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ベビースターラーメンは、なぜ長く愛され、選ばれ続けるのか。おやつカンパニーにみる、新しいことに挑戦することの大切さ。

ベビースターラーメンは、なぜ長く愛され、選ばれ続けるのか。おやつカンパニーにみる、新しいことに挑戦することの大切さ。

ビジネス界のトップランナーのキャリアを「丸ハダカ」にする、新感覚対談「Career Naked」。今回登場いただくのは、株式会社おやつカンパニーのマーケティング戦略を担う赤沢 佳代氏。同社といえば、子どもから大人まで誰もが知っている商品・サービスを追求し、独自の魅力を持つ世界観を構築してきた。ここではそんなブランドの魅力に迫り、長きにわたり愛される理由を紐解いていく。

赤沢 佳代さん/株式会社おやつカンパニー マーケティング本部 戦略1部 次長兼課長
メルシャン、日本コカ・コーラ、日本マクドナルド、資生堂に在籍し、複数のブランドで市場創造やマーケティング戦略の構築・強化・実行業務を担当。2021年6月より株式会社おやつカンパニーにて現職。市場の変化が急速に進む昨今、看板商品の「ベビースター」シリーズのマーケティング業務全般と、新たな価値提供の実現へ向けて様々な分野でのパートナー企業との共創に取り組んでいる。

堀 弘人さん/H-7HOUSE合同会社 CEO・ブランドコンサルタント
1979年 埼玉県生まれ。米系広告代理店でキャリアをスタートし、アディダス、リーバイス、ナイキ、LVMHなど数々の外資系ブランドにてマーケティングディレクターを含む要職を歴任したのち、楽天の国際部門にて戦略プロジェクトリーダーとして活躍。20年以上に及ぶ自身のブランドビジネス経験を国内外企業の活性に役立てたいとブランドコンサルティング会社H-7HOUSEを設立。NESTBOWLをはじめとして様々な企業、政府系機関、ベンチャーなどのブランド戦略構築に幅広く参画している。

マーケティングを軸に、一貫するキャリアの変遷

― おやつカンパニーに入社する以前はどんなことを経験されてきたのでしょうか?

元々は「食」に強い興味関心がありまして、大学卒業後、新卒でメルシャンに入社しました。女性では初めての営業職に配属されたこともあって、会社も女性の営業担当の扱いに慣れておらず手探りの時代でした。車の運転など初めての事だらけで右往左往し、先輩や上司に呆れられたり笑われたりして諸々の業務を教えて頂いた日々でした(笑)。

― 社会人になりたての頃は誰もが通る道ですね(笑)。

その後、商品開発をやりたいと思っていたところ、運よく希望していた部署へ行くことができました。缶の「酎ハイ」が定番になって久しいですが、その先駆けで”フルーツカクテルブーム”が当時きて、「ピーチツリーフィズ」の担当になり、さまざまな低アルコール飲料の新商品を作る部署でした。それをきっかけに、商品を通してお客様とコミュニケーションをとる楽しさに気付き、私のやりたいことは、「商品を通して誰かを笑顔にすることだ!」と再確認しました。ここで商品開発をしばらく経験していたら、思いも寄らずヘッドハンティングの話があり、1995年から2007年まで日本コカ・コーラで働くことになりました。

― 実際に新商品開発部で働いてみて、どのように思いましたか?

商品の開発は本当に楽しいです。売上計画はもちろん達成させければなりませんが、常に先のお客様の志向や市場環境を考え、何に機会があるのか、どうしたら喜んでいただけるのか思考し生み出す点にやりがいを感じます。日本コカ・コーラでは、最初に新規ブランドの開発に携わり、お子さま向けの炭酸飲料や、四季ごとの期間限定飲料ブランドなどを導入し、その後異動して烏龍茶ブランドや日本茶の新ブランド立ち上げを担当してから、主人の海外転勤で一年ほど休職しました。帰国後は他企業コラボや「ジョージア」の商品開発やキャンペーン・ブランドリニューアルや「ファンタ」などを担当しました。

― 日本コカ・コーラの中でも錚々たるブランドですね。

マーケティングが中心に動く会社で、ブランドを如何に成長させるか、新しいビジネス機会の探索など、学ぶことは多かったです。全く基本的なことなのですが、「ブランド」とはコンシューマーにとってどういう存在であるべきなのか、マーケティングの原点から考えさせられました。自分の担当しているブランドを見つめ直し、ブランドの存在意義やお客さまとの約束を特定し、その上で顧客ニーズ・インサイトの探求や商品・サービスの開発、広告などによる認知向上、その効果検証といった一連の活動が基本の動きとなりますが、日本コカ・コーラ時代の知見が今でも自分の仕事のベースとなっています。

― 赤沢さんの今のお仕事を教えていただけますか?

現在は、おやつカンパニーの根幹のブランドである、発売して63年目となる「ベビースターラーメン」を始めとした「ベビースター」ブランドと、ポテトスナックのマーケティング業務全般を担当しています。ベビースターラーメンが導入された当時の昭和30年代は、ブランドのエントリーポイントは子どもたちの社交場であった駄菓子屋がメインでしたが、時代は変わり、子どもたちは自分たちだけで好きなお菓子を買う場が減り、ベビースターラーメンと最初に出会う場面が非常に少なくなりました。そのような環境変化を受け、スナック菓子売場にお客さまのエントリーポイントを移してきたベビースターブランドですが、売場では、銘柄購入決定の瞬間に、如何にお客さまにブランドを想起していただくかが肝要であると考えています。

― いただいた資料によると、ブランド認知率は97.8%。喫食経験は94.0%になるとか。ほぼ100%の人が知っているというわけですね。これはすごい!

ありがとうございます。ベビースターラーメンは初代の「ベビーラーメン」が1959年に販売され、歴史も古く、子どもたちだけでなく共に歩んできた大人世代にも寄り添い、お客さまのお声をヒントに、ドデカイラーメン・ラーメン丸・ラーメンおつまみといった兄弟ブランドが1999年に誕生しました。これらの兄弟ブランドの登場により、定位置であった駄菓子売場から、「ベビースター」ブランドはスナック菓子やおつまみ市場へ広がっていきました。ただ「ベビースター」ブランドは、スナック市場で独特のポジションを獲得してはいるものの、ある一定層の方に購入されている状況が続いていました。

ベビースター系商品群

― それはどのような背景によるものでしょうか。

みなさん体感されていると思うのですが、スナック菓子売場では、ポテト系のスナックが中心となって販売されています。スナック菓子市場は生や成形のポテトチップスが全体の半分ほどを占めているのですが、「麺スナック」という独特のポジションである「ベビースター」は、類似商品が他になく、店頭での露出ボリュームが少ないため、お客さまの注目を引きづらい傾向にあります。また、小学生の頃は好きで食べていても、中学生、高校生と成長し、「子どもっぽい」と気恥ずかしく感じる方は離れてしまいます。ですが、一旦離れたお客さまの一部は大人になってブランドに回帰しますし、そうでないお客さまにベビースターを食べない理由を訊くと、特に理由はなく、召し上がっていただくとその美味しさを思い出すといった状況がほとんどです。よって、お客さまのマインドに、如何にベビースターブランドを普段から刷り込んでおくかが重要であると考えています。

ただ構造的な問題もありまして、子どもが減りマーケットが狭小化していく中で、ベビースターの主要購買層は30-40代がメインであり、高齢化しています。よって、先ほど申し上げましたように、ブランドとの出会いの場が少なくなっているお子さまや若年層の方々に接触する機会を拡大させ、未来のお客さまにもつなげていきたいと考えています。

― 昔からのファンを大切にしつつ、新規の消費者、特に若い世代を取り込まないといけないわけですね。そのために会社として挑戦していることはありますか?

より多くのお客様にベビースターブランドを思い出したり知ってもらう機会を作り発信することで、「『ベビースター』って元気でワクワクするブランドだな、食べてみようかな」と思っていただくことが目下の課題と捉えています。

この8月から、ベビースターブランド全体で「おやつの常識を超える」というスローガンを掲げ、ベビースターブランドの活性化に取り組んでいます。具体的には、お菓子というカテゴリーに捉われず、お客さまがワクワクし喜んでくださるような、良い意味で「おやつの常識」に捉われない、遊びゴコロあふれるオモシロいコラボ企画をいろいろと展開してまいります。一方で、会社全体としては、2021年に発売されたタンパク質が摂れるスナック菓子「BODY STAR」を始めとした健康系スナックにも積極的に注力してまいります。弊社ではコラボレーションや新しい味、特定のお店専用など、年に200点ほどの新商品を投入していますが、今後もお客さまに喜んでいただけるようさまざまな企画を検討しています。

進化し続ける「おやつカンパニー」“たっぷり、たのしい”おやつ文化の創造をこれからも。

ニーズを素早くキャッチして、新たなビジネスモデルを続々と

― 「ベビースター」ファンの方にとって、「ベビースター」のどんな点が魅力なのでしょうか?

ベビースターを幼少期の頃から長年愛してくださっているさまざまな年代層のお客さまに、どのようにベビースターと出会い、ベビースターをどう捉えていらっしゃるのか、個別でインタビューを実施したのですが、幼い頃に遠足に持って行って友達と一緒に食べたとか、高校時代、放課後男女の友達と受験勉強の合間に学校の中庭でワイワイ食べたとか、お客さまがこれまで過ごしてきた楽しいひとときにベビースターがいつも寄り添っていて、今でも食べるとその頃を思い出し「またがんばろう」と、励まされたり、ちょっと幸せな気持ちになるといったお声をたくさんいただきました。そのお声を踏まえ、閉塞感のあるこの時代に、常識に捉われず挑戦する「ベビースター」のさまざまな姿をお届けすることで、あらゆる世代が忘れがちな”あの頃のワクワクした気持ち”を思い出していただき、ちょっと上向きな気持ちになっていただきたいと考えています。

― 消費者と共に歩んできたベビースターならではですね。では、ベビースターというブランド力をどのように生かしたアクションを考えていますか?

そうですね。お客様の選択肢に上るように、いい意味で期待を裏切ることでしょうか。最近リリースした施策では、ベビースターのスニーカーを作りました。これはスニーカーセレクトショップ「atmos(アトモス)」様とタッグを組み、Reebokのスニーカーをベビースター仕様にしたものです。ベビースターのロゴや歴代のキャラクター、カラーリングを用い、細部にも遊びゴコロ溢れる装飾を施しました。雑誌やWebメディア、テレビ番組等にも取り上げていただき、メディアからの反応も概ね好評です。ターゲット層からの評価も狙い通りでした。

他には、5月に行ったバーガーキング様とのコラボも、お客さまにとっては意外なことからSNSで話題を喚起しました。じゃがいも不足の危機でフレンチフライが提供できなくなる可能性が高いという状況を受け、新たなサイドメニューを提案する企業・団体をバーガーキング様が募集していたものですが、これに弊社が手を挙げ、ありがたいことに選んでいただけました。フレンチフライを『ベビースタードデカイラーメン』に無料で変更でき、さらにオリジナル限定ステッカーをプレゼント、という企画でした。

Reebok x atmos x ベビースター
バーガーキング x ベビースター

― アトモスといい、バーガーキングといい、まさに“おやつの常識”を超えたプロジェクトに感じます。

これからも、さまざまなジャンルでの仕掛けを考えています。おやつカンパニーは、企画から商品化までのスピードが非常に速く、「こんな商品はどうだろう?」と話が上がると、すぐにトライするフットワークの軽さがあります。アイデアを形にさせやすいスピード力はもちろんですが、部門間のコミュニケーションも密で速く、社員同士が良好な関係で、非常にコミュニケーションがよいのもおやつカンパニーの強みだと思っています。

― だからこそ年に200以上の商品投入ができるんでしょうね。

当社のマーケティング部門のトップは食品業界に精通しており、常に「もっと仕掛けろ」と背中を押してくれます。今夏実施の東武百貨店様とのベビースターコラボメニュー展開や、網走ビール様と企画したベビースターにぴったりな「ベビール」など、お菓子売場を超えた新たなチャネル、新たな売り方を更に提案していき、今後に向けても新たな施策を進めておりますので、せひご期待ください。

― 魅力的なコラボがうまくいくコラボと、そうでないコラボの違いはありますか?

協業することでお互いの価値が高まることが鉄則です。お互いの長所を前提に、どんな方をターゲットとし、なぜ今回の企画であるのか、新しい価値は何か、ストーリーを考え企画を進行しています。

私たちが心がけているのは、ベビースターに注目していなかった方や興味がなかった方にも楽しんでいただけるよう、いい意味でお客さまの期待を裏切ることで、「ベビースター」が次に何をしてくるのか、注目していただきたいです。コラボする意味が希薄だったり、不具合があるコラボレーションは、現代の鋭い視点をお持ちのお客さまには受け入れられないと考えています。

「自分がどうなりたいか」を考え、キャリアパスを構築をしていく

― おやつカンパニーで働いてみて、会社の雰囲気はどんなふうに感じますか?

実は外から見ていたときは、会社の情報が少なく謎に包まれていて、どんな組織か今ひとつ分かっていませんでした(笑)。でも入ってみたら、みなさん穏やかで仲がよく、外から来た自分のような者も先入観なく受け入れてくれる懐の深い会社で、おかげさまで楽しく仕事をさせていただいています。

― お菓子業界は、お菓子好きな人が多いイメージがあります。

お菓子好きな人は確かに多いかもしれません。仕事の一環ですので、参考にさまざまなお菓子を食べることはもちろんですが、菓子業界はギスギスしておらず、商談会で他のメーカーの方と仲良くなって新製品を送り合ったりすることもあります。職場に競合他社さんから送られた新製品がズラッと並ぶ風景も珍しくないです。

― 働きやすさはどうでしょうか?

産休育休の制度が整い、私のチームの男性社員も育児休暇を数か月取得し、子育て世代に働きやすい環境だと思います。 私は子育てがひと段落してからの転職組で、老舗の企業ですが、古いしきたりに縛られずさまざまなバックグラウンドの社員が所属しており、多様化が進んでいると思います。

― では、お菓子業界で働きたい方にアドバイスをお願いします。

食や人、さまざまなマーケットに興味や好奇心があり、枠にとらわれない自由な発想ができる人が向いていると思います。新製品が非常に多いので、商品開発に興味のある方には打ってつけだと思います(笑)。

私自身も目まぐるしい世の中の動きに乗り遅れないよう毎日が勉強です。若い世代で話題になっていることは、興味がなくてもチェックするように努めています(笑)。 また、ここ数年心がけて取り組んでいるのは、事象を辿り抽象化するということです。複数の事象の共通点を見つけ出し、物事を自分なりに噛み砕き言語化するようにしています。なかなか難しいのですが・・・。

あとは、お菓子業界以外に幅広く視野を拡げるとよいと思います。元々食いしん坊で外食が大好きなので、興味あるお店にはひとりでも出かけたり、このところコロナ禍や日々の慌ただしさでなかなか出来ていませんが、同じ業界でない多様な人と会って自分にない視点に触れるようにしています。休日は、お菓子だけでなくさまざまな売場を見たり、映画を観たり、ライブや美術館に行ったり、本や雑誌を読んだり等々、気分転換を兼ねて視野を拡げることと引き出しを増やすことを心がけています。セミナーやワークショップなどにも積極的に参加してアンテナをあちこちに張るといいと思います。さまざまな人々との関わりや得た情報がアイディアになり仕事に繋がるので、インプットの時間は大切にしてほしいと考えています。

― 最後に今後のキャリアプランについて教えてください。

マーケティングの仕事は本当に楽しいです。これからもおやつカンパニーでマーケティングを軸にさまざまなチャレンジを続けていきたいと思っています。一方で、リタイアする日が来た時は、これまでの仕事や転職の経験を踏まえキャリアアドバイザーの仕事をやってみたいとも密かに思っています。
”おやつカンパニーのお菓子って、あると何か嬉しくて元気になるな、美味しくて楽しくて好きだな。”お客さまにそう感じて頂けるお菓子を作っていきたいですね。

文:Akihiro Takeji
撮影:Takuma Funaba

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ベビースターでおなじみの“たっぷりたのしい”「おやつカンパニー」