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「部下育成に効く2つの軸」人材不足時代のリテール組織論 Vol.4 NEW

リテール業界では今、「人が採用できない」「育つ前に辞めてしまう」という課題が深刻化している。こうした人材不足の時代に必要なのは、採用力だけではない。重要なのは、人を「採用する」と「育てる」を切り離さず、一貫した組織設計として捉える視点だ。

本連載ではリテール業界に25年以上携わり、現在はリテール特化型HRコンサルタントとして、企業の採用・育成から制度設計、メンタルサポートまでを一気通貫で支援するLiNo代表・森末道弘さんが、リアルな課題と照らしながら自立自走できる組織づくりについて解説する。
※過去記事はこちら→
Vol.1、Vol.2(前編)、Vol.3(後編)


いま必要なのは「部下育成の環境づくり」

今回は、管理者のアップデートと育成専門チーム(トレーニングチーム)という「2つの軸」で現場を支える、実践的な人材育成環境の構築法を解説します。

前回までは、多くのリテール現場が直面している「属人化・教え方の迷い・世代間ギャップ・業務過多」という“4つの壁”の正体についてお話ししました。 

実際、店舗の管理者は日々の売上シミュレーションやシフト作成、VMD変更、本部やデベロッパーへのレポート作成など多岐にわたる業務を抱え、さらに自ら接客(プレイング)もこなしているため、常にキャパオーバー状態にあるのが実情です。

このように業務が過密な現場に対して、具体的な仕組みも与えず「部下育成」を丸投げしても、組織的な育成が成功するはずはありません。 

よく「育成は現場管理者の仕事だ。そのために研修を受けさせているから大丈夫」という声を聞くことがあります。たしかに育成は、現場管理者の重要な仕事の一つであることは間違いありませんが、“現場管理者だけの仕事”にしてしまうことこそが、大きな誤解なのです。

現場のリアルな業務状況や負担を理解し、そこに合わせた“仕組み”を整えない限り、いくら研修で学びを得たとしても、店舗に戻った瞬間に日々の業務に忙殺され、活かしきれずに終わってしまいます。

では、現場の管理者たちが迷わずに、そして負担なくスタッフを育てられる組織をつくるには、具体的にどうすればよいのでしょうか。

その答えは、「管理者のアップデート」と「育成専門チームの構築」という2軸で育てる環境づくりです。 

軸①:管理者のアップデート(自ら育てる仕組みとスキルの構築)

1つ目の軸は、現場の管理者(マネージャー、店長、サブ)たち自身が、「どうすれば自分たちの店舗で、迷わず・属人化させずに人が育つか」を自発的に考え、仕組み化することです。 

そのためには、個人の経験や勘に頼る(背中を見せて育てる)アプローチから脱却し、管理者たちが「自ら考え、自社に合った体制を構築する」ための意識・知識・技術をアップデートする必要があります。 

具体的には、以下の3つのマネジメント要素をアップデートしていきます。

1. 店舗マネジメント(仕組みと時間の創出)
 教育が属人化しないための「統一された育成ツール(チェックシートなど)」の作成や
 活用をはじめ、業務を効率化して「教育のための時間」を創出するタイムマネジメント。

2. ピープルマネジメント(関係構築)
 ハラスメントを恐れて距離を置くのではなく、多様な価値観を持つ今の世代を理解した上で
 関係を構築するための、「聴く力」や「伝える力」というコミュニケーションスキル。

3. プロフェッショナルマネジメント(技術の具現化)
 自社が持つ接客の知識やノウハウ・経験を、感覚で終わらせず、言葉や行動として部下に
 伝わる形に具現化(再現)するスキル。

ポイント:抽象的な指示ではなく「具体的行動」を伝える 

例えば接客指導において、「もっとお客様に寄り添って」「感じよく声をかけて」といった抽象的な指示は今の世代には届きません。「お客様が〇〇という動作をしたら、こういった心理が考えられるから、この距離感とタイミングで、こういうフレーズでアプローチしてみるといいよ」といったように、相手へのアドバイスとして具体的な行動レベル(具現化)にまで噛み砕いて伝えるスキルが必要です。

軸②:TR(育成専門)チームの構築(全社的なバックアップ体制)

現場の管理者だけの努力に頼っていては、管理者の経験値や店舗異動などによって、育成のクオリティに大きなばらつきが出てしまいます。 

実際、「優秀な店長が異動した途端にその店舗の育成がストップし、数ヶ月後には新入社員が離職してしまう」といった事態も起こり得ます。

そこで必要となる2つ目の軸が、本部直轄の「TR(育成専門)チーム」の存在です。 店舗と密に連動する専門チームをつくることで、次のような大きなメリットが生まれます。

 ・本部と現場、および店舗間の「育成ギャップ」を埋める
 ・全社で統一された「サービスの均一化」を実現する
 ・現場のキャパオーバーを物理的・精神的にバックアップする

TRチームが店舗と連動している組織では、仮に店長が異動しても、本部のトレーナーが定期的に店舗の育成進捗をモニタリングし現場のフォローに入ることができます。
その結果、「誰が店長になっても一貫したクオリティでスタッフが育つ体制」が整います。 

この「管理者のスキルアップ(軸①)」と「TRチームのバックアップ(軸②)」という2つの軸が噛み合って初めて、現場は負担なく、迷わずに人が育つ環境になるのです。

リソース不足の場合は、まず軸①の管理者教育を強化

「2つの軸が必要なのはわかったが、うちの会社規模では、まだ育成専門チームを作る余裕はない……」と思われた方もいるかもしれません。

もちろん理想は「2軸のハイブリッド型」ですが、どうしても専門チームの立ち上げが難しい場合は、まず「軸①:管理者への育成教育」を強化することから始めてください。 

管理者の「育てる意識・知識・技術」が高まり、現場で人を育てる環境や仕組み(共通のツールやルール)が整えば、専門チームがなくとも社内でしっかりと人が育つ基盤をつくることは十分に可能です。
大切なのは、自社の現状やリソースに合わせて、段階的に「育成する環境」を整えていくことです。 

管理者のマインドを変える「管理者教育」の実践

次回からは、今回ご紹介した2つの軸を「具体的にどう組織にインストールしていけばいいのか」について解説していきます。
まずは1つ目の軸である、管理者のマインドを変える「管理者教育」について。 個人の経験に頼らない「共通のモノサシ(基準)作り」と、現場の当事者意識・主体性を引き出す「ディスカッション形式の研修」のお話をしていきます。 

■執筆者プロフィール
森末 道弘 / LiNo代表
1977年生まれ。体育大学卒業後、アパレル業界へ。販売から店長、マネージャー、人材育成・採用まで数社でキャリアを積み、2016年にリテール特化型HRコンサルタントとして独立。ファッションからスポーツブランドなど幅広い分野で、採用・育成・制度設計を一気通貫して支援。現場に寄り添う「伴走型支援」を強みとし、企業の持続的な成長をサポート。

<ご相談・お問い合わせ>
採用・育成・定着支援や教育体制の構築、管理職研修など、リテール組織づくりに関するご相談をご希望の方は、こちらからお気軽にお問い合わせください。森末道弘さんが企業ごとの課題に寄り添い、採用から育成まで一貫した組織づくりをサポートいたします。

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