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ホーリー先生の外資系キャリア塾:成功の掟〈“最初と最後”で差がつく。面接印象術編〉

ホーリー先生の外資系キャリア塾:成功の掟〈“最初と最後”で差がつく。面接印象術編〉 NEW

外資系企業の面接では、限られた時間の中で「どれだけ自分の印象をしっかりと残せるか」が、結果を大きく左右する。問われるのは持っているスキルだけでなく、「なぜ自分がふさわしいのか」を言語化する力だ。効果的な自己紹介、面接官の信頼を得るためのコミュニケーション、行うべき事前準備とは――? 採用する側・される側の両方を経験してきたホーリー先生が、体験エピソードも交えながら外資系ブランドの面接を勝ち取るための戦略ポイントを解説する。

堀 弘人さん(ホーリー先生)/H-7HOUSE LLC 代表 | ブランド・マーケティングコンサルタント
独立系マーケターやクリエイターと連携する H-7HOUSE (エイチセブンハウス)を創設し、企業の経営課題や社会課題に対するブランド・マーケティング戦略を推進する。 「PEOPLE BASED BRANDING®︎」 を提唱。 人的資本を活かしたブランド構築を実践し、「人」を軸にしたブランド価値の最大化を支援する。 外資系ブランドでマーケティングディレクターを経験し、日系上場企業の国際戦略部門にて、新規事業の立ち上げと短期間での収益化を実現した実績を持つ。 ブランド戦略を経営視点で捉え、事業成長とブランド価値の最大化を両立させるコンサルティングを強みとする。

選ばれる人は、最初の3分で差をつける

外資系企業の面接で、意識すべき点について教えてください。

外資系企業の面接は、スピーディに3回で内定が出ることもあれば、5〜7回の長期選考にわたることもあります。その中で重要なのは“自分の印象をしっかりと残すこと”。そのために有効活用したいのが、自己紹介です。

自己紹介は、単なる経歴の説明ではなく、“端的に自分の魅力を伝えるプレゼンテーション”と捉えるべきです。私は「3分間のエレベーターピッチ」として準備することをおすすめしています。つまり、スタートアップ企業が投資家に向けて行う短時間のプレゼンのように、自分の強みや市場価値、なぜそのブランドに惹かれているのかといった要素を、簡潔かつ印象的に伝えるのです。

時間の目安は3分以内が好ましいです。もちろん1分で印象を残せるのであれば、それでも十分です。3分以上にわたって話すと「要点を整理できていない」という印象を与えてしまうので要注意です。

効果的な自己紹介の伝え方はありますか。

結論を先に伝える“コンクルージョン・ファースト”が良いです。日本では職歴を新卒から時系列で説明するスタイルが一般的ですが、外国人の面接官に対しては、直近の職歴から話し、「現在何をしていて、なぜ次のステップに進みたいのか」といった構成の方が伝わりやすいです。言語や文化による話し方の違いを理解し、それに合わせて話す順序を工夫することも、重要な戦略のひとつです。
また、姿勢や表情、声のトーン、身振り手振りなどの非言語的な要素も含めて、「自己プレゼンテーション」の一部と捉えるべきです。外資系では“Be Bold. Be Confident.”(自信に満ち溢れ、大胆に表現すること)も大事です。過度に謙遜せず、自分の価値を明確に伝えるという姿勢が評価されやすいでしょう。

他にはどのような工夫があると良いでしょうか。

面接官に自分の個性やそのブランドへの想いが伝わるストーリーを添えるのは効果的です。例えば、私が高級時計ブランドの面接を受けたときには、自分がそのブランドの時計を長年愛用しているエピソードを話しました。家族からプレゼントされたもので、仕事の節目ごとに身につけてきた、思い入れのある時計です。そうした背景を語ることで、異業種からの挑戦ではありましたが「この人はブランドを理解し、大切にしてくれるだろう」と感じてもらえたのだと思います。

このように、冒頭の数分間でパーソナルな物語なども織りまぜながらどれだけ印象を残せるかが、その後の評価に大きな影響を与えます。すべての面接が冒頭3分で決まるとは言い切れませんが、「記憶に残る自己紹介」は、確実に選考を有利に進める武器になります。

面接官の信頼を得るコミュニケーションとは

自己紹介や実績のアピール以外で、印象を左右するポイントはありますか。

多くの方は、面接=自分の実績をプレゼンする場だと捉えがちです。しかし、「双方向のコミュニケーションが成立した面接のほうが選考通過率が高い」というのが私の経験からくる示唆です。面接官にもたくさん話してもらい、会話の中で相手の考えや課題を引き出す。それに噛み合うように話を展開することが、信頼感や納得感につながります。

また、心理学で言う「返報性の法則」が働く場面も多く、応募者が相手の意図や立場を理解しようとする姿勢を見せることで、面接官の心にも「この人に応えたい」という気持ちが芽生えやすくなるでしょう。

特に大切なのは「この企業はなぜこのポジションに人を採用しようとしているのか」を捉える視点です。面接を行うということは、企業側に何らかのビジネス上の課題があるということ。まずはその課題を引き出し、「自分ならこう貢献できる」という流れで会話を組み立てると、相手の納得感も高くなります。

― ホーリー先生が行っている、課題の引き出し方を教えてください。

主に2つあります。ひとつは率直に質問すること。もうひとつは、事前のリサーチをもとに「おそらくこういう背景があるのでは」と仮説を立て、それを投げかける方法です。

例えば、某ラグジュアリーブランドの面接の場にいると仮定しましょう。「近年、御社はストリートカルチャーとラグジュアリーの融合を進めるようなブランド施策を多く展開されていますよね。その一方で、消費者目線で見ると、ブランドメッセージがやや散漫になってきている印象も受けました。こうした点について、現場ではどのように受け止められていますか」といった仮説ベースの聞き方です。

その仮説が当たっていなくても、ブランドやビジネスへの深い理解を持ち、自分なりに考察を携えて面接に臨んでいることは伝わります。それは結果的に信頼や共感につながるでしょう。

国や文化によって面接スタイルも変わるのでしょうか。

日本側は一般的には、協調性やカルチャーフィットを重視し、丁寧な対応、敬語など言葉の使い方、文脈や空気を読む力が評価される傾向があります。一方で、外資系ブランドの本国オフィスの担当者は自分の意見を明確に持ち、それを率直に伝える姿勢を重視する傾向があります。

言語によって思考や表現が切り替わる感覚を持つ人は多く、英語のほうが率直な意見を伝えやすいと感じるケースもあります(コードスイッチングと言われる現象)。私自身も母国語ではない英語で話すときは、テンポや表現のスタイルが自然と変わるのを実感しています。

そのため、相手に合わせて言語のトーンや態度を切り替えることも、面接対策の一部です。国ごとのコミュニケーション文化に理解があること自体が評価される場合もあり、場面に応じて柔軟に使い分けられるかどうかがポイントになります。

― こうした文化や価値観の違いで、ホーリー先生が体験した印象深い面接を教えてください。

以前、大手アパレルブランドの面接で、インド出身の面接官とお話したことがあります。それは、ビジネスの課題に関する連続した質問に対して5秒以内に解決策を提示する思考の回転や反応速度が試されるような面接でした。かなり特殊なケースでしたが、国や面接官のスタイルによって、求められるものがまったく異なると実感しました。

「最後の質問タイム」は必ず有効活用せよ

面接の終盤に「何か質問はありますか?」と聞かれることが多いですよね。その時間の活かし方を教えてください。

何十人と面接をおこなう採用担当者にとって、すべての会話内容を細かく覚えるのは難しいものです。だからこそ「最初にどう印象づけたか」と同じくらい、「最後に何を残したか」が、結果に大きく影響すると感じています。

面接の終盤は、これまでの会話の締めくくりであり、面接官の記憶に残る重要な時間です。「ピークエンドの法則」と呼ばれる心理効果にも通じており、人は物事の最後の印象を強く記憶する傾向があります。このタイミングで、何も質問せずに終えてしまうのは、関心や意欲が伝わらず、もったいない。たとえ質問の内容が完璧でなくても、「この会社で働きたい」という熱意やブランドへの関心が伝わることで、好印象を残すことができます。

言葉に詰まっても構いません。大切なのは、感情をのせて、自分の言葉で語ることです。最後の数分間で印象が変わり、「この人ともう少し話したい」「一緒に働いてみたい」と思わせられるケースは少なくありません。それくらい、終盤のやりとりには力があると実感しています。

面接準備ではどんなことを行えばよいでしょうか。

面接官の名前が事前にわかっている場合は、SNSや企業サイトなどを通じてその人の発信に触れておきましょう。事業の方向性やブランドのカルチャーだけでなく、面接官の趣味や思考なども頭に入れておくと、会話の深さが変わってきます。

また、実際に店舗に足を運び、ブランドの空気を感じておくこともおすすめです。店頭スタッフの雰囲気や接客を実際に見ているのといないのでは面接官に与える印象がまったく異なります。そのブランドに対しての想いを伝える意味でも、複数の店舗に足を運び、自分なりの感想を準備するといいでしょう。

― 服装や身だしなみについては、どう考えるべきでしょうか。

高価な服を身につける必要はありませんが、カジュアルすぎるよりは、ある程度フォーマルな格好を意識するほうが無難でしょう。ただ、場にそぐわない服装やブランドへのリスペクトが伝わらない服装は、選考においてマイナスに働く可能性があります。

実際に私が米系スニーカーブランドで面接官をしていたとき、独系ブランドのスニーカーを履いて面接に来た応募者がいました。たとえ深い意図がなかったとしても、「ブランドへの敬意を欠いている」と受け取り、残念ながら瞬時に見送りとしたのを覚えています。服装や外見もまた、自己表現の一部です。「ブランドの一員として見られるか」という視点を持ち、準備することが大切ですね。

外資系の面接では、伝える力も、相手と向き合う姿勢も問われます。限られた時間の中で、自分らしさをどう印象づけるか。自己PRはもちろん、対話のなかで信頼を築けるかどうかが、評価を分けるポイントになります。

文:金井みほ

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