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【現地レポート】「HUMAN MADE」のタイ進出で感じた、日本ブランド「再編集」の力

【現地レポート】「HUMAN MADE」のタイ進出で感じた、日本ブランド「再編集」の力 NEW

2026年3月28日(土)、タイ・バンコクのショッピングモールのセントラル・エンバシー内に「HUMAN MADE BANGKOK」がオープンした。「HUMAN MADE」の東南アジア初となる店舗だ。セントラル・エンバシーは、かつて英国大使館であった跡地に建てられた、バンコク屈指のラグジュアリー複合施設。「HUMAN MADE BANGKOK」オープンの場を訪れた、某ラグジュアリーブランドのシンガポール支社に勤務する野﨑健太郎さん(ペンネーム)が、現地の熱気ぶり、日本ブランドの海外進出、海外で日本人が活躍する働き方について考察する。


シンガポールはラマダン明けとGood Fridayの休暇が重なり、街全体がどこかゆったりした春休みムード。一方でタイは、1年で最も盛り上がる水かけ祭り「ソンクラーン」の前。街全体の消費も一気に加速するタイミングです。

そんな中、私は自社のイベントのためにバンコクを訪れていました。そして偶然、そのイベント会場となっていたモールで「HUMAN MADE」のタイ初上陸となるオープニングに居合わせました。(知人がいて、ちゃっかりパーティーにも参加させていただきました。その様子は原稿の最後で触れています)

3月28日、オープン初日の朝7時。モールの外には、どこまでも続く行列。その数、推計で約2,500人。正直、想像以上でした。後から知ったことですが、当日は入場抽選を求めて7時より前から約2,000人以上が列をなしていたようです。バンコクでも記録的な動員となったとか。

「日本のブランドがここまでの熱量を生み出せるのか!」

驚きと同時に、とても誇らしい気持ちになりました。そして「これは単なる一過性の人気ではなく、いま、日本ブランドにとってチャンスの波が来ているのではないか」と感じました。

これから書く内容は、「日本ブランドの海外進出に関わる仕事をしたい」「海外で働きたい」「勢いのあるブランドでキャリアを作りたい」という方にとっては、ヒントにつながるかもしれません。

NESTBOWL読者の方ならすでにご存じであろうと思いつつ、念のためにお伝えしておくと、「HUMAN MADEは昨年に東証グロース市場に上場した、今とても勢いのある日本発のブランドです。

上場時に掲げたミッションは、「人間の閃きが生み出し、人間の手が創り出す輝きを、世界へ。」成長戦略の柱として明確に示したのが、海外展開の加速です。 セントラル・エンバシーは普段は静かなモールなのに、このときはすごい熱気に包まれていました。 

海外進出は次のフェーズへ

これまでの日本企業や日本ブランドの海外進出は、どちらかというと今ある海外のものと比較して、「よりよいもの」「より品質が高いもの」「より価格競争力があるもの」といった文脈が中心にありました。ユニクロやトヨタの成功はまさにその象徴です。

一方で、もうひとつの流れとして、「ヨウジヤマモト」や「コム・デ・ギャルソン」のように、日本独自の美意識や価値観をそのまま提示し、新しい表現として世界に衝撃を与えたブランドもあります。いわゆる「ジャポニズム」や「思想」としての勝負です。

ただ、今回「HUMAN MADE」が作り出していた熱狂は、そのどちらとも少し違うように感じました。

それは、「ゼロから新しい価値を提示する」というよりも、「すでに存在しているカルチャーや文脈を、日本的な感性で再編集し、まったく別の価値として提示する」です。

アメリカンヴィンテージや音楽、グラフィックといった既存の要素をベースにしながら、それを単なる模倣ではなく、新しい“欲しい理由”に変換している。

ここに、日本ブランドの新しい強さ、可能性があるように感じました。

海外進出を加速しているブランド

「Onitsuka Tiger」は、これまでも海外展開をしてきたブランドですが、ここ数年で大きな飛躍を遂げています。銀座の路面店では連日のように入店待ちが発生し、売上高も1000億円規模に到達しました。

同ブランドの強さは、「スポーツ×ファッション」という再編集にあります。もともとは競技用シューズのブランドですが、それをそのままスポーツとしてではなく、日常に溶け込むファッションとして再構成している。細身のシルエットや抑えたロゴは、アジアにも欧州にも自然にフィットします。

同じような動きは、他の日本ブランドにも見られます。

例えば、「フォーナインズ」や「金子眼鏡」は、眼鏡という道具を「視力矯正」から「静かなラグジュアリー」へと引き上げました。また「PORTER」も、ミリタリーやワークの文脈を都市生活に落とし込むことで、独自のポジションを築いてきました。

これらのブランドに共通しているのは、まったく新しいものをゼロから生み出しているわけではない、という点です。 既存の機能や文化をベースにしながら、それを別の文脈に置き直すことで、新しい価値を生み出している。この「再編集」の力が、今の日本ブランドの海外進出を支えているように感じます。

海外で働きたい=外資ではなくなってきている?

私自身、いつか海外で働いてみたいという思いがあり、グローバルブランドに身を置きながら、そのチャンスをうかがってきました。そして運よく、それを掴むことができました。ただ、今のマーケットの動きを見ていると、少し考え方が変わってきています。

「むしろ、日本ブランドの方にこそ、大きなチャンスがあるのではないか?」

そう感じるようになったのです。海外で生活し、「日本」という国を少し客観的に見ることができるようになって、改めて思ったのは、日本は“文化の蒸留所”のような国だということです。様々な文化を取り込み、磨き、再編集し、独自の形にしていく。そして、その価値を最も自然に伝えられるのは、やはり日本人だと思います。

一方で、外資系ブランドで働いていて感じた現実もあります。フランスのブランドであれば、トップマネジメントはフランス人。イタリアのブランドであれば、トップはイタリア人。 これは構造的なもので、変わることはほとんどありません。

もちろん、その中で活躍することはできます。ただ、ブランドの“中心”に入ることは簡単ではない、という大きな壁も感じてきました。

その点、日本ブランドであれば、その可能性は大きく変わってきます。ブランドの価値を本質的に理解し、それを海外に伝えていく側に回ることができる。将来的にトップマネジメントを担う可能性も、現実的な選択肢として見えてきます。

実際に、無印良品で新卒からキャリアをスタートし、アメリカ法人のCEOにまで上り詰めた友人がいます。同じ「海外で働く」という文脈でも、その責任や影響力の大きさはまったく異なるレベルです。

灯台下暗し、という言葉がありますが、日本人であること、そして英語というツールを磨くこと。この2つが揃えば、日本ブランドを軸に、世界で戦えるキャリアは十分に描けるのではないかと思います。

海外で働く=外資、という時代は、少しずつ変わり始めています。 むしろこれからは、日本ブランドを背負って外に出ていく人材の方が、より大きな役割を担うようになるのかもしれません。

最後に、「HUMAN MADE BANGKOK」 オープニングイベントの様子もご紹介します。公式オープンの前日に招待制で開催され、関係者のみが参加していましたが、KOLの方々やNIGOさんも来場しており、その姿をひと目見ようと多くの人が店舗周辺に集まっていました。

関係者の方々も、いわゆる“招待客”というよりは、本当にストリートウェアが好きで集まっている人たちという空気感があり、ラグジュアリーブランドが語る「ストリート」とは少し違う、よりリアルなヴァイブスを感じました(もちろん、ラグジュアリーブランドのストリートを否定するものではありません)。

店舗は全面ガラス張りで、「入りたいのに、まだ入れない人」が外から中を覗き込む構図になっており、その距離感がデザイアビリティを強く刺激していました。そして夜はアフターパーティへ。バンコクの夜景が広がる会場にDJが入り、アーティストらしき人たちも集まっていました。音楽、ファッション、カルチャーが自然に混ざり合い、全体として“いい感じ”のグルーブが生まれていました。

■著者プロフィール
野﨑健太郎
大学卒業後はモデルとして活動し、国内外のショーや広告などに出演。28歳のとき、大手量販店で販売のアルバイトを始める。その後、いくつかのラグジュアリーブランドでのストア、オフィス勤務を経て、2021年12月より某ブランドのシンガポール支社に勤務。趣味は高校時代から続けているサーフィン。

■ペンネームへ込めた想い
野﨑健太郎はペンネームで、尊敬する祖父の名前です。祖父は明治生まれで、西郷隆盛を思わせるような大きな体と味海苔をおでこに張り付けたような太い眉の持ち主でした。東京・五反田を拠点に京浜工業地帯で鉄を拾って歩き回り、町工場を営んでいた祖父。信条は「上天丼を食べたいなら、人の倍働け!」でした。残念ながら50代で亡くなり、直接会うことは叶いませんでしたが、この言葉は親戚を通じて私の耳に届き、私の心に深く刻まれています。祖父のハードワーク魂が自分に宿ることをこのペンネームに込めました。

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