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販売員の未来(The Future Of Retail Industry) vol.1

販売員の未来(The Future Of Retail Industry) vol.1

販売員の未来現在ファッション業界でご活躍中の2名をお招きして、販売員の今後についてお話を伺いました。

≪ご参加頂いた方≫

Aさん:大学卒業後、ラグジュアリー・メンズブランドで北海道の店舗にて店長、 都内に異動して副店長に。現在はECの会社勤務中。

Bさん:大学卒業後、販売職、飲食業、複数の海外ブランドで販売を担当し、路面店のGMを歴任。

―10~20年前、デジタル販売サービスはほぼありませんでした。今はEC、CtoC(メルカリなど)も普及し、ラグジュアリーブランドもデジタル販売網を使っています。日本ではブランドが売り上げを上げるために店舗を増やし、常に販売員不足でした。アフターコロナのファッション業界では、販売員の需要が増加し続けると思いますか?

A:デジタルが急速に広まって、オンラインでの販売員と、店舗での販売員の棲み分けがもっと顕著に出て、店舗での販売員は減っていく、と予測しています。

B:店舗が少なくなると店舗配置の販売員が減ります。その中で、オンラインセールスもできればVIP対応もできるといった、販売力があるハイブリッドな人が重宝されるでしょう。

―店舗数減は、ブランドからするとタッチポイント(売り上げ)が減ることになります。現場として実感していますか?

B:はい。店頭での売り上げはECに振られていて、販売する場所として店舗の重要度が低くなっています。ご来店されたお客様が、スマホ画面を見せながら「これ、ありますか?」と言って商品を試着し、店舗を出てからスマホ(ECサイト)で購入のクリックを押しているのを見たことがあります。おそらく「持って帰るのが面倒。ただ試着をしてサイズ感は確かめたい」ということでしょう。

―日本は他の国に比べると、リモートワークが進んでいません。2020年4月、5月に直面した休業期間。販売員がYouTubeやインスタグラムなどオンライン上で商品の説明を始めました。今後の販売とデジタルについて、どうお考えでしょうか?

A:店舗からYouTubeなどで発信しないといけなくなって、現場レベルでそのスキルが求められるようになっています。個人的には、ファッションとオンラインを使った販売の相性はめちゃくちゃいいと思います。

また最近、レビュー動画が多くなりました。ものを買うときに「損したくない、失敗したくない」という気持ちが大きいので、レビュー動画や口コミを確認するために。特に若い人は、買ったことに納得したい人が増えている感じがします。以前はインフルエンサーと呼ばれる人達の動画が話題になっていたのが、販売員の発信する動画に興味が移ってきています。

B:レビュー動画は本当に多いです。自分が試着しに行かなくても、代わりにしてくれている。という感覚だと思います。

―店舗発信なら、YouTubeの画像の下にリンクが貼られていて、そこから購入ができる。動画を見て、ECで購入して届くというのは確かに相性がいいと言えますね。

―昔は売る販売員は感性がある人、今はデータ解析(KPI、コンバージョン、セット率など)ができる人と聞きますが、いかがでしょうか。

A:結論から言うと、今も感性が大切だと思います。傾向と対策を立てるには、顧客とのエンゲージメントの深さが重要です。データ化できる趣味趣向は、ある日突然変わってしまうことがあります。急に顧客が来なくなった時に、エンゲージメントが深いほど、なぜ来なくなったのか理由がわかります。しかし、ただたくさん購入しているだけのオンライン顧客が急に来なくなった理由を知る術はありません。きちんと感性でわかりあえる関係性を築かないと、数字を伸ばしていくことはできません。会話の行間を読むとか、同じ目線で何を欲しているかを理解するセンスが大事です。

B:効率性では測れないことがエンゲージメントですよね。昔のセレクトショップやラグジュアリーブランドのトップセールスは、本当に緻密でした。それぞれの顧客情報や購入履歴など、自分でデータ台帳を作っていました。今はデジタル端末から直近のデータを見て、より細かい顧客情報を活用することで感性が活かされるようになっていると思います。

―効率と、VIPの満足度は対極にあると思いますが、今後、現場ではどちらが求められると思いますか?

A:僕は効率性と満足度が相反しているとは思いません。効率を重視する人に効率よく商品を提案・提供すれば満足度が上がるし、必要なプラットフォームを紹介すれば喜ばれ、そこで続けて購入することもあります。効率だけを求めていては満足度が高まらない。満足度を高めるために何をすべきかを考えなくてはいけないと思います。

―お客様の求めているものが効率なのか、時間なのか、丁寧な商品情報なのかによって対応が変わってくる。とてもEC的な観点ですね。
今後、ハイブリッド的な資質など、販売員として求められる要素には何があるとお考えですか?

A:2つあります。1つの分野のスペシャリストになると、ブランドアンバサダー的な役割を果たします。またハイブリッドな販売員には、ツールを使いこなせるマルチな人材、スキルが必要になるでしょう。

B:僕が思う大切なことは柔軟性。新人は、新しい取り組みについて指示を出すとすぐに対応できます。自分の経験、価値観で判断してしまうベテランスタッフは時代に置いていかれてしまいますね。

―これから販売を目指す若い人に、どういう役割を期待しますか? 伝えたいことはありますか?

A:憧れの存在になること。これからの新しい時代の販売員は、選択肢が多く、情報過多になっている中で、憧れの存在になることはすごく難しい。とはいえ、販売員がインフルエンサーとして発信元になり得る現状なら、憧れの存在になれるはずです。

B:若者に憧れられる職業。個人的には意図しなかったサプライズ的な接客を意識しています。顧客が思ってもいなかったニーズを提案することは、ECではできません。次もこの人から買いたいと思わせる熱量を持った接客は、生身の関係を築ける販売という職業の醍醐味です。お客様に喜ばれ、感謝される仕事、これほど「ありがとう」と言われる職業はあまりないと思います。

―販売についていろいろとお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

A、B:ありがとうございました。

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