洲から1駅の場所にあります。そういった縁もあり、万博の開催が決まった当初からぜひ何らかの形で参加したいと考えていました。初めての試みでしたので何から始めたらいいのだろうと試行錯誤していた中、博覧会協会を通じてクラゲ館プロデューサーの中島さち子さんに出会いました。

ご存じの通り、中島さち子さんはSTEAM教育(※)の第一人者です。パビリオンで「”子どもたちが遊びながら学ぶ”を表現したい」という中島さんの思いと弊社のコンテンツを組み合わせる形で、協賛が実現しました。

※STEAM教育……Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)Mathematics(数学)の5つの頭文字を組み合わせたもので、理数教育と創造的教育の統合的な学びと実践を指す。

ミズノ本社から大阪・関西万博会場が一望できる

ー 御社のコンテンツと中島さんのSTEAM教育には、どのような親和性があったのですか。

中島さんのおっしゃる「子どもたち」は、0歳から120歳までを指します。つまり、この世に生きているほぼすべての人です。弊社は、スポーツ用品の開発・販売だけではなく「モノ・コト・場」の3つの側面から事業を展開しており、かねてから生涯教育としてのスポーツの重要性を多くの方に伝えることが必要だと認識しています。そこに中島さんのお考えとの親和性を感じたのです。

36の動きを自然に取り入れられる「MISPO!」を体験

ー クラゲ館のコンセプトは「いのちを高める」だと伺いました。御社はこの言葉をどのように捉えておられますか。

さまざまな捉え方ができますが、弊社は“ワクワクする”だと認識しています。野球少年が初めてグラブを手にした時の気持ちや、サッカー少年が憧れのスパイクを買ってもらった時の気持ち、もしくはスタジアムに行って、応援するチームの試合を観戦するときの高揚感など。競技の種類を問わず、スポーツはやはりワクワクするものなのだと思います。

弊社はパーパスとして「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」を掲げています。近年お子さんはもちろん、高齢者も含めた全世代の運動能力の低下が課題です。加えて、少子高齢化による競技人口の減少も進んでいます。弊社はかねてよりスポーツ用品の開発・製造を行っていますが、実はそれ以外にも運動プログラムの提供にも取り組んでいます。

ミズノ本社1階にはパーパスを体現したギャラリーがある

ー 運動プログラムについて詳しく教えてください。

子ども向けの運動プログラムとしては、今年度より新たに「すみのえ運動遊びプログラム事業」として運動プログラムの提供を始めました。お子さんの運動能力の低下防止への貢献や、成長促進を促すことを目的とした、大阪市教育委員会を通じた取り組みです。現在は社屋がある住之江区内の幼稚園のみに提供していますが、今後はさらに広げていくことも視野に入れています。

他にも「ミズノ流忍者学校」や、ベトナムの小学校のスポーツ授業に提案を続けている「ヘキサスロン」という運動遊びプログラムが挙げられます。また大人向けのウォーキング教室なども開催しています。これらは弊社のスポーツ施設サービス事業部とミズノスポーツサービス株式会社というグループ会社が主となり運営を行っています。

ー 今回協賛されるクラゲ館では、どのようなワークショップが体験できますか。

お子さん向けのワークショップとして、8月に「MISPO!」の体験会を行います。「MISPO!」は昨年から事業化した、10種類のスポーツ体験を通じて遊びながら自然に「36の動き」を取り入れることができるプログラムです。弊社のイノベーションセンターを万博サテライト会場とし、そこで体験いただいている様子をクラゲ館のモニターにライブで映しながら、来場者には運動グッズを体験していただきます。

また高齢者の方も楽しめるミズノオリジナルのイベントとして、「Motion DNA」という歩行能力の計測プログラムを行います。こちらは⾼精度な専⾨機器により、歩⾏能⼒を構成する歩⾏速度・歩幅・歩⾏の軌跡を簡単に測定することができるものです。約5m歩くだけで歩き方の癖を捉え、スタッフによる歩き方のアドバイスも可能です。通常は有料サービスとして実施しているもので、参加者の方にはとても喜んでいただいています。

「MISPO!」で楽しみながらカラダを動かす子どもたち。

競技スポーツブランドのイメージを打破する

ー 楽しそうなプログラムですね。今回の出展を通じ、どのようなメッセージが伝わることを期待されていますか。

今回の万博ではプログラムの他にもクラゲ館のアテンダントやスタッフのユニフォームの提供と、万博会場の公式スタッフの方々のシューズ3,400足を提供しました。世界各国から訪れるさまざまな方や老若男女、そしてスポーツパーソン以外の方々にも、ミズノのブランドに接していただく機会になることを期待しています。

ユニフォームには、オリンピックで選手のユニフォームに提供するものと同等の、テクニカルな素材を使用しています。クラゲ館は半分屋外ですから、スタッフの暑さ処理・汗処理は重要な課題です。スポーツ競技以外の機会に活用いただくことで、多くの方に弊社の商品の魅力が伝わることを期待しています。

クラゲ館のユニフォームにはミズノがこれまでにスポーツで培った技術が取り入れている

ー 大阪の夏場の暑さを思うと、ミズノの技術が集結した素材のユニフォームはとても過ごしやすそうです。スポーツとは異なる角度でミズノの魅力に触れる、良いきっかけとなりそうです。

先日もある方に「私は元高校球児で、学生時代はずっとミズノのグラブを愛用していました」と言っていただきました。ありがたいことにミズノは、国内では多くの方に認知していただいていると感じます。皆さんにブランドのイメージをお伺いした際に、最も多く返ってくる答えは「競技用のメーカー」もしくは「世界的な大会でよく見るブランド」です。

しかし一方で、子どもの頃にあまりスポーツを経験されてこなかった方からは「ミズノってお年寄りのスニーカーのイメージがある」「もっとオシャレなCMをしたらいいのに」というお声をいただくこともあります。

タッチポイントや個人のブランド体験によって、ブランドのイメージはかなり異なります。スポーツが苦手な方や、学生時代の運動部の経験が「辛かった」と印象づいている方にとっては、ミズノのロゴ自体がネガティブな印象になりかねません。今回万博にすることで、皆様にとってミズノとの出会いがスポーツのワクワクにつながるものであってほしいと願っています。

ー 確かに、スポーツ競技の場面で御社の商品を見かける機会が多いです。スポーツの思い出がそのままブランドの印象になるというのは、とても想像しやすいお話です。

実は弊社は近年、日常使いできるファッション系のプロダクトにも注力しています。東京・神保町や、大阪・茶屋町のフラッグシップストアでは、街中で着用できるシューズやアパレルなど、ライフスタイル系の商品を手に取っていただくことが可能です。

万博を通じ、新たな化学反応にも期待

ー 今回の万博の出展は、御社の事業に今後どのように活かされていきますか。

万博への協賛を通じ、さまざまな企業の方たちと新たに出会う機会が増えました。また従来からお付き合いのあった企業の方々とも、まるで苦楽を共にした仲間のように感じあえるようになったと感じています。今後はそういったつながりで気楽にお話する中から「こんなことが一緒にできるのでは」などと、新たな事業やコラボなどのビジネスの種が生まれることにも期待しています。

長年ミズノにてさまざまな事業に携わってきた村田さん。今回、万博プロジェクトをきっかけに社内外に対して前向きな影響を与えられたらと語る

ー 最後に、関西・大阪万博のクラゲ館、そしてミズノの商品に興味を持っておられる方々にメッセージをお願いします。

冒頭に申し上げた通り、万博への出展は弊社としても初めての試みです。10月に万博が閉幕した時に、ユーザーはもちろん、我々にもどのような化学反応や変化が起きているのか。正直に言うと想像もつかないというのが本音で、とても期待しています。

私は実は55年前、1970年の大阪万博を訪れたことがあります。かなり幼い頃でしたので細かな記憶は曖昧なのですが、他では絶対に見ることのできない不思議な街の印象と、ワクワクした思い出はとても強烈な思い出として印象に残っています。ぜひ会場に足を運んで、ご自分の目と体で万博を体験してみてください。そしてぜひ、クラゲ館でミズノのプログラムやプロダクトに接していただけますと幸いです。

文:梅原ひかる
撮影:坂直子

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