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目指すのは、自然と人間が共存できる社会。自分が見たい世界を作るために踏み出した一歩|レコテック株式会社Circularity Designer/大村拓輝氏インタビュー

目指すのは、自然と人間が共存できる社会。自分が見たい世界を作るために踏み出した一歩|レコテック株式会社Circularity Designer/大村拓輝氏インタビュー

ビジネス界のトップランナーのキャリアを「丸ハダカ」にする、新感覚対談「Career Naked」。今回登場するのは、“Circularity Designer”という見慣れない肩書きを持つレコテック株式会社の大村拓輝氏。学生だったインターンシップ時代に、人生や哲学と仕事について深く考察する機会を得て、モノを売る戦略を考えるマーケティングへと進み、コロナ禍で考えたのが、「自分は本当は何をしたいのか」という根源的な問い。そこで見つけたのが、自然界と人間界の相性で、深掘りしていくうちに、サーキュラーエコノミーへとたどり着く。資源循環デザイナーとして、「プラスチックの循環デザイン」を開拓中の大村氏にNESTBOWL株式会社 COOの田崎が話を伺った。

大村 拓輝さん/レコテック株式会社 Circularity Designer
学生時代に、アメリカのオレゴン州ポートランドに留学し、ビジネスとLOHASについて学ぶ。帰国後、株式会社ナイキジャパンのマーケティング本部に20年ぶりの新卒として入社。直近では、デジタルマーケティングマネージャーとして、ユーザージャーニー、コミュニケーションを設計し、顧客とのエンゲージメント向上に従事。レコテック株式会社では、ブランディング、資源循環プラットフォーム”POOL”の社会実装に向けたプロジェクトを担当。

田崎 直人/NESTBOWL株式会社 COO
1989年生まれ。埼玉県出身。大学卒業後、クリエイティブに特化したエージェンシー事業を展開するC&R社にて、ゲーム、ファッション、XRなど、主に新規事業立ち上げに従事。NESTBOWLではCOOとして、ビジネス領域全体を管轄している。また、創業29年目を迎える家業のもつ焼き専門店 「せんとり」の経営も担う。

仕事の本質を学んだインターンシップ時代

―大村さんのプロフィールを見ると、アメリカのポートランドに留学されていますね。

早稲田大学在学中に、一年間の留学プログラムでポートランドの大学に行きました。自分はアメリカ生まれで、親の仕事の関係で0歳から2歳半ぐらいまで滞在しましたが、アメリカのパスポートを持っているのに英語が話せなくて、ずっとタイミングを計っていたんです。ポートランドはアメリカの中でも治安が良い場所なので、親も説得しやすかったですね。大学2年の秋から3年の6月までのプログラムで、経営/経済学の入門を中心に、LOHASについても学びました。

日本では大学3年の6月から就職活動が一斉にスタートしますが、「このままレールに乗っかって日本に帰っていいのか?」という疑問が湧いて、アメリカで一人で挑戦してみようと思い、プログラムが終了した6月から10月まで、ニューヨークの金融系スタートアップ企業にインターンとして入り、リサーチ業務をメインに働いていました。

それから日本に帰ってきて就職活動をしましたが、自分には合っていないことが分かり、それなら学生だからできる「世界一周をしよう」と思い立ち、効率良くお金をためるために、原宿にある広告代理店でインターンを始めました。

大学時代に、テレビ番組で佐藤可士和さんがロゴデザインの話をしていたのを見て広告に興味を持っていたのですが、ちょうど原宿の広告代理店の代表が大学で広告プロモーションの話をしているのを聞いて、一週間後ぐらいに「インターンをしたい」と飛び込みで行きました。

その代理店は海外のクライアントも多く、英語資料を作ったり、ミーティングに参加したり、いわゆる雑用でしたが、3〜4ヵ月働きました。働いているときに、「マーケティングには、広告表現のルールを決める発注者の事業会社と、その決められたルールの中で最大限のクリエイティビティを出す広告代理店(制作会社)」の2つがある」という話を聞いて、その両方を知りたいと思い、外資系自動車メーカーを紹介してもらいました。

そういう興味の持ち方、広げ方と行動力はすごいですね。

外資系自動車メーカーではデジタルマーケティングのインターンというポジションで、大学を休学してフルコミットで働きました。

部署は当時の上司と自分の2人で、上司からはマーケティングの本質を学ばせていただきながら、業務外でも人生や哲学のことなど、仕事とは直接関係ないけれど、とても大切なことを教えてもらいました。既存の社会システムに対して議論することもありましたが、当時は自分が抱く違和感をなかなか言語化できないもどかしさを抱えていたことを覚えています。

ある時、「仕事ってなんだと思う?」と問われて答えられずにいると、「仕事量は加えた力で生み出した変化量のことだ」と。「だから、長期間働いても変化量がゼロだったら何も仕事をしたことにならないし、一週間休んでも変化量があればいいと思うんだよね。」と言われて、とても納得したんです。外資系自動車メーカーには10ヵ月ほどいましたが、上司からは本質的なことをたくさん学びました。

大学を休学してフルコミットした外資系自動車メーカーのインターン。時には出張で富士スピードウェイに行くことも。

Facebookでたまたま見た「ナイキが新卒マーケティングを求む」に応募

その上司のかたとの10カ月間は、大村さんにとってかけがえのない財産になって残っているのですね。

そうですね、上司と一緒に過ごした時間は、すべて勉強でした。マーケティングはやればやるほど面白い仕事でしたが、クルマという商材が自分からは遠く感じていたときに、たまたまFacebookの広告でナイキの求人を見て「これだ!」と。子供の頃からサッカーをしていて、留学先がナイキの本社があるところという縁も感じて応募しました。

運良くマーケティング部に新卒として採用されて、最初はSNSなどのデジタルマーケティングを担当し、それから直営店を拠点としたブランディングに携わりましたが、コロナ禍で店が閉まってしまったときに、いろんなことを考える時間ができて、「自分は本当は何がしたい?」という疑問にぶち当たりました。

インターン時代の上司との会話ではないですが、ずっと既存の社会システムには違和感があって。たとえば、自然界は動物の死骸さえ栄養分になるように循環ができているのに、人間界はいろんなところに負荷をかけていて、自然と人間の相性は良くない。人間界から“ごみという概念”がなくなれば、自然界とも調和ができるのでは?と。

そんなことを考えているうちに、オランダのスタートアップが始めた「産業廃棄物を資源としてマッチング」させるサービスを知り、サーキュラーエコノミーのことを勉強していくうちに、「産業廃棄物と、それが欲しい人とをマッチングさせるプラットフォームを日本に持って来たい」と考えるようになりました。そのサービスで一番惹かれたのは、産業廃棄物にデジタルプロダクトパスポートを作って素材の構成内容を可視化できる、すべてのごみに情報を紐付けるという点でした。コロナ禍の中だったこともあり、いろんなジャンルの方にリモートで「ごみのこと」を聞いているうちに、今の会社の代表とたまたま繋がったのです。

現レコテック代表の野崎に、オランダのプラットフォームの話をしたときに、「自分は15年前からこの構想に取り組んでいます」と言われて、衝撃が走りました。それで、日本の法律とオランダの法律が違うために、日本に導入しても上手くワークしないことが分かってきて、野崎から「一緒にやりますか?」と誘われました。

サプライチェーンの全体のデザインをしていく「資源循環デザイナー」

大村さんの“のめり込む力”が、エキスパートを呼び寄せるんですね。レコテックの自社サービスの「POOL」について教えてください。

「POOL」は資源を循環させるために作ったプラットフォームで、「ごみを捨てるのではなく、プールして誰かに使ってもらおう、次の人(企業)に預けよう」という意味が込められています。ごみは出す人とそれを使う、使いたい人がいますが、その間には流通や工場があります。自分の肩書きの「資源循環デザイナー」は、ごみを調達し、きちんと循環させる、全体のサプライチェーンをデザインする役割を指します。

今取り組んでいるのはプラスチックで、プラスチックは世の中から悪者のように扱われていますが、プラスチックのリサイクル材の需要はすごく高まっています。一つ例を挙げると、日用品を取り扱うメーカーは自社製品のボトルにリサイクル材を使うミッションがあり、私たちはアパレルブランドが店に洋服を納品するときに商品を包んでいるビニール袋に着目。これまではサーマルリサイクルなどを通して燃やされていましたが、商業施設や百貨店のテナントから回収してマテリアルリサイクルに取り組んでいます。

レコテックのコンセプトである「ごみを捨てるから、資源を託すへ。」を現実世界で実現しようと大村氏は邁進している。

―それはまさに“サプライチェーンの構築”ですね。

リサイクルには2つの種類があって、一つは工場から出てくるプラスチックで、これは製品製造の端材などですが、PIR(ポストインダストリアルレジン)と呼ばれ、きれいな状態なのでリサイクルもしやすいのですが、一度使い終わったプラスチックから再生されるのPCR(ポストコンシューマーレジン)は、使い捨てられたプラスチックの分別や回収、リサイクルが難しいものです。今はヨーロッパでは規制が厳しく、企業は一定量のリサイクル材(PCR材)を使わないと課税対象になり、リサイクルの動きはどんどん強まっています。

「どこでごみとして出て、誰が運んで、どこでリサイクルされたプラスチックなのか」を追跡するデータにして初めてPCR材であることが証明でき、企業が使えるので、そのトレーサビリティ情報をまとめているのが「POOL」です。実際、プラスチックのリサイクルは業種の垣根を超えて、複数の企業と日々課題解決に向けて取り組んでいます。

大村さんの「資源循環デザイナー」という肩書きや、「POOL」のような循環システムを用いている企業は日本にありますか

自分のような役割を担っている人に直接会ったことはありません。また、国内で製造したプラスチックPCR材を実際に動かしているところは、ほとんどないのが現状だと思います。

資源リサイクルの本当の課題はどこにあるのか

環境と人間にとって先進的な「POOL」で資源のマッチングを手がけられていますが、今の目標は何ですか。

それは、企業や人が欲しい素材に対してどのごみから持ってくるのが効率がいいのかを突き詰めて、「持続可能な循環」を作ることですね。まず、最初の一つの循環をきちんと構築したい。プラスチックで出来たら、次は生ごみです。ごみの割合は生ごみとプラスチックがほとんどで、アルミ缶やガラスなどはリサイクルの効率化が進んでいます。

―とても興味深いお話ですが、消費者である私たちが普段の生活でできることは何でしょうか。

自分も消費者の一人ですが、自分の消費行動をメディアに左右されず、「これは本当に必要かな?」と一歩ちゃんと止まって考えることが、遠回りではありますが一番インパクトがあることなのかなと思います。それを意識するだけでごみの量は確実に変わってくるし、そういう消費行動をすると、企業側の生産活動も変わってきて、さらに環境が変わってくるでしょう。自分が今使っているナイキのデイパックもいろんな部分をリペアしながら5~6年使い続けています。「どこにお金を使うか」を普段の生活から意識することで、消費行動が本当に変わりましたね。

アパレル業界とも取り組みは多いですが、たとえば、回収までの仕組みをセットにして洋服を売るとか、リサイクルを前提とした構成で商品をデザインする「環境配慮型設計」に変えていくなど、使い続けられる仕組みを作る意識は、これからより高まっていくと思います。

「とても気に入っているデイパックですが、止水ジップが壊れても捨てようと思わず、修理しました。安易に買い替えず、好きなモノはとことん直して使うというのも持続可能性を高める一つですね」

大村さんが取り組んでいる仕事は、いわば「これからの世の中に必要な仕事」ですね。

自分はインターン時代からナイキまで、ずっと消費活動を促すことをやっていて、今はモノを使い終わった後のことを考えています。今、福岡の企業とポリエステル製の部活の服などを大学を拠点に回収してリサイクルする計画などを進めていて、仕事はとても面白いです。

リサイクルに興味がある企業はたくさんあって、いわゆるCSR的な領域を超えて、環境への配慮という取り組みは年々高まっていくと思います。今は、「誰もやっていないことを数歩先でやっている」感覚ですが、今一番欲しいのは、仲間です。

仕事を通して、自然と人間が共存する社会を作ろうと奮闘する姿は、まさに開拓者そのもの。レコテック大村氏の今後の取り組みから目が離せない。

レコテックでは、「POOL」を活用して一緒に資源循環のプロジェクトに取り組むパートナーを募集しています。ご興味ある方はこちらをご確認ください。

撮影:Takuma Funaba

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レコテックは持続可能な資源循環をデザインするチームです。
テクノロジーを活用し国内外の自治体、民間等へ廃棄物に関するソリューションを提案します。