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生理痛、PMSと向き合う社員の声から。ワコールのフェムケア「YOJOY」誕生の背景

生理痛、PMSと向き合う社員の声から。ワコールのフェムケア「YOJOY」誕生の背景 NEW

女性のからだに最も近い衣類である下着を通じ、長年にわたって一人ひとりのからだと向き合ってきたワコール。2023年10月に誕生したフェムケアブランドYOJOY(ヨジョイ)はからだだけでなく、心の揺らぎにも目を向け、自分を知ることから始まるセルフケアを提案している。研究開発から商品企画まで幅広い経験を持ち、「YOJOY」の立ち上げに携わった一場 綾さんに、ワコールだからこそできるフェムケアと、ブランドが描くこれからについて聞いた。

一場 綾さん/株式会社ワコール IWブランド統括部 ワコールブランド YOJOY・OUR WACOAL営業課 課長
1981年、静岡県生まれ。大学院で半導体の研究開発と並行して洋服のパターンを学んだ後、2006年にワコールへ入社。ワコール人間科学研究開発センターでの研究・開発を経て、MDや商品企画などものづくりに幅広く携わる。現在は「YOJOY」のブランドプロデューサーとして、女性が自分のからだを知り、自分に合った心地よさを選べる社会を目指している。

女性社員の声から生まれたフェムケアブランド「YOJOY(ヨジョイ)」

―フェムケアブランド 「YOJOY」が生まれた背景を教えてください。

フェムケアという言葉や商品が市場に広がり始めた頃、ワコール社内でも「からだと心の両面から女性の毎日を支えられないか」という議論があり、2021年8月には、社員の自発的な参加によるフェムケアプロジェクトが発足しました。

まずは身近な女性社員の健康課題を知るため、アンケートを実施したところ、「生理痛やPMSが仕事に影響している」と答えた人が約70%。症状がある時のパフォーマンスは、元気な時と比べて約60%まで低下するという声もありました。数字以上に大きかったのは、「私だけじゃなかったんだ」と実感できたことです。長年、女性に寄り添ってきたワコールだからこそ、サポートしたいという想いが事業化につながりました。日本に古くからある“養生”という言葉と、喜びを表す“JOY”のイメージを掛け合わせて「YOJOY」というブランド名が生まれました。

フェムケア商品は、アンダーウェアとボディケアの2軸

― 現在「YOJOY」では、どのような商品を展開しているのでしょうか。

大きくアンダーウェアと、デリケートゾーンにも使えるボディケアを展開しています。アンダーウェアは、女性の揺らぎがある時期に合わせて4つのグループを提案しています。例えば、月経期向けの商品は、締め付けを感じにくいようゴムをできるだけ減らし、肌ざわりや縫製にも配慮しています。ナプキンがずれにくい設計や、ネームが肌に当たりにくい工夫など、つらい時期を少しでも快適に過ごせることを考えています。

ほかにも、おりもの用の布製パンティライナーや腹巻き、吸水ショーツなどを用意しています。ボディケアはナリス化粧品と共同開発し、デリケートゾーンケアをまだ経験したことがない方にも取り入れていただきやすい商品を目指しました。

アンダーウェアと、デリケートゾーンにも使えるボディケアを展開する「YOJOY」

― ワコールは今、どのような会社へ進化しようとしているのでしょうか。

2025年2月に「Empowering. WACOAL」を掲げ、“自分らしさをエンパワーメントする会社への進化”を打ち出しました。人は、からだと心が支えられ、満たされている時に最も自分らしくいられます。その状態が、新しい一歩を踏み出す力にもなると考えています。

「YOJOY」もその一つで、従来からワコールが大切にしてきた“からだと心を満たす”という考えを、今の女性に分かりやすい形で届け直すブランドだと捉えています。インナーウェアを基盤に美・快適・健康での領域を広げ、インナーウェアを超えて自分らしさをサポートできる会社になっていきたいと考えています。

女性のからだは数値面だけで把握することは難しく、心とからだが密接にリンクしています。商品開発においても、外見を整えるだけでなく、着用している時の感覚や心地よさを非常に重視しています。

さらに商品を通じて女性のヘルスケアに関する情報をお伝えすることで、さらに心地よい世界を作っていく。「YOJOY」はそうしたワコールのエッセンスを凝縮したブランドといえます。

理論と感性をつなぎ、ものづくりに反映する

― 一場さんは理系のご出身ですよね。ワコールに入社された理由をお聞かせいただけますか。

大学では、半導体に関する研究開発を行っていました。こうした商品は数値的なスペックで選ばれることがほとんどのため、自分が作った商品がお客様にどのように選ばれているか見える仕事がしてみたいと思っていたんです。また、洋服の設計にも興味があったため、女性のからだデータを保有しているワコールに入社しました。開発部門ではデータや知見に基づいてブラジャーの開発に携わっており、ワコールのものづくりの根幹部分に触れていました。

― 研究開発のご経験は、現在のブランドづくりにどう生きていますか。

ワコールは、プロダクトをつくることだけではなく、“人を知る”ことに時間をかけてきました。4歳から69歳まで約4万5,000人のからだデータを蓄積し、3D計測だけでなく手計測も続けています。バストの柔らかさや肌ざわり、汗、動作による変化まで見ながら商品を開発しているんです。

一方で、その知見は「なぜ心地いいのか」という生活者の言葉に変換しなければ伝わりません。理論と感性の間を架け橋することは、研究開発と商品企画の両方を経験してきた自分の強みだと思っています。

― 御社はリテールカンパニーとしての顔もお持ちです。商品開発において、お客様から直接聞こえる声も活かされているのでしょうか。

はい。お客様に最も近い存在である販売員を通して情報収集を行っています。特に「YOJOY」はフェムケアブランドですので、販売員以外の社員も店頭をまわったり、ポップアップイベントを行ったりしてお客様からお話を伺いました。なかなか話しにくいデリケートなお悩みもヒアリングしています。立ち仕事でからだに負担がかかりやすい販売員自身からも、どのような商品があったら嬉しいかを聞き取りながら作りました。

ブランドに込めた想いや、女性の声を生かした商品開発について語る一場さん

揺らぎを知り、自分に合う心地よさを選ぶ

― フェムケア市場における、ワコールならではの強みは何でしょうか。

1つは、人を理解する深さです。下着は365日、からだに最も近いところで身につける衣類です。静止している状態だけでなく、動作や肌ざわりまで考えて設計し、実際にモニターの方に着用いただいて検証します。フェムケアのように一般的なアンケートでは話しにくいテーマも、対話を重ねることで潜在的な悩みまで掘り下げていきます。

もう1つは、女性の人生を長い時間軸で捉えられることです。女性は初経、妊娠、出産、閉経など、ホルモンの変化によってからだも心も変わっていきます。その人の人生に並走しながら支えられることが、ワコールらしさだと思います。

PMSや月経周期による自分の揺らぎを知る

― ブランドとして「自分を知ること」を大切にしているのはなぜでしょうか。

多くの女性と話す中で、「自分の機嫌は自分で取りたい」という声を聞くことがよくありました。しかし、月経周期による揺らぎによって、理由が分からないままイライラしたり落ち込んだりすることもあります。大切なのは、揺らぎをなくすことではなく、自分にとって心地よい揺らぎを知ることです。原因が分かれば、「今はこういう時期だから少しペースを落とそう」と準備や対応ができます。

自分にマッチしたセルフケアをしていただくために、無料コンテンツ「YojoCheck(ヨジョチェック)」を提供しています。ローンチ前の社内検証でも、「1日数分、自分のためのケアを取り入れることで、気持ちが満たされ前向きになった」という声が多くありました。

― 髪型やメイク、ネイルのように、下着を選ぶことも、セルフケアになるのでしょうか。

なると思います。好きな色やレースを身につけて気持ちが上がる人もいれば、天然素材のやわらかな肌ざわりにほっとする人もいます。朝起きたときの体調や気分に合わせて下着を選ぶことは、自分の状態に目を向ける行為でもあるんです。

「どういうボディになりたいか」だけでなく「今日はどんな気持ちでいたいか」「今のからだには何が心地よいか」で決める選択が、1日のセルフマネジメントにつながると考えています。

サイエンスと感性で、人生に並走するブランドへ

― データや機能性と、感性に訴えるブランド体験をどう両立させているのですか。

女性の購買行動には、機能だけではなく、「気持ちが上がりそう」「毎日が豊かになりそう」という予感も含まれていると考えています。ですから、サイエンスによる快適性と、感性による気持ちの充足の両方が必要です。どれだけ精密にものづくりをしても、それだけでは心を動かしきれません。

例えば、ボディケア商品のパッケージは陰陽五行の色彩をベースに、手に取ったときに気持ちが上がるデザインにしています。一方、バスルームへ置くボトルは、家族やパートナーと暮らしていても使いやすいシンプルなデザインにしました。購入時の高揚感と、生活の中で心地よく使い続けられること、その両方を意識しています。

― 最後に、「YOJOY」の今後についてお聞かせください。

まずは、フェムケアや自分のからだについて知りたいと思った時に「YOJOY」やワコールを見てみようと思っていただける存在を目指したいです。そして、女性のヘルスケアについて、もっと当たり前に会話できる社会をつくっていければと考えています。

加えて、「YojoCheck」のような自分を知るツールや、ワコールの販売員との接点もさらに生かしていきたいです。また、企業で立ち上がるフェムケアプロジェクトへの協力など、BtoBでの取り組みにも可能性を感じています。ワコールだからこそできることを探りながら、お客様とともに人生を歩んでいけるブランドになっていきたいと思います。

文:大貫翔子

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