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「採用と育成を切り離さない」人材不足時代のリテール組織論 Vol.1

「採用と育成を切り離さない」人材不足時代のリテール組織論 Vol.1 NEW

リテール業界では今、「人が採用できない」「育つ前に辞めてしまう」という課題が深刻化している。こうした人材不足の時代に必要なのは、採用力だけではない。重要なのは、人を「採用する」と「育てる」を切り離さず、一貫した組織設計として捉える視点だ。

本連載ではリテール業界に25年以上携わり、現在はリテール特化型HRコンサルタントとして、企業の採用・育成から制度設計、メンタルサポートまでを一気通貫で支援するLiNo代表・森末道弘さんが、リアルな課題と照らしながら自立自走できる組織づくりについて解説する。


なぜ今「育成前提の組織づくり」が必要なのか

現在、アパレル販売職の需要(人気)が低迷しており、優秀な即戦力人材を外部から採用することは極めて困難になっています。特に、中途・キャリア採用が難しくなっていることを背景に、新卒採用の強化や未経験者の獲得へシフトする企業が増えているのが、リテール業界の現状です。

「一から育てる」育成前提の体制へのシフト 

そこで求められるのが、「最初からできる人」を探すのではなく、「時間をかけて一から育てる」という、育成前提の組織づくりへマインドを切り替えることです。

ここで同時に変えていかなければならないのが、「経験者=即戦力」という誤解です。

多くの企業はいまも、「経験者=即戦力」と捉えています。しかし、実績ある人材でも、環境が変わればすぐに力を発揮できるとは限りません。それぞれの企業や店舗によって独自の理念やオペレーション(現場のルール)が存在し、扱う商品だけでなく、来店されるお客様の層も全く異なるからです。 

つまり、中途や経験者であっても、新しい環境に馴染み、実力を発揮するためには、

受け入れ側による「サポートの意識」と「育てる仕組みや環境」も必要なのです。

だからこそ今まさに「育てる」体制へのシフトが求められています。

管理職の“人材育成力”をアップデートする 

育成前提の組織づくりへマインドと仕組みを変えるために、まず着手すべきは、現場の最前線にいる店舗管理者や教育担当者に対するアプローチです。

管理者や担当者たちに対して「次世代を育てる」というマインドセットを行うこと。 

具体的には、個人の感覚に頼らない「育成方法の知識や技術のトレーニング」の提供と、「育成に関しての共通のツール(基準)」を作成するための研修が必要になります。

そういった店舗管理者や教育担当者への研修を行う際に重要なポイントがあります。 

一方的に教える“ティーチング型”ではなく、参加者が自発的に意見を交わす「ディスカッション形式」の研修を取り入れることです。 

管理者や担当者たちが自ら考え、自分たちのブランドに合ったやり方を皆でディスカッションしながらつくり上げる。 そうすることで、「自分たちが人を育てるのだ」という当事者意識が芽生えます。

また、育成に「絶対的な正解」はありません。

だからこそ、他社の事例や一般的なマニュアルをそのまま当てはめるのではなく、それぞれの企業に合った「自社ならではの教育体制」を創り上げることがベストだと考えています。

採用から育成の一本化が必要

企業が育てる組織に変わる上で、もう一つ見過ごせない構造的な課題があります。

それが「採用」と「育成」の部門分離による課題です。

多くの企業で、採用担当と育成(現場・研修)担当が組織として分かれてしまっているケースが非常に多く見られます。ここで問題となるのが、双方の「目的(ゴール)」が異なってしまっている点です。 

「採用ゴール」と「育てるゴール」のギャップ 

採用担当の目的: 組織に人をリクルートして入れること(「採用人数の確保」)
育成担当の目的: 現場で教育し、長く続けさせること(「現場での即戦力化と定着」)

このように、採用と育成で双方が見ているゴールが異なるため、連動がうまくいっていないケースが見受けられます。

その結果、コストをかけて入れたはいいが「続かない、育たない、育てられない」というケースが多く発生してしまっています。

この問題を解決するために必要なのは、「採用から育成の一本化」です。

具体的な解決策として、採用担当には「育成の視点」が、育成担当には「採用の基準」が必要になります。

採用担当者は、内定を出したら終わりではなく、「この人材が現場でどう育ち、どう育てられるか」という入社後のステップを見据えた採用活動を行う必要があります。また入社後は、育成担当と連動してその後のフォローやサポートに回ることも求められます。

一方、育成担当(現場)は、本部に不満を言うのではなく、昨今の採用の難しさを現場サイドとしても正しく把握した上で、入社してきた一人ひとりに対してどう教育していくかを、採用担当者と密に連動して育成プランを立て、実行していく必要があります。

人材が定着し「人財」へ。採用と育成が強い組織を生む 

個々に動くのではなく、採用から育成までを一本のラインでつなぎ、採用担当と育成担当が連動してサポートしていくことが、「人材が定着し戦力化」するための鍵となります。

そうして「人材」から企業の未来を担う「人財」となり、会社にとっての財産となっていくのです。

「人が採れない」時代だからこそ、社内で人を育てる環境を整え、一人ひとりを大切に育成できる企業が、強い組織をつくることができるのです。

「教育には終わりがない」からこそ、一時的な研修で終わらせるのではなく、自社に最適な教育体制を構築すること。そして、企業が自立自走し、持続可能な状態で人を育て続けられる環境を整えていくこと。これこそが、今リテール業界に求められている人材戦略ではないでしょうか。

次回は、「育てる難しさ」に焦点を当てていきます。

「業務の忙しさ・人員不足などで、育成に手がまわらない 」

「そもそも、どうやって教えたらいいのか分からない」

「お店や人によって、指導内容や基準がバラバラ」

「今どきの部下と、どうコミュニケーションを取ればいいのか?」

現場の管理者や教育担当者たちが、直面しているリアルな悩みや環境についてお話しします。

■執筆者プロフィール
森末 道弘 / LiNo代表
1977年生まれ。大学卒業後、アパレル業界へ。販売から店長、マネージャー、人材育成・採用まで数社でキャリアを積み、2016年にリテール特化型HRコンサルタントとして独立。ファッションからスポーツブランドなど幅広い分野で、採用・育成・制度設計を一気通貫して支援。現場に寄り添う「伴走型支援」を強みとし、企業の持続的な成長をサポート。

<ご相談・お問い合わせ>
採用・育成・定着支援や教育体制の構築、管理職研修など、リテール組織づくりに関するご相談をご希望の方は、こちらからお気軽にお問い合わせください。森末道弘さんが企業ごとの課題に寄り添い、採用から育成まで一貫した組織づくりをサポートいたします。

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