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海外進出支援と日台PRのプロが語る。台湾進出で日本ブランドが成功するために必要なこととは

海外進出支援と日台PRのプロが語る。台湾進出で日本ブランドが成功するために必要なこととは NEW

今年3月、「三井ショッピングパーク ららぽーと台北南港」の開業により、多くの日系ブランドが台湾初出店や再出店を果たした。今後も日系ブランドの台湾進出が見込まれるが、現地で成功するためにはどんな戦略が求められるのだろうか。今回話を伺ったのは、企業の海外進出を支援してきたワールド・モード・ホールディングス株式会社(以下、WMH)の松本眞人さんと、日本と台湾でPR事業に携わってきた寧淨國際有限公司(以下、ninjin)の荘寧(チュアン・ニン)さん。今後、企業の台湾進出を支援するため協業を進めていくという2人に、台湾進出成功の秘訣を聞いた。

松本眞人さん/ワールド・モード・ホールディングス株式会社 執行役員 営業統括部部長
大学卒業後、株式会社トゥモローランドを経て、ファッション関連の人材サービス企業の立ち上げに参画し事業拡大を図る。その後、株式会社フォーアンビションの取締役に就任。関西支社の立ち上げや経営に携わり、事業責任者として活躍。現在はWMHグループの営業及びコンサルティング事業の責任者としてグループ全体の営業を取り仕切る。

荘寧(チュアン・ニン)さん/寧淨國際有限公司 共同創業者
日本の大学院でアートとメディアによる地方創生の研究をした後、共同創業者の廖品淨さんと、新潟県「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」や、岩手県陸前高田市、宮城県気仙沼市などの地方創生プロジェクトに携わる。2019年に日本と台湾で起業。ロマンチック台三線芸術祭2019、2021台北ファッションウィークなどの日本向けPRなどを手掛ける。

台湾進出により日本での事業成長にも繋がる

― まずは、それぞれの事業について教えてください。WMHは多角的に事業を展開されていますが、企業の海外進出の支援では具体的にどんなことをしていますか。

松本眞人さん(以下、松本):私たちは、シンガポール、オーストラリア、台湾、マレーシア、ベトナムに海外拠点を置いています。そして各国で、人材や教育、店舗運営など、日本と同じような多角的なサービスを展開しています。中でも、引き合いが増えているのは店舗運営です。

日本企業が海外に進出する際、以前は現地のパートナー企業にブランディングや店舗運営を含めたすべてのビジネスを委ねるケースが多くありました。しかし、近年は自社で現地に法人を設立し、直営でビジネスを行う日本企業が増えてきました。ただ、自社で採用から店舗運営、オペレーションの管理までを行うのはまだハードルが高くいようで、店舗運営はどこかに任せたいというニーズがあります。

当社は日本でブランドとの信頼関係を構築できていることから、現地での店舗運営を任せていただく機会が増えてきました。最近は特に台湾やマレーシアでの依頼が非常に多いです。

― ninjinではどんな事業を行っていますか。

荘寧さん(以下、ニンさん):当社は、アート・カルチャー・ファッションに特化したPR会社です。私と、もう1人の共同創業者であるジンは、日本の大学院でアートとメディアによる地方創生の研究をしていました。当時、日本でインバウンドが盛り上がっていたことから、台湾人に日本を紹介する事業を行っていました。帰国後は、逆に台湾を日本に紹介する事業をやろうと、ninjinを設立しました。

台湾の大型カルチャーイベントの日本向けPRの仕事を皮切りに、台北ファッションウィークの日本向けPRや、株式会社yutoriの「9090」のポップアップ、店舗のオープニングセレモニーのPRを担当しました。私とジンは日本に長く住んでいたので、台湾と日本両方の文化を理解しています。ただ言葉を翻訳するだけでなく、それぞれの文化や歴史を理解した上で効果的なPRができるのは、私たちの強みです。

― 今、日本のブランドが海外進出に目を向けている理由をどう分析していますか。

松本:日本では人口減少や高齢化が進んでおり、日本市場の成長性を考えると頭打ち感があります。ビジネスを広げていくためには、グローバルのマーケットという選択肢が自ずと出てきます。その中でも、アジアは身近な地域であり、特に台湾は距離的にも近いので、進出する企業が増えていると考えています。

それから、日本のデベロッパー様が海外に商業施設を建設していることも背景としてあると思います。日本での取引があるデベロッパー様から紹介されて、海外に進出するブランド様も増えていますね。

台湾は親日で、日本のカルチャーに興味を持っている人が多い国です。2024年度の訪日外国人旅行者数のうち、台湾からは約600万人、人口の約4分の1にあたる人が日本に来ています。そのため、単に台湾で売上を伸ばすだけでなく、日本に来た時に商品を購入していただくという双方向のシナジーが生まれやすいんです。ブランドの認知度を高め、日本でのビジネスを成長させる意味でも、台湾への進出は有効だと感じています。

長年、日本で培った人材ビジネスや店舗運営のノウハウをベースにさまざまな日本企業の海外進出支援を行っていると語る松本さん

成功の秘訣は綿密な計画を立てること

― 台湾のファッショントレンドやカルチャーの特徴は何でしょうか。

ニン:台湾は温かい気候で、バイクに乗る人も多いので、カジュアルな服を着る人が大半ですね。機能性も重視しています。コスパ重視の方と節約家が多く、あまりおしゃれしない人が多かったのですが、最近は「ららぽーと」「TSUTAYA」など、日本の商業施設やブランドが増え、台湾人も日本のファッションを求めるようになりました。

― 台湾で成功している日本ブランドの事例を教えてください。

ニン:例えば「ニコアンド」は、台北の中心街に大きな旗艦店を建てました。台湾人が日本のブランドを知るきっかけはリアル店舗であることが多いので、タッチポイントを増やす施策として有効だと思います。あとはローカライズがすごいんです。台湾のイラストレーターとコラボしてグッズを作ったり、展示をしたり。ほかにも、併設されているカフェでは、台湾で親しまれている飲食とコラボしたメニューを作っています。台湾人はそういうコンテンツにすごく共感します。

― ニンさんがPRを手掛けた「9090」は、2回のポップアップだけでなく、オープン初日にも長蛇の列ができて話題だったとか。成功した要因は何だったのでしょう。

ニン:1回目のポップアップの前にリリースを配信したのですが、タイトルはかなり工夫しましたね。台湾人には「●●が台湾初上陸!」だけだと響きません。調べてみると、「YOASOBI」のAyaseさんが着用していたことや、ポケモンとのコラボをしていることがわかりました。どちらも台湾人に人気なので、そこを訴求できる内容にまとめました。その結果、メディアの反応も良く、一気に注目されたんです。

台湾でおこなわれた「9090」のポップアップの様子(Photo:株式会社yutori PRTIMES)

― 反対に、陥りがちなミスやうまくいかない要因は。

松本:出店前にプロモーションを行わなかったり、出店後もブランドの認知度・売上アップのための計画を立てなかったりと、ブランド認知のための準備や施策を行えていないと、思うような成果につながらないことが多いです。また、日本で認知度があるからといって、台湾でも同じとは限りません。現地のマーケティングリサーチは重要ですね。

ニン:ある日本のブランドはPR予算がないという理由で、ポップアップを出す前に一切予告をしなかったんです。そのブランドをプロデュースしている方は台湾でも有名だったので、メディアはたくさん来たものの、売上には繋がりませんでした。あとはタグの付け替えも大事ですね。日本円の表示が見えると自分で計算してしまい、日本で買ったほうが安いとわかれば、購入に繋がらない可能性もあるからです。

― 店舗運営において、重要なポイントは何ですか。

松本:日系の商業施設が増えていることもあって、台湾国内の接客サービスのクオリティは向上しています。一定以上のクオリティのオペレーションを提供しないと、台湾の消費者に満足してもらえません。

ほかにも、台湾は離職率が高いことに注意が必要です。特にリテール領域では人材の流動性が高い傾向があり、少し余裕を持って人材を配置しておかないと欠員が出てしまうことも。加えて、デジタル先進国であることから、リアル店舗で販売の仕事をしたい人が減ってきています。採用課題は多岐に渡り対応が難しいため、私たちのような現地の情報とノウハウを持った会社にご相談いただきたいと思っています。

― 台湾に進出するブランドが増える中で、差別化するためのポイントを教えてください。

ニン:ブランドのストーリーを伝えることが大事だと思います。例えば「SHIRO」は、地域によって異なるフレーバーを使っていて、それぞれにストーリーがあります。そのほか「グラニフ」「HUF」も、ブランドストーリーの伝え方がうまいですね。

あとはSNSの活用です。台湾はXではなく、InstagramやLINEの公式アカウントなどがよく使われています。お客さんは質問があると、LINEの公式アカウントに直接連絡するんです。台湾人がよく使うSNSでキャンペーンを行うのも有効だと思います。

ローカルで使われているツールやアプリを活用してマーケティングやPRを行っていくことが大事だと語るニンさん

台湾での経験を出発点にグローバルへ

― 台湾へ進出を考えているブランドが、まずすべきことを教えてください。

松本:台湾でビジネスを行う目的を明確にすることです。台湾で事業を拡大する、店舗で認知度を高め、売上はeコマースで作るなど、様々な目的があると思います。台湾の国土はそこまで広くないため、売上規模はある程度決まっています。市場規模を理解した上で目的を定め、進出を判断することが大切です。

― 日本と台湾をつなぐため、今後チャレンジしたいことは何ですか。

松本:台湾に進出するブランド様には、失敗体験をしてほしくないと思っています。本当はポテンシャルがあるのに、準備不足のため結果的に撤退してしまったり、グローバル展開まで諦めてしまったりするのはもったいないです。成功体験を実現していただくよう、日本と現地拠点の両方からサポートし、準備段階から進出後まで継続的に伴走させていただきたいと考えています。

ニン:台湾人は日本が大好きで、これからも日台友好の関係は続いていくと思います。ぜひ台湾に来て、チャレンジしてみてほしいです。そしてPRをするときには、私たちのような現地をよく知るPR会社を信じてください。台湾人に伝わるような言葉を一緒に考えて、面白いPRをやりましょう。

文:渋谷唯子
撮影:船場拓真

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