どこまで普及している?ファッション業界における在宅勤務の取り組みの実態とは
コロナ禍に入りもう2年、感染症対策として打ち立てられた在宅勤務という新しい働き方もずいぶん浸透してきた。一方で未だに「完全出社」を求める企業も多く、そのことがきっかけで転職にふみ切る人も増えている。
ビジネス特化型ソーシャルネットワーキングサービスのリンクトインがおこなった調査によると、オフィス勤務と在宅勤務を組み合わせた「ハイブリッド勤務」を希望する回答者が50%にものぼったという。(リンクトイン・ジャパン株式会社/21年10月28日発表・同社プレスリリースを参照)
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ではファッション業界においては、在宅勤務という選択肢がどの程度選べるのだろうか?今回は外資系ブランドをはじめ、日系ブランドについても併せて考えてみたい。
外資系ファッション企業の場合
外資系なのだから在宅勤務はある程度推奨されているだろう、というイメージがあるかもしれない。実際ラグジュアリー、カジュアル問わず多くのブランドでは、店舗接客のスタッフをのぞき、週の何日かは在宅勤務、といういわゆるハイブリッド型の勤務形態を選ぶことができる。この場合フレックス制度を導入し、コアタイムを作ってコントロールしていることが多い。
だが、ECのみで成り立っている場合を除けば基本的に店舗の売上あってこそのブランド業界。現場のスタッフが完全出社で頑張っているのにオフィスではフルリモート、とあれば同じブランド内でも軋轢が生じるのは目に見える。おそらくそんな理由もあってか、オフィス勤務でも完全に在宅という企業は少ない。
逆にオフィスにおいても全日完全出社を貫くブランドも、これもまた少ないものの存在する。こうした企業からは、当然とも言えるがどんどん優秀な人材が離れていっているのが現状だ。
在宅勤務の割合については、蔓延(まんえん)防止等重点措置など、政府の意向に基づいて方針を決め、宣言が解除されれば出社の割合を増やすパターンが現在の主流。
また、ポジションが上に上がればあがるほど、在宅勤務をする余地はなくなる。何かあったときにいつでも迅速に対処するためには常に現場にいることが望まれているのだ。
日系ファッション企業の場合
一方日系企業の場合を見てみよう。ファッション業界、ということでいうとスタートアップやベンチャー企業であれば在宅勤務を推奨しているところも多い。一方、繊維メーカーなどモノ作りに関わっている企業では8割以上は完全出社という形を取り続けている。
日系企業に勤めながら在宅勤務の選択肢を得るために、業務委託という形での勤務に切り替える人も増えている。業務委託の契約時における企業との交渉で、完全に在宅勤務、とまではいかなくても在宅勤務可能日を増やすことに成功している転職事例もある。
店舗の取り組み
外資系、日系問わず、基本的には現場にいることが求められる店舗スタッフ。では、店舗を開けることができなかった緊急事態宣言下など、どう乗り切っていたのだろうか。
2020年の緊急事態宣言の折、ブランドの“企業力”の差が如実に表れる事態となった。出勤できなくなったスタッフに対し研修・トレーニングをリモートで行い、雇用の存続につとめるブランドもあった一方、有給の消化や、給料のカットに踏み込むブランドも…。
このタイミングで転職を決意し、店舗スタッフからオンラインカスタマースタッフになり在宅勤務を始めた事例も。店舗スタッフの経験しかないからといって在宅勤務をあきらめるのは早いと言える好例だ。
アフターコロナに向けて
ファッション業界だけでなく全体として、子育て世代は特に在宅勤務を希求している。通勤時間がなくなり、働きながら家事もできるというメリットはやはり大きい。アフターコロナでも、必要に応じ在宅勤務の選択肢は持ち続けたいという声はよく聞くところだ。
たとえ全日出社することができる人であっても、有事において在宅勤務の選択肢を与えられない、ということは心理的にストレスを感じてしまうこともあるだろう。これは感染症対策の観点だけではなく、企業がスタッフをどの程度信頼しているか、という部分に対するバロメーターとして捉えられていることにも要因がある。
完全出社をのぞむ企業側の意見として、コミュニケーションの効率の観点以外に、在宅勤務では業務を本当に遂行しているのかの確認がとれない、有り体に言えば「サボっているのではないか」との懸念がある、というのが雇用者側にも透けて感じられるというわけだ。
今企業に求められているのは、従業員とコミュニケーションをとり、信頼関係を築きながら、より柔軟な職場環境を作り上げることだと言える。勤怠管理の見直しを始めとしてさまざまな取り組みを実践している企業は数多い。
今いる職場は今後そのように、コロナのみならずさまざまなトラブルが発生した際に柔軟な対応を取ることができるのか?もしも現状のままでは不安だと感じたら、まずは自分が今後どうしたいのかを改めて考え、働きかけてみる時かもしれない。
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