創業80周年を迎えた「カミーユ・フォルネ」が日本市場で目指す、“静かな贅沢” NEW

1945年、フランス北部のピカルディ地方で創業した「カミーユ・フォルネ」。創業80年という歴史を持ち、グローバルに展開するラグジュアリーレザーブランドだ。現在、日本市場でのさらなる成長を見据え、新たな体制で歩み始めたところだという。そこで今回は、フランス本国で代表を務めるジャン・イーヴさん、2025年11月に日本法人代表に就任したアロン・デュクルーさんにインタビュー。日本市場での成長を振り返ってもらい、流行ではなく時間とともに価値を深めるものづくり、日本市場における今後の展望について語っていただいた。
ジャン・イーヴ・バザンさん/カミーユ・フォルネ・パリ Directeur Général(写真:右)
2020年よりカミーユ・フォルネの経営を統括するDirecteur Général。80年にわたるメゾンの歴史とクラフトマンシップを継承しながら、ブランドの現代化とグローバル戦略を牽引するフランス・ラグジュアリー界のキーパーソン。職人育成スクールの設立や、アート・文化とのコラボレーションなどを通じて、伝統技術を未来へとつなぐ取り組みを主導してきた。また、FrenchFoundersのメンバーとして欧州ラグジュアリー業界の要人ネットワークとも深く関わり、日本市場をブランド成長の戦略拠点と位置づけている。
アロン・デュクルーさん/株式会社カミーユ・フォルネ・ジャポン 代表取締役(写真:左)
ラグジュアリーブランドの戦略設計と顧客体験変革を専門とするビジネスリーダー。15年以上にわたり、ファッション・ラグジュアリー・エンターテインメント業界で、市場参入支援やデジタル革新、体験型マーケティングを推進してきた。2025年よりカミーユ・フォルネ・ジャポン代表取締役就任。フランスのクラフトマンシップと日本市場の感性をつなぎ、「静かな贅沢」を体現するブランドづくりをリードしている。
日本の顧客がブランドを育ててくれた
― 「カミーユ・フォルネ」が誇る伝統、哲学について教えてください。
ジャン・イーヴさん(以下、ジャン):創業当時から変わらないクラフトマンシップです。工房の職人たちは素材を手作業で丁寧に扱い、伝統的な技術で製造しています。切りっぱなしにした断面を手作業で塗装し、ステッチも手で仕上げています。こうした職人技を大事にするため、少量生産にこだわっています。そして、品質の出発点である素材の選定にも細心の注意を払っています。こうした技術を次世代に継承し、発展させることが私たちの使命だと考えています。
また、ダンスや音楽といったあらゆるジャンルのアートを、職人たちや商品に接続することをミッションとして掲げています。これは伝統的な技術を未来に継承するとともに、モダンな商品や新しい価値を提供するためです。
― グローバル市場の中で、日本市場をどのように位置づけているのでしょうか。
ジャン:日本市場は非常に重要で、私たちにとって大きな意味があります。というのも、日本のお客様は知識が豊富で、我々に求めるレベルも高いからです。時計ベルトから始まった当ブランドが、お財布やバッグも手がけるようになったのも、日本でのカスタマーニーズがきっかけでした。日本での需要が商品の幅を広げ、ブランドの発展につながっているのです。また、伝統と現代が共存している日本は、まさに私たちが体現したい世界観にマッチしています。その意味で、「カミーユ・フォルネ」にとって完璧な市場と言えるかもしれません。


着物や工芸品、アートとのコラボにも意欲
― クラフトマンシップの継承はどのように行われているのでしょうか。
ジャン:2017年、フランスの本社に職人を育成する学校を設立しました。3人の講師の指導のもと、素材の選定から裁断、縫製まで含めた全面的な研修を実施しています。他のブランドで経験がある人も、3カ月から12カ月にわたって製造技術を学びます。日本やアメリカなど他の国で働く職人が学んでいたこともありますし、フランスから職人が教えに来ることもあります。
― 日本市場での今後の戦略を教えてください。
ジャン:知識が豊富なお客様の要望に応えながら、これからも誇りを持って商品をご提供していきたいと思います。現在、店舗は東京と大阪に限られていますが、他のエリアでもパートナーシップを築き、商品を販売していきたいです。また着物や工芸品などを扱う会社やアーティストなどとのコラボレーションも視野に入れています。日本で得られた知見をベースに、他のエリアでも市場を開拓していきたいですね。
個人的には、パリのアートシーンで実施したようなコラボレーションが日本でもできたらと思っています。過去に職人とアーティストのミートアップや、工場でアートパフォーマンスを行うといったプロジェクトの事例があります。日本のアートに関するパートナーシップが締結できたら理想的です。

自分にとっての「特別な一点」という価値
― 次はアロンさんにお聞きします。日本法人の代表に就任された抱負をお聞かせください。
アロン・デュクルーさん(以下、アロン):私はこれまで、15~20年に渡ってラグジュアリーブランドで働いてきました。大小さまざまなブランドに携わってきた中で、「カミーユ・フォルネ」はちょうど中間くらいの規模、位置づけです。
本国とはマーケットや販売チャネルが異なりますが、会社やアトリエの強みは共通です。デザイン、伝統、クリエイティビティ、それぞれがフランスと日本の間で強く結びついていると思います。ですから、本国と適切に連携することで、日本市場での展開は単なる挑戦ではなく、素晴らしいストーリーになるはずです。
― 現在、日本市場に対してどのような課題を感じていますか。
アロン:日本のお客様は知識が豊富なだけでなく、商品への情熱もお持ちです。ハイメゾンのブランドを持っているだけでは満足できない、一段上のこだわりがあるのです。だからこそ私たちはブランドや商品について深く理解している必要がありますし、お客様がどこへ向いているのか、敏感に察知しなければいけません。お客様との対話が新しいアイデアやコンセプトのヒントになるからです。

― 今後、日本市場でどのようなチャレンジを行いたいと考えていますか。
アロン:当社は十分なエネルギーと可能性を秘めた人材に恵まれ、それによって「カミーユ・フォルネ」にしか成しえないものを構築できるのが強みです。商品、人材、技術、資金はすでに揃っています。また、ファッションやラグジュアリーの世界の価値観が、“モノを買う”ことから“感動的な体験”にシフトしています。ですから、ただ商品を販売するのではなく、価値ある体験を提供していきたいですね。
近年、「Quiet luxury(ロゴや派手な装飾を避け、上質な素材と仕立ての良さ、控えめなデザインで品格を表現するキーワード)」という言葉が浸透していますが、当社が目指すのもまさにそういった価値観です。大きなロゴマークを誰かに見せびらかすのではなく、自分のための商品であることに喜びを感じていただきたいと思っています。
― ブランドの象徴的な存在であるスペシャルオーダーの価値をどう捉えていますか。
アロン:私たちにとって、革は言語です。そこには職人の想いと技術、すべてが込められています。好きな色、好きなサイズで作るスペシャルオーダーでは、お客様の想いも込められます。これこそがクラフトマンシップではないでしょうか。
例えば先日、おじい様から受け継いだアンティークのオメガに合わせるために、時計ベルトをオーダーしてくださったお客様がいらっしゃいました。「カミーユ・フォルネ」の商品によって、大切なものをより愛おしく感じていただけたら嬉しいですね。

価値観を共有し、フラットに対話できる組織づくり
― 顧客のニーズやトレンドの変化に対して、どのような戦略的対応をしていますか。
アロン:ブランドの様々なリアリティ、創造性、独自性を押し出すために、様々なチャネルや店舗の選択肢を増やしていくことが、私たちが提供したい経験につながると思います。例えば、時計ベルトは1~2年ごとに交換するのが一般的ですが、5本、10本と揃えて服や場所に合わせてコーディネートしてもいいと思うんです。
最高級の素材を用い、時間も手間もかかっているので、高価になるのは仕方ありません。しかし、長く使い続けることを考えれば長期的な投資ともいえます。そのような商品展開を見据え、時計ベルトだけ、メンズだけなど、商品カテゴリに特化した販売パートナーも探しているところです。他にもポップアップやECサイトなど、お客様との接点は増やしていきたいと考えています。
― 組織づくりや採用において意識していることはありますか。
アロン:小規模な会社ほど、同じ価値観、同じビジョンを持つ人材を見つけることが重要です。日本の優れた面は保ちつつ、誰もが垣根を感じることなく話し合い、反対意見も堂々と発信できるオフィスにしたいと考えています。
― これからの「カミーユ・フォルネ」にふさわしい人材像について教えてください。
アロン:ユニークなバックグラウンドを持った人に興味があります。なぜなら、多様な発想や考え方を持ち込むことで発見や学びが生まれるからです。あとは、チャレンジ精神が豊富な人。チャンスを逃さず飛び込んで、ユニークなアイデアを出してくださる方と一緒に、これからの「カミーユ・フォルネ」を作っていきたいです。

流行ではなく、時間とともに価値を深めるものづくりを大切にする「カミーユ・フォルネ」。クラフトマンシップと対話を軸に、「静かな贅沢」を日本のお客様へ届けるため、現在新たな仲間を募集しています。ブランドの哲学に共鳴し、自らの感性と経験でその価値を未来へとつないでいきたい方は、ぜひこちらから採用情報をご覧ください。
文:大貫翔子
撮影:船場拓真
Brand Information
CAMILLE FOURNET
CAMILLE FOURNET(カミーユ・フォルネ)