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「店舗の人材育成を阻む、2つの課題」人材不足時代のリテール組織論 Vol.2

「店舗の人材育成を阻む、2つの課題」人材不足時代のリテール組織論 Vol.2 NEW

リテール業界では今、「人が採用できない」「育つ前に辞めてしまう」という課題が深刻化している。こうした人材不足の時代に必要なのは、採用力だけではない。重要なのは、人を「採用する」と「育てる」を切り離さず、一貫した組織設計として捉える視点だ。

本連載ではリテール業界に25年以上携わり、現在はリテール特化型HRコンサルタントとして、企業の採用・育成から制度設計、メンタルサポートまでを一気通貫で支援するLiNo代表・森末道弘さんが、リアルな課題と照らしながら自立自走できる組織づくりについて解説する。

※Vol.2は前編・後編で構成。本記事は前編です(後編は9月に公開予定)。
※過去記事はこちら→Vol.1


なぜ現場で人材育成が進まないのか

前回は、一から育てる組織へシフトする必要性、採用と育成の一本化の重要性についてお伝えしました。

その一方で、実際に現場(店舗)の管理者(マネージャー・店長・サブ)の方々に研修やヒアリングを行っていると、以下のような声が上がります。

「業務の忙しさ・人員不足などで、育成に手がまわらない」
「そもそも、どうやって教えたらいいのか分からない」
「お店や人によって、指導内容や基準がバラバラ」
「今どきの部下と、どうコミュニケーションを取ればいいのか?」

管理者たちは「一から育てる必要性」を理解していて、決して育成に消極的なわけではありません。しかし実践しようとすると、現場にはいくつもの構造的な課題が立ちはだかっているのです。 

そこで今回から、前編・後編の2回にわたり、現場が直面している「育てる難しさ」の正体を詳しく紐解いていきます。

前編では、「指導側のスキルやノウハウ」そして「店舗の教育環境」にまつわる2つの課題についてお話していきます。

課題1:指導内容のバラつき(指導の属人化と経験・感覚への依存)

店舗で起きている大きな課題の一つが、「教える人によって指導内容や基準が違う」という現状です。

店舗での教育は、どうしても感覚頼みで、その場限りの指導になりがちです。 本来、人材育成では、「論理的な部分(接客のステップやオペレーションの基準)」と「感覚的な部分(お客様への気づかいやタイミング、空気感)」をバランスよく組み合わせ、計画的・継続的に指導していくことが必要です。

しかし、多くの現場では、先輩や店長が自身の経験や感覚を頼りに指導しているケースが少なくありません。 

「自分は昔こうやって教わったから」
「自分はこのアプローチ方法で売れるようになったから」

このような個人の成功体験に依存した指導では、指導方法や内容に大きなバラつきが生まれます。

例えば、
A店長は「とにかく積極的にお客様に声をかけて、接客回数を増やしなさい」と教える。
B先輩は「お客様のペースに合わせるように、まずは遠くで見守って、聞かれたら答えればいいよ」と教える。

このような矛盾した指導が、同じブランド内、または同じ店舗内で同時に起こっているのです。

その結果、新しく入ったスタッフの成長スピードやレベルが、配属された店舗の店長や先輩の指導力 によって大きく左右されてしまうという現象が起きています。

「この店舗に配属されたから育たなかった」「あの店長は教え方が上手だから育った」という属人化された体制では、ブランドとしてサービスの品質を均一に保ち、顧客の信頼を得ることは難しくなります。

課題2:教え方の知識不足(教え方を教えてもらったことがない)

上記のような指導の属人化が起きてしまう背景には、指導側の「そもそもどうやって教えていいのか分からない」「これまで教え方を教えてもらったことがない」という実態があります。

アパレルやリテール業界において、多くの場合、店長や教育担当の先輩たちは、「プレイヤー(販売員)としての個人実績」を高く評価されてそのポジションに就いています。

「売上ナンバーワン」「常に予算達成」といった輝かしい実績を持つプレイヤーが店長に抜擢されるのは自然な流れです。 

しかし、ここで混同してはならないのが、「自分が売ること(プレイング)」と「人に売り方を教えること(マネジメント)」は、まったく異なるスキルであるということです。

現場の管理者は、プレイヤーとしては一流であっても、人を育てるための「教え方の知識や技術」を体系的に学ぶ機会をほとんど与えられていません。

例えば接客の指導をするときに、

「もっとお客様に寄り添って」
「いい感じに笑顔で声をかけて」

という抽象的なアドバイスで終わってしまう店長は少なくありません。店長自身が、接客のコツを言葉にして伝える方法を学んできていないからです。 

今の世代のスタッフを育てるには、「お客様がこのような動きをしたら、このような心理が考えられる。だから、このタイミングでこの言葉をかけてみよう」といったように、行動レベルまで具体化して伝える力が求められています。

しかし、そういった教え方を店長自身が教わってきていないのです。教え方が分からないから、結果として自分の経験をそのまま部下に当てはめるしかなく、指導が感覚的になってしまうのです。

人材育成の課題解決に必要な2つの視点

部下育成の課題を解決するには、 指導側に対して「育成方法の知識や技術のトレーニング」を提供することが重要ですが、それと同時に店舗で人を育てるための「環境」そのものを整えていくことも必要です。

次回は、この現場のリアルな悲鳴の後編として、多くの管理者が現場で頭を抱えている「意識(価値観)のギャップ」と「現場のキャパオーバー」の正体に迫ります。

■執筆者プロフィール
森末 道弘 / LiNo代表
1977年生まれ。体育大学卒業後、アパレル業界へ。販売から店長、マネージャー、人材育成・採用まで数社でキャリアを積み、2016年にリテール特化型HRコンサルタントとして独立。ファッションからスポーツブランドなど幅広い分野で、採用・育成・制度設計を一気通貫して支援。現場に寄り添う「伴走型支援」を強みとし、企業の持続的な成長をサポート。

<ご相談・お問い合わせ>
採用・育成・定着支援や教育体制の構築、管理職研修など、リテール組織づくりに関するご相談をご希望の方は、こちらからお気軽にお問い合わせください。森末道弘さんが企業ごとの課題に寄り添い、採用から育成まで一貫した組織づくりをサポートいたします。

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