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「尊い日本の食文化や伝統をきちんと伝え、守っていきたい」。AKOMEYA TOKYOが目指す、“おいしい”の循環型社会とは。

「尊い日本の食文化や伝統をきちんと伝え、守っていきたい」。AKOMEYA TOKYOが目指す、“おいしい”の循環型社会とは。

全国から厳選したお米、ご飯のお供、出汁、調味料などの食品をはじめ、食器・調理道具などを扱うライフスタイルショップ「AKOMEYA TOKYO」。2013年にサザビーリーグの一事業として始まったブランドだが、2022年4月に丸の内キャピタルからの資本参画を受けて株式会社AKOMEYA TOKYOとして新たなスタートを切った。更なる飛躍を目指す今、山本浩丈代表取締役社長に「AKOMEYA TOKYO」が考える日本の”食”とは、今後目指していく未来についてお話を伺った。

山本 浩丈さん/株式会社AKOMEYA TOKYO代表取締役社長
神奈川県出身。大学卒業後、ダイエーに入社したのち、スターバックス、コンサル会社を経てサザビーリーグに入社。2013年、サザビーリーグの執行役員、ゼブラジャパンの代表取締役に就任。2019年以降、AKOMEYA TOKYOの事業部長を務める。2022年4月、株式会社AKOMEYATOKYO設立に伴い、現職に就任。

肌で感じた時代の変化が、キャリアアップや原動力に

― まず、山本さんのご経歴についてお聞かせください。

大学卒業後は、ダイエーに入社しました。当時、ダイエーは流通革命を起こし、消費者主権に取り組んでいました。その頃の日本は物価がとても高い時代だったので、そんなダイエーの取り組みに共感したことが志望の大きな理由です。

その頃は「物の豊かさ」が求められた時代でしたが、バブルがはじけて数年が経ち、人々が少しずつ「心の豊かさ」を求めるようになっていくのを現場にいながら肌で感じるようになりました。そんなときに出会った本が、「スターバックス成功物語」。まさに「心の豊かさ」を追求する会社だと感銘を受け、スターバックスへ転職しました。

その後、コンサルティング会社を経て、サザビーリーグに入社したのは、2012年。スターバックス時代に上司だった角田良太さん(現・サザビーリーグ代表取締役社長)に誘われたというご縁です。その当時の日本は、失われた20年という言葉が飛び交い、さらに東日本大震災も起こった後で、とても暗い空気が流れている状況。“なんとか日本を元気にしたい”、そんな想いで日々働いていました。

新規事業や海外事業展開に携わる中で、フライングタイガー・コペンハーゲンと出会い、このブランドなら日本を元気にできるのではと感じました。そして、日本での展開をスタート。このブランドを運営するゼブラジャパンの代表取締役を務めたのち、サザビーリーグへ帰任し、AKOMEYA事業に携わることになりました。そして2022年4月に新会社である株式会社AKOMEYA TOKYOが始動し、現在に至ります。

― 社会潮流の変化を敏感に感じながら、キャリアを歩んでこられたのですね。

それには小学生時代の経験が大きく影響していると思います。私は神奈川県大和市で生まれ育ったのですが、小学4年生のとき、通っていた小学校の真裏にベトナム難民センターができました。

当時、ベトナム戦争が終わって日本にたくさんのボート・ピープルが来ているタイミングでした。ただ、すぐ近くには米軍の厚木基地もあって。ついこないだまで戦争をしていたアメリカ人とベトナム人が近くにいるという特殊な環境で過ごすうちに、「幸せって何なんだろう」と常に考えるようになりました。

特に小売業は、社会潮流の変化をダイレクトに感じられる仕事です。私の場合は、「幸せって何なんだろう」から始まり、「心の豊かさとは」、そして「日本を元気にしたい」というその時々の熱い想いが原動力となってきました。

「食のカタリスト」として、日本の食文化をさらに広めたい

― “AKOMEYA”の由来について教えてください。

「A KOMEYA」=“1軒の米屋”という意味と、「〜がない」や「非〜」という否定を意味する英語の接頭辞「a」をつけた「akomeya」=“米屋でない”という二つの意味を込めています。つまり、米屋だけにとどまらないお店という意味です。

AKOMEYAの使命「日本の食の可能性を拡げる」

― AKOMEYA TOKYOの現在のビジネス展開について教えてください。

私は2020年頃からAKOMEYA事業に携わっているのですが、最初はAKOMEYAブランドを海外に持っていくことができたら日本を元気にできるかもしれないと考え、準備を進めていました。

日本のブランドが海外に進出したというニュースを聞くと、嬉しいし、勇気づけられますよね。ニューヨークでマーケットを見てまわり、物件探しも行っていました。でもその矢先に新型コロナが流行し始めてしまって、その計画はいったんストップしました。現在は国内事業をしっかりと展開していくために、丸の内キャピタルとタッグを組み、さらなる成長を目指して取り組んでいます。

現在、店舗数は首都圏と大阪で計12店舗ありますが、今後は名古屋や関西方面への新規出店も充分にあると思います。もちろん、海外への展開も諦めたわけではありません。適切なタイミングを見計らって進出したいですね。

― AKOMEYA TOKYOでは、「日本の食」をどのように捉えていますか。

日本の文化の中心に「食」があり、食文化の中心に「お米」があります。我々は、お米や食品を取り扱っていますが、そこから派生する文化や伝統もしっかりと伝えていきたいと考えています。

偶然にも、AKOMEYA TOKYOの1号店が銀座にオープンした2013年、ユネスコ無形文化遺産に和食が登録されました。和食が登録されたのは、単に美味しいからではなく、日本人が大切にしてきた自然を尊ぶ想いや自然と調和する精神性が評価されたからです。それはとても価値のあることです。しかし、近代化に伴い、様々なことが便利になっていくにつれ、そういったことが少しずつ忘れられつつあります。だから我々は、「食のカタリスト」としてそういったことも多くの人たちに伝えていきたいと思っています。

― 衣食住の中でも食は重要な要素。マーケットが大きい分、競合も多いと思います。

おっしゃる通りです。AKOMEYA TOKYOの商品って、決して安くはありません。だからその価格ゆえの理由として、ストーリーがないとビジネスとして成り立たないと考えています。

最近の事例で言えば、木桶を使った味噌づくり。きっかけは、小豆島にあるヤマロク醤油の五代目・山本康夫さんの呼びかけで始まった「木桶職人復活プロジェクト」です。木桶は、昔は醤油、味噌、酢などの調味料づくりに使われていましたが、今では費用対効果が合わないことから、ほとんど使われなくなっています。醤油業界で言えば、全体の1%以下まで落ち込んでしまっているとか。このままでは木桶文化や木桶づくりの技術が失われてしまうということに危機感を感じ、食品メーカーや流通業者、大工や料理人などが集まり、毎年1月に小豆島で新桶づくりをしています。

そこで我々もこの「木桶職人復活プロジェクト」に賛同し、木桶を発注。そして、岡山の河野酢味噌さんとタッグを組んで、AKOMEYAオリジナルの木桶味噌づくりにチャレンジしました。このようなカタチで、日本の食文化の継承に寄与できるのであればこんなに嬉しいことはありません。完成した味噌は、2022年10月15日、AKOMEYAオリジナル商品(PB商品)として発売します。スーパーに売られる一般的なお味噌よりも価格は高いですが、日本の木桶文化を継承していくというストーリーに価値を感じていただければと思います。

小豆島の木桶製作現場
アコメヤの木桶味噌

“おいしい”の循環型社会を目指して

― コロナ禍で、日本人の食への関わり方には変化があったと思います。ここ数年の変化をAKOMEYA TOKYOではどのように捉えていますか。

コロナ禍では、皆がそれぞれ「自分が大切にする生き方って何だろう」と、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)について真正面から考え過ごしたのではないでしょうか。私も、家族が新型コロナに感染してしまったときは、今まで当たり前だったことが当たり前ではなくなることを心から実感しました。QOLを上げるのに一番貢献しやすいのが食事だと思うんです。コロナ禍以降、家でちょっとしたおいしいものを食べ、そこに幸せや喜びを感じている方はきっと多いでしょう。

弊社の場合、お客様から「これまで知らなかったことを知ることができる」、「感性の高いものが置かれている」というお声をいただきます。誠実な生産者の手でつくられた商品には、人に話したくなるストーリーがあります。そういうストーリーを知って、食卓で家族と話しながら一緒に味わう――。それはとても豊かな時間になるのではないでしょうか。

ぜひ宝探しのような感覚でお店に訪れていただき、いろいろ見てまわっていただければ嬉しいです。特に、旗艦店である「AKOMEYA TOKYO in la kagū」は、商品を見る、買うだけでなく、AKOMEYA食堂で食べることもできるので、よりリラックスして楽しんでいただけると思います。

※「QOL」とはクオリティ・オブ・ライフ(Quality of Life)の略称で、生活の中で生きがいや満足感を見出しているかどうかを尺度として捉える概念のこと。

AKOMEYA食堂 神楽坂

― 消費者が、日本の食文化を守っていくためにできることは何でしょうか。

まずは興味を持っていただくことだと思います。商品の持つストーリーや背景を知り、それに共感する、あるいはそれを応援したいという気持ちが購入に繋がります。購入とは、一票を投じること。その一票が日本の生産者を元気にし、食文化の継承に繋がると理解すること。これらのことを家族や周りの人たちと共有していくと、やがては大きな変化に繋がると信じています。

それは、まさに私たちが目指すビジョン「世界に誇れる“おいしい”の循環型社会」とも重なります。作り手が大切につくった食材や食品があることで、笑顔があふれる食卓になり、作り手への感謝が生まれる。そんな“おいしい輪”をこれからも作っていきたいです。

AKOMEYA TOKYOでは、出店に伴う組織強化のための新メンバーを募集しています!上記の考えに共感され、一緒に会社を盛り上げていただける方、新たなるチャレンジをしていきたい方を求めています。ご興味がある方はこちらからご応募ください!

文:鈴木 里映
撮影:Takuma Funaba

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AKOMEYA TOKYO

AKOMEYA TOKYO

AKOMEYA TOKYOは一杯の炊き立てのごはんを中心に広がるおいしい輪をコンセプトに、全国から厳選されたお米と、お米に相性抜群のご飯のお供、出汁などの食品や、食器・調理道具などを扱うライフスタイルショップです。